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ミッション:インポッシブル/フォールアウト・・・・・評価額1800円
2018年08月04日 (土) | 編集 |
英雄の帰る場所はどこか。

不可能を可能にするスーパースパイ、イーサン・ハントと仲間たちの活躍を描く、シリーズ第6弾は、前作「ローグ・ネイション」からの続きもの。
死んだり行方不明になったはずの各国スパイによって構成された秘密組織「シンジケート」の存在は、イーサン率いるIMF(Impossible Mission Force)の活躍によって暴かれ、ボスのソロモン・レーンは捕らえられた。
しかし、シンジケートの残党は、既存の世界をリセットし新たな時代を作ろうと考える、より過激な分派「アポストル」として今も暗躍している。
ロシアから盗み出された三つのプルトニウム・カプセルとレーンの身柄を巡る物語は、IMF、CIA、アポストル、さらに前作の最強ヒロイン、イルサも加わり四つ巴の争奪戦へと展開。
シリーズ史上初、二作連続で脚本と監督を務めるのクリストファー・マッカリーが作り上げたのは、シリーズ22年間の集大成で、いわば「ミッション:インポッシブル全部入り」の豪華フルコース。
ストーリー、テリング、キャラクターが極めて高いレベルで三位一体となった、平成最後の夏の真打に相応しいシリーズベスト、スーパーヘビー級の傑作だ。
※核心部分に触れています。

盗まれたプルトニウムを奪還せよという指令を受けたイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、一度は回収に成功するも、不意を突かれ何者かによって横取りされてしまう。
事件に秘密組織「シンジケート」の過激派「アポストル」が関与していており、ジョン・ラークという謎の男が、プルトニウム取引のため武器商人のホワイト・ウィドウ(バネッサ・カービー)と接触するという情報を得たイーサンは、ホワイト・ウィドウに近づく作戦を立てる。
しかし、毎回IMFに煮え湯を飲まされているCIAが、お目付役として敏腕エージェントのオーガスト・ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を送り込み、二人はお互いに不信の目を向けながら行動を共にすることに。
ラークの身柄を押さえて、彼に変装してホワイト・ウィドウに会うというイーサンの計画は、ラークと思しき男の予想外の戦闘スキルによって失敗。
返り討ちされそうになった時、一発の銃弾が男の眉間を撃ち抜く。
イーサンの危機を救ったのは、この世界から足を洗ったはずの元MI6のイルサ(レベッカ・ファーガソン)だった・・・


前作「ローグ・ネイション」は、クリストファー・マッカリー監督のストーリーテラーとしての特質が十二分に発揮された秀作だった。
脚本家出身のマッカリーは、劇中に登場するプッチーニの古典オペラ「トゥーランドット」を換骨奪胎し、プロット全体の下敷きにするという、なんとも凝った仕掛けを作劇に組み込んできたのだ。
「トゥーランドット」は古の中国を舞台に、絶世の美女トゥーランドット姫と国を追われたカラフ王子のロマンスを描く作品だが、トゥーランドットに求婚する男は、彼女の出す三つの謎かけに答えなければならず、もしも間違えたら処刑されてしまう。
映画では、二重スパイとしてMI6からシンジケートへ送り込まれ、二つの組織のそれぞれのボスの身勝手な思惑によって、偽りの人生に縛り付けられてしまったイルサがトゥーランドットで、イーサンが彼女の凍りついた心を溶かし、解き放つカラフ王子の役割を担う。
実質的な物語の主人公はイルサで、イーサンは一歩引いた受け身の役だった。

本作ではイーサンが主役のポジションに戻り、彼の「世界を救いたい」と「たった一人でも守りたい」という、両立が難しい二つの行動原理の間の根源的な葛藤を前面に出し、過去シリーズ全てを内包した作り。
今回、彼の元に届くミッションの指令は、ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」の本に隠されている。
このことが示唆する様に、マッカリーがやろうとしているのは、トロイア戦争を大勝利に導きながら、その後いつ終わるとも知れぬ故郷への遠大な旅を強いられた古代ギリシャの英雄に、イーサンを見立てることなのである。
言ってみれば「ローグ・ネイション」はマッカリー二部作のイルサ編で、「フォールアウト」がイーサン編という構造だ。
イーサンが最後に母国アメリカにいたのは、奇しくもこの夏「インクレディブル・ファミリー」が公開されているブラッド・バード監督の「ゴースト・プロトコル」のラスト。
平和に暮らしている元妻のジュリアを、遠くから見守っている切ないシーンだった。
あれ以来、彼はオデュッセウスと同じ様に、ずっと世界を転々とする流浪の日々を送っているのである。

驚くべきことに、本作がクランクインした時点では、マッカリーの脚本はほとんど完成していなかったそうだ。
映画を撮影しながらキャラクターと対話し、並行して脚本を作ってゆく。
まさに制作現場そのものが行先不明の貴種流離譚さながらで、システマチックなハリウッドのメジャー作品において、このようなスタイルが許されるのはかなり珍しい。
シリーズのプロデューサーも兼ねるトム・クルーズが、それだけマッカリーに対して全幅の信頼を置いているということだろう。
おそらくこの独特の制作プロセスのためか、よくよく見て行くと整合性が微妙な部分もあるのだが、本作のプロットはロジカルでありながら、登場人物のエモーションによって推進力を得て、極めて有機的に展開する。

