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アリータ:バトル・エンジェル・・・・・評価額1700円
2019年02月22日 (金) | 編集 |
戦闘少女は、何のために蘇ったのか?

遥か未来、記憶を失ったサイボーグ少女ガリィが、数奇な運命に導かれ、多くの出会いと別れを繰り返しながら、失われたアイデンティティを求め戦い続ける。
90年代に人気を博した木城ゆきとの傑作SF漫画「銃夢」を、ジェームズ・キャメロンが映画化すると報道されたのは、もう20年近く前のこと。
しかし、実際の制作は遅々として進まず、幻の作品になるかと思われたのだが、原作の完結からほぼ四半世紀を経て、ついに映画作品「アリータ:バトル・エンジェル」として姿を現した。
ジェームズ・キャメロンはプロデュースと脚本にまわり、監督は「シン・シティ」のロバート・ロドリゲス。
主人公のガリィ改めアリータを、「メイズ・ランナー」シリーズのブレンダ役で知られるローサ・サラザールがパフォーマンス・キャプチャで演じ、クリストフ・ヴァルツ、マハーラシャ・アリ、ジェニファー・コネリーら、錚々たるオスカー俳優たちが脇を固める。
※核心部分に触れています。

文明が、天空に浮かぶ空中都市ザレムと、荒廃した地上に別たれた26世紀。
ザレムの真下にあるクズ鉄町で医師をしているイド(クリストフ・ヴァルツ)は、ある日使えるサイボーグのパーツを探しに出かけたゴミ捨て場で、ボロボロに壊れた少女の頭部を見つける。
奇跡的に脳が生き残っていたことから、イドは彼女に新しいボディを与えて蘇生させ、アリータ(ローラサ・サラザール)と名付ける。
彼女は完全に記憶を失っていたが、イドのところにパーツを売りに来るヒューゴ(キーアン・ジョンソン)と仲良くなり、街での生活にも馴染んでくる。
ところが、街で女性ばかりを狙う連続殺人が起こり、ふとしたきっかけでイドが犯人ではないかと疑ったアリータは、ある夜彼の後をつけ、偶然ホンモノの殺人犯と出くわしてしまう。
イドは犯人ではなく、副業で犯人を追う賞金稼ぎをやっていたのだ。
3人のサイボーグに取り囲まれ、絶体絶命のイドとアリータだが、突然アリータが恐るべき戦闘力を発揮して、瞬く間に敵を倒す。
実は彼女の正体は、300年前に起こった没落戦争で、ザレム攻略のために作られた火星連邦共和国の決戦兵器だったのだ・・・


喧嘩っ早くて惚れっぽい。
直情型最強バトルヒロイン、アリータたんに萌える映画だ。
ファーストビジュアルが出た当時、巨大な瞳を持つキャラクターデザインが物議を醸し、「不気味の谷の典型例」などとひどいことを言われていたが、全くの杞憂である。
CGキャラクターの彼女が、とにかく可愛くて魅力的で、惚れてしまいそうだ。
この映画の作り手は、日本漫画の核心がキャラクターの力であることをよく分かっている。
アニメーションとも実写とも違うアリータを、ここまで生き生きと描けたのは、デザインもさることながら、“中の人”ローサ・サラザールの好演と、彼女の演技を実際のキャラクターに移し替えたCGアーティストの緻密な仕事の、幸福なマリアージュの結果。

その意味で、本作の映画化が伸びにのびて2019年になったのは、必然だったのかもしれない。
おそらくゼロ年代初頭だった企画初期の段階では、キャメロンはアリータをフルCGで作ろうとは思っていなかったはず。
当時私もCGアニメーションの仕事をしていたが、本作の様なキャラクターは、ソフト的にもハード的にも、あの頃の表現力ではとてもじゃないが不可能だった。
長い歳月企画を寝かせているうちに、キャメロン自身の作品である「アバター」などを経て技術革新が飛躍的に進んだことと、本作の制作のタイミングは密接な関係があると思う。

またCGキャラクターの生かし方も、よく研究されている。
イドに新しいボディをもらって目覚めたアリータが、最初にやるのが物を食べることという脚色は上手い。
「食べる」という行為は非常に人間的なので、キャラクターのリアリティを高め、感情移入を誘う効果がある。
特に異世界や異なる時代を描いた作品、例えば宮崎駿のアニメーション作品なども、ジブリ飯などと言われる食事シーンが多いが、あれも“絵”に過ぎない非日常世界のキャラクターに、より人間性を感じさせるためなのだ。
本作でも美味しそうに初めてのオレンジを頬張るアリータの様子を見て、観客は彼女を「生きてる」人物だと感じたはず。

