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ドリーム・・・・・評価額1700円
2017年10月04日 (水) | 編集 |
彼女たちが成しとげたこと。

公民権運動の時代を背景に描かれる、黎明期のNASAを支えた、実在する三人のアフリカ系女性の物語。
肌の色と性別、二重のガラスの天井に閉じ込められた彼女らはしかし、米ソ宇宙開発競争のなりふり構わぬ状況において、地道な努力により、少しずつ自らの実力を男性社会に認めさせて行く。
原題の「HIDDEN FIGURES」とは、直訳すれば「隠された人々」となる。
三人の女性たちをタラジ・P・ヘリン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイが生きいきと演じ、ケビン・コスナー、キルスティン・ダンスト、マハーシャラ・アリら実力者が脇を固める重厚なキャスティング。
監督・脚本は敏腕CMディレクターとして活躍し、劇場用長編デビュー作の「ヴィンセントが教えてくれたこと」で注目された、セオドア・メルフィが務める。

1961年、ヴァージニア州ハンプトン。
NASAのラングレー研究所では、多くの黒人女性たちが計算手として働いていた。
実質的なリーダーとして采配を振るっているドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は、管理職への昇進を希望しているが、上司のミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループに管理職は置かない」と却下されてしまう。
メアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニア志望だが、白人の学校の単位を条件にしているNASAの規約が壁になっている。
子どもの頃から計算の天才として名高かったキャサリン(タラジ・P・ヘリン)は、黒人女性として初めて、宇宙計画の中枢である宇宙特別研究本部に配属されるが、白人男性ばかりの環境で、なかなか機会を与えてもらえない。
しかし、人類最初の有人宇宙飛行を目指すマーキュリー計画は遅れ、ソ連のボストーク1号に一番乗りを奪われてしまう。
NASA全体が強烈なプレッシャーにさらされる中、本部長のハリソン(ケビン・コスナー)は、キャサリンの稀有な才能を認め、徐々に彼女を重要な任務に就かせるようになる。
その頃、計算手の仕事を不要とするマシン、IBMの巨大なコンピュータがラングレーに運び込まれる・・・・


第二次世界大戦後、戦勝国となった米ソ両国はナチスドイツのミサイル技術者を競って移送、あるいは拘束連行し、自国の技術と融合させ、無限の可能性を追求する宇宙開発競争に突入する。
先行したのはソ連で、1957年10月4日に世界初の人工衛星・スプートニク1号を打ち上げると、1961年4月12日にはユーリイ・ガガーリンが、ボストーク1号により人類初の有人宇宙飛行に成功。
出遅れたアメリカは、1958年になって人工衛星・エクスプローラー1号を成功させ、有人宇宙飛行を目指すが、ここでもソ連の先行を許してしまう。
ロケットを打上げ、地球に帰還させる技術は、そのまま敵国に核の炎を届ける大陸間弾道弾・ICBMの技術であり、宇宙への進出は遥か上空から相手を監視し、丸裸に出来ることを意味する。
冷戦の時代にあって、どちらか一方に宇宙を支配されることは、生殺与奪の権を握られることを意味し、決して許容できる事態ではなかったのだ。
映画の舞台となる1961年のNASAは、まさにソ連宇宙技術陣の猛ラッシュによって、リングのコーナーに追い込まれていたのである。

ボストーク1号に対するアメリカの回答が、一人乗り宇宙船で弾道飛行、軌道飛行を目指すマーキュリー計画であり、この計画がジェミニ計画、アポロ計画による有人月面探査へとつながって行くのだが、宇宙飛行を成功させるには複雑怪奇な軌道計算が必要となる。
まだコンピュータが普及する以前、NASAには優れた数学的才能をもつ女性たちが集められ、いわば人間コンピュータとして働いていた。
本作の主人公となるキャサリン、ドロシー、メアリーが属するのは、アフリカ系の黒人女性たちからなる“西計算グループ”。
三人の中でも、物語の軸となるのは数学の天才、キャサリン・G・ジョンソン。
彼女は実に30年以上に渡って各時代の宇宙計画に参加し、NASAの伝説的女性スタッフ五人をモチーフにした、レゴのフィギュアセットのメンバーにもなった凄い人なのだ。
ロン・ハワード監督で映画化されたアポロ13号の事故で、宇宙飛行士が故障した宇宙船の正確な位置を把握できるシステムを作り上げ、安全に帰還できる軌道を辿れるよう尽力したのはキャサリンなのである。

