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ショートレビュー「パシフィック・リム:アップライジング・・・・・評価額1400円」
2018年04月14日 (土) | 編集 |
おかえり「パシフィック・リム」、さよならデル・トロ。

カイジュウ・プロレス第二章は、太平洋の海底での決戦で、次元の裂け目が閉じてから10年後の物語。
今回の主人公は、前作で壮絶な最期を遂げたペントコスト司令官の息子、ジョン・ボイエガ演じるジェイクだ。
父の背中を追って、イェーガーのパイロットになったものの、落ちこぼれて軍を離れていたジェイクは、ひょんなことから復帰を果たし、教官としてパイロット候補生の指導に当たることに。
復興途中の人類は、再びのカイジュウの襲来に備え、イェーガーも進化させている。
引き続きパイロットを養成しているだけでなく、中国企業が開発した遠隔操作のドローンタイプも配備間近。
この辺り、現実に米軍の内部で航空機をどこまでドローン化するかの葛藤があったり、中国が世界一のドローン大国となったことを反映していて面白い。

レジェンダリー・ピクチャーズ自体が中国資本になったことで、前作以上に中華な要素が増えたが、それでもなお作り手の日本型カイジュウ、ロボットへの愛は十分に伝わってくる。
もとより、米国で興行的にパッとしなかった作品の続編が作れたのは、ひとえに中国での起死回生の大ヒットのおかげなのだから、この作品に関しては中国様々。
イェーガーメーカーのツンデレ社長を演じたジン・ティエンは相変わらず美しいが、せっかくマックス・チャンをキャスティングしているのに、見せ場なく終わっちゃったのは、ちょっと残念だったな。

私は前作のブログレビューで、「バトルシークエンスが、全て暗いところばっかりなのがもったいない」と書いた。
おそらく同じ意見が多かったのだろう、今回は「分かったよ、明るいところで見せてやるよ!」とばかりにオール・デイシーン。
冒頭の巨大イェーガーと、ボスボロットみたいなチビっ子イェーガーとの追いかけっこから始まって、日本での決戦までずーっとどピーカン。
夜のシーンでは分かりにくかった、イェーガーのメカのディテールまでよく見える。
特に、東京での市街戦から、全てのカイジュウの聖地“マウント・フジ”を目指す、クライマックスのラスト30分は、正に見たかったものを全て見せてくれる大サービスだ。
異なる個性を持つ四体のイェーガーと、予想だにしない驚きのスゴ技を持つ三大カイジュウとの戦いは、大いに盛り上がる。

しかし・・・本作は、そこへたどり着くまでが、あんまり面白くないのである。
科学考証がむちゃくちゃだったり、展開が色々強引なのは前回もそうだったからそこはいい。
問題はやはり、大味過ぎる物語の構成で、ドラマに目の置き所がないことだ。
前作は、対カイジュウ戦で兄を死なせてしまったローリーと、幼い頃に家族をカイジュウに殺されたマコのシンプルな成長物語だったが、今回はペントコストの落ちこぼれ息子と、やはりカイジュウによって家族を失った少女アマーラが同様のポジションにある。
ところが、パイロット候補生を集めて中途半端に群像劇を目指したため、各キャラクターが埋没し、ドラマの軸が失われてしまった。
そもそも、ジェイクはなんで落ちこぼれてるのかもよく分からないし、候補生たちの訓練シーンもほとんど描かれないのでアマーラ以外は全く印象に残らず、クライマックスでは誰が誰で、どのイェーガーに乗っているのかも不明瞭。
当然、誰にも感情移入するに至らない。

また、二番煎じを避けた敵の正体は、意外性があってよかったのだが、そのせいで肝心のカイジュウがなかなか出てこないのはいかがなものか。
ジプシーvs偽ジプシーという、いかにも日本の特撮ものにありそうなシチュエーションが二度あり、アクションとしては見応えがあるが、見たいのはやはりvsカイジュウなのである。
せめてドローン・イェーガーがカイジュウ細胞に侵食された、エヴァっぽい奴らとイェーガーのバトルがあればよかったのだが、つなぎのエピソードであんまり見せ場にはならず。

