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アクアマン・・・・・評価額1750円
2019年02月09日 (土) | 編集 |
アーサー王の帰還。

いやー評判通りの面白さ!
間違いなく、「マン・オブ・スティール」から始まったDCエクステンディッド・ユニバース(DCEU)のベストだ。
色々トラブった挙句に興行的失敗作となってしまった、DCヒーロー大集合映画「ジャスティス・リーグ」でデビューを飾った海のヒーロー、「アクアマン」の単体作品。
人間の灯台守と海底王国アトランティス人の王女の間に生まれた、アクアマンことアーサー・カリーが、地上征服を餌に海底世界の覇者“オーシャン・マスター”の座を狙う異父弟、オームの野望を阻止する。
陽性の神話系統のヒーローという意味では、マーベルの「ソー」に近いキャラクターなのだが、なんでもアリの破天荒な内容とジェームズ・ワン監督の相性が抜群で、ムチャクチャ楽しい娯楽大作に仕上がっている。
ハワイ先住民の血をひくジェイソン・モモアが、お茶目カッコいいアクアマンを好演し、相方のおてんば王女メラにはアンバー・ハード。
ニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、ドルフ・ラングレンといったベテランの大物たちが脇を固める重厚なキャスティング。
今更だけど、やっぱこれを作ってから、「ジャスティス・リーグ」やれば良かったのにねえ。

アーサー・カリー(ジェイソン・モモア)は、アトランティスの王女アトランナ(ニコール・キッドマン)と、人間の灯台守トーマス・カリー(テムエラ・モリソン)の息子として生まれ、その特殊能力を生かし“アクアマン”として世界の海で起こる事件で活躍中。
ある時、巨大な津波が沿岸を襲う事件が起こり、メラ(アンバー・ハード)からこれがアーサーの異父弟でアトランティス王オーム(パトリック・ウィルソン)による地上攻撃の前兆だと知らされる。
オームは海を汚し続ける地上人への海底人の反感を利用し、地上人によるアトランティス攻撃をでっち上げ、海中の七王国全てを支配するオーシャン・マスターとなることを狙っていた。
阻止するには、アーサー自らがアトランティスへ赴き、自分の方が王にふさわしいことを全ての海底人の前で証明しなければならない。
準備不足のままオームと戦うことになったアーサーだったが、メラの機転で一旦退き、アトランティス王権の象徴でありながら、初代国王の遺体とともに行方不明になっている黄金のトライデント(三叉槍)を探す旅に出る。
しかし、その間にもオームによる七王国の支配は着々と進んでいた・・・・


本作を端的に言い表すならば、DCEUの世界観の中での神話の再構築だ。
物語の骨格となっているのは、「スター・ウォーズ:エピソードⅣ」に大きな影響を与えたことでも有名な、ジョセフ・キャンベルの名著「千の顔をもつ英雄」に著された、いわゆる「ヒーローズ・ジャーニー」である。
これは世界の英雄神話を分析すると、共通した構造があることを明らかにしたもので、「エピソードⅣ」の大成を受けて、研究が盛んになったハリウッドの脚本術のベースともなった。
もっとも、「ヒーローズ・ジャーニー」自体は、現在の脚本構造としてはもはや時代遅れなので、要素を忠実にトレースしつつ、順番はより効果的に構成されているのだけど、基本的に特殊な血を受け継いだ“運命の子”が、冒険を通して成長し、真の英雄となるまでを描く、定番の「ザ・貴種流離譚」だ。

それぞれの要素に関しては、過去に「ヒーローズ・ジャーニー」を元に作られた映画の中でも特に忠実に作られている。
基本構造は「セパレーション」「イニシエーション」「リターン」の三幕なのだが、このうち第一幕の終わりの部分は「闇への航海」と定義され、しばしば冒険への導入描写として、主人公は巨大な魚に飲み込まれてしまう。
映画にこの構造を当てはめるときは、普通別のシチュエーションに置き換えるのだが、本作は海中が舞台なのをいいことに、本当に巨大魚(クジラ)の口に入ってみせる。
ちなみに「ピノキオ」のクジラのエピソードが、神話にインスパイアされていることも、作中でメンションされている通り。

