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ショートレビュー「否定と肯定・・・・・評価額1650円」
2017年12月14日 (木) | 編集 |
歴史は司法で裁けるのか。

1996年、英国の歴史研究家デヴィッド・アーヴィングが、自分のことをホロコースト否定論者だと自著で中傷したとして、現代ユダヤ史を専門とする歴史学者、デボラ・リップシュタット教授と出版社のペンギンブックスを名誉毀損で訴えた実際の裁判、「アーヴィングvsペンギンブックス・リップシュタット事件」の映画化。
面白いのは英国の司法制度では、日本やアメリカなどとは逆に、被告側に事実関係の立証責任があるという点。
第二次世界大戦中のヨーロッパで何が起こり、何が正しいのかはリップシュタットも判事も知っている。
本来、”ホロコーストの真実”は、この裁判の争点ではないのだ。
ポイントは、アーヴィングが真摯な研究の結果としてホロコースト否定してるのではなく、真実を知りながら自分の政治的信条に都合のいい歴史を広めるため、嘘をついているのを立証しなければならないこと。
仮にアーヴィングが学術的な証拠に基づいてホロコーストを否定しているのであれば、それは純粋に学問の問題であり、一歩間違えれば言論封殺になってしまう。

しかし、「あなたは嘘つきですか?」と聞かれてアーヴィングが「Yes・No」で答えるわけもなく、文字通り他人の心の中を暴露しなければならないのだから、これは相当に困難だ。
リップシュタットにはスピルバーグをはじめ多くの支援者がいて、故ダイアナ妃の離婚裁判を担当した一流の弁護団が組まれているのに、アーヴィング側が自信満々な態度を崩さないなのには、この特異な裁判の構図がある。
名誉毀損で訴えて、ホロコーストがあったかどうかが裁判の争点なのだという印象を世間に刷り込めればそれで良し、勝てればさらに良し。
忘れられた存在になりつつあった彼にとってみれば、リップシュタットが裁判に食いついた時点で半分勝利した様なものなのだ。
映画の前半おおよそ1時間が裁判までの準備期間、後半1時間弱が裁判本番。
資料を集め、実際にアウシュビッツの遺構を訪れ、膨大なアーヴィングの日記・著書の中から、彼が意図的に嘘をついている証拠を探し出す。
相手は誰が聞いても人種差別だという言動をしながら、「自分は差別主義者ではない」と嘯く様な人物だから、証拠は言い逃れの出来ない客観的かつ決定的なものでなければならない。

仮に名誉毀損を問う裁判で負けても、歴史的事実は変わらないが、それは根強く存在するホロコースト否定論者に力と場を与えることになり、ユダヤ人研究者としてホロコースト被害者に精神的に寄り添うリップシュタット教授には耐え難い屈辱。
実はこの揺れ動く彼女の感情こそが、裁判の帰趨するする先を決める鍵を握っているのだ。
自分が証言することはもとより、実際のアウシュビッツの生存者も証言台に立たせようとする彼女に、弁護団はアーヴィングに嘘八百で反対尋問され、生存者に恥をかかせるだけだと強硬に反対。
裁判の焦点はホロコーストの真実ではなく、アーヴィングの嘘なのだから、これは相手の計算に乗らない至極真っ当な方針で、リップシュタットは裁判の当事者でありながら、沈黙を維持する。
彼女は感情を抑え黙して裁判に勝利することによって、否定論者の復権を抑え、結果として自説の強化を成し遂げるのである。
久々に名前を聞いたミック・ジャクソン監督は、リップシュタットの著書をもとにしたデヴィッド・ヘアのシンプルな構成の脚本を手堅く纏めた。
あくまで事実関係を淡々と描き、エンターテイメントとして面白みには欠けるものの、映画の性格を考えると、本作のスタンスはこれで良いと思う。
イギリスの司法制度では実際に法廷に立つ法廷弁護士と、裏方としてチームをまとめる事務弁護士が分かれていて、二人のキャラクターの違いも生きていたし、リップシュタットが毎朝ジョギングコースで見る、裁判の行方を告げるタブロイド紙の看板など、細かな工夫も凝らされている。

本作は大前提としてリップシュタット教授が裁判を受けて立つべきだったのか、そもそもの問題として歴史を司法で裁けるのか、裁いて良いものなのかを含めて、極めて示唆に富む話である。
世界のどこでも脛に傷を持たない社会はなく、この種の諍いはどの国でも起こり得るだろう。
論点は違えど、韓国で現在進行形の「帝国の慰安婦」裁判との符号と相違など実に興味深い。
私はもちろん、この種の学問のイシューを司法に委ねるのは反対だ。

今回は、詭弁をふるうアーヴィングを見事敗訴させた話なので「ノックアウト」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット20ml、ペルノ10ml、ペパーミント・ホワイト1tspをステアし、グラスに注ぐ。
最後にマラスキーノ・チェリーを一つ沈めて完成。
1927年のボクシングのヘビー級防衛戦で、ジャック・デンプシーを倒したジーン・タニーの祝勝会で登場したと言われている。
ベルモットとペルノとペパーミントが作り出す香草のアンサンブルを、清涼なドライ・ジンが受け止める。
芳醇な香りに包まれる、幸せな一杯だ。

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