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ショートレビュー「エル ELLE・・・・・評価額1650円」
2017年09月07日 (木) | 編集 |
彼女の本当の姿とは。

予告編から期待したものを、良い意味で裏切られる。

覆面男に襲われたた主人公が、犯人を探し出そうとするうちに、周りの男たちが怪しく思えて疑心暗鬼になり、徐々に精神崩壊してサイコ化するのかと思っていた。
しかし、そっち系の分かりやすいサスペンス方向には行かないのである。 


イザベル・ユペール演じるミシェルは、一見すると知的でエレガントな女性なのだけど、実は最初からかなり変な人なのだ。
冒頭で、家に押し入った覆面男にレイプされるのだが、泣き叫ぶでもなく、通報するでもなく、男が去ると何もなかったかの様に淡々と家の片づけを始め、寿司の出前をオーダーして美味しくいただいたりする。
後日、別れた夫や友人たちと会食すると、あっけらかんと「実は私、レイプされちゃった・・・」と告白し、警察に訴える気は無いと告げる。
おまけに親友で仕事のパートナーでもある女性の夫とは、不倫関係にある。
明らかに普通でない、一体彼女は何者で何を考えているのだろう?と思わされる秀逸な序盤の展開だ。
人間を斜めから切る異才、ポール・ヴァーホーベンが、ミシェルの心の奥底に隠された闇の記憶を発掘する。


現在の彼女の中に徐々に見えてくるのが、39年前に父親が起こした凄惨な事件の記憶だ。
彼は突如として隣近所の住民を手当り次第に虐殺し、終身刑が確定して以来ずっと服役中なのだが、最近仮出所の申請を出していることが報じられている。
事件当時10歳だったミシェルも、殺人への関与を疑われて、辛い子供時代を過ごしているのである。
父親を憎み続けている彼女が、この事件に呪縛され、精神形成に大きな影響を受けているのは明らかだ。
彼女の仕事が、モンスターに女性が陵辱されるエロゲーの制作会社の経営だったりするのをはじめ、心の中のちょっとしたズレや歪みを示唆する様々な暗喩が、全編に渡って仕込まれている。

まあちょっとおかしいのはミシェルだけじゃなくて、彼女を暴行した意外な真犯人を含めて、何人かの主要な登場人物もどこか頭のネジが飛んじゃってるのだけど。

ミシェルは現在の暴行犯を追ううちに、図らずも自分でも意識していない、常識や道徳とは相反する本当の心に向かい合うことになるのだが、それは同時に今の自分を作り出した元凶とも言える父親への感情にも変化をもたらす。

端的に言えば、これは39年間屈折して生きてきた女性が、男たちに復讐しながら自然な生き方を取り戻す物語だ。

バーホーヴェンのインタビューを読んだのか講演で聞いたのか、昔のことなので記憶が定かでないが、彼は第二次世界大戦中、ドイツ占領下のハーグで過ごした幼少期に、残酷な死をたくさん見たと言う。
敵であるドイツ軍に殺される者も、味方であるはずの連合軍の爆撃で死ぬ者もいて、街じゅうに死体が転がり、さっき見かけた近所の人が次の瞬間にはこの世からいなくなっている世界。
そんな現実を幼い頃に知ってしまい、自分の中の何かがずっと壊れたまま大人になったと語っていた。
この映画を観て、ミシェルの個人史と精神状態の演出には、バーホーヴェン自身の経験が反映されているのではと思った。
イザベル・ユペールの、つかみ所のない多面性の演技が圧巻。
見応えのある心理ドラマである。

今回はイザベル・ユペールのキャラクターのイメージで、魔酒アブサンを使ったカクテル、「イエロー・パイロット」をチョイス。
アプリコット・ブランデー20ml、アブサン20ml、シャルトリューズ・ジョーヌ20mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
名前の通り鮮やかな黄色のカクテル。
シャルトリューズ・ジョーヌは、フランスの代表的な修道院系薬草リキュールで、源流は17世紀に遡るといわれる。
材料三酒が皆香り高く、非常に複雑なアロマを楽しめる。
この映画同様、独特な香りがクセになる人がいる反面、拒絶反応を示す人も多そう。

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