冒頭の夢のシーンが、本作のコンセプトを端的に表している。
イーサンとジュリアとの幸せな結婚式に、なぜか立会人としてレーンが現れ、ジュリアにできもしない約束をするイーサンを責めるのだ。
好き勝手に暴れまわるので“Rogue organization(ならず者組織)”と煙たがられ、毎回孤立するIMFにとって、シンジケートは合わせ鏡であり、レーンはいわばイーサンのダークサイド的存在。
劇中でイーサンが実はラークなのではないかと疑われるのも、彼らが常に淵に立っている存在で、ジェダイの騎士以上に“落ちやすい”からに他ならない。
実際第一作の「ミッション:インポッシブル」では、TVシリーズ「スパイ大作戦」でIMFのリーダーだったジム・フェルプスが裏切り者となる。
権力から捨て駒として扱われ、大義を果たすために犠牲を強いられるのなら、そんな世界そのものをぶっ壊してしまえというのがシンジケートやアポストルの考え。
対して、既存の権力の指令を受けながらも時には抗い、愛や信頼といったパーソナルな繋がりによって、ライトサイドに留まっているのがIMFの面々と言える。
これはスーパースパイ、イーサンが世界を救う英雄としての自分と、誰かを愛する一人の人間としての自分の間で、矛盾する姿を改めて突きつけられ、自分の戻るべき場所、いるべき場所はどこなのか葛藤する物語なのである。

ここでポイントになるのが、ヘンリー・カヴィルの存在だ。
それほどミスリードもされておらず、話の途中で割とあっさりと明かされるのだが、彼こそ本作のキーパーソンである謎の男ラークの正体。
前作のボスキャラであるレーンも登場するが、イーサンの分身としてのレーンは、すでに前作で彼自身によって倒されている。
本作で解き放たれたレーンと対決しなかればならないのは、彼の存在によって過去に縛られているイルサなので、レーン以外にもう一人、イーサンと対決する同格のボスキャラが必要となり、それがラークというわけだ。
カヴィルは以前「コードネーム U.N.C.L.E.」でナポレオン・ソロを演じていて、ある意味共に60年代のテレビにルーツを持つ、「スパイ大作戦」と「ナポレオン・ソロ」の共演という遊び心が楽しい。

シリーズ最長の147分は頭脳戦から肉弾戦、空と陸を駆け抜ける怒涛の見せ場の連続だが、アクションの一つひとつにも過去シリーズへのオマージュが見える。
クライマックスのヘリコプターバトルは第一作を思わせるし、断崖絶壁に宙吊りになりながら戦うシーンでは、第二作のアヴァンタイトルで、イーサンの趣味がフリークライミングだったのを思い出して思わずニヤリ。
例によってバイクと車が入り乱れてのカーアクションの凄まじさは言わずもがなだし、シリーズ伝統の垂直方向のアクションは、高度25000フィートを飛ぶ輸送機からのダイビングとして受け継がれている。
これだけド派手な見せ場を繋ぎながらも、シリーズでは隠し味的に組み込まれていたロマンスの部分を感情のドラマのコアに置き、イーサン・ハントの貴種流離譚の行き着く先をきっちりと明示してくるのだから見事だ。
マッカリーのセンスは、本当に艶っぽい。

もしかして、本作をもってイーサン・ハントと仲間たちのシリーズは完結なのではないか。
いや、もちろんいくらでも続きは作れるのだけど、素晴らしく出来の良いこの映画でスパッと終わらせるなら、有終の美として映画史に残るだろう。
そのくらいの「やり切った感」がある。
ちなみに今回は、ジェレミー・レナーが演じるブラントが出て来なかったのは、前記したような独特の制作プロセスゆえに「アベンジャーズ」シリーズとのスケジュール調整ができなかったため。
マッカリーは短期間で撮影を終わらせるために、冒頭でブラントが死んでしまう案を持ちかけたそうだが、それは「嫌だ」と断られたらしい。
まあ、このままだとブラント的にも中途半端なので、トム・クルーズとマッカリーには、是非ともブラントを加えたIMFの全員が大活躍する、本当の完結編を作ってもらいたいものだ。
とりあえず観終わった瞬間に、最初からもう一回観たくなる、この夏を代表する傑作だ!

世界を駆け巡るこのシリーズ、今回は重要な舞台となる街から「パリジャン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット20ml、クレーム・ド・カシス10mlをステアして、グラスに注ぐ。
ジンの清涼感を、ドライ・ベルモットとクレーム・ド・カシスの風味が包み込む。
やや甘口で、アペリティフ向きのショートカクテル。
ルビー色が美しい、オシャレな一杯だ。

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