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ソウル・ステーション/パンデミック・・・・・評価額1650円
2017年10月02日 (月) | 編集 |
絶望が、やって来る。

ヨン・サンホ監督によるゾンビ映画の大傑作、「新感染 ファイナル・エクスプレス」で、ソウル発プサン行きのKTXが出発する数時間前を描く、文字通りの前日譚。
日本、韓国とも「新感染」の後に遅れて公開されたが、実際にはアニメーション作品の本作が先に作られ、続編として実写作品が企画されたというユニークな経緯を持つ。
出てくるのは娼婦に、ヒモに、何人ものホームレス。

韓国社会の底辺の人々が、突然のゾンビパニックに襲われる。
非常に間口の広いエンターテイメントとなっていた「新感染」に対し、勝手知ったるアニメーション手法で描かれる本作は、ネガティヴパワーMAXのゴリゴリの作家映画だ。
「新感染」の感動を期待した人はビックリするだろうが、この容赦の無さこそ、人間の底知れぬ闇を描く本来のヨン・サンホなのである。
※核心部分に触れています。

ある夜、一人の老ホームレスが首から血を流し、ソウル駅の一角で倒れる。
異変に気付いた弟は助けを求めるが、誰にもまともに取り合ってもらえず、兄は息絶えてしまう。
弟は、「兄が死んでしまった、助けて下さい」と駅員にすがるが、奇妙なことに兄の遺体は大量の血痕を残して、忽然と消えていた。
その頃、風俗店から逃げ出し、場末の安ホテルに身を寄せているヘスン(シム・ウンギョン)は、恋人のキウン(イ・ジュン)が勝手に自分の写真を出会い系サイトに載せ、売春させようとしていることに気づく。
問い詰めるとキウンは逆切れする始末で、怒ったヘスンは勢いでけんか別れ。
行き場もなく夜の街をさまようが、ソウル駅で狂暴化した暴徒が人々を襲っている所に出くわし、ホームレスの男と共に逃げ回ることになる。
その頃、キウンの元に出会い系サイトのヘスンの写真を見た男がやって来るが、彼は家出した娘を探していた父親(リュ・スンヨン)だった。
怒り心頭の父親の車に乗せられたキウンは、ヘスンを探して安ホテルに戻るが、そこでも既に異変が起こっていた・・・




主人公ヘスン役の声優は、前作の「新感染」で列車に乗り込んでくる“最初の感染者”を演じたシム・ウンギョン。
足の傷の位置など共通点もあるが、コスチュームも違うし同一キャラという設定ではない模様。
世界観以外は、物語的に繋がっている訳ではないので、本作単体で観ても問題ない。

それでも、二部作としての構成はよく考えられていて、こちらもある種の父娘ものの構造を持ち、韓国社会の様々な問題を提起する社会派の寓意劇なのも共通。

だが、「新感染」が災厄からの脱出、即ち絶望の中の希望を描くのに対し、ゾンビの街となったソウルを舞台とするこちらは、絶望の中の絶望を描く。
前作に登場するのは韓国社会の中流以上の人物だが、本作の軸になるのは韓国社会の底の底にいる人々だ。
ヘスンは家出して借金まみれとなり、風俗店で働いていた元娼婦で、彼氏のキウンは自堕落で甲斐性なしのヒモ。
ゾンビパニックの中、へスンと行動を共にするのは、ソウル駅を根城にするホームレスのおじさんだ。
「新感染」の登場人物は、色々問題を抱えていたとしても、基本的には満ち足りた人々で、突如として起こった災厄から脱出さえすれば、希望に帰り着くことが出来た。
一方で、最初からどん底の日々を送っている本作の登場人物にとって、生きていても、ゾンビに襲われても絶望しかないのである