外連味たっぷりだったデル・トロほど、スティーヴン・S・デナイトの演出にクセが無いのも逆に欠点が目立つ理由かも知れない。
デル・トロの迸るオタク心は、幾つもの震えるほどカッコイイ画として結実していたが、今回はアクションの流れは良くできているものの、止め画として圧倒的に印象的なショットが無い。
イェーガーやカイジュウの演技に、前作の様な“見得を切る”演出が見られないことも、インパクトの弱さにつながっている。
前作はデル・トロの作家映画だったことで、様々な欠点が帳消しにされていたが、今回のデナイトの仕事は多分に職人的で、その分アラが目立ってしまった。
繰り返すが、クライマックスはそこだけで観る価値十分な位燃えるし、本国で酷評されたほど悪くはない。
だけど、もう少し全体をブラッシュアップ出来ていたら・・・と思うのも事実だ。

今回は、富士山の地ビール「富士桜高原麦酒 ヴァイツェン」をチョイス。
オクトーバーフェストなどでもお馴染み、河口湖に醸造所を持つ地ビールだ。
ここの醸造士たちはドイツで醸造技術を学んでいて、どれも本場仕込みの本格的な味わいが楽しめる。
南ドイツで生まれたヴァイツェンスタイルで作られるこちらは、バナナを思わせる香りでとてもフルーティ。
苦味が少なく、ビールが苦手な人でも、飲みやすいのが特徴だ。

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ダンガル きっと、つよくなる・・・・・評価額1700円
2018年04月14日 (土) | 編集 |
すべての壁を、超えてゆけ。

インド版星一徹みたいな実在の熱血レスリングおやじ、マハヴィル・シン・フォーガットと彼の教えを受けた二人の娘、ギータとバビータの半生を描く物語。
保守的なインド社会にあって、秘められた娘の才能を見抜き、人々の嘲笑も意に介さずに、ひたすら二人の才能を開花させるために突き進む。
「きっと、うまくいく」「PK ピーケー」などのスーパースター、アーミル・カーンが、プロデューサーも兼務してマハヴィルを演じ、さすがの存在感。
監督、脚本を務めたのはニテーシュ・ティワーリー。
ドンと力強く背中を押される様な、スポ根ものの王道プロットに、ジェンダーイコーリティーのイッシューを組み込み、パワフルで深みのある娯楽快作となった。
※核心部分に触れています。

レスリングをこよなく愛する男、マハヴィル(アーミル・カーン)。
彼は国際大会の金メダルを夢見ながら、経済的な理由で選手生活に終止符を打つ。
せめて自分の息子に夢を託そうと思うが、生まれてきた子供は四人連続で女の子ばかり。
すっかり諦めていた頃、長女のギータ(ザイラー・ワシーム/ファーティマー・サナー)と次女のバビータ(スハーニー・バトナーガル/サニヤー・マルホートラ)が、喧嘩で男の子をボコボコにやっつける。
二人に、生まれついてのレスラーとしての才能を見出したマハヴィルは、早速英才教育を開始。
最初は嫌がっていた二人も、次第に父の想いを受け入れて、レスリングの実力はうなぎのぼり。
地方のアマチュア大会で男相手に連勝を重ね、ついにギータがナショナル・チーム入りすることになる。
マハヴィルにとって長年の夢である、“国際大会の金メダル”はもう不可能ではない。
一方でそれは、長年手塩にかけて育てたギータが、自分の手を離れることを意味していた・・・


