2018年06月30日 (土) | 編集 |
冒険は、ここから始まる。
スター・ウォーズ世界から生まれた屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日を描く実写スピンオフ・シリーズ第二弾。
当初メガホンを取っていたフィル・ロードとクリス・ミラーの降板劇と、予想外の興行的不振でケチが付いたが、さすがロン・ハワードだ。
一度ぶっ壊れたプロジェクトを立て直し、最終的に見事なクオリティに持ってきた。
「帝国の逆襲」「ジェダイの帰還」「フォースの覚醒」と、シリーズ三作を手がけたローレンス・カスダンが息子のジョン・カスダンと組んだシナリオは、明らかな西部劇風味に終盤ノワールも加えて、最後には完全にスター・ウォーズ世界に回帰する。
主要登場人物が全滅する「ローグ・ワン」や、選ばれし救世主としてのジェダイを否定した「最後のジェダイ」の様に、世界観を揺さぶるほど驚かされる要素はなく、シリーズとしてはむしろ保守本流の正統派。
「これぞ観たかったスター・ウォーズだ!」という人も多いのではないか。
惑星コレリアで、犯罪組織の仕事をさせられている若者ハン(オールデン・エアエンライク)は、恋人のキーラ(エミリア・クラーク)と逃亡を図るも失敗。
帝国軍の兵士として前線に送られ、最愛のキーラとは離れ離れになってしまう。
3年後、ある戦場で二丁拳銃を操るアウトロー、トバイアス・ベケット(ウッディ・ハレルソン)の一味と出会ったハンは、帝国軍に囚われていたウーキーのチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)と共に脱走して彼らに合流。
帝国軍の施設のある惑星ヴァンドアで、宇宙船の燃料となる超高価なコアキシウムの強奪を試みるも、敵対するギャング団エンフィス・ネストの妨害でコアキシウムは爆発して失われてしまう。
釈明のために雇い主である犯罪シンジケート、クリムゾーン・ドーンのドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)の船にトバイアスと共に向かったハンは、そこでシンジケートの副官となっていたキーラと再会する。
損害の埋め合わせを迫るドライデンに、ハンは惑星ケッセルの鉱山から、精製前のコアキシウムを盗み出すというプランを提案するのだが・・・・
「新たなる希望」の10年前、造船の星コレリアの裏社会で閉塞感を募らせ、いつか銀河最速のパイロットになることを誓う若きハンの姿は、タトゥーインの農場でくすぶりながら、やはりパイロットとなる未来を夢見るルーク・スカイウォーカーに重なる。
これは若者が生き方を定める物語であり、「新たなる希望」の裏返しの構造を持つ作品だ。
ストーム・トルーパーの襲撃で育ての親を失ったルークが、オビ=ワン・ケノービの導きでジェダイの騎士となったように、本作では恋人キーラと引き離されたハンが、強盗団を率いるトバイアス・ベケットからアウトローとしての生き様を学んでゆく。
主演のオールデン・エアエンライクは、ぶっちゃけハリソン・フォードには全く似てないのだが、キャラクター造形がしっかりしているので、見ているうちに違和感は無くなるだろう。
本作の基本コンセプトは、宇宙版の西部劇。
40年前にハンが初登場したカンティーナの酒場シーンは、西部劇風に仕上げられており、黒のベストにブラスターを腰に下げたキャラクタールックスも、西部劇のガンマンのイメージだった。
本作は、その延長線上に作品全体を構築。
西部劇の主人公が南北戦争の元兵士という設定は多いが、本作でもハンは最初帝国軍の兵士として明日をも知れぬ戦場に送られ、そこから脱走してアウトローとなる。
ヴァンドアでのコアキシウムの強奪作戦はまんま列車強盗だし、ランド・カルリジアンとのギャンブル勝負、悪漢に仕切られた鉱山も西部劇ではおなじみのシチュエーション。
後に正史で伝説となる「ケッセル・ランを12パーセクで飛んだ」シークエンスは、幌馬車と馬の追撃戦の置き換えだ。
加えて、戦争の混乱に乗じて犯罪シンジケートが羽ぶりを聞かせる時代という設定から、ノワール映画のテイストもプラス。
