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ボヘミアン・ラプソディ・・・・・評価額1750円
2018年11月13日 (火) | 編集 |
魂の歌を聴け!

冒頭のロックな20世紀フォックス・ファンファーレからテンションMAX、今年一番のアガる映画だ。
20世紀の音楽シーンを代表する、数々の大ヒット曲で知られるイギリスのロックバンド、クイーンのリードボーカルで、45歳の若さでこの世を去ったフレディ・マーキュリーをフィーチャーした音楽伝記映画。

1970年にブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンド、スマイルにフレディが加入し、新たにクイーンとなった時点から、十数年に渡るドラマを描く。

既成概念にとらわれない若者たちはやがて栄光を掴むが、その性的指向故に“家族”を持てないフレディは、次第に孤独を募らせる。
ラミ・マレックがまるでフレディが憑依したかのごとく名演を見せ、彼と不思議な絆で結ばれる恋人メアリー・オースティンを「シング・ストリート 未来へのうた」のルーシー・ボーイントンが演じる。
表題曲となっている「ボヘミアン・ラプソディ」を「こんな曲じゃ、車で頭振れないだろ!」とこき下ろす音楽プロデューサーを、嘗て「ウェインズ・ワールド」でノリノリで頭振っていたマイク・マイヤーズに演じさせるなど遊び心も楽しい。
脚本は「ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男」のアンソニー・マクカーテンが担当し、後述するようにトラブルに見舞われて途中降板しているものの、一応監督クレジットはブライアン・シンガー。

空港の荷物係として働くフレディ・バルサラ(ラミ・マレック)は、地元のクラブに出演しているロックバンド、スマイルのブライアン・メイ(グウィリム・リー)とロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)に美声を認められ、新バンド「クイーン」のリードボーカルとなる。
殖民地出身の厳格な父親との確執を抱えたフレディは、ファミリーネームも「マーキュリー」と改名。
ベースとしてジョン・ディーコン(ジョセフ・マッゼロ)も加入し、斬新なサウンドを連発するクイーンは次第に人気を博し、ついにはアメリカツアーを成功させると世界的なスーパースターへと駆け上がってゆく。
しかし、裕福となったメンバーたちが家族を持ってゆく中、フレディは一人疎外感を募らせる。
彼には長年付き合っている恋人、メアリー・オースティン(ルーシー・ボーイントン)がいるが、彼女を深く愛する気持ちとは別に、同性に対する性的指向が抑えられなくなっていたのだ。
メアリーと別れたフレディは、スタッフだったポール・プレンター(アレン・リーチ)と交際を始め、それはやがてメンバー間の不仲に繋がってゆく。
そして人気絶頂の80年代、フレディにソロ活動のオファーが届くのだが・・・


おそらく今の日本人で、クイーンの楽曲を全く聴いたことがないという人はいないのではないか。
フレディの没後27年がたつ現在でも、彼のパワフルな歌声はテレビCMやドラマなどで流れ続けている。
数年前のポカリスエットのCMで、オッさんたちがいきなりの「We Will Rock You」を歌い出したのはインパクト絶大だったし、去年もトヨタのミニバンのCMで「We Are The Champions」が、カムリのCMで「Flash」が使われていた。
たとえタイトルを知らなかったとしても、聴けば「ああ、あの曲ね」となるはずで、クイーンのサウンドは世代を問わず、私たちの記憶に自然に刷り込まれているのである。
これは日本だけの現象ではなく、音楽性が高く、とにかくテンションのアガる彼らの楽曲はハリウッドでもよく使われるし、レディー・ガガが「Radio Ga Ga」から自らの芸名をもじったように、クイーンに大きな影響を受けたという人物は枚挙に遑がない。
それほど大きな存在だった伝説のバンドを、時系列に沿ってエピソードをくまなく描こうとすると、とても135分では足りないだろう。

そこで本作は、アフリカ、ザンジバルで生まれたインド系ゾロアスター教徒の青年ファルーク・バルサラが、英国人のロックスター、フレディ・マーキュリーとなり、紆余曲折の末についに”本当の家族”を手に入れるまでの物語に絞った。
ザンジバルの政変を逃れ、イギリス本土に渡った旧植民地からの移民の子であるフレディは、幾つもの葛藤を抱えている。
まずは自らのアイデンティでもある、インド系の血統に関するもの。
「パキスタン人」と蔑まされながら、何者かになりたくて、その才能でチャンスをつかんだフレディは、ファーストネームだけでなく、家族の名をも捨てフレディ・マーキュリーを名乗るのである。
そしてミュージシャンとして成功してからは、抑えてきたバイセクシャルとしての葛藤
劇中で性的指向を告白したフレディに対して、メアリー・オースティンは「あなたはゲイよ」と断言していたが、実際に女性とも付き合っているのだから、やはりバイセクシャルだったのだと思う。
ただ、同性愛は公然の秘密だったが、彼自身は今で言うカミングアウトをすることは無かった。
最後は、苦楽を共にするバンドのメンバーとの音楽的な軋轢だ。
もっとも、メンバーの間で揉めると、誰かが新しい曲のアイディアを出し、それを試している間に皆ノリノリになって仲良しに戻るというパターンが何度も繰り返されるので、基本的には音楽バカたちが仲良くいがみ合っているだけ。
フレディと他のメンバーの間に決定的な亀裂が出来る原因も、音楽性の違いなどが原因ではなく、むしろ彼自身が心を閉ざしたことにある。

