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ペンダゴン・ペーパーズ 最高機密文書・・・・・評価額1750円
2018年04月01日 (日) | 編集 |
報道は、誰の為にあるのか。

さすがスピルバーグ、地味な素材ながら圧巻の面白さ。
アメリカ政府がひた隠すベトナム戦争の真実を、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが暴露した史実の映画化。
メリル・ストリープとトム・ハンクスという、現代ハリウッドを代表するオスカー俳優が、それぞれワシントン・ポストの女性社主と敏腕編集主幹を演じる。
二人は、経営と現場というそれぞれの立場で苦悩しながら、失政の事実を捻じ曲げ、報道の自由を統制しようとする政府に対し、ライバルのニューヨーク・タイムズと共闘する。
真実を明らかにしようとする人々に、幾つもの困難が次々と襲いかかり、結果を知っていても最後まで目が話せないサスペンスフルな仕上がり。
公文書管理の在り方が、深刻なイッシューになっている今の日本にとって、ものすごくタイムリーな作品でもある。
※核心部分に触れています。

ベトナム戦争が泥沼化し、反戦運動が盛り上がりを見せる1971年。
株式公開を控えたワシント・ポストの社主キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、ワシントンの名士たちとの会合に余念がない。
一方、編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、ライバル紙ニューヨーク・タイムズのエース、ニール・シーハン記者が3ヶ月も記事を書いていないことが気になっていた。
彼は何か大きなスクープを掴み、それに専念しているに違いない。
ベンの予想は的中し、タイムズは政府が長年にわたって隠蔽していたベトナム戦争に関する極秘文書、“ペンダゴン・ペーパーズ”を暴露し、全米に衝撃を与えた。
政府も、タイムズの文書の追加掲載差し止めの仮処分を求めて、裁判所に提訴。
仮処分は認められ、もし最高裁がこれを最終的に追認すれば、文書の残りは永久に掲載できなくなる。
ようやく情報源にたどり着いたポストも、4000ページに及ぶ文書を入手し、ベンは裁判所の判断を待たずに掲載しようとするが、経営陣や法務部は強硬に反対。
株価に悪影響を与えるどころか、場合によっては会社の存続すら危うくなる事態に、キャサリンはトップとして究極の決断をせまられる・・・


もしもあなたが、国家が国民を欺いた証拠となる文書を入手したら、どうするだろうか。
21世紀の現在なら、インターネットという強力な武器があり、やりようによっては個人でも国家と闘えるかもしれない。
だが、本作の舞台となる1971年には、それを扱えるだけの影響力を持つのは、新聞・TVなどの大手マスメディアだけだった。
劇中で何度も言及される合衆国憲法修正第1条は、1791年に制定された権利章典と呼ばれる国民の人権を保障する10の条文の中でも、信教の自由、言論の自由、出版・報道の自由、集会の自由、請願の自由を保障している。
自由主義国家としての合衆国の根幹に関わる、最も重要な条文だ。
この根幹が揺り動かされたのが、1971年に起こった「ペンダゴン・ペーパーズ」のスクープと、それに対する政府の対応なのである。
この文書には、1945年の第二次世界大戦終結から1968年までの23年間に及ぶ、アメリカによるインドシナ半島への介入の歴史の詳細と共に、ベトナム戦争が勝利する見通しのない戦争だったことが書かれていた。
国民に嘘をつき、勝てない戦争に若者を際限なく送り込むことが許されるのか?
当時のニクソン政権は、暴露は情報漏洩であり、アメリカ国家の安全保障に深刻な影響を与えるとして、掲載の差し止めを求めて提訴。
政府の都合で言論・報道の自由を制限することの是非が争われ、後の同様の判例に大きな影響を与えた。

映画は、経営トップの社主キャサリン・グラハムと、現場を率いるベン・ブラッドリーの二人を軸として、双方の物語をクロスカッティングの手法で並行して描く。
片やフィックス基調の落ちついた画作り、片や忙しなくカメラが動き回るコントラスト。
会社は新しい時代へ対応するため、一族経営体制から株式公開して資金調達を図ろうとしており、キャサリンは首都ワシントンの政財界の名士たちと、会食やパーティーを重ねている。
安定を重んずる投資家たちにとって、投資先の会社が政府と敵対することは決して好ましいことではなく、ましてや会社存続の危機に陥るかもしれない極秘文書暴露など、経営的には最悪のタイミング。
特に、当時は珍しい女性社主だったキャサリンは、別のプレッシャーにも晒されている。
彼女の父ユージーン・メイヤーは、アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会議長を務めたほどの人物で、破産したワシントン・ポストを買収し、米国有数の高級紙として育て上げた。
そしてキャサリンの夫のフィルが社主を継ぐのだが、やがて重圧に耐えかねて自殺してしまい、専業主婦だったキャサリンに予期せぬ社主の椅子が回ってくる。
ワシントン・ポストという会社に対する愛は深いものの、突然放り込まれた男社会の中で、自分は心からの信頼を勝ち得ていないのではないか、お飾りと思われているのではないかという気持ちが、彼女の中でずっと解消していないのである。