さらに、「リターン」の終わりに至って、主人公はそれまで纏っていた仮の姿を捨て、真の英雄(神的な存在)となることで、以前の自分が属していた世界と、新たに統べることになった世界の境界を取り払い、「二つの世界を導く者」となる。
本作では人間とアトランティスの血を受け継いだアクアマンは、七つの王国の王・オーシャン・マスターとなり、地上と海との架け橋となる。
彼の名前の由来であるアーサー王伝説も、「ヒーローズ・ジャーニー」の典型例であり、ウィレム・デフォーが演じるバルコは、いわば海の世界の魔術師マーリンか。
真の王の証として、アーサーが黄金のトライデントを引き抜くのは、もちろん宝剣エクスカリバーに符合する。

面白いのは、この古典的な構造を使いながら、テーマ的なモダナイズはあえて行わず、なんでもアリのファンタジー映画としてそのまま昇華していることだ。
一応、オームがオーシャン・マスターの座を求める理由は、統一軍を率いて「海を汚し続ける地上に懲罰を加えるため」ということになっているのだが、それは建前であって映画は異父兄弟の王権をめぐる争いに終始し、“地上の罪”がフォーカスされることは結局ない。
これがマーベルだったら、やっぱり王家のお家騒動の話だった「ブラックパンサー」が、アフロアメリカン史を内包する極めて政治的な映画だったように、環境汚染の問題と絡めるなど、少なからず現実とのリンクを作って来そうだが、本作の場合はエンターテイメントとしての割り切りがものすごく潔い。
テーマ性の追求は分断の解消という普遍的なものに留め、リアリティラインを含め、過去のDCEUからの縛りもほとんど無くしているがゆえ、ジェームズ・ワンの演出もやりたい放題、まさにフリーダムなアメコミ映画の楽しさに満ちているのである。

クジラの腹からの冒険の大半が、黄金のトライデントを探すトレジャーハンティングの旅に割かれていて、ブラックマンタら追っ手のヴィランズと戦いながら、陸海空を駆け抜ける冒険は、ちょっと「インディ・ジョーンズ」的な風味も。
そういえばジェームズ・ワンて、完全にルーカス、スピルバーグ世代で、元から彼らの大ファンを公言していたような。
なるほど、「スター・ウォーズ」+「インディ・ジョーンズ」のノリも納得だ。
砂漠の砂海王国とか、あれを海の王国に含めるのは相当に無理があるのだけど、海の中ばっかりだと画的なメリハリに欠けるので、シチリアでの市街戦を含めて、陸のエピソードが良いアクセントになっていたのではないか。
海溝の国の怪物たちの恐ろしさは、さすがホラーで名を馳せた監督だし、トライデントを守る巨大怪獣は「パシフィック・リム」まで入ってるてんこ盛り。
それまで出てきたほぼ全てのキャラクターが勢ぞろいして激突する、クライマックスのバトルシークエンスに至っては、もうボリュームありすぎてお腹いっぱい。

アメコミの世界は、ハリウッドよりもずっと以前から、積極的に神話のキャラクターや物語構造を取り入れてきた歴史がある。
その意味では海の神話の再構築である本作は、まさに鉄板の安定感で調理され、刺激的なスパイスで味付けされた豪華フルコース。
「ワイルド・スピード SKY MISSION」に続く本作で、ジェームズ・ワンは決してホラー映画だけではない、エンターテイナーとしての豊かな才能を存分に証明してみせた。
例によってエンドクレジット中のおまけもあり、続編も作る気満々。
それが「アクアマン2」になるのか、仕切り直しの「ジャスティス・リーグ2」になるのかは分からないが、これだけ楽しませてくれたのだから、やっぱり期待しない訳にはいかないだろう!

今回は主演のジェイソン・モモアのルーツ、ハワイのクラフトビール「コナ ハナレイ・アイランドIPA」をチョイス。
パッションフルーツ、オレンジ、グアバを使用したフルーツIPA。
IPAとは、インディアン・ペール・エールのことで、強いホップ感が特徴。
ホップの苦味とフルーティな香りのハーモニーを楽しめる、コナならではの強かわいいビールは、ワイルドでチャーミングなアクアマンにぴったり。

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ショートレビュー「メリー・ポピンズ リターンズ・・・・・評価額1650円」
2019年02月09日 (土) | 編集 |
メリーは、今回もMr.バンクスを救いにやって来る。

P・L・トラヴァースの児童小説を原作とする、ミュージカル映画の金字塔「メリー・ポピンズ」の、実に54年ぶりとなるオフィシャルな続編。
物語の中では前作から25年が経過し、主人公はバンクス家の長男だったマイケルへと代替わり。
かつて子供だったキャラクターが大人になって、社会のしがらみを絡めた問題を抱えているのは昨年の「プーと大人になった僕」と同じ構図だ。
一家の大黒柱となったマイケルは、最愛の妻を亡くしたばかりで、三人の子供たちをどう育てていいのか分からず、姉のジェーンのサポートを受けてもなおテンパり気味。
しかも背景となるのは大恐慌時代。
バンクス家は、借金の焦げ付きで家を失う危機に瀕しているのである。


