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2018年09月25日 (火) | 編集 |
誰も声を出してはならない。
音に反応して人間を襲う、謎のクリーチャー群の大量出現によって崩壊寸前に追い込まれた世界で、生き残ったある家族のサバイバルを描いた全米大ヒット作。
人々は声によるコミュニケーションを封じられ、極力音を立てない様に四六時中怯えながら、ひっそりと日々を生きている。
しかし、エミリー・ブラント演じる主人公は、もはやそんな生活を続けることができない。
なぜならば彼女は妊娠しており、臨月を迎えようとしているのである。
サイレント映画オタクだというスコット・ベックとブライアン・ウッズによるオリジナル脚本を受けて、ブラントの夫で本作でも夫役で出演しているジョン・クラシンスキーがメガホンを取った。
「音を立てる=死」というシンプルなアイディアをとことん生かした、センス・オブ・ワンダーに溢れた正統派モンスター映画にして快作SFホラーだ。
※核心部分に触れています。
突如として全世界に出現した謎のクリーチャーによって、人類は僅か472日間で滅亡寸前に追い込まれた。
宇宙からやって来たらしいそれは全くの盲目であるものの、コウモリのような特殊な聴覚器官を持ち、わずかな音でも人間の動きを感知して捕食する。
イヴリン・アボット(エミリー・ブラント)は、夫でクリーチャーの研究をしているリー(ジョン・クラシンスキー)と耳の不自由な娘のリーガン(ミリセント・シモンズ)、息子のマーカス(ノア・ジュープ)と四人で、田舎の農場に隠れ住んでいる。
一家の末っ子だったビューは、1年前にクリーチャーによって殺されてしまい、そのことは今もわだかまりとなって、家族の関係に影を落としている。
妊娠中で、間も無く出産するイヴリンのために、一家はクリーチャーの耳を封じるために様々な準備を進めているのだが、ある日他の三人が外出している時に、産気づいたイヴリンが地下室に移ろうとして誤って音を立ててしまった。
皆が農場に戻ってきた時、そこはすでに何匹ものクリーチャーが跋扈する、狩場とかしていたのだが・・・
声を出せないホラーというと、貧困層の若者たちが、盲目の老人が大金を家に隠しているという噂を聞きつけ強盗に入るも、実は老人の正体は圧倒的な戦闘力をもつ元軍人だった!という「ドント・ブリーズ」が記憶に新しい。
あの映画では格差社会が物語の背景になっていて、単なる怖がらせを超えた深みがあったが、極限状態で暮らす家族を描いた本作もなかなかの力作だ。
説明要素は必要最小限。
声を立てられないという状況から、必然的に非常に寡黙な映画になっているので、ぼーっと見ていると、その最小限の要素すら見落としてしまうかも知れない。
ある程度の集中力を要求される作品である。
音に反応し、人間を捕食するクリーチャーに関しても説明はほとんどなく、2018年の10月頃に突然宇宙からやってきた(らしい)ということしか分からない。
彼らの肉体は人間より遥かに強靭で、漆黒の体表は鎧の様な皮膚に覆われていておおかたの攻撃は跳ね返されてしまうが、頭全体で音を感知する構造になっており、より細かい音を聞こうとする時だけ鎧が開き巨大な内耳の構造が露わになる。
音に非常に敏感な反面、視覚を全く持たないので、人間たちは“音を立てられない”こと以外は以前に近い生活を送っていて、平和な日常と死の恐怖が同居する世界観が非常にユニーク。
なるべく静かに、自給自足して生き残っている人々は、毎夜篝火によって自らの生存を周りに住んでいる人々に知らせているのだ。
アボット家に関しても、この事態が起こるまで彼らが何をしていたのか、背景説明は全く無い。
イヴリンは薬の知識や出産準備の描写からおそらくは医療関係、夫のリーはエンジニア的な知識を有していることがわかる程度。
キーとなる人物は、アボット家の長女のリーガンだ。
彼女は生まれつき耳が聞こえない設定で、演じるミリセント・シモンズも実際にろう者。
そのためにアボット家の人々は、手話によるコミュニケーションをとることが可能で、映画の中でもリーガンを描写するカットでは音が封じられている。
リーガンは、1年前にビューが殺された事件のきっかけを図らずも作ってしまっており、そのことで自分が家族、特に父親のリーに嫌われているのではないかと疑心暗鬼に陥っている。
