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ワンダーウーマン・・・・・評価額1700円
2017年08月29日 (火) | 編集 |
愛で、世界を救う。

6月の米国公開時の絶賛の嵐も納得、これは期待に違わぬ面白さ。
「マン・オブ・スティール」から始まる、同一世界観のDCエクステンデット・ユニバース(DCEU)は、「バットマン vs スーパーマン ジャスティの誕生」「スーサイド・スクワット」の3作が公開済み。
ガル・ガドット演じるワンダーウーマンも、既に「バットマン vs スーパーマン」でゲスト出演的に登場しているが、本作では女だけの秘密郷・セミッシラで生まれ育った若きプリンセス、ダイアナが初めて外の世界を知り、ワンダーウーマンとなるまでを描いたビギニングだ。
舞台は一気に100年遡って、第一次世界大戦下の欧州。
歴史上最悪の戦争の惨禍の中で、人類の愚かさを思い知らされたダイアナが、それでも人類を救う愛の救世主となったのはなぜか。
これはスーパーヒロイン誕生の物語であるのと同時に、実に切ないファーストラブストーリーでもある。
監督は悲しき連続殺人犯を描いた傑作、「モンスター」以来14年ぶりの劇場用長編作品となるパティ・ジェンキンス。
作品のクオリティは、批評的な苦戦が続くDCEUダントツのベストで、まさにシリーズの救いの女神となった。

女だけの島、セミッシラで育ったアマゾン族の王女ダイアナ(ガル・ガドット)は、勇壮な戦士に憧れる少女。
戦争の恐ろしさを知る母ヒッポリタ(コニー・ニールセン)は、彼女が戦いの訓練に参加することを許さないが、島一番の戦士として知られる叔母のアンティオペ(ロビン・ライト)から密かに教えを受け、やがてアンティオペにも負けない強さとなる。
そんなある日、外界との境界を超えて、一機の戦闘機がセミッシラの海に墜落。
ダイアナは、パイロットのスティーブ・トレバー(クリス・パイン)を救出するが、彼を追ってきたドイツ軍とアマゾン族の間で戦闘になり、アンティオペが戦死してしまう。
ヒッポリタが真実の投げ縄を使って、トレバーを尋問すると、島の外では世界中を巻き込む大戦争が起こっていること、ドイツ軍のドクター・ポイズンが、人類を破滅させる毒ガスを開発していることを聞き出す。
戦いの神アレスの関与を確信したダイアナは、アレスを倒すために、母の反対を押し切ってトレバーと共にロンドンへ向かう。
ダイアナは、初めて目にする大都会に戸惑いつつも、アレスを探し毒ガス計画を阻止するためにトレバーたちと前線に赴くが、そこは想像を絶する地獄の戦場だった・・・


私の世代にとって、ワンダーウーマンのイメージは、70年代に放送されていたリンダ・カーター主演のテレビドラマ版
トレードマークの星条旗コスチュームがやたらセクシーで、小学生男子としてはちょっとドキドキしながら観ていた。
対して21世紀の超大作映画は、主人公の名とコスチュームデザインの由来となるダイアナ・トレバーの存在が無くなり、現行のコミックよりも更にモダーンで、メタリックなコスチュームにイメージチェンジ。
本作ではダイアナのヘアスタイルが2パターンあり、髪をアップにしている時がちょっと野暮ったい雰囲気なのも、おそらくは狙いだろう。
戦闘モードになった彼女が、結んだ髪をフワッと下ろして、あのコスチュームで初めて登場する瞬間は文句無しにカッコよく、劇伴の盛り上がりと共に、こちらのテンションもダダ上がり。
このコスチュームは、ガル・ガドットの抜群のスタイルにフィットして、長い手足を振り回してのアクションは、DECUの一番バッター、ザック・スナイダーのスタイルを意識した、激しい動きの中の一瞬のスローを生かしたもの。
細切れの編集ではなく、しっかりと美しい画を見せてくれる、見応えのあるアクション演出だ。

アメコミ映画としての見せ場は十分に抑えつつ、本作は第一義的には本人も知らない宿命を背負ったダイアナが、人類を救うワンダーウーマンとなるまでの成長物語である。
「バットマン vs スーパーマン」で、マザコン男子ヒーローたちの「僕のママがー!」って不毛な争いをさらっと救った時のワンダーウーマンは、クールな大人の雰囲気を漂わせていたが、100年前に初めてこの世界に現れた彼女は、ずっと理想主義的で世間知らずの、未熟な少女の様なキャラクターだ。
勇猛な戦士しかいない女だけの島で育ったダイアナは、会議ばっかりやっていて前線の兵士をチェスの駒のように扱う将軍に呆れ、力なき民を見捨てようとする兵士に怒る。
彼女は、すべての戦争は戦いの神アレスが糸を引いており、彼を殺せば自動的に戦いは終わると考えているのだが、終盤意外な人物の姿で現れるアレスは、人間は愚かな存在で戦争こそが彼らの本質であり、自分と手を組んで人類を滅ぼすことが、真に理想的な世界を再構築することに繋がると説く。
それまでの物語で、戦争の惨禍を目の当たりにし、人類の残酷さと悲しさを身をもって知ったダイアナは、一瞬その言葉に心を動かされる。
ではなぜ彼女は、最終的にアレスに懐柔されず、人類を救うに値すると考えたのか。

