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ショートレビュー「君の名前で僕を呼んで・・・・・評価額1700円」
2018年05月07日 (月) | 編集 |
運命が、君を誘う。

一生忘れられない、青春のイニシエーションとしてのファースト・ラブストーリー。
ネットもスマホも無い、1983年の北イタリア。
夏の間この地の別荘で過ごす、17歳の少年エリオ・パールマンは、大学教授の父が招いたアメリカ人大学院生、オリヴァーと出会い、恋に落ちる。
原作はアンドレ・アシマンの同名小説。
「胸騒ぎのシチリア」などで知られるイタリアのルカ・グァダニーノが監督を務め、2009年の「最終目的地」以来、久びさに表舞台に登場した巨匠ジェームズ・アイヴォリーが脚色を担当し、本年度アカデミー脚色賞を受賞している。

エリオはアメリカの大学でギリシャ・ローマ考古学を教える父と、マルチリンガルの母の元に育ち、自らも複数の言語を流暢に話す。
ピアノを弾きこなし、読書と音楽の編曲が趣味という、年齢の割に知性豊かで成熟した少年だ。
父は毎年、教え子の中から一人をアシスタントとして別荘に招待していて、今年やって来たのがハンサムで逞しい肉体と優秀な頭脳を持つオリヴァー。

物語は淡々と進み、何か決定的にドラマチックなことが起こるわけではない。
出会ってすぐの頃は、あまりにも完全無欠なエリート然としたオリヴァーを、むしろ疎ましく思っていたエリオは、彼との時間を長く過ごすうちになんとなく惹かれあう。
そして、だんだんと距離を縮めた二人は、ある時点ではっきりとロマンスが始まってることを自覚するのである。
なぜ?という野暮な説明は要らない。
恋とはそういうものだし、これはナチュラルな感情を描く直感的な映画なのだ。
しかもこれは、エリオにとって本当の意味での初めてのロマンス。
エリオもオリヴァーも、基本的にはバイセクシャル。
オリヴァーへの想いと、初体験の相手となる幼馴染の女の子との間で揺れ動いたり、思春期の葛藤と未知の経験への好奇心と動揺がエリオを突き動かす。

陽光降り注ぐ北イタリアの別荘という、美しく非日常性のあるロケーションがいい。
石畳とレンガの町、薄日が差し込む古い屋敷の屋根裏、二人だけが知る秘密の川岸、まるでヨーロッパの古典映画のような空気感が、少年の恋の冒険をムーディーに演出する。
マーケットの要求でもあったようだが、グァダニーノは、男性同士のセックスシーンを直接的に描写することは極力避け、その分二人の恋のときめきと痛みを繊細に描き出す。
それはまるで、遠い昔の霞みがかった記憶の中の、初恋のアルバムをめくるような気恥ずかしさを感じさせ、観客のノスタルジーを刺激する。
初めて結ばれた時、オリヴァーはエリオに「君の名前で僕を呼んで」と言う。
恋の溶鉱炉の中で肉体と心が溶け合い、エリオはオリヴァーであり、オリヴァーはエリオの一部になるが、夏の終わりと共にそんな奇跡の時は過去へと過ぎ去り、エリオは自らの一部であったオリヴァーを失う。
まだ若い二人は、もしかしたら再会するのかもしれないし、また愛し合うのかもしれない。
しかし、人生を変える1983年の鮮烈な夏の日々は、永遠に戻らないのである。

主人公エリオの大胆かつナイーブな内面を、ティモシー・シャラメが丁寧に演じて圧巻の素晴らしさ。
劇中にエリオが果物を使ってマスターベーションするシーンがあるが、彼は今まさに熟さんとしている美しい果実だ。
少年から大人の男へと変貌し始める17歳という季節を、時にゾクッとするほど艶っぽく表現した。
そして、彼の気持ちを受け止めるオリヴァーを演じるアーミー・ハマーは、実際に米国エスタブリッシュメントの生まれ。
エリートキャラクターが出来過ぎていて、主役よりむしろ二番手での好演が多い人だが、今回は従来のイメージの“裏側”を上手く使って新境地を開拓したと思う。

基本的に本作は、思春期のエリオの静かに燃え上がる恋を描いたファースト・ラブストーリーだが、息子の成長を陰ながら見守る両親、特に父のパールマン教授との関係もユニークだ。
オリヴァーとの旅から戻ったエリオと、彼の一夏の経験の尊さを語るシーンは本編の白眉と言える。
マイケル・スタールバーグは、80年代の時点で同性愛を特別視せず、性別を問わない愛の本質を尊重するという、なかなかいないタイプの父親像を、説得力たっぷりに表現していた。
深みのある多面性を持つ、青春映画の秀作だ。

今回は甘酸っぱい初恋の味、イタリアを代表するレモンリキュール「リモンチェッロ」をチョイス。
北部ではなく、レモンの産地として知られるカンパーニア州を中心に広まった。
もともとは各家庭で作られていたもので、レモンの果皮を蒸留酒に漬け込み、砂糖と水を加えて一ヶ月程度置く。
腸の運動を促す作用があるので、主に食後酒として飲まれてきたもの。
キンキンに冷やして、キュッとストレートで飲むのがおススメ。

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