かつて愛した女が、組織のボスの愛人(?)になっていたりするのはいかにもだし、互いの利害が入り混じり、誰が裏切り者だかわからないという終盤の展開も、多くのノワールで描かれてきた定番。
もともとルーカスが作り上げたのは、神話をベースに西部劇から時代劇まで、古き良き時代の映画を換骨奪胎した世界だから、本作の方向性はスター・ウォーズとしてまことに正しい。
もちろん、「フォースの覚醒」以降の新時代のカラーもきちんと反映されている。
女性キャラクターが重要なポジションにいるのはもちろん、フェミニスト・ドロイドにしてドロイド平等主義を訴えるL3-33の存在は、以前のシリーズではちょっと考えられなかっただろう。
自分たちの行いが銀河に災いをもたらす行為で、敵だと思っていた存在が実は正しいことをしていたという終盤の立場の逆転も、従来の価値観が激しく揺さぶられる最近のシリーズの潮流に沿ったものだ。
ルーカス時代の「新たなる希望」から「シスの復讐」までの遺産をしっかりと活かしながら、現代的な要素も加えて、最終的には「これぞスター・ウォーズ」というところに落とし込んでくるのだから、カスダン親子とロン・ハワードの仕事は職人的に見事なものだと思う。
一方で、ルーカスの離脱後のサプライズ続きだった過去三作とは異なり、「これは新しい」という部分はあまりない。
カスダンに加えて、かつてルーカスの「アメリカン・グラフィティ」で俳優としてスターダムを駆け上がり、監督として「ウィロー」を作った盟友ハワードの参加により、良くも悪くも既視感の強い作風になったことは確かだ。
この辺りを「好ましい」と捉えるか、「物足りない」と思うかが、本作の評価の別れ目だろう。
今となっては無い物ねだりだが、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」並みにポップだったらしい、フィル・ロードとクリス・ミラー版も観たかったなあ。
ところで、ファンとしてはニヤニヤが止まらない正史のオマージュ満載はさておき、テレビアニメーション版の「クローン・ウォーズ」「反乱者たち」の要素まで統合してきたのには驚いた。
特に、終盤のある人物の登場は、今までの実写劇場版しか知らないと「???」だろう。
確実に死んだはずで、以降の劇場版には登場していない人物が唐突に現れるのだから。
おそらく、これも今後のスピンオフ作品のための布石だったのだろうが、本作の興行的不振で今後のスピンオフ企画が正式に白紙になってしまったのは大きな皮肉だ。
そもそもナンバリングされた正史ではなく、傍流のスプピンオフ作品に2億5千万ドルという常軌を逸した巨費をつぎ込んでしまったのが間違い。
ルーカスフィルムは、これで「ローグ・ワン」「エピソードⅨ」と三作続けて監督の降板劇があったわけで、明らかにプロデュースチームに問題を抱えている。
ロードとミラーが撮った映像の7割以上を撮り直すとか、映画二本作るの同じことで、これでは長続きしないだろう。
40年来のファンとしては、DC化を避けるためにもMCU並みのクオリティコントロールを願いたい。
まあディズニーとルーカスフィルムもいろいろ考えてはいるのだろうけど、基本的にスター・ウォーズは“サガ”であり“群像劇”であるという基本に立ち返った方がいいと思う。
今回も一応ハン・ソロが主人公ではあるものの、様々なキャラクターがそれぞれに葛藤しているのは過去のシリーズと同じスタイル。
マーベルの様に一人ひとりのキャラクラーがそう強いわけではないので、やっぱ単体ヒーロー推しではなく、神話的な歴史観と世界観に裏打ちされたスター・ウォーズらしさを追求すべきなのではないか。
その意味で今回もタイトルは「Solo」じゃなくても良かったのかも知れない。
今回は、キーパーソンとなるキーラのイメージで、テキーラ・ベースのカクテル「エル・デュアブロ」をチョイス。
氷を入れたタンブラーにテキーラ30ml、クレーム・ド・カシス15mlを注ぎ、軽くステアする。
ライム1/2個を絞り入れ、冷やしたジンジャーエールを加えて完成。
クレーム・ド・カシスのダークレッドが名前の通り悪魔をイメージさせるが、実はすっきりしていて飲みやすいカクテルだ。
