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エイリアン:コヴェナント・・・・・評価額1600円
2017年09月19日 (火) | 編集 |
ついに“奴”が生まれる。

リドリー・スコット監督による、「エイリアン」前日譚。
2012年の「プロメテウス」に続く第二弾は、スコット作品としては38年ぶりに「エイリアン」のタイトルが復活した。
内容的にも、人類はどこから来たのか?という謎解きの要素が強かった前作から、ぐっとホラー色を増して着実に伝説の第一作に接近。
種の起源を巡る宗教性を引き継ぎながら、前作では最後まで出てこなかった、H・R・ギーガーのデザインによる、“エイリアン(ゼモノーフ)”誕生のエピソードが描かれる。
宣伝では前作との繋がりはメンションしてないが、ストーリー的には「プロメテウス」の完全な続編で、観てないと作中あちこち意味不明だと思うので、最低限「プロメテウス」と、できれば第一作を鑑賞しておくのがオススメだ。
※核心部分に触れています。

人類の起源を探るべく、惑星LV-223に向かったプロメテウス号が、消息を絶ってから10年。
移民船コヴェナント号は、地球から冷凍休眠中の2000人の移民と、1400人分の胎芽を乗せて、惑星オリエガ6に向かっていた。
船を管理するアンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)以外は、乗組員も皆冷凍休眠に入っていたが、予期せぬアクシデントに見舞われ、船長のブランソン(ジェームズ・フランコ)は死亡し、副官のオラム(ビリー・クラダップ)が指揮をとることに。
ブランソンの妻で、テラフォーミング技術者のダニエルズ(キサリン・ウォーターストン)ら乗組員は、悲しみを癒す間もなく船の修復に取り掛かる。
ところがパイロットのファリス(ダニー・マクブライド)らが船外作業をしてる時、突然どこからかノイズだらけの通信を受信。
解析の結果、それは航路からほど近い、未知の地球型惑星から発信されていることが判明。
冷凍休眠中の乗客を危険にさらすとダニエルズは反対するが、オラムは惑星の探査をすることを決定する。
やがて、惑星に降り立った一行は、遺棄された巨大な異星人の宇宙船の残骸を発見するのだが・・・


ある意味、リドリー・スコットのSF映画の、集大成とも思える作品である。
「プロメテウス」のレビューの最後で、私は「船が飛び立った先は“パラダイス”か、それとも“エデン”なのだろうか?」と書いた。
前作は人類の種の起源を巡るきわめて宗教色の強いミステリで、30億年前に地球に命の種を蒔いた創造主“エンジニア”の存在を求めて、ショウ博士ら調査チームの乗った探査船プロメテウス号が、古代の星図に描かれた惑星LV−223に向かう。
ところがその星はエンジニアたちの実験場で、彼らは自ら作り出した変異する恐るべきクリーチャーを制御できず、星を放棄していたのだ。
同じクリーチャーに遭遇した調査チームも襲われるが、生き残ったショウ博士とアンドロイドのデヴィッドは、残されていたエンジニアの宇宙船を起動し、彼らの本星を目指して飛び立ったのである。
つまり、次回作の舞台はエンジニア=創造主の星、即ちそれは“パラダイス”か“エデン”だろうと思ったのだ。
まあその予測は半分当たって、半分外れていた。

確かにショウ博士らは創造主の星にたどり着いていたが、その星はLV−223から持ち込まれたクリーチャーの元になる病原体によってあっさりと滅ぼされ、“パラダイス”ならぬ“インフェルノ”へと様変わりしていたのだ。
そしてその星からの通信を運悪くキャッチしてしまったのが、コヴェナント号だったという訳。
シリーズ中、スコットがメガホンを取った作品は、毎回宇宙船の名前が内容とリンクしている。
第一作の「ノストロモ」は、コンラッドの同名小説で、権力に利用され結局は死んでしまう主人公の名だったし、「プロメテウス」は、ゼウスの命に背いてまでも、人類に火(文明)を与えたギリシャ神話の神だ。
今回、2000人を超える移民を乗せて、宇宙を旅する「コヴェナント(COVENANT)」とは、聖なるものとの契約を意味する言葉。
これが、神から聖約として十戒を与えられた、モーゼの率いるユダヤの民の比喩なのは明らかだが、では創造主が滅びた星で、聖約を交わす相手は一体誰なのか?

