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ショートレビュー「エンドレス・ポエトリー・・・・・評価額1650円」
2017年11月26日 (日) | 編集 |
行く道を照らすのは誰?

前作「リアリティのダンス」のラストからはじまる、アレハンドロ・ホドロフスキーの自分語り第二章。
12歳までの幼少期を過ごした、故郷トコピージャから首都サンチアゴへ。
サディスティックなまでに抑圧的な父・ハイメに支配され、なぜか全ての台詞がオペラ調の歌唱になっている母・サラに溺愛される日々に葛藤を抱え、何者かになろうと抗うアレハンドロの極彩色の思春期。
やがて彼は従兄のリカルドに連れられて、とある芸術家姉妹の家を訪れる。
そこは彫刻家や画家やダンサーなど、新しい何かを作ろうとする、若きアーティストたちが共に暮らす梁山泊の様なシェアハウスで、アレハンドロも実家を飛び出し、ここに入り浸って詩作をはじめる。
本作はマグマのような熱を心に秘め、アーチストとしての胎動の時代が描かれる、アレハンドロの少年-青年編だ。

物語の舞台は40年代から50年代にかけての凡そ10年間だが、視点は現在のホドロフスキーに置かれている。
これは彼の心象であり、描き割りに再現された幻影としての過去=映画なのだ。
本作を鑑賞することは、老年期を迎えた作者本人が、彼の中にある過ぎ去った時間を新たな芸術として再生するプロセスを、共に体験することなのである。
今でなければ決して作り得ない過去。
ホドロフスキーの内面にある小宇宙を、映画として外側に組み立ててゆくのだが、さらにその中に本人が入って行く得意な多重構造。
まだ行くべき道を探す若きアレハンドロの前に、ひょいと現在のホドロフスキーが現れて語り出し、過去を"修正"したりするのだから面白い。
老いた異才は映画の中で70年前の自分と向き合いながら、現在の自分が映画を作る意味を改めて見出しているかの様だ。

例によって、エキセントリックにカリカチュアされたキャラクターたちが強烈だが、映画が描かんとしていることの解釈そのものは、過去のホドロフスキー作品に比べても格段に分かりやすいのでないか。
過去は今を形作り、今は過去に想いを馳せる。
そこにある喜びも悲しみも、その時は否定的に思えたことすら、皆愛おしい。
若きアレハンドロの旅路は、まだ見ぬ未来によって明るく照らされているのである。

ところで本作は「リアリティのダンス」の完全な続編なので、前作の鑑賞は必須。
それにラストを観ると、物語はまだまだ続きそうな雰囲気だ。
今回が第二次イバニェス政権が出来て、渡仏するまでの話だから、若きアレハンドロはまだ23歳くらいか。
次はパリ、そしてメキシコで演劇人・カルト映画監督として開花する時代?
そしてその次は、幻の「DUNE」を経過して名声が世界に広まり、コミック原作者としても活躍する壮年期だろうか。
前作に続き強烈な遺作感が漂うが、もしこのままシリーズが続き、現実と虚構の狭間にある心象としての過去が、ホドロフスキーの今に追いついた時、いったいどんな化学反応、もといミラクルが起こるのだろう。
世界を驚かせてきた異才もすでに88歳、是非とも新たな映画の可能性を見せて欲しいが、時は待ってくれるだろうか。

今回はワインどころとしても知られるチリ、カサブランカバレーのヴィーニャ・コノスルから「シャルドネ 20バレル」をチョイス。
20樽、6000本限定のリミテッドシリーズは辛口のフルボディ。
すっきりとした酸味と豊かな果実香を備え、シャルドネらしい柔らかで芳醇なワインに仕上がっている。
貧乏人としては、チリ産ワインのCPが抜群に高いのも嬉しい。

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