耳が聞こえないことは、異常な聴覚を持つクリーチャーと対峙するのに、健常者よりも無防備なことを意味するので、リーはなんとか高性能の補聴器を作ろうとしているが、そんな父の努力も彼女にとっては疎ましく感じられてしまうのだ。
田舎の農場が宇宙から来たクリーチャーに襲われるという本作の設定は、スティーブン・スピルバーグの代表作、「E.T.」の初期企画と同じ。
最終的に完成した作品では、異星人の“友だち”との絆によって、両親の離婚に葛藤する内気な少年が成長を遂げる物語になっていたが、本来はモンスター・ホラーになるはずだったのだ。
そのスピルバーグの大ファンを公言するM・ナイト・シャマランが、ボツになった設定を拝借して作ったのが「サイン」であり、やはり宇宙からの脅威が家族の問題のメタファーとなっている。
そして本作もまた、問題を抱えた家族がクリーチャーの襲撃という試練を通して、大きく変化してゆく。
リーガンは自分がしてしまったことへの贖罪の念、長男のマーカスは目の前で弟が殺されたことによるトラウマを抱えているが、イヴリンとリーは恐怖が支配する終末の世界で、子供たちが生きてゆけるように育て上げようとしている。
リーが外に出たがらないマーカスを魚取りに連れ出すのも、何度失敗してもリーガンに補聴器を作り続けるのも、いつか自分たちがいなくなることが十分に想像できる世界だからだ。
映画の中盤、同じ日の同じ時刻にリーガンがビューの墓標に祈り、イヴリンは家で亡き我が子を想い、リーとマーカスが声の出せる滝つぼで本音を語り合い心を通わせる。
四者四様の形で問題と向き合うこのシークエンスは、本作が描こうとするものと、物語が向かう先を端的に暗示して秀逸。
家族のドラマとして非常によく考えられた作品だが、一方で突っ込みどころも満載だ。
アボット家の人々は生き残るために、涙ぐましい努力をしている。
例えば屋外の生活動線に砂をまいて、靴音を立てないよう裸足で生活しているし、油ハネの音を警戒してか料理は蒸し焼きにしているほど。
ところが、そんな彼らは1日の終わりに大きな篝火を焚くのである。
一度でも焚き火をしたことのある人は分かるだろうが、火はかなり大きな音を立てるのに。
クリーチャーも、人間の立てる音だけを聞き分けているのかと思ったら、アライグマの鳴き声にも反応していた。
自然界の音すべてがのべつまくなしに耳に入ってくるんじゃ煩くてたまらないだろうし、どうやって人間の音を判別しているのだろう。
結局、どこまでの音が危険でどこからがセーフなのか、基準がよく分からないのは気になった。
また、農場では結構贅沢に電気を使っているが、あれは一体どこから?
一応屋根にソーラーパネルが見えるのだが、発電量的にとても足りるとは思えない。
他にも、なぜ普段使いの場所に都合よく逆さにクギがはえてるのか?(洗濯ものが引っかかって立っちゃう描写はあるが、そもそも普通階段の板に逆さ釘は打たないよねえ)とか、クライマックスに唐突に“発見”されるソリューションも、一応伏線は張られているもののよくよく考えれば相当な御都合主義だ。
もっとも、そんなわざとらしい部分も含めて、ジャンル映画を存分に遊び倒す、そんな確信犯的なB級感覚が心地いい。
緊張感とスリルは全編にわたって続くが、ブラッディな残酷シーンはほとんど無いので、求められるホラー耐性は限りなく低く、この種の映画が苦手な人も楽しめるだろう。
末っ子の悲劇的な死から始まり新たな命の誕生と共に終わる本作は、受け継がれてゆく家族の愛を描くファミリー映画としても優れた作品である。
しかし、本当にこの映画のシチュエーションになったら、私はどんなに頑張ってもイビキと寝言のせいで寝てる間に殺される気がするなあ(苦
今回は色々痛い話なので、「刺す動物」とか「痛撃」あるいは「皮肉屋」の意味を持つカクテル「スティンガー」をチョイス。
ブランデー45ml、ペパーミント・ホワイト15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
ブランデーの銘柄次第で味が大きく変わるが、濃厚なブランデーとスッキリとしたペパーミント・ホワイトのコンビネーションは、名前の通りに刺激的な大人なカクテル。
アブサンを2dash加えることで「スティンガー・ロイヤル」へと変化する。