本作の冒頭、ピーター・ウェイランドによって創られたアンドロイドは、ミケランジェロの彫刻を見て、自分をデヴィッドと名付ける。
デヴィッドとは旧約聖書の登場人物で、ペリシテ軍の巨人ゴリアテを倒し、やがて自分を妬んだ王のサウルに命を狙われるも、彼の死後に全イスラエルの王となったダビデのことである。
ダビデは、悪霊に悩まされるサウルの心を癒すために竪琴を弾くが、本作でもデヴィッドはピーターの前でリヒャルト・ワーグナーの「ラインの黄金」第四場の「ヴァルハラ城への神々の入城」をピアノで弾きこなし、ピエロ・デラ・フランチェスカの「キリストの降誕」を鑑賞する。
ここではサウルとダビテの王権の移行に絡めて、両者の未来の関係を暗示すると共に、創造主たるピーターに対して、「貴方が自らを模して自分を作ったのなら、芸術を理解する心も含めて同じ能力がありますよ」というさりげない、しかし明確なアピール。
しかも有限の命しか持たない人間に対し、アンドロイドは死から解放されている。
やがて人間を自らより劣ったものとして認識したデヴィッドにとって、人類の創造者たるエンジニアもまた、崇敬の対象ではないのである。
コヴェナント号の聖約は、“パラダイス”であったはずの星を、自らが創造主となり完璧な生物を作り上げる新たな実験場“インフェルノ”へと変えた地獄の王、デヴィッドと結ばれるのだ。

他にも、本編終盤に登場する在りし日の乗組員の記念写真が、明らかにダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を意識した構図(本作のプロローグとなる“LAST SUPPER”と題したプロモーション・リールも公開されている)だったり、様々な宗教的な暗喩が含まれているが、脚本家のテイストの違いか、それらは「プロメテウス」ほど思わせぶりではなく、物語の表層に配されていて比較的わかりやすい。
本作は基本的にデヴィッドが人類でもエンジニアでもない、新たな世界の創造主となり、第一作に登場したこの宇宙の絶対生物、“エイリアン”を完成させるまでの物語であり、人間の登場人物は相対的に犠牲者としての役割しか持たされていない。
全編を通して、デヴィッドにとって最大の脅威となるのは彼の改良型、全く同じ姿をしているが、創造の欲求を持たず、人類の従順な同伴者であるコヴェナント号のアンドロイド、ウォルターである。
本来、人間が使役させる目的で作られた両者が対決するという構図は、スコットが作り出したもう一つのSF金字塔「ブレードランナー」における、ブレードランナーと逃亡レプリカントの関係を思わせ、思わずニヤリ(劇中に明示はないが、スコットはハリソン・フォード演じるブレードランナーもまたレプリカントであると語っている)。

「エイリアン:コヴェナント」は、宗教色・哲学色の強い謎解きもの、という色彩が強かった前作よりも、全体的にシンプルで観やすくまとまっていて、シリーズ本来のSFホラーとしてはなかなか面白い。
フェイスハガー状態からの成長速度が少々早過ぎの気はするが、惑星からの脱出船上のバトルシークエンス、コヴェナント号の中での第一作を思わせる捜索シークエンスと、大きく二つあるvsエイリアンの見せ場はスリリングだし、エイリアンもシャワールームでイチャイチャしてるカップルを背後から串刺しとか、唐突にB級感覚あふれる下世話な襲撃まで見せてくれて終盤大活躍だ。
しかし、端的に言って本作の方が「プロメテウス」よりも完成度は高いと思うが、宗教ミステリ好きとしては、破綻が目立つものの前作の凝った筋立ての方が個人的には好みだった。
信心深いオラムが部下に信頼されてないなど、設定はされているものの、あまり生かされていないディテールも多く、物語的にはやや物足りなさを感じる。

新たな創造主との聖約を結んだコヴェナント号の向かう惑星オリエガ6は、カナンの地にはなりそうもないが、本作のラストは直接第一作に繋がるものではない。
まだ企画は流動的な様だが、スコット監督による「Alien:Awakening」あるいは「Alien: Covenant 2」と呼ばれる続編は、すでにシナリオ段階にあるのは間違い無い模様。
楽しみだが、どんな話になるにしろ、全体を通しての整合性をとるのはかなり難しそうだ。
まあ今までの流れからすると、デヴィッドもまた自ら創造したエイリアンに滅ぼされそうな気がするけど。
ちなみにオリエガとは馭者座のことで、こちらにもギリシャ神話のエピソードがいろいろあるので、次回作のヒントになるのかもしれない。

今回は悪夢の始まりを描いた作品ということで、「ナイトメア・オブ・レッド」をチョイス。ドライジン30ml、カンパリ30ml、パイナップル・ジュース30ml、オレンジ・ビター 2dashを氷を入れたグラスに注ぎ、ステアする。
その名の通り、赤みがかった色が美しいカクテル。
フルーツの甘みと苦味が絶妙にバランスし、辛口でアダルトな味わいだ。

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