タイトルになっている「Dangal」とはなんぞや?
インド映画ならではの、やたらとリズミカルなエンディングテーマ曲が頭に残り、「ダンガル♪ダンガル♪」と思わず口ずさみたくなるが、調べてみるとヒンズー語で「土の上で行う伝統的なレスリング」のことらしい。
映画の前半で、マハヴィルが畑を切り開いて作る土俵の様な練習場、レスリングマットのない街中の広場で行われるアマチュアの大会、あれが本来のダンガルなのだな。
アーミル・カーン演じる頑固一徹のマハヴィルは、どんどんと我らが星一徹に見えてくる。
そういえば、インドでは野球をクリケットに置き換えた「巨人の星」リメイク版、「スーラジ ザ・ライジングスター」が放送されたりしているから、日本のスポ根ものとの親和性は高いのかもしれない。

熱血のマハヴィルに、図らずもレスリングの才能を発見されてしまったギータとバビータ。
男の子の様な短パンをはかされ、練習の邪魔になると長い髪を切られ、問答無用の過酷なトレーニングを課される姉妹は、当然反発する。
インドは保守的な社会で、特に田舎には様々な不文律がある。
女性が肌を見せるのは破廉恥だと思われるし、男と組み合ってレスリングするなど、当然もってのほか。
街の人たちは、レスリング狂人のおやじが、かわいそうな娘たちを使って叶うはずのない夢を追いかけていると笑いものにするが、マハヴィルは決して止まらない。
レスラーにはタンパク質が必要だが、インドの多くの家庭は厳格なベジタリアンで、そもそも肉は高い。
マハヴィルは妻の反対を押し切って鶏を調理すると、娘たちにたっぷり与える。
親が果たせなかった夢を子に押し付ける、というのはよくある話で、娘たちも最初はそう考えていて、なんとか父親を思いとどまらせようとする。
しかし、14歳にして結婚させられる友達に、「インドの女は子を産む道具。あなたたちは違う」と諭されて、ふと振り返る。
姉妹は、レスリングをすることで、この国の女性を縛る、多くの理不尽な因習から解放されていることに気づくのだ。
「女だからしてはいけない、女だから出来っこない」マハヴィルはそんなことを一言も言わない。
男尊女卑が強く残る社会にあって、少々偏屈でも父の愛が特別だということを知ってから、インド初の国際大会金メダルという夢が三人の間で共通化。

映画は、前半が少女編、後半が大人編の構成で、前半はマハヴィルとギータ、バビータの三人を比較的均等に描いてゆくのだが、中盤以降は長女のギータが明確な主人公となってゆく。
着々と実力をつけ、ついに全国チャンピオンとなったギータは、インド代表として国立スポーツ・アカデミーの寮に住み込み、ナショナル・チームのコーチから教えを受けることになる。
レスリング一色で厳格だった実家の生活から解放され、都会で練習の合間にオシャレや娯楽を楽しむことが出来る様になった一方、コーチからは「父親の教えはすべて忘れろ」と指導される。
いつかはやってくる親離れ子離れの葛藤が、試合に勝ちたいというギータのもう一つの葛藤と絡み、実に上手い具合にクライマックスへと収束する。
日本版予告では、まるでロンドン五輪がクライマックスになるかの様な表現をしてるが、本作に五輪はほぼ無関係。
確かにギータは、ロンドン五輪にインド初の女子レスリング代表として参加しているのだけど、本作のクライマックスはその2年前、2010年にデリーで開催されたコモンウェルス・ゲームズだ。
日本ではほとんど馴染みがないが、コモンウェルス・ゲームズは嘗ての大英帝国植民地諸国からなる英連邦加盟国のスポーツ大会。
域内人口は23億人に及び、52カ国が参加して、オリンピックと同じく4年に一度開催される一大イベントだ。
日本やロシアといった女子レスリングの最強豪国は出ていないので、比較的金メダルに手が届きやすい・・・といっても、後発国のインドにとっては、国際大会のメダル自体が遠い。

