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未来のミライ・・・・・評価額1700円
2018年07月21日 (土) | 編集 |
未来のために、過去と逢う。

予告編を何度見ても、どんな話なのかサッパリ分からなかったが、なるほどコレはネタバレせずに全体をイメージさせるのは難しい。
「サマーウォーズ」以来、“家族”をモチーフとしたアニメーション映画を作り続けてきた細田守監督の最新作は、甘えん坊の4歳児くんちゃんと未来からやってきた妹のミライちゃんが、秘められた家族の歴史を巡るファンタジー。
ただし、過去の細田作品のように、エンターテイメント性に富んだドラマチックな活劇を期待すると、思わぬ肩透かしを食らうかもしれない。
これは一軒の家の中庭で展開する、ある意味もの凄く私小説的な物語であり、4歳児の視点で見た小さくて大きな世界を、アニメーション手法を駆使して作ったクロニクル的細田家のホームビデオとも言える。
賛否両論ありそうだが、少なくとも他に似た作品を思いつかない、極めて独創的かつ冒険的な作品だ。
※核心部分に触れています。

4歳のくんちゃん(上白石萌歌)の家に、生まれたばかりの妹・ミライちゃんがやって来る。
おとうさん(星野源)とおかあさん(麻生久美子)は、ミライちゃんの世話にかかりっきりとなり、それまで二人の愛情を一身に受けていたくんちゃんは激しく嫉妬。
ミライちゃんをイジメる意地悪なお兄ちゃんになってしまう。
そんなある日、中庭で遊んでいたくんちゃんの前に、突然中学生になった未来のミライちゃん(黒木華)が現れる。
飼い犬のゆっこ(吉原光夫)もなぜか人間の姿となり、くんちゃんはミライちゃんに導かれるように、家族の過去と未来を巡る冒険の旅に出る・・・・


私の一番古い記憶は、1歳7ヶ月の時のもの。
ベビーベッドで天井のガラガラを眺めていると、父が私を抱き上げてベッドから出し、代わりに母が見たことのない赤ん坊をベッドに寝かせたのだ。
「え、そこは僕のベッドだよ。君はだれ??」
この記憶が本物かどうかは分からないが、妹が生まれて母と共に家に帰ってきた日の記憶だと思っている。

かように、新しい家族の出現というのは幼心には大事件なのだが、本作の主人公・くんちゃんは、私よりも少し年長の4歳で妹のミライちゃんと出会う。
「おおかみこどもの雨と雪」の時は細田監督にはまだ子供がおらず、「憧れで描いた」そうだが、あちらが多分に理想化された子育てだとすれば、こちらはリアリティたっぷりだ。
くんちゃんの元へ未来のミライちゃんがやって来るというアイディアは、監督の息子さんが「(夢の中で)大きくなった妹と逢ったよ」と語ったことから発想したそう。
私は細田守という映画作家は、本来職人的エンタメの人ではないと思っている。
出世作の「時をかける少女」は原作付きだったが、以降はずっとオリジナル。
自分が結婚して家族が増えると、大家族の奮闘を描く「サマーウォーズ」を、子供が欲しい時期になると「おおかみこどもの雨と雪」を、実際に子供ができたら、父性に葛藤する「バケモノの子」を作り、兄妹の父となり、ある程度実際の子育てを経験すると本作を発想する。
今、自分が感じていること、経験していることからのみ物語を紡ぎ出す、典型的な私小説作家だ。

ただ、圧倒的に高い演出力を持ち、職人的な仕事もできてしまうのと、「おおかみこどもの雨と雪」までは、名脚本家の奥寺佐渡子と組んでいたことで、世間からある程度作家性を誤解されているのではないかと思う。
ポスト宮崎なんて一部では言われているが、共通するのは演出力と物語の構成が不得手なところくらいだろう。
単独脚本の一本目となった「バケモノの子」では、後半複雑なプロットをまとめられず、ロジックが破綻してしまっていた。
今回は、ロジカルな説明要素をはじめから放棄し、くんちゃんに起こる“不思議”に明確な解を用意しなかったのは正解だと思う。
一応、未来のミライちゃんによれば、中庭の樫の木が家族の過去現在未来につながるタイムマシンのようなものらしいが、この映画のファンタジー部分は、そもそもくんちゃんを成長させるための装置に過ぎないので、ぶっちゃけこれが現実か幻想かはどうでもいいのである。