だが、溢れんばかりの才能の持ち主である彼女たちにも、時代は決して優しくない。
キャサリンが新たに配属された、宇宙特別研究本部のビルには、有色人種の女性用トイレが無く、彼女は時間を浪費していちいち遠くのビルに行かねばならない。
直属の上司は、検算に必要な数字の大半を塗りつぶして渡してくる。
昇進希望を却下されたドロシーは、NASAがIBMコンピュータを導入しようとしていることを知り勉強しようとするのだが、専門書がある白人用図書館では本を借りられない。
メアリーは学校の単位の不足を理由にエンジニア職への転身を拒否されるが、その単位は白人専用の学校でしか取得できないものなのだ。
上司に「君が白人男性だったら、エンジニアを目指したか?」と聞かれたメアリーは、こう答える。
「いいえ。(白人男性なら)とっくに(エンジニアに)なってるから」と。
百凡の男たちを遥かに凌ぐ実力を持っているという自負と、それが認められない現実に対するもどかしい想い。

このあたりのエピソードは、史実がある程度脚色されており、必ずしも現実の彼女たちが経験したことではない様だが、当時の有色人種の女性の置かれた困難な状況を、分かりやすく描き出している。
しかし、差別的な状況は描かれるが、それはあくまでも背景にとどまり、映画は白人男性優位の組織の中で、彼女たちが苦しみながらなし遂げたことを強調する。
本作のファーストプライオリティは過去を告発することではなく、今も色々なガラスの天井を感じている人たちに、先人たちの人生を通じてエールを贈ることだから、このスタンスが相応しい。
白人の登場人物にも有色人種に偏見を持つ者はいるが、いわゆる悪役的な描き方をしておらず、皆それぞれに彼女たちの努力と熱意に次第に心動かされるのも良いバランスだ。
全体、描いている内容はシリアスだが、ユーモアが絶妙なアクセントとなっており、テリングのテンポの良さ、感情移入しやすいキャラクター造形も相まって、非常に物語に入りやすいのである。
時代を象徴するファッションや音楽の使い方も上手く、単に辛さに耐えるだけでない機知に富んだ女性たちの逞しさも魅力的。

コンピュータの時代が本格的にやって来れば、計算手はクビになる。
ならば誰も習得してないプログラミングの技術を皆で覚えちゃうとか、頭の固い男たちをさらっと出し抜くあたりはまことに痛快だ。
そのコンピュータの出した数字が信用できなくて、結局最後は人間の出番になるのも、王道だけど思わず胸をなでおろす。
三人が男性社会の軋轢の中で、実力によって信頼を得て少しずつ前進し、葛藤が各段階でマーキュリー・ロケットの打ち上げとして昇華されるのもカタルシスを呼ぶ。
本作を観たならば、よほど偏屈な人でなければ、誰もが頑張るキャサリンたちを応援したくなるだろう。
ここにあるのは、軽妙なタッチで描かれる、アフロアメリカン現代史にして女性解放史、そしてアメリカ宇宙開発史の、知られざる重要な1ページなのである。

アメリカの宇宙計画を描いた映画には傑作が多い。
同じ時代の「ライトスタッフ」とは、物事の表と裏の関係で、9年後を描く「アポロ13」では彼女らが成し遂げたことのその先が見られる。
ロン・ハワードとトム・ハンクスが共同プロデュースしたTVドラマ、「フロム・ジ・アース/人類月に立つ」は、マーキュリーからアポロまで、有機的に結合したアメリカ宇宙計画を包括的に知ることができる。
これらの作品と合わせて観ると、より本作への理解が深まって面白いと思う。
ところで、幻となった副題「私たちのアポロ計画」は、映画ラストで本部長のハリソンとキャサリンの間で交わされる、この映画のテーマを象徴する印象的なやり取りに引っ掛けられた、ぴったりの物だった。
宇宙計画の歴史も知らず、調べようともせず、他人の付けた火に乗っかって、的外れな文句垂れて炎上させたクレーマー連中は20世紀フォックスに謝れよな。

今回は邦題から「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジ・キュラソー20ml、ぺルノ1dashを、氷と共にシェイクしてグラスに注ぐ。
コクのある甘味のブランデーとオレンジの風味が組み合わさり、ぺルノが両方を引き立てる。
ゴージャスな味わいの甘口のカクテルだ。

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