八方塞がりの状況のマイケルの元へ、魔法使いのナニー、メリー・ポピンズが25年ぶりに現れる。
「メリー・ポピンズ」制作のビハインド・ザ・シーンを描いた「ウォルト・ディズニーの約束」では、ディズニー側が作品のテーマを理解していないと思った原作者のトラヴァースがこう言い放つ。
「メリー・ポピンズが子供たちを救いにやって来たですって?あきれた!」
現在日本でも虐待やネグレクトに苦しむ子供は後をたたないが、そこまで極端でなくても子供たちが抱えている問題の原因は往々にして親。
親が幸せでないのに、子供が幸せになれる可能性は低い。
救われるべきは子供たちではなく、社会という牢獄に閉じ込められ、信頼できる友だちもおらず、ただ厳格で利己的なふりをして自分を保っているかわいそうな父親、Mr.バンクスなのである。

メリー・ポピンズが子供たちとの愉快な冒険を通して、二代目Mr.バンクス、マイケルの硬直した心を間接的に溶かし、一家の危機を救う流れは、本作でも踏襲されている。

しかし、前作で子供たちが作った理想のナニーを求めるチラシのような、メリーが再びやって来る「動機」の部分が無かったり、マイケルの抱えている葛藤が第一義的には「家を失う」という極めて物理的なもので、どちらかといえば精神的な救いをもたらすメリーの存在とのマッチングが今ひとつだったりといった問題点もちらほら。
クライマックスの流れは、前作というよりも「プーと大人になった僕」を思わせ、メリーの行動などはちょいご都合主義を感じさせてしまうのだが、まあギリギリ良しとしよう。

前作の凧揚げのシーンつながりだからか、今回メリー・ポピンズは凧を手にして空から現れる。
Mrs.バンクスが婦人参政権運動をしていた流れで、娘のジェーンも労働運動をしていたり、悪役の銀行の頭取ミスター・ドース・シニアを演じたディック・ヴァン・ダイクが、歳をとったドース・ジュニア役で再登場したり、意外と前作とのつながり要素が多いので、知っていた方が楽しめるだろうが、単体で観ても問題ない作り。

ディック・ヴァン・ダイクのルックスが全く変わってないので、一瞬CGかと思った。
まあよく考えたら、前作の彼は本作のジャックに当たるメリーの友だちのバートと二役だったから、ドース・シニア役は老けメイクだった訳だが、それにしても93歳にして現役とは!
バルーン・レディ役で登場のアンジェラ・ランズベリーといい、90代元気すぎ。
そういえば、赤い風船が童心の象徴となっているのも、「プーと大人になった僕」と共通している。



シャーマン兄弟による前作の歌はそのままは使われておらず、全てマーク・シャイマンが書き下ろしたニューナンバーなのだが、カラフルなミュージカルシークエンスのビジュアルは素晴らしく、ボリュームも満点でお腹いっぱい。
陶器の世界の手描きアニメーション表現は、前作への熱いオマージュを感じさせ、嬉しくなってしまった。

やはり餅は餅屋で、ロブ・マーシャル監督の演出は、ミュージカル作品では水を得た魚の如く生き生きしてる。
惜しむらくは、楽曲のクオリティは総じてハイレベルなものの、前作の「チム・チム・チェリー」の様な、決定的にインパクトのある歌が無いこと。
これがあるか無いかでは、作品の最終的な印象の強さがだいぶ違ってきてしまう。
特筆すべきはタイトルロールを演じるエミリー・ブラントで、伝説的なジュリー・アンドリュースに勝るとも劣らない名演をみせ、歌やダンスも見事な仕上がり。

アカデミー主演女優賞にノミネートされなかったのが、ちょっと信じられないくらいだ。

今回はまんま「メリー・ポピンズ」をチョイス。
ドライ・ジン60mlとクレーム・ド・カカオ(カカオ・リキュール)10mlを、氷で満たしたミキシング・グラスに入れ、ステアし、カクテルグラスに注ぐ。
チョコレート色の大人なカクテル。
カカオの香りとジンの清涼感のマッチングは、以外と悪くない。

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