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ベイビー・ドライバー・・・・・評価額1750円
2017年08月24日 (木) | 編集 |
ベイビーは、本当は何から逃げているのか?

犯罪者を車で逃走させる、プロの逃がし屋を描く異色のクライムムービー。
常に耳鳴りの症状に悩まされている主人公は、音楽を聴くことで外の世界から遮断され、天才的なドライビングテクニックを発揮することができるのだ。
この映画ではアクションと音楽は融合し、驚くべき相乗効果を見せる。
「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」などで知られるエドガー・ライトは、持ち味のコミカルさを適度に織り交ぜながら、斬新でスタイリッシュな自身の最高傑作を作り上げた。
冒頭の度肝を抜くカーチェイスと、続くワンシチュエーション=ワンカットのオープニングタイトルバックでもう観客の心を鷲掴み。
アクションであり、ノワールであり、シニカルなコメディであり、青春映画であり、ラブストーリー。
まさに娯楽映画全部入りの傑作である。
※ラストに触れています。

幼い頃の事故の後遺症で、耳鳴りに悩まされているベイビー(アンセル・エルゴート)は、プロの逃がし屋。
彼はイヤホンで音楽を聴いている時だけは、耳鳴りから解放され、驚異的なドライビングテクニックを駆使して、どんな追跡からも逃れてみせる。
強盗たちの元締めであるドク(ケビン・スペイシー)に負った巨額の借金の返済のため、嫌々ながら仕事を引き受けているベイビーは、ある日ダイナーで働くデボラ(リリー・ジェームズ)に恋心を抱く。
あと一回仕事をすれば、借金もなくなりカタギの世界に戻れる。
そうしたら、デボラと新しい人生を始められる。
だがドクは、有能すぎるベイビーを手放す気などなかった。
再び裏社会へ戻らざるを得ない状況に追い込まれたベイビーだったが、彼のある行動を切っ掛けに、新たな仕事のメンバーの間に疑心暗鬼が生まれ、強盗計画は思いもよらない方向に転がりだす・・・


ハリウッド映画には、犯罪者を現場から車で逃走させる、プロのドライバーを描いたカテゴリがある。
近年ではニコラス・ウィンディング・レフンを知らしめた「ドライヴ」、荒唐無稽っぷりがウリの「トランスポーター」シリーズなどがあるが、このカテゴリの源流は、ウォルター・ヒルが凄腕の逃がし屋と狂気の刑事の戦いをスリリングに描いた、「ザ・ドライバー」だろう。
監督のエドガー・ライトも、「ザ・ドライバー」の影響は公言しており、タイトルの「ベイビー・ドライバー」も、「ザ・ドライバー」の若い版という意味もあるのかも知れない。
寡黙な主人公のキャラクターも、どこか共通している。

この映画の主人公は、天才的なドライビングテクニックを持つが、まだあどけない少年の面影を残す若者、通称"ベイビー"
幼い頃に両親を失い、里親の元で育つが、ひょんなことから、強盗たちの元締めで暗黒街に大きな力を持つドクに借金を負ってしまい、その返済のためにやむなく仕事をしている。
年若いベイビーが、どこでそんなテクニックを習得したかという点はちょっと気になるが、まあ某とうふ店の息子みたいに、天性の走り屋が無茶しているうちに覚えてしまったと思えば、それほど問題は無いだろう。
映画の前半は、借金の完済を目前としたベイビーが、最後の仕事を遂行し、つかの間の平和をデボラと楽しむまで。
ところが、縁が切れたはずのドクにとって、ベイビーは成功を約束するラッキーチャームであり、彼を手放す気など初めから無かったのである。

後半になると、愛するデボラや養父のジョーを守るために、ベイビーは再び逃がし屋をする羽目に陥るのだが、問題は仕事のメンバーだ。
ジェイミー・フォックスが外連味たっぷりに演じるバッツは、とりあえず何かにつけて人を殺したがる超危険人物。
ジョン・ハムとエイザ・ゴンザレス演じるバディとダーリンは、ぶっ放すのが大好きなボニー&クライドばりのカップルの強盗犯。
ベイビーは、この危ない犯罪者たちを、なんとかデボラやジョーに近づけないようにしたいのだが、彼のちょっとした行動によって、事態は全ての人間を巻き込む形で推移してしまう。
その凄腕ゆえに、裏社会に絡め取られてしまった人生を、ベイビーが愛する人と共にいかにして取り戻すかが、先の読めないサスペンスフルな物語の骨子となる。