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音に反応して人間を襲う、謎のクリーチャー群の大量出現によって崩壊寸前に追い込まれた世界で、生き残ったある家族のサバイバルを描いた全米大ヒット作。
人々は声によるコミュニケーションを封じられ、極力音を立てない様に四六時中怯えながら、ひっそりと日々を生きている。
しかし、エミリー・ブラント演じる主人公は、もはやそんな生活を続けることができない。
なぜならば彼女は妊娠しており、臨月を迎えようとしているのである。
サイレント映画オタクだというスコット・ベックとブライアン・ウッズによるオリジナル脚本を受けて、ブラントの夫で本作でも夫役で出演しているジョン・クラシンスキーがメガホンを取った。
「音を立てる=死」というシンプルなアイディアをとことん生かした、センス・オブ・ワンダーに溢れた正統派モンスター映画にして快作SFホラーだ。
※核心部分に触れています。
突如として全世界に出現した謎のクリーチャーによって、人類は僅か472日間で滅亡寸前に追い込まれた。
宇宙からやって来たらしいそれは全くの盲目であるものの、コウモリのような特殊な聴覚器官を持ち、わずかな音でも人間の動きを感知して捕食する。
イヴリン・アボット(エミリー・ブラント)は、夫でクリーチャーの研究をしているリー(ジョン・クラシンスキー)と耳の不自由な娘のリーガン(ミリセント・シモンズ)、息子のマーカス(ノア・ジュープ)と四人で、田舎の農場に隠れ住んでいる。
一家の末っ子だったビューは、1年前にクリーチャーによって殺されてしまい、そのことは今もわだかまりとなって、家族の関係に影を落としている。
妊娠中で、間も無く出産するイヴリンのために、一家はクリーチャーの耳を封じるために様々な準備を進めているのだが、ある日他の三人が外出している時に、産気づいたイヴリンが地下室に移ろうとして誤って音を立ててしまった。
皆が農場に戻ってきた時、そこはすでに何匹ものクリーチャーが跋扈する、狩場とかしていたのだが・・・
声を出せないホラーというと、貧困層の若者たちが、盲目の老人が大金を家に隠しているという噂を聞きつけ強盗に入るも、実は老人の正体は圧倒的な戦闘力をもつ元軍人だった!という「ドント・ブリーズ」が記憶に新しい。
あの映画では格差社会が物語の背景になっていて、単なる怖がらせを超えた深みがあったが、極限状態で暮らす家族を描いた本作もなかなかの力作だ。
説明要素は必要最小限。
声を立てられないという状況から、必然的に非常に寡黙な映画になっているので、ぼーっと見ていると、その最小限の要素すら見落としてしまうかも知れない。
ある程度の集中力を要求される作品である。
音に反応し、人間を捕食するクリーチャーに関しても説明はほとんどなく、2018年の10月頃に突然宇宙からやってきた(らしい)ということしか分からない。
彼らの肉体は人間より遥かに強靭で、漆黒の体表は鎧の様な皮膚に覆われていておおかたの攻撃は跳ね返されてしまうが、頭全体で音を感知する構造になっており、より細かい音を聞こうとする時だけ鎧が開き巨大な内耳の構造が露わになる。
音に非常に敏感な反面、視覚を全く持たないので、人間たちは“音を立てられない”こと以外は以前に近い生活を送っていて、平和な日常と死の恐怖が同居する世界観が非常にユニーク。
なるべく静かに、自給自足して生き残っている人々は、毎夜篝火によって自らの生存を周りに住んでいる人々に知らせているのだ。
アボット家に関しても、この事態が起こるまで彼らが何をしていたのか、背景説明は全く無い。
イヴリンは薬の知識や出産準備の描写からおそらくは医療関係、夫のリーはエンジニア的な知識を有していることがわかる程度。
キーとなる人物は、アボット家の長女のリーガンだ。
彼女は生まれつき耳が聞こえない設定で、演じるミリセント・シモンズも実際にろう者。
そのためにアボット家の人々は、手話によるコミュニケーションをとることが可能で、映画の中でもリーガンを描写するカットでは音が封じられている。
リーガンは、1年前にビューが殺された事件のきっかけを図らずも作ってしまっており、そのことで自分が家族、特に父親のリーに嫌われているのではないかと疑心暗鬼に陥っている。