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スター・ウォーズ世界から生まれた屈指の人気キャラクター、ハン・ソロの若き日を描く実写スピンオフ・シリーズ第二弾。
当初メガホンを取っていたフィル・ロードとクリス・ミラーの降板劇と、予想外の興行的不振でケチが付いたが、さすがロン・ハワードだ。
一度ぶっ壊れたプロジェクトを立て直し、最終的に見事なクオリティに持ってきた。
「帝国の逆襲」「ジェダイの帰還」「フォースの覚醒」と、シリーズ三作を手がけたローレンス・カスダンが息子のジョン・カスダンと組んだシナリオは、明らかな西部劇風味に終盤ノワールも加えて、最後には完全にスター・ウォーズ世界に回帰する。
主要登場人物が全滅する「ローグ・ワン」や、選ばれし救世主としてのジェダイを否定した「最後のジェダイ」の様に、世界観を揺さぶるほど驚かされる要素はなく、シリーズとしてはむしろ保守本流の正統派。
「これぞ観たかったスター・ウォーズだ!」という人も多いのではないか。
惑星コレリアで、犯罪組織の仕事をさせられている若者ハン(オールデン・エアエンライク)は、恋人のキーラ(エミリア・クラーク)と逃亡を図るも失敗。
帝国軍の兵士として前線に送られ、最愛のキーラとは離れ離れになってしまう。
3年後、ある戦場で二丁拳銃を操るアウトロー、トバイアス・ベケット(ウッディ・ハレルソン)の一味と出会ったハンは、帝国軍に囚われていたウーキーのチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)と共に脱走して彼らに合流。
帝国軍の施設のある惑星ヴァンドアで、宇宙船の燃料となる超高価なコアキシウムの強奪を試みるも、敵対するギャング団エンフィス・ネストの妨害でコアキシウムは爆発して失われてしまう。
釈明のために雇い主である犯罪シンジケート、クリムゾーン・ドーンのドライデン・ヴォス(ポール・ベタニー)の船にトバイアスと共に向かったハンは、そこでシンジケートの副官となっていたキーラと再会する。
損害の埋め合わせを迫るドライデンに、ハンは惑星ケッセルの鉱山から、精製前のコアキシウムを盗み出すというプランを提案するのだが・・・・
「新たなる希望」の10年前、造船の星コレリアの裏社会で閉塞感を募らせ、いつか銀河最速のパイロットになることを誓う若きハンの姿は、タトゥーインの農場でくすぶりながら、やはりパイロットとなる未来を夢見るルーク・スカイウォーカーに重なる。
これは若者が生き方を定める物語であり、「新たなる希望」の裏返しの構造を持つ作品だ。
ストーム・トルーパーの襲撃で育ての親を失ったルークが、オビ=ワン・ケノービの導きでジェダイの騎士となったように、本作では恋人キーラと引き離されたハンが、強盗団を率いるトバイアス・ベケットからアウトローとしての生き様を学んでゆく。
主演のオールデン・エアエンライクは、ぶっちゃけハリソン・フォードには全く似てないのだが、キャラクター造形がしっかりしているので、見ているうちに違和感は無くなるだろう。
本作の基本コンセプトは、宇宙版の西部劇。
40年前にハンが初登場したカンティーナの酒場シーンは、西部劇風に仕上げられており、黒のベストにブラスターを腰に下げたキャラクタールックスも、西部劇のガンマンのイメージだった。
本作は、その延長線上に作品全体を構築。
西部劇の主人公が南北戦争の元兵士という設定は多いが、本作でもハンは最初帝国軍の兵士として明日をも知れぬ戦場に送られ、そこから脱走してアウトローとなる。
ヴァンドアでのコアキシウムの強奪作戦はまんま列車強盗だし、ランド・カルリジアンとのギャンブル勝負、悪漢に仕切られた鉱山も西部劇ではおなじみのシチュエーション。
後に正史で伝説となる「ケッセル・ランを12パーセクで飛んだ」シークエンスは、幌馬車と馬の追撃戦の置き換えだ。
加えて、戦争の混乱に乗じて犯罪シンジケートが羽ぶりを聞かせる時代という設定から、ノワール映画のテイストもプラス。
かつて愛した女が、組織のボスの愛人(?)になっていたりするのはいかにもだし、互いの利害が入り混じり、誰が裏切り者だかわからないという終盤の展開も、多くのノワールで描かれてきた定番。