一方、ベン・ブラッドリーに率いられた現場は、経営の事情などお構いなしで、ニューヨーク・タイムズへの掲載が仮処分で差し止められている間に、ベンダゴン・ペーパーズを追い求める。
もともとタイムズに渡った文章は、軍関係のシンクタンクとして有名な、ランド研究所に保管されていたもの。
密かに人脈を辿り、遂に文書を持ち出した元職員ダニエル・エルズバーグに行き当たる。
ところが、ポストに届いたのは、未整理の文書実に4000枚。
ページの順番すらバラバラな文書を急いで読み解き、タイムズの仮処分に裁判所が判断を示す前に、掲載しなければならない。
もし裁判所が政府の意向に沿って差し止めを認めれば、ポストとしても掲載することが出来なくなってしまうからだ。
可能な限り急ぎたい現場と、政府と衝突するリスクを減らしたい、即ち裁判所の判断を待ちたい、経営・法務陣。
どちらも正論のせめぎ合いは見応えがあり、同時に最高責任者としいて最終判断を委ねられるキャサリンの苦悩もまた深まってゆく。

面白いのは、現場が権力の不正を追求する一方、キャサリンはケネディ/ジョンソン政権の国防長官であり、ペンダゴン・ペーパーズの責任者であった、ロバート・マクナマラの親友だという人間関係。
キャサリンが現場にGOサインを出すことは、そのまま長年の友人の不名誉を明らかにすることに等しい。
一方、ベンはベンでケネディ夫妻とごく親しい間柄だったりするし、ぶっちゃけ皆狭いワシントン村の住人でズブズブの仲なのである。
だからこそ、二人は自戒の念を込めてそれぞれの立場で葛藤するし、日本的に忖度が発生してもおかしくない状況なのだが、この映画の登場人物は原理原則のところでは決してブレない。
報道が奉仕すべきは国民であって、権力者ではないのだ。
言論の自由と国民の知る権利は、政府の面子を保つよりもはるかに大切で、そのために経営者は言論の奉仕者たるメディアの現場を守らねばならない。
首都ワシントンの華やかな社交界に生きる経営トップも、着々とスクープを準備する現場指揮官も、アメリカの民主主義を守るという目的は同じ。
政府の訴えを退ける最高裁判断を勝ち取ったキャサリンは、支持者やマスコミの集まる裁判所前の階段を堂々と降りてくる。
自由の国のリーダーシップのあるべき姿を示した彼女を見つめる、多くの若い女性たちの視線が印象的だ。
これはジェンダーイコーリティーを隠し味に、言論・報道の自由を守る闘争を正面から描いた骨太のポリティカルサスペンス。
「フェイクニュースだ!」を口癖に、メディアへの敵対姿勢を露わにしたトランプ大統領の登場後、企画開始から公開までわずか一年という、ハリウッド映画としては異例のスピードでこの映画を作り上げた人々もまた、登場人物たちと同じ危機感と志を抱いているのだろう。

しかし、文書の責任者であったマクナマラに対する描写が、どちらかと言えば同情的なのに対し、実際に報道規制に走ったニクソン大統領は、とことん卑劣で救いようの無い憎まれ役になっているのが面白い。
映画が終わって劇場の灯りがつくと、そのまま「大統領の陰謀」を観たくなる終盤の作りも含めて、トランプ政権の行く末を暗示していると捉えるのはうがち過ぎだろうか。
ちなみに、トランプ批判の急先鋒でもあるワシントン・ポストの現オーナーは、何かにつけてトランプ政権と対立しているAmazonのCEOジェフ・べゾスだったりするから、やはりワシントン村の人間関係は面白い。
トランプ政権の未来を決めるのは、ネットの世界の支配権をめぐる新たな闘争なのかもしれない。

今回は辛口の映画ゆえに、辛口のカクテル「マティーニ」をチョイス。
ドライ・ジン48ml、ドライ・ベルモット12mlをステアしてグラスに注ぎ、オリーブを一つ沈めて完成。
「カクテルの帝王」と呼ばれるほど、メジャーな一杯。
「007」シリーズや「7年目の浮気」などの映画にも登場するほか、酒豪ウィンストン・チャーチルの愛飲酒の一つとしても知られる。
もともとはスイート・ベルモットが使われていたので、それほど辛口ではなかったようだが、次第にドライ・ベルモットに移行し、辛口のカクテルの代表格となった。
キリッとした輪郭の味わいで、強いが悪酔いしにくいのも、スパイや政治家に愛される理由?

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