野望を抱いた若者たちが成功者となり、やがて異なる道を歩みだすのは王道。
そして一度は袂を分かったメンバーが再び結集するまでの展開も、物語的にも演出的にも特筆するほどの何かがある訳ではない。
もちろん、俳優たちの好演はみものだし、物質的には恵まれながらも孤独に苛まれるフレディの苦悩は感情移入を誘う。
心の底ではしっかりと繋がりながらも、結ばれることのないメアリーとのラブストーリーも切ない。
丁寧に作られていて決して退屈する訳ではないが、どれもよく知られたエピソードでもあり、人間ドラマとして数ある音楽バンドものの予定調和を超えるものではないのだ。
だが、全体の構造を考えるとこれは狙いだろう。
本作の凄さは、二時間近く費やして描いた物語の全ての要素、全ての葛藤をラスト20分に集束させ、クイーンという“家族”の最高のパフォーマンスと共にステージで昇華したことにある。

クライマックスとなるのは、当時世界的な関心事となっていたアフリカ難民の救済を目的に、1985年に開催された伝説のチャリティコンサート、「ライブ・エイド」だ。
イギリスのウェンブリー・スタジアムとアメリカのJFKスタジアムをメイン会場に、綺羅星のごとくスターたちが共演、録画を含めて世界150ヵ国で放送され、数億人が視聴したと言われる、まさに史上最大のショウである。
当時10代だった私は、このコンサートをTVで観た。
次々に現れるスーパースターたちに、ワクワクする高揚感はあったが、やはり遠い国のイベントという感じだった。
ところが、この映画のラスト20分、私は1985年にタイムスリップして、確かにウェンブリー・スタジアムでクイーンのパフォーマンスを“体験”したのだ!
会場を埋め尽くした観衆の上を、カメラがグーッとステージに迫ってゆくダイナミックなショットから、ライブ・エイドを完全再現。
声に関してはさすがにフレディ本人のものを使っているそうだが、ラミ・マレックの成りきりっぷりも見事だ。
よく見ると顔はそんなに似ていないものの、一挙手一投足がどんどんと本人に見えてくる。
「ボヘミアン・ラプソディ」から始まって、「Radio Ga Ga」「ハマー・トゥ・フォール」「伝説のチャンピオン」、現在の映像技術によって再現された33年前のステージは、当時のアナログ放送のクオリティをはるかに超えて、観客を熱狂の渦に迎え入れる。
ぶっちゃけこの20分だけで、十分観る価値はあると思うが、もちろんこの盛り上がりはそこに至るまでの15年分のドラマが”前座”として十分に機能しているがこそ。
それまでのフレディの心の軌跡が歌詞にシンクロして、こちらの感情をガンガンに揺さぶってくる。
聞くところによると、撮影フッテージは実際のライブ・エイドの時と同じ6曲分あるというから、是非円盤の特典にしてもらいたい。

しかし、実際に解散寸前だったクイーンを救ったライブ・エイドをクライマックスにした構成の結果、時系列的に史実と異なる部分が生まれてしまった。
それほど詳しくない私でもロジャー・テイラーの「何年も人前で演奏してない」のセリフには「???(いや、あんたら別に活動休止してなかったやん?)」と思ったし、あの時点ではフレディはAIDSとは診断されていなかったはず。
クイーンの活動を長年追い続けてきたようなファンが観たら、もっといろいろとおかしな部分があるのだろう。
だが、フレディ・マーキュリーという人物の苦悩と解放を真摯に描くというコンセプトに嘘はないし、「史実を元にした映画」は史実そのものではない。
例えばベネット・ミラー監督の「マネーボール」は傑作だが、数十年間の話を一年に凝縮した上に、実在しないキャラクターを作っちゃていて、あれに比べれば本作の改編など可愛いものだ。
やはりアンソニー・マクカーテンが執筆した、「ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男」も、核心的な部分の脚色にはかなり創作が入っている。
そもそも「映画一回観て感動して終わり」の人には、それが史実かどうかなんてあまり意味はない。
映画で史実に興味を持った人は、そこから史実のネガティブな部分を含め自分で調べれば良い話で、その意味からも「ボヘミアン・ラプソディ」は最高の入門編だと思う。
本作には音楽プロデューサーとして、ブライアン・メイとロジャー・テイラーも参加しているので、精神性についてはお墨付きということだろう。

ところでこの映画、前述したように監督としてクレジットされているのはブライアン・シンガーなのだが、彼は映画のクランクアップ二週間前に解雇されている。
どうもスタッフ・キャストとの衝突があったようで、スタジオはクローザーとしてデクスター・フレッチャーを雇い、なんとか完成させた。
この様な経緯をたどった作品は、往々にしてどこかがぶっ壊れているものだが、完成した作品を観る限りでは、ドラマ部分の仕上がりがやや緩いものの、トラブルの影はほとんど感じられない
もともとモチーフそのものが、シンガーがこれまで描いてきた作品と符合するし、普通にシンガーっぽいのである。

まあ解雇される前に、かなりの部分は撮り終えていたそうだが、当然彼はポスプロには関わっていない訳で、この完成度の高さは奇跡だ。

今回はボヘミアン繋がりで「ボヘミアン・ドリーム」をチョイス。
アプリコット・ブランデー20ml、グレナデン・シロップ20ml、オレンジ・ジュース10ml、レモン・ジュース1tspをシェイクし、氷入りのタンブラーに注ぐ。
キンキンに冷やしたソーダで満たし、軽くステアして最後にスライスしたオレンジを飾って完成。
甘口のロングカクテルで、ボヘミアン=自由奔放な放浪者のパッションを感じさせる赤が美しい。
 
ちなみに私がクイーンの洗礼を受けたのは、本作では華麗にスルーされていた映画「フラッシュ・ゴードン」を鑑賞した時。

映画は子供心にアホらしかったけど、「曲はカッコいいじゃん!」とレコード買ったのだ(笑

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