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「DEVILMAN crybaby」湯浅政明+永井豪の化学反応
2018年01月12日 (金) | 編集 |
人類よ、滅びよ!

昨年の「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」の勢いそのままに、異才・湯浅政明が永井豪の伝説的傑作漫画「デビルマン」と、がっぷり四つに組んだ。
人類の天敵、捕食するものとして、別の種族が突如として現れ、その争いの中で、人類の罪深き本質が見えてくるという「デビルマン」の世界観は、その後「寄生獣」や「エヴァンゲリオン」、「東京喰種トーキョーグール」に至る膨大なフォロワーを生んだが、映像化は意外と少ない。
近年にはOVAや「009」とのコラボ作もあったが、私の様な昭和世代には原作漫画とは別物になっていたTVアニメ版だろうし、もう少し若い世代には、歴史的失敗作となった那須博之監督の実写映画が記憶に新しいだろう。

今回はNetflixのオリジナル作品の枠組みなので、放送コードのくびきから解放され、やりたい放題。
アニメーション作品としては初めて、原作の最初から最終章のハルマゲドンに至るまでが描かれ、そのまま原作を再現すると残酷すぎるビジュアルも、湯浅作品らしい独特の映像表現が上手い塩梅で中和させている。
原作全てとは言っても、あの時代の少年漫画にありがちな、行き当たりばったりの展開は、キャラクターの役割を含めて整理されて、良い意味での強引さは“らしさ”として残しつつ、21世紀の作品としてモダナイズ。

70年代の学ラン不良少年たちが、ヒップホップ化してラッパーになってるのはご愛嬌としても、例えば"アモンに次ぐ戦士"のはずなのに、原作では早々に出てきて死んでしまうシレーヌを、中ボスとして全体のミッドポイントに再配置。
さらにジンメンに喰われて取り込まれるのは、唐突に登場する明の友だち・サッちゃんではなく明の母親になっている。
面白いのはこの改変の結果、ジンメンとの戦いのエピソードが、原作フォロワーの「寄生獣」の母の敵討ちと同じような意味付けになっていること。

他にも、原作ではこれまたなんの伏線も無しに現れるミーコが、設定を大幅に変えて明や美樹のチームメイトになっていたり(原作のミーコは別キャラで登場する)、殆ど描かれなかった牧村家の両親とデーモン化する美樹の弟のエピソードが追加されるなど、全体に人間関係が密接になっているので、後半のカタストロフィにおける数々の喪失の感情が強化されている。
しかし脚色による改変の目的は、基本的にこの一点に絞られ、最近のリブート作品にありがちな、やたら設定をこねくり回して複雑化する方向に行かなかったのは良かった。

そして、感情対比表現としての“愛”と“喪失”は、最終的にサタンの中にある明への感情として純化される。
原作同様に、恐怖に取り憑かれ、自滅する人間の愚かさを強調しつつ、最後には悪魔には無いはずの"愛”の感情に明確に落とし込み、破滅と救済が一気に収束されてゆくのである。
これをサタンを矮小化する改悪と捉えるファンも少なくなさそうだが、私は悲しきサタンと共に泣いた。
実に湯浅作品らしい解釈であり、熱く支持したい。

Netflix版「DEVILMAN crybaby」は単純な原作の映像化ではなく、永井豪と湯浅政明という二人の作家のコラボレーションから生まれた、新しいイメージの「デビルマン」だ。
ここでは1+1は単純な=2ではなく、例えば=Aであるような予測不能の化学変化を起こしている。
映画でもなく、TVでもない、ネット配信という可能性は、またしても非常にユニークかつハイクオリティな作品として結実した。
少なくとも「デビルマン」の映像化としては、過去の全作品中でベストであり、唯一無二の独特のアニメーション演出は、何度も繰り返して観たくなる快作である。

ところで、原作には無いエンドクレジット後のアレは、サタンを滅ぼした神によるリセットという理解で良いのだろうか。

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