FC2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
ブラックパンサー・・・・・評価額1750円
2018年03月03日 (土) | 編集 |
守るべきか、分かち合うべきか。

2016年に公開された「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でMCU初登場を飾った、アフリカ出身のスーパーヒーロー、ブラックパンサーの単独作品第一弾。
世界やら宇宙やらを救ってしまう「アベンジャーズ」系と違って、超科学王国ワカンダの王位継承を巡るお家騒動の話で、その意味では「マイティ・ソー」に近いのだが、過去のマーベル作品とは違った“正義に関する葛藤”を盛り込んでいる。
「フルートベール駅で」「クリード チャンプを継ぐ男」の俊英ライアン・クーグラーが脚本・監督を務め、「シビル・ウォー」に引き続き、タイトルロールに「42 世界を変えた男」のチャドウィック・ボーズマン。
彼の前に立ちはだかる宿敵キルモンガーを、クーグラーとの名コンビ、マイケル・B・ジョーダンが演じる。
いかにもアメコミらしい正統派のストーリーに、骨太のテーマを内包するポリティカル・スーパーヒーロー映画である。
※核心部分に触れています。

ソコヴィア協定の署名式で起こった爆破事件により、父ティ・チャカ王が亡くなり、ティ・チャラ王子(チャドウィック・ボーズマン)はアフリカ奥地の秘密郷、ワカンダの国王に即位。
国王とブラックパンサーという二つの顔を持つことになった彼の元に、大英博物館からワカンダの力を支えるヴィブラニウムが盗まれたとの一報が入る。
事件にユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)が関与していることを知ったティ・チャラは、取引が行われる韓国に飛び、CIAのエヴェレット・ロス(マーティン・フリーマン)の協力で一度はクロウを捉えることに成功するも、キルモンガーの異名を持つエリック・スティーヴンズ(マイケル・B・ジョーダン)に奪還されてしまう。
そして、負傷したロスの治療のためワカンダに帰還したティ・チャラの前に、再びキルモンガーが姿を表す。
彼は1992年に死んだ王弟ウンジョブの遺児ウンジャダカ王子を名乗り、ティ・チャラの王座に挑戦することを宣言するのだが・・・


公民権運動の嵐が吹き荒れる1966年のアメリカで、二つの”ブラックパンサー”が誕生した。
一つ目は本作の原作であり、スタン・リーとジャック・カービーによって創造された、メジャーなアメコミ史上初めてのアフリカ系スーパーヒーローだ。
もう一つは、横暴な白人警官の暴力から、黒人住人を守る為に結成された自警団から発展した過激な政治組織、ブラックパンサー党である。
マリオ・ヴァン・ピープルズ監督の映画「パンサー」でも知られるこの組織は、マルコムXやキング牧師ら公民権運動の指導者が相次いで暗殺されたこともあり、一定の支持を集め一部白人の左派組織とも連携して、権力相手の武装闘争を繰り広げた。
二つのブラックパンサーが同じ年に生まれたのは偶然で、コミックのブラックパンサーは暴力的な活動と関連付けられることを嫌い、一時ブラックレパードと改名したほど。
しかし、半世紀が経過した現在、本作の作り手たちはそこに歴史の必然を見出した様だ。

物語の起点が、1992年のカリフォルニア州オークランドに設定されているのには意味がある。
オークランドは、ヒューイ・P・ニュートンとボビー・シールによってブラックパンサー党が結成された発祥の地であり、1992年は黒人青年を殴打した白人警官に無罪評決が下った、いわゆる”ロドニー・キング裁判”を切っ掛けとして、あのロス暴動が勃発した年なのだ。
2009年に同じオークランドで起こった、白人警官による丸腰の黒人青年の射殺事件を題材とした「フルートベール駅で」により、センセーショナルな長編デビューを飾ったライアン・クーグラー監督もまた、オークランドの生まれ。
アフリカの架空の国を舞台とした本作のバックボーンには、アフロアメリカン闘争史が内包されているのである。
そう考えると、本作に韓国のシークエンスが含まれるのも意味深に思えてくる。
ロス暴動はロドニー・キング裁判のみを原因としたものではなく、伝統的な黒人たちの居住区に韓国からの新移民が流入し、人種間の緊張が高まっていた時に起こった、韓国人商店主による黒人少女の射殺事件も大きく影響しているからだ。

ティ・チャカとティ・チャラ、ウンジョブとキルモンガーことウンジャダガ、二組の親子が体現するのが正義と悪ではなく、同じワカンダの正義のテーゼとアンチテーゼを形作るのも面白い。
数あるMCUヒーローの中でも、”正義とは何か”を最も真面目に追求してきたのが、戦争のプロパガンダのために生まれたという原点を持つ、キャプテン・アメリカを主役としたシリーズだろう。
特に9.11後の違法な情報収集をモチーフとした「ウィンター・ソルジャー」と、強大な力は何に帰属させるべきなのかを問うた「シビル・ウォー」は、現実のアメリカ国家が掲げる正義に、正面から異議を投げかけたハードな政治映画でもあった。
その「シビル・ウォー」で初登場したブラックパンサーは、何しろヒーローと一国を率いる国王の二足の草鞋を履いているのだから、政治的にならない訳がない。
この映画では、登場人物の葛藤が長年に渡るアメリカ内部の分断と外交政策の対立のメタファーとなっていて、そのことが小さな王国の従兄弟同士のお家騒動というちっちゃな話に、壮大なスケール感を与えることに繋がっている。