耳が聞こえないことは、異常な聴覚を持つクリーチャーと対峙するのに、健常者よりも無防備なことを意味するので、リーはなんとか高性能の補聴器を作ろうとしているが、そんな父の努力も彼女にとっては疎ましく感じられてしまうのだ。
田舎の農場が宇宙から来たクリーチャーに襲われるという本作の設定は、スティーブン・スピルバーグの代表作、「E.T.」の初期企画と同じ。
最終的に完成した作品では、異星人の“友だち”との絆によって、両親の離婚に葛藤する内気な少年が成長を遂げる物語になっていたが、本来はモンスター・ホラーになるはずだったのだ。
そのスピルバーグの大ファンを公言するM・ナイト・シャマランが、ボツになった設定を拝借して作ったのが「サイン」であり、やはり宇宙からの脅威が家族の問題のメタファーとなっている。
そして本作もまた、問題を抱えた家族がクリーチャーの襲撃という試練を通して、大きく変化してゆく。
リーガンは自分がしてしまったことへの贖罪の念、長男のマーカスは目の前で弟が殺されたことによるトラウマを抱えているが、イヴリンとリーは恐怖が支配する終末の世界で、子供たちが生きてゆけるように育て上げようとしている。
リーが外に出たがらないマーカスを魚取りに連れ出すのも、何度失敗してもリーガンに補聴器を作り続けるのも、いつか自分たちがいなくなることが十分に想像できる世界だからだ。
映画の中盤、同じ日の同じ時刻にリーガンがビューの墓標に祈り、イヴリンは家で亡き我が子を想い、リーとマーカスが声の出せる滝つぼで本音を語り合い心を通わせる。
四者四様の形で問題と向き合うこのシークエンスは、本作が描こうとするものと、物語が向かう先を端的に暗示して秀逸。
家族のドラマとして非常によく考えられた作品だが、一方で突っ込みどころも満載だ。
アボット家の人々は生き残るために、涙ぐましい努力をしている。
例えば屋外の生活動線に砂をまいて、靴音を立てないよう裸足で生活しているし、油ハネの音を警戒してか料理は蒸し焼きにしているほど。
ところが、そんな彼らは1日の終わりに大きな篝火を焚くのである。
一度でも焚き火をしたことのある人は分かるだろうが、火はかなり大きな音を立てるのに。
クリーチャーも、人間の立てる音だけを聞き分けているのかと思ったら、アライグマの鳴き声にも反応していた。
自然界の音すべてがのべつまくなしに耳に入ってくるんじゃ煩くてたまらないだろうし、どうやって人間の音を判別しているのだろう。
結局、どこまでの音が危険でどこからがセーフなのか、基準がよく分からないのは気になった。
また、農場では結構贅沢に電気を使っているが、あれは一体どこから?
一応屋根にソーラーパネルが見えるのだが、発電量的にとても足りるとは思えない。
他にも、なぜ普段使いの場所に都合よく逆さにクギがはえてるのか?(洗濯ものが引っかかって立っちゃう描写はあるが、そもそも普通階段の板に逆さ釘は打たないよねえ)とか、クライマックスに唐突に“発見”されるソリューションも、一応伏線は張られているもののよくよく考えれば相当な御都合主義だ。
もっとも、そんなわざとらしい部分も含めて、ジャンル映画を存分に遊び倒す、そんな確信犯的なB級感覚が心地いい。
緊張感とスリルは全編にわたって続くが、ブラッディな残酷シーンはほとんど無いので、求められるホラー耐性は限りなく低く、この種の映画が苦手な人も楽しめるだろう。
末っ子の悲劇的な死から始まり新たな命の誕生と共に終わる本作は、受け継がれてゆく家族の愛を描くファミリー映画としても優れた作品である。
しかし、本当にこの映画のシチュエーションになったら、私はどんなに頑張ってもイビキと寝言のせいで寝てる間に殺される気がするなあ(苦
今回は色々痛い話なので、「刺す動物」とか「痛撃」あるいは「皮肉屋」の意味を持つカクテル「スティンガー」をチョイス。
ブランデー45ml、ペパーミント・ホワイト15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
ブランデーの銘柄次第で味が大きく変わるが、濃厚なブランデーとスッキリとしたペパーミント・ホワイトのコンビネーションは、名前の通りに刺激的な大人なカクテル。
アブサンを2dash加えることで「スティンガー・ロイヤル」へと変化する。

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