本作の大きな特徴が、際立って高い音楽性だ。
ベイビーは、両親を亡くした事故の後遺症で、常に耳鳴りに悩まされているが、音楽を聴いている時だけはその症状を抑えることができる。
だから彼は誰かと会話している時以外は、ほとんど常にイヤホンで耳を塞ぎ、映像も物語も常に音楽とシンクロしているのである。
この映画ではカーアクションも銃撃戦も、ベイビーの聞く音楽のリズムに乗って進行し、物語そのものも音楽によって牽引される。
その場に流れている曲が何なのか、イヤホンのピースで誰と共有しているのか、全てに意味が生まれていて、映像と音楽と物語は完全に三位一体
全ての描写がリズミカルで、ミュージカルじゃないけど、まるで極上のミュージカル映画を観たような気分になる。

そして、この映画において、音楽はベイビーの心情であり、行動の燃料、そして彼のトラウマ。
ベイビーは、自分の周りの人たちの声を密かに録音しては、サンプリングしてカセットテープに保存しているのだが、膨大なコレクションを収めたケースは言わば彼の心の地図であり、その中心に置かれているのは、「MOM(ママ)」と書かれた黄金色のカセット。
スカイ・フェレイラが演じる亡くなった母親は、若きシンガーでもあり、母の歌を収めたカセットは、彼にとっては誰にも触れられたくない心の聖域だ。
ある意味、ベイビーの時間は母が死んだ事故の瞬間に止まっており、彼は体は大人になっても、心は文字通りナイーブなベイビーのままなのである。
だから彼は、母が働いていたダイナーにずっと通い、どこか母に似た面影を持つデボラに恋をする。
主人公の密かなトラウマを背景に仕込み、表面的なサスペンスドラマの集束点に向けて、ナチュラルに浮かび上がるように組み込んであるのは非常に巧妙。

本作はまた、全編に渡ってエドガー・ライトの映画的な記憶に満ちた作品でもあり、上記した「ザ・ドライバー」以外にも、例えばアクションと笑いと音楽の融合したクライムムービーという点では「ブルース・ブラザーズ」だし、一癖も二癖もある犯罪者たちが疑心暗鬼から自滅してゆくのは「レザボア・ドッグス」を思わせる。
しかし、そこから観客が想像するであろう物語の予定調和から、微妙な"ハズし"を仕掛けてくるのだから上手すぎて小憎らしい。
ビジュアルとサウンドで掴んでおいて、ベイビーの心の奥底に秘められた本当の葛藤が、現実世界の物理的な危機と徐々に一体化する、心理劇としての構成の妙。
彼の最大の脅威になると思われた、バッツの片付け方も意外性があるし、バッツに「株屋」と呼ばれて反論できなかったバディを、愛の復讐鬼として、愛する人を守るベイビー自身の合わせ鏡にするとは、全然想像できなかった。

この映画、デボラとジョー以外の登場人物は、コードネームで呼ばれているが、二転三転する映画のラストで、遂にベイビーの本当の名前が明かされる。
人生を束縛する力を自ら排除し、誰よりも愛する人と新しい道を走りだそうとする大人の男に、もはや"ベイビー"の名は相応しくないのだ。

今回はカクテルの「ベイビー・ムーン」をチョイス。
ブランデー(レミーマルタン)20ml、チンザノ・オランチョ20ml、ホワイトキュラソー10ml、巨峰ジュース10ml、クレーム・ド・ミルティーユ1tspをシェイクして、グラスに注ぐ。
満月をイメージして円形にカットしたドレンドオレンジピールをグラスに沈める。
ブランデーとオレンジフレーバーのチンザノ・オランチョがメインのため、かなりコクのある甘口のカクテル。
巨峰ジュースとブルベリーのクレーム・ド・ミルティーユがいいアクセントとなっている。

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