映画の始まりの時点で、ティ・チャラの持つ世界観はかなり狭い。
ワカンダ王国は、世界を変えることも出来る、ヴィブラニウムという資源と超科学文明をもちながら、他国との関わりは避け全て独占し、その代わり外の世界へ干渉はしない。
先代のティ・チャカから受け継いだ伝統的な外交方針であり、これが王国の基本的なテーゼとなっているようだ。
スパイを送り込んで情報収集はしているものの、自国の脅威とならない限り、アフリカの他の国が奴隷貿易で搾取されても、戦争で多くの人が死んでも我関せず。
これはアメリカのモンロー主義に代表される典型的な孤立主義であり、難民問題でヨーロッパが揺れ、アメリカでは市民社会の分断が深まる中、各国が自国中心の世界観に回帰する現実をそのまま反映している。
一方、ティ・チャカの元カノにして凄腕のスパイ、ブラックウィドーのライバルになりそうなナキアは、世界の現実をその目で見ている。
彼女は、富と力を独占するのではなく、分かち合い、時には支援し、場合によっては介入も辞さないという国際主義の立場をとり、キルモンガーの体現するアンチテーゼとの葛藤の末に、これが最終的に本作のジンテーゼとなる。
序盤、ボコ・ハラムに拉致された女性たちの救出と解放のエピソードは、物語の行く先を示唆しているのだ。
ティ・チャラ自身も、新人国王としてどの方向に国を導くのか揺れていて、ロスが負傷すると秘密が露見するリスクを冒してワカンダで治療するために入国させる。
そして父が王国の秘密を守るために実の弟を殺し、遺児を置き去りにするという誤ちを犯したことを知り、孤立主義を維持することに徐々に疑問を募らせ、ナキアの考えに揺り動かされてゆくのである。

ティ・チャラの宿敵となる、キルモンガーのキャラクターもユニークだ。
厳密に言えば、彼はいわゆるヴィランではない。
半分ワカンダ人、半分アメリカ人の彼は、王国への帰還を果たすと、王族としての権利を行使し、正々堂々と勝負して、一度はティ・チャラを倒すのだ。
だからこそ、周りもキルモンガーをティ・チャラとは異なる信念を持つ新国王、もう一人のブラックパンサーと認めざるをえない。
このキャラクターから連想するのは、やはりドナルド・トランプだろう。
彼が下馬評を覆し、第45代アメリカ大統領に当選したことは多くの反発を生んだが、正当な手続きを経て大統領になったことは否定できない。
プアホワイトを救うとして選挙キャンペーンを繰り広げたことは、キルモンガーが抑圧された世界の人々を解放するという大義を掲げ、ワカンダの内部にあった不満をすくい上げ、味方につけたことに通じる。
一見理想主義的な大義を掲げつつも、実際には支配される前に支配する、世界に武器を輸出して戦わせ、自国は繁栄を謳歌するというキルモンガーの思想も、孤立主義の先にある覇権主義というアメリカの外交政策のカリカチュアだ。
だが、キルモンガーの父ウンジョブは、裏切り者としてティ・チャカの手で殺されてしまうが、父の死によって捻くれてしまった息子よりも、純粋な視点で抑圧への抵抗を目指していたことが示唆されている。
だから彼が幼いキルモンガーに、まだ見ぬ美しい故郷ワカンダのことを語っている冒頭部分は、クライマックスの夕景に繋がり、観終わって思い出すととても切ないのだ。

本作は、アフリカの架空の国を舞台とした荒唐無稽なアメコミ映画だが、ここに描かれる物語は、アメリカの今、いや世界の今と完全に地続きで、それが本国での爆発的大ヒットの重要な要因の一つだろう。
王位に復帰したティ・チャラが最後の演説で語る「危機に陥った時、賢者は橋をかけ、愚者は壁を作る」は、国境の壁を公約にしたトランプへの痛烈な批判だ。
超正統派のスーパーヒーロー映画として十分に楽しませつつ、しっかりと現在性、社会性を組み込んでくるクーグラーの作劇センスはさすが。
ちなみに、個人的に本作で一番の萌えポイントだったのが、チーム・ブラックパンサーの”Q”こと、ティ・チャラの妹ちゃんのシュリ王女のキャタクター。
科学の天才にして自らも発明品を装着して戦っちゃう16歳という、トニー・スタークが激しく嫉妬しそうな彼女には、国王とよりを戻したナキア共々、今後のMCUのシリーズでより重要な役割を期待したい。
とりあえず、彼女とバッキー・バーンズが鍵となりそうな「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」が楽しみだ。
子供たちのセリフからすると、今度のバーンズはもしかすると”あのキャラクター”になるのかな?

今回はブラックパンサーならぬ「ブラック・ベルベット」をチョイス。
ギネスビール150mlとシャンパン150mlを十分に冷やし、シャンパングラスに注ぎ、サッと混ぜる。
二種類の発泡性醸造酒の作り出すきめ細かな泡を、肌ざわりの良いベルベットになぞらえているというわけ。
使う黒ビールとシャンパン、あるいはスパークリングワインの種類によってだいぶ味わいが異なるが、共通するのは非常に舌触りがよく、黒ビールが苦手な人にとっても飲みやすいこと。
キャラメル色の美しいカクテルだ。

ランキングバナー記事が気に入ったらクリックしてね





スポンサーサイト