前作は「泣けるゾンビ映画」として話題となったが、本作には劇中でヘスンとホームレスのおじさんが号泣するシーンがある。
家出してきたことを悔い、「家に帰りたい」と泣くヘスンに、おじさんが「俺の帰る家はもうどこにも無いんだ!」と泣き返す。
しかも、ただ家に帰りたいという登場人物の切なく細やかな願いに、物語が用意する答えは、この上なく残酷だ。
映画のプロットは、安全な場所を探して夜のソウルを彷徨う、ヘスンとホームレスのおじさん、彼女らを探すキウンと父親、二組四人によるツートラック。
ヘスンにとって、長年会っていない父親は、絶望的な状況を抜け出せるかもしれない、ほんのわずかな希望であり、「新感染」におけるプサンのようなものだ。
ところが、物語のクライマックスで、ヨン・サンホは悪意たっぷりに、観客もろともヘスンを地獄へと突き落とす
ここでの展開は、キャラクターの行動原理的にやや強引ではあるのだが、映画のテーマをクッキリと際立たせる。

権力に対する不信も、本作はより辛辣だ。
現代のゾンビ映画のひな形となった、ジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は、ただ一人生き残った黒人男性がゾンビと間違えられ、白人のガンマンたちに射殺されるというショッキングな結末を迎える。
「新感染」のラストで、ヨン・サンホはこれの反転をやったわけだが、本作ではさらに再反転
状況を把握できていない政府は、ゾンビに追われて逃げ惑う人々をホームレスの暴動と勘違いし、武力を使って鎮圧するのである。
ヨン・サンホは、二部作のゾンビを、人々が非日常として見て見ぬふりをするホームレスのメタファーと語っており、このシークエンスはまさに映画の世界観を象徴する。
前には軍・警察、後ろにはゾンビ。
力なき人々は、誰からも助けられずに滅びてゆくほかはない。
ソウルからプサンへと逃げ延びる「新感染」の構造が、朝鮮戦争の展開と酷似していることは前作のレビューで指摘したが、本作で人々が権力に見捨てられて死んでゆく様は、朝鮮戦争の緒戦、韓国軍がソウル市民と防戦している自軍を置き去りにしたまま退路の橋を爆破し、軍民に多大な犠牲者を出した韓国史の恥部“漢江人道橋爆破事件”を思い出した。

「ソウル・ステーション/パンデミック」は、実写とアニメ、社会階層の上下、希望と絶望など、いくつもの要素が「新感染 ファイナル・エクスプレス」の対になるように作られた作品だ。
ここには前作のような、人間の無償の愛によるエモーショナルな感動はなく、社会の最下層の人々が辿る悲惨すぎる運命に、違う意味で泣けてくる。
ゾンビを社会問題のメタファーとして描き、本当に恐ろしい人間の心の闇を浮かび上がらせる、まことに正統派のロメロ映画の子孫であり、優れた寓意劇だ。
しかしこれ、もし単体で公開していたら、ヨン・サンホの過去の作品同様に、興行的成功は難しかっただろう。
知る人ぞ知るクセの強い映画作家だった彼を、圧倒的に観やすい「新感染」に導いたプロデュースチームは、新海誠に「君の名は。」を作らせた川村元気と同じ位凄いことをやっている。
何気にこの二人、作風は真逆だが共にカルトなアニメーション監督で、2016年の夏に突如として国民的大ヒット作を放つなど、経歴に通じる部分があるのが面白い。
大メジャーに躍り出た彼らの次回作に興味は尽きないが、ヨン・サンホは漫画家の古谷実のファンで、「シガテラ」をアニメーション映画化する希望をもっているそうだ。
うーん、チョイスがいかにもこの人らしくて、ものすごく観たいぞ。
ヒットはしなそうな気がするけど(笑

今回は、夏のソウルの夜に起こった黙示録的悪夢の物語なので、寝苦しい暑い夜に飲みたい、焼酎の真露をベースにした「真露カッパー」をチョイス。
冷やした真露45~60mlを適量のミネラルウォーターで割り、スティック状に細くスライスしたキュウリを入れて完成。
焼酎につけるとキュウリの甘味が強調されて、飲みながらポリポリ食べるのが美味しい。

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