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ショートレビュー「バハールの涙・・・・・評価額1650円」
2019年01月31日 (木) | 編集 |
女だから、戦う理由がある。

イラクのクルド人自治区で、街を支配するイスラミック・ステート(IS)との戦いに身を投じる、女性だけの戦闘部隊の物語。
突然襲ってきたISに家族の男性を皆殺しにされ、自らは性奴隷にされた過去を持つ隊長バハールと、彼女を取材するフランス人ジャーナリストのマチルドの視点で描かれている。
「彼女が消えた浜辺」のゴルシフテ・ファラハニがバハールを、演出家としても知られるエマニュエル・ベルコがマチルドを演じ、これが二作目の長編作品となるエヴァ・ユッソンが監督・脚本を務める。
原題の「Les Filles du Soleil(太陽の女たち)」はバハールが率いる女性部隊の名。
バハールと彼女の部隊は、実在する多くのクルド人女性兵士を、マチルドはシリア内戦で殺害された隻眼のジャーナリスト、メリー・コルヴィンをモデルにしている。

アブー・バクル・アル=バグダーディーが、武装組織だったISによる“国家”を建国することと、自らのカリフへの即位を宣言したのは2014年。
シリア内戦の混乱に乗じて、瞬く間に勢力を拡大し、シリアとイラクの広い地域を支配下に置いたが、映像で見てもなおにわかには信じがたい、凄まじく残虐な暴政を敷いたことは記憶に新しい。
本作は、ISの急拡大期に当たる2014年夏に、イラクのトルコ国境近くのヤズディ教徒の町・シンジャルが攻撃された事実を元にしている。
国を持たない世界最大の民族と言われるクルド人は、大半がイスラム教徒だが、本作の主人公のバハールは、少数派のヤズディ教徒。
クルド人の一部が信仰する、独自の民族宗教だ。
異教徒に激しい憎しみを燃やすISにとっては、人間扱いしないでいい相手である。
2014年8月3日に町は陥落。
50万人が脱出したが、逃げ遅れた人も多く、男たちは無慈悲に虐殺され、女たちはISの兵士たちの性奴隷となり、子供たちは少年兵とするために連行された。
しかし、脱出に成功した女性たちの中には、自ら志願して抵抗組織の兵士になる者も多かったという。

映画は、奪われた子供たちの奪還作戦を描く“現在”を起点に、元は弁護士として幸せな人生を送っていたバハールの身に何が起こったのか、いかにしてISの支配を脱して、自ら銃を取るようになったのかを時系列を行き来しながら紡いでゆく。
作品自体はフィクションだが、モチーフは現実の出来事。
今年のノーベル平和賞を受賞した、ナディア・ムラドもバハールと同じシンジャル出身のヤズディ教徒で、ISに性奴隷にされた後脱出し、性暴力被害者の救済に当たっている人物。
作中には、ダリア・サイードというISに誘拐された女性の救出活動をしている女性政治家が出てきて、彼女のテレビでの呼びかけを見たバハールが、救出を依頼したことになっている。
銃後にいて助けるのか、最前線に立って戦うのか、選択は人それぞれだが、とんでもなく邪悪な暴力に直面した時、どちらも必要なのだと思う。
現実のクルド人女性部隊の戦いをルポしたニュース番組や動画も何度か見たことがあるが、彼女らの動機は「愛する者を殺されたから」「性奴隷として辱められたから」と映画と同じだった。
「女に殺されたら、天国に行けない」と信じるISの狂信的な兵士にとっては、勇猛なクルド女性部隊は恐怖の的だったという。

だいぶ沈静化したとは言っても現在進行形の戦争の話であり、映画的に盛った描写は皆無。
市街戦の戦闘描写はバハールに同行取材するマチルドの視点で描かれ、徹底的にリアリズム重視に仕上がっていて、まるで自分もその場にいるかの様な臨場感。
現実にも、こんな凄惨なことがたくさんあったのだろうと感じさせる。
戦争映画ではあるが、これはアクション映画ではないのだ。
バタバタと倒れてゆく「太陽の女たち」の姿と、彼女たちが自らを鼓舞するスローガン、「命、女、自由の時代」が心に刺さる。
今、観るべき作品だ。

今回は、烈女の映画なので「ドラゴン・レディ」をチョイス。
ホワイト・ラム45ml、オレンジ・ジュース60ml、グレナデン・シロップ10ml、キュラソー適量をステアしてグラスに注ぎ、スライスしたオレンジを添える。
ドラゴン・レディとは、元々男を支配するような神秘的な魅力のあるアジア人女性を指す言葉だが、この酒は結構甘口でジュース感覚で飲める。
バハールの様な女性たちに、平和な生活が戻りますように。

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