もともとルーカスが作り上げたのは、神話をベースに西部劇から時代劇まで、古き良き時代の映画を換骨奪胎した世界だから、本作の方向性はスター・ウォーズとしてまことに正しい。
もちろん、「フォースの覚醒」以降の新時代のカラーもきちんと反映されている。
女性キャラクターが重要なポジションにいるのはもちろん、フェミニスト・ドロイドにしてドロイド平等主義を訴えるL3-33の存在は、以前のシリーズではちょっと考えられなかっただろう。
自分たちの行いが銀河に災いをもたらす行為で、敵だと思っていた存在が実は正しいことをしていたという終盤の立場の逆転も、従来の価値観が激しく揺さぶられる最近のシリーズの潮流に沿ったものだ。
ルーカス時代の「新たなる希望」から「シスの復讐」までの遺産をしっかりと活かしながら、現代的な要素も加えて、最終的には「これぞスター・ウォーズ」というところに落とし込んでくるのだから、カスダン親子とロン・ハワードの仕事は職人的に見事なものだと思う。
一方で、ルーカスの離脱後のサプライズ続きだった過去三作とは異なり、「これは新しい」という部分はあまりない。
カスダンに加えて、かつてルーカスの「アメリカン・グラフィティ」で俳優としてスターダムを駆け上がり、監督として「ウィロー」を作った盟友ハワードの参加により、良くも悪くも既視感の強い作風になったことは確かだ。
この辺りを「好ましい」と捉えるか、「物足りない」と思うかが、本作の評価の別れ目だろう。
今となっては無い物ねだりだが、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」並みにポップだったらしい、フィル・ロードとクリス・ミラー版も観たかったなあ。
ところで、ファンとしてはニヤニヤが止まらない正史のオマージュ満載はさておき、テレビアニメーション版の「クローン・ウォーズ」「反乱者たち」の要素まで統合してきたのには驚いた。
特に、終盤のある人物の登場は、今までの実写劇場版しか知らないと「???」だろう。
確実に死んだはずで、以降の劇場版には登場していない人物が唐突に現れるのだから。
おそらく、これも今後のスピンオフ作品のための布石だったのだろうが、本作の興行的不振で今後のスピンオフ企画が正式に白紙になってしまったのは大きな皮肉だ。
そもそもナンバリングされた正史ではなく、傍流のスプピンオフ作品に2億5千万ドルという常軌を逸した巨費をつぎ込んでしまったのが間違い。
ルーカスフィルムは、これで「ローグ・ワン」「エピソードⅨ」と三作続けて監督の降板劇があったわけで、明らかにプロデュースチームに問題を抱えている。
ロードとミラーが撮った映像の7割以上を撮り直すとか、映画二本作るの同じことで、これでは長続きしないだろう。
40年来のファンとしては、DC化を避けるためにもMCU並みのクオリティコントロールを願いたい。
まあディズニーとルーカスフィルムもいろいろ考えてはいるのだろうけど、基本的にスター・ウォーズは“サガ”であり“群像劇”であるという基本に立ち返った方がいいと思う。
今回も一応ハン・ソロが主人公ではあるものの、様々なキャラクターがそれぞれに葛藤しているのは過去のシリーズと同じスタイル。
マーベルの様に一人ひとりのキャラクラーがそう強いわけではないので、やっぱ単体ヒーロー推しではなく、神話的な歴史観と世界観に裏打ちされたスター・ウォーズらしさを追求すべきなのではないか。
その意味で今回もタイトルは「Solo」じゃなくても良かったのかも知れない。
今回は、キーパーソンとなるキーラのイメージで、テキーラ・ベースのカクテル「エル・デュアブロ」をチョイス。
氷を入れたタンブラーにテキーラ30ml、クレーム・ド・カシス15mlを注ぎ、軽くステアする。
ライム1/2個を絞り入れ、冷やしたジンジャーエールを加えて完成。
クレーム・ド・カシスのダークレッドが名前の通り悪魔をイメージさせるが、実はすっきりしていて飲みやすいカクテルだ。

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