それはスティーブ・トレバーと仲間たちによって、自分たちの持つ内面の悪に負けじとする、人間一人ひとりの善なる部分を十分に教わったからだ。
隔絶された世界で純粋培養されたダイアナにとって、トレバーは最初に親しくなった男性であり、人間社会で彼女を導くメンターであり、初めての恋人。
カルチャーギャップに戸惑いながら、ロンドンで身支度を整えるコミカルなシークエンスは、ちょっと「ローマの休日」を思わせ、戦争とのコントラストが二人の間を深める感情の緩急として作用している。
ダイアナの少女の様なピュアな正義感に、職業スパイとして人間のダークサイドばかりを見てきたトレバーも心を動かされ、二人は相互に影響を与えながら、クライマックスにおけるそれぞれの決断に向かって感情を変化させてゆく。
映画全体を通してパティ・ジェンキンスの演出のテンポは、早過ぎず遅過ぎず、キャラクターの心の機微をしっかりと演技で見せる。
アクション映画でありながら、古典的風格を持つ戦争メロドラマとしても見応えありだ。

面白いのは、物語が進行すると共に、ダイアナのキャラクター造形がジェンキンス監督の前作「モンスター」のシャーリーズ・セロンと、表裏の様な関係になってくること。
どちらも未熟な女性が何者かになろうとするが、片方は英雄に、片方は怪物になってしまう。
内容的には対照的な二本には、共通するドラマツルギーと作家性が見て取れる。

しかし、非常に良く出来た映画だけに、どうしても気になってしまうのが、第一次世界大戦という舞台を用意しながら、ダイアナが戦争を無くすための戦いには最後まで躊躇を見せないことだ。
アメコミ映画では、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」が第二次世界大戦という現実の戦場を舞台としていたが、あの映画のヴィランはレッドスカルという、性格もビジュアルも如何にもコミックというキャラクターだった。
ところが、本作で世界の直接的な脅威となっているのは、実在の人物をモデルとしたドイツ軍のルーデンドルフ将軍と、戦争で自らも顔に深い傷を負ったドクター・ポイズンことマル博士。
どちらも現実の世界にいてもおかしくない、アメコミ映画というエクスキューズ不要のリアリティあるキャラクターだ。
実はスーパーマンが誕生したのは1938年、バットマンは1939年、キャプテン・アメリカが1941年、そしてワンダーウーマンも1941年。
アメコミヒーローの多くは、第二次世界大戦の期間に生まれている。
ナチスドイツに大日本帝国、ファシズムと言う非常に分かりやすい悪役を得たことで、相対的に単純化されて造形された正義が、初期のコミックヒーローなのである。
ちなみに、原作ではマル博士はナチスの科学者として登場し、その正体は日本人のプリンセスなのだが、映画では時代背景を含めてまるごと変更されている。

本作は、コミックヒーローによって正義と悪が単純化される前の時代を、あえて選んでいるのに、争いを別の争いでしか止められない矛盾に対するアプローチが見られない。
これは物議を醸したガル・ガドットのイスラエル軍擁護発言にも通じ、長年にわたって多くのヒーロー物が避けて通ってきたテーマ。
しかし、現在ではコミックや映画化作品を含めて、ヒーローが戦うことの影を描く作品が増えてきたのも事実だ。
もちろん簡単に結論を出せるテーマではないが、訓練しか知らないピュアなプリンセスから、実戦と大きな喪失を経験して大人になったダイアナの中に、一つ葛藤が見えても良かった気がする。
まあその辺りを含めて、既ににパティ・ジェンキンスの続投がアナウンスされているワンダーウーマンの単独主演の第二弾で、ダイアナのさらなる成長に期待しよう。

今回はワンダーウーマンのイメージで、南仏ドメーヌ・タンピエの「バンドール・ロゼ」をチョイス。
桜を思わせる透き通ったピンクの色合いも美しく、ピーチやローズの繊細な果実香、ほんのりとしたスパイシーさを残したフィニッシュ。
ミディアムボディのロゼとして、完成度はとても高い。
間もなくやってくる食欲の秋に、美味しいものと合わせて食べるのにピッタリな、バランスの良いワインだ。

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