それにしても、4歳の男の子の視点で映画を丸ごと語るのは、かなり冒険だ。
一歳年上のクレヨンしんちゃんという先輩はいるが、あれは相当カリカチュアされた存在で、本作のようなリアリズムを前提としたキャラクターではない。
くんちゃんの視点で描いたため、映画の舞台は基本的には建築士のおとうさんが設計した、“世界”そのものであるユニークな構造の家の中と樫の木の中庭だけで、すべてのファンタジー・シークエンスはここを起点として描かれる。
細田監督の特徴的なスタイルに、引いた定点的同ポジの多用があるが、これも本作では幼児の見ている限定された世界を強調する。
登場人物の固有名詞も、劇中で命名される「ミライ(未来)ちゃん」と犬の「ゆっこ」以外は不明なまま。
家族は、一緒に暮している「おとうさん」「おかあさん」、たまにやってくる「ばあば」「じいじ」に、会話の中で登場する「ひいばあちゃん」「ひいじいちゃん」の四世代。
確かに自分が4歳の頃って、家族の正確な名前は知らなかった気がする。
もう少し大きくなって、幼稚園の年長組か小学校入学あたりで、親の名前を呼ばれたり、書いたりするようになり、ようやく親にも「おとうさん」「おかあさん」以外の名前があるんだということを認識するのだろう。

4歳児の世界は、名前一つとっても極めて小さくて限定的だが、本作は中庭で起こる不思議な現象によって、現実のくびきを超え現在過去未来を駆け巡るという壮大な世界観を構築している。
先ずはミライちゃんが生まれることによって、くんちゃんの知っている世界が変化すると、彼が生まれる前におとうさんとおかあさんの愛を独占していた犬のゆっこが人間の姿になり、くんちゃんの感じている感情が「嫉妬」であることを教える。
そして未来のミライちゃんが登場すると、そこからおかあさんが4歳児だった過去の時代へ、さらに戦争を生き抜いたひいじいちゃんの青春時代へ。
一人の人間の中には、それまで延々と受け継がれてきた家族の歴史がある。
いつもくんちゃんを叱るしっかり者のおかあさんにも、実はくんちゃんととても似たところがあり、ひいじいちゃんとひいばあちゃんは困難な時代に必死に命をつないでくれた。
まだ自我が固まっていないくんちゃんは、自分がひいじいちゃん、ひいばあちゃん、ばあば、じいじ、そしておとうさんとおかあさんの様々な選択の結果、存在していることを、ぼんやりとだが初めて理解する。
そして、自分が何者なのかを知るために未来へ。

当然ながら視点が4歳児だからと言って、子供向けという訳ではなく、むしろ実際の4歳児あるあるをよく知る子育て中、あるいは子育て後の親世代が一番楽しめる客層だと思う。
また子供がいなくても、誰もが一度は4歳児だったことがある訳で、ある程度自分の幼少期の記憶を持つ者、親の子育てを見てきた者なら誰もが感情移入できるようになっている。
ビビリなもので、さすがに新幹線でぶったりはしなかったが、くんちゃんのミライちゃんへの意地悪の数々は完全に身に覚えがあるので、今更ながらちょっと反省。
独り者の私が観ても、「ちょっと子供欲しいなあ」と思うくらいだから、若い夫婦やカップルが観ると、少子高齢化対策にもなったりするのかもしれない?

これは妹の誕生という未知の体験をきっかけに、自分が何者なのかを始めて意識する、くんちゃんの成長物語であると同時に、作者の反映であるおとうさん、おかあさんの“気づき”の物語。
さらには、「デジモンアドベンチャー」から「バケモノの子」までの、アニメーション作家・細田守の歴史も内包する集大成だ。
今回は職人的に“上手い”映画じゃないし、過去の細田作品と比べると娯楽性も高いとは言えない。
しかし、今現在作者が何を想い、何を描きたいのかはすごく伝わってくる、最高の作家映画だ。
細田監督には、彼にしか作れないこの路線を突き詰めて欲しい。
もちろん、再び相性抜群の奥寺佐渡子と組んで、エンタメ大作を作っても良いと思うけど。

今回は細田監督の故郷で、「おおかみこどもの雨と雪」の舞台となった富山の地酒、清都酒造場の「勝駒 純米」をチョイス。
ふくよかで上品な口当たりに、やや辛口でスッキリとした喉越し、適度な酸味のバランスが良いフルボディの酒。
蔵の規模が小さいこともあり、名声が高まる近年ではだんだん入手困難になりつつある。
映画同様に作り手の作家性が非常に強い酒だ。

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