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ショートレビュー「ゲティ家の身代金・・・・・評価額1650円」
2018年06月15日 (金) | 編集 |
母が戦う相手は、巨大な“帝国”だった。

リドリー・スコット久々の非SF作品は、作家の特質にぴったり合ってなかなかの手応え。

1973年に、アメリカの石油財閥、ゲティ家の孫である17歳のジョン・ポール・ゲティ三世がイタリアで誘拐され、1700万ドルという巨額の身代金を要求された実際の事件の映画化。
もっとも、誘拐事件の身代金としては巨額だとしても、当時世界一の大富豪と言われたゲティ家からすれば大した額ではない。
さっさと支払って、解放されるはずだった。
ところが、ジョンの祖父で当主のジャン・ポール・ゲティは支払いを拒否。
「私には孫が14人いる。もし身代金を払えば、他の孫たちも誘拐されるかもしれない」という理由だったが、実はこの男もの凄いケチなのである。
見返りのない支出である税金と身代金は、彼の価値観ではどちらも払うべきでない無駄金という訳だ。

いやー、もちろん人にもよるのだろうけど、金持ちのメンタルってメチャクチャ面倒くさい。
トランプを相手にする世界の政治家が、勝手が違って苦戦する理由もこの映画を観るとよく分かる。
徹底的な利己主義をテーゼとする彼らにとって、この世はすべて損得勘定で成り立っていて、原則的には利他を前提とする政治とは、最初から水と油なのだ。
ジョンは確かにゲティ家の孫だが、ミッシェル・ウィリアムズ演じる母親のアビゲイルは、夫のジョン・ポール・ゲティ二世と、財産分与を求めない代わりに息子の親権を持つ条件で既に離婚済み。
彼女には1700万ドルもの身代金はとても払えないが、享楽に溺れジャンキー状態の元夫は全く頼りにならず、関係の良くない元舅に助けを求めざるを得ない。
ところがゲティは孫の危機にも支払いを渋り、代わりに犯人と交渉して身代金を値切るためのネゴシエイターを送り込んでくるのだ。


浮かび上がるのは、様々な形で人間を狂わせる金の恐ろしさ
実際にジョンを誘拐し、身代金を要求する犯罪者たちのやっていることは当然悪なのだが、それでも彼らはワルを自認している分単純。
誘拐も、生活のために日銭を稼ぐことの延長線上に過ぎない。
原題の「ALL THE MONEY IN THE WORLD」の通り、この世の金すべてが欲しいゲティ爺さんの心の闇の方がより暗く、より深く感じる。
何しろこの男、孫の身代金は渋る一方で、もっと高い美術品は躊躇いもなく買い漁る。
ゲティにとってはたとえ使えなくても、使い道がなくても、ため込むこと自体が目的であり、生きがいになっていて、まさに金を支配し、金に支配された男なのだ。
誰に見せるのでもなく、膨大な美術品をコレクションしているのも、資産をカタチとして残しつつ、所有を実感する一つの方法。
金持ちは一度手に入れたものは何としても手放したくなく、だからこそ金が溜まるというが、ゲティはその典型だ。

この常軌を逸した業突く張りに、いかにして身代金を出させ、孫を救い出すのか。
誘拐犯とドケチ舅、同時に二つの敵と戦わざるを得ないアビゲイルの葛藤を軸に、物語はスリリングに展開する。

三つのプロットが絡み合い、金に翻弄される悲しき人間たちが描き出されるクライマックスは、スコット節が冴え渡り、事件の顛末を知っていても手に汗握る。
実際に起こったこととは時系列を変えてある様だが、映画的脚色として成功していると思う。
最終的にゲティは、大幅に値切った身代金を出すことに合意はするのだが、それすら所得から控除させて節税に使い、控除できない分は息子のジョン二世に借金として貸し付けるのだから、その執念は凄まじい。

文字通りの金の亡者であるジャン・ポール・ゲティを、憎たらしくも味わい深く演じるクリストファー・プラマーが素晴らしい。
セクハラ騒動でケビン・スペイシーが降板した後、わずか9日で撮り直したそうだが、にわかには信じがたいクオリティだ。
最終的に、「お天道様は見ていた」的な、庶民が溜飲を下げる展開になるのもホッとさせる。

劇中でゲティが計画している古代ローマ風の大邸宅は、現在は彼の膨大なコレクションを展示するJ・ポール・ゲティ美術館として公開されているので、こちらを観覧したことのある人には、より感慨深い作品だと思う。


今回は金に狂わされた人間たちの話なので、「ゴールドラッシュ」をチョイス。
アクアヴィット30mlとドランブイ20mlを、氷を入れたグラスに注ぎ、ステアして完成。
非常に強く、個性の違う二種類の酒で作るのだから、口に含んだ瞬間ガツンとくる。
ドランブイの甘みと香りがいいアクセント。
しかし、いつも窒息寸前の身としては、「金は空気と同じだ。いくらでもある」なんて一生に一度くらいは言ってみたいものだ。

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