マハヴィルから長年受けてきたコーチングと、ナショナル・チームで受けた新しいコーチングとの方向性の違いに戸惑い、国際試合で勝てなくなったギータは、コモンウェルス・ゲームズを前に、父の教えに回帰することを決断する。
個人スポーツは、選手の実力だけじゃなくコーチとの相性も大切なんだな。
一度はナショナル・チームのコーチに感化されるギータと、姉の後を追って代表入りするも、あくまでも父の教えを大切にするバビータとのコントラストも効果的なアクセントになっている。
大会に挑むギータに、マハヴィルは国際大会の金メダルに拘る理由を明かす。
「銀メダルならお前はいつか忘れられる。しかし金メダルなら、お前はこれからの子供たちの目標になって、たくさんの女の子たちを勝利に導くことになるんだ」と。
この父の言葉を胸に、すべてをかけたコモンウェルス・ゲームズを含めて、レスリング・シークエンスはボリュームたっぷりだ。
役者がきちんと体を作っていて、ビジュアル的にも演出的にも十分なリアリティがあり、まるで本物の試合を見ているような緊張感。
多分フィクションなんだろうけど、マハヴィルとナショナル・チームのコーチとの間のひと悶着もギータの成長を後押しし、父娘それぞれがたどり着いた到達点に感極まり、思わず涙。

ギータ役を少女と大人でリレーしたザイラー・ワシームとファーティマー・サナー、バビータを演じたスハーニー・バトナーガルとサニヤー・マルホートラの四人は、8ヶ月かけてレスリングのトレーニングを積んだそうで、見事な説得力で素晴らしい。
だが彼女ら以上に、マハヴィル役のアーミル・カーンのカメレオンっぷりが凄いのである。
今回は一歩引いて、主役ではなく娘たちを引き立てる役なのだけど、冒頭の筋肉ムキムキ青年から後年のでっぷり太ったメタボおやじまで見事な演じ分け。
なんでも70キロだった体重を97キロまで増やし、中年パートを撮影した後に、筋肉をつけながら再び70キロまで落とし、あの冒頭シーンを撮ったのだとか。
あまりの変わりっぷりに、特殊メイクかと思ったくらい。
まあ40代で無理なく大学生役やってた人だから、驚くことではないかもしれないが。
役柄的には主役ではないと言っても、終始映画を支配するのはやはり圧倒的なオーラを持つこの人なのだ。

実話ベースを脚色した正攻法の物語に、インド映画特有の外連味を適度に抑制した演出、そして物語に説得力を与える俳優たち。
自分の果たせなかった夢を子供に叶えて欲しいという、パーソナルな親の我欲は、いつしかインド社会の全ての娘たちの夢となり、ギータとバビータもまた幾多の葛藤と苦難の先に、自らの生きる道をつかみ取る。
140分の長尺もあっという間、まさに娯楽映画の金メダル、誰が見ても楽しめる普遍的な作品だが、特に世界中の女の子たちに観てほしい!

ところでこれ、日本レスリング協会が後援してるんだが、女子レスリングの話だし、ナショナル・チームのコーチと、選手指導を続ける元のコーチ(父親)との確執が大きな要素で、練習センターの出禁や嫌がらせのエピソードがあったりするので、どうしても現実のパワハラ騒動を思い出しちゃう。
辞任した前強化本部長も本作の試写を観て、選手たちに訓示を垂れたというから、シニカルなブラックジョーク以外の何ものでもない。
まあ後援を決めた時には、「敵は女を下に見る全ての人たち」ってマハヴィルの台詞がブーメランになって戻って来るとは、1ミリも思ってなかったのだろうけど、別の意味でタイムリーになっちゃったな。
相撲協会の時代錯誤というか、思考停止な不見識もひどいし、日本もまだまだ問題だらけだ。

今回はインドのビール、マハヴィルをイメージして、その名も「ゴッドファーザー ラガー」をチョイス。
名前はものすごく強そうだが、スタンダードな下面発酵のピルスナー。
熟成期間が通常のラガーの倍以上あり、わりと香りが強くしっかりしたコクがあるのが特徴。
暑い国のビールらしく、基本的には清涼で飲みやすいので、日本人好みだと思う。

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