本来は本作を監督するはずだったキャメロンは、「アバター」シリーズとのバッティングのため、本作ではプロデュースと脚本の担当。
だが、そもそも彼は監督としては自分のオリジナル脚本の作品しか手がけていない人で、原作付きの作品は本作が初めて
他の監督に脚本を提供するのも、テレビドラマの「ダーク・エンジェル」を除けば、元妻のキャスリン・ビグローの「ストレンジ・デイズ/1999年12月31日」以来24年ぶりで、極めて珍しい。
それだけ原作に惚れ込んだということだろう。

プロットは、原作の前半部分を中心に取捨選択。
原作では、地上で人体実験しまくっているマッドサイエンティストのノヴァ博士が、ザレムの独裁的支配者(誰かと思ったらエドワード・ノートンだ!)となっていたり、イドの過去設定が異なっていたり、ベースの部分にかなり重大な変更点がいくつかあるが、逆にディテールの描写は非常に忠実に再現されているので、印象としては確かに「銃夢」以外の何物でもない。
もっとも、早いスパンで怒涛の展開をする漫画の脚色は、堅実な構成を得意とするキャメロンにとってはやはり勝手が違ったのか、サブキャラクターの感情変化が唐突だったり、ややダイジェストを感じさせる。
まあ色々突然変わるのは原作もそうだったしな・・・と思わないでもないが、やはり脚色は上手くいっている部分がある一方で、そうでない部分もあるのは否めない。
米国の批評が分かれている理由も、この辺りで分かるのだが、全編に滲み出る原作へのリスペクトは、「銃夢」ファンとして大いに肯定したい。

私が最も好きな部分は、なによりもビジュアルを含めたアリータのキャラクターだ。
兵器として作られた彼女は、一度覚醒すると変わってゆく自分をどんどんと受け入れてゆく。
彼女に二度目の命を授けた擬似的な親であり、亡き娘の面影をアリータに見ているイドは当然戸惑うのだけど、子はいつか巣立つもの。
戦うことが自分のアイデンティの一部なら戦おう、目の前にいる悪を倒そう。
嘗てのサラ・コナー、エレン・リプリー、ローズ・ドーソンらと同様に、アリータも地に足をつけ、自らの力で運命を切り開く女性であり、このヒロイン像こそが、キャメロンが原作に惹かれた核心なのだと思う。

運命の相手とピュアな恋に落ちるのも、サラやローズと同様で、ヒューゴとのロマンスも過去の二人と同じ様な悲劇的結末を迎える。
ザレムを目指したヒューゴが、海ならぬ雲海に落ちて消えるのは、明らかに「タイタニック」のジャックの最期を意識した描写。
違いは、本作のカップルは圧倒的に女性主導で、アリータが自分の心臓をヒューゴに捧げるシーンに象徴されるように、常に彼女が推進力になり、問題を抱えた男が引っ張られていること。
アリータは、常にフェミニズム的傾向を持つキャメロンのヒロイン像の究極形と言える。

もちろん、映像の出来は文句無しの仕上がりで、なんでもアリのバトルゲーム、モーターボールのシークエンスの迫力は漫画を超えているし、アリータが使う火星の格闘技「機甲術」も説得力十分のカッコよさ。
クリストフ・ヴァルツはじめ、人間が演じているキャラクターの再現度も高い。
一部ではキャメロン色が強く、あんまりロドリゲス的でないという意見もある様だが、アリータが最初に戦いに覚醒するところから、すでに相手の首を捥いじゃったりしているので、実はやってることはいつもとそれほど変わってない。
今回はアンドロイドなので、血がドバッと出たり、内臓がはみ出したりしないだけで、それなりに個性を出していたのではないか。
まあダニー・トレホが出ていたら、そんなことも言われなかったと思うけど(笑
不満の残る部分もあるが、総じて「銃夢」の映像化として、てんこ盛りのエンターテイメントとして、満足できる作品になっている。
とりあえず今回の作品のボリュームだと、おそらくは二部作を前提としているはずなので、何とか回収してもらって完結編を期待したい。
アリータにボコられた後、ザパンの鼻がずっと曲がってるのが可笑しい(笑

今回は、戦いの天使のために「エンジェル・ウィング」をチョイス。
クレーム・ド・カカオ・ブラウン20ml、プルネル・ブランデー20ml、生クリーム適量(他の材料と同じ厚み)を、静かにビルトしてゆく。
下からブラウン、イエロー、ホワイトが三色の層となり、とても美しいカクテルだ。
一番上の生クリームの触感が、まるで天使の羽に優しく触れられている様な、不思議な感覚のカクテルだ。

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