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見えない目撃者・・・・・評価額1750円
2019年09月23日 (月) | 編集 |
もう二度と失わない。

これは凄い映画だ。
事故で失明し、心に傷を抱えた元女性警官が、図らずも事件の“目撃者”となり、残虐な殺人犯と対決する、アン・サンフン監督のサスペンススリラー、「ブラインド」の日本版リメイク。
普通リメイク映画は、元の話を知っているとどうしても新鮮味が落ちるもの。
ところが本作は、オリジナルの韓国版も中国リメイク版も軽々と超え、ぶっちゃけはるかに面白い。
主人公の女性が、もう一人の若い男の目撃者と共に犯人に迫るプロットのアウトラインは同じだが、ディテールの密度が桁違いに濃いのだ。
犯人像の日本ならではのローカライズ要素、新たに設定された伏線など、プロットのあらゆる部分が強化され、オリジナルを観ていても充分以上にに楽しめる。
オリジナルでキム・ハヌル、中国版ではヤン・ミーが演じた主人公を、吉岡里帆がキャリアベストの好演で魅せる。
監督と脚色は、「リトル・フォレスト冬春夏秋」四部作が素晴らしかった森淳一。
共同脚本の藤井清美と共に、見事な仕事をしている。
※核心部分に触れています。

警察学校を首席で卒業した浜中なつめ(吉岡里帆)は、卒業式の日に交通事故を起こし、同乗していた弟の大樹を死なせ、自らも視力を失い、警察官としての将来を断たれる。
それから三年が経ったが、なつめは今も弟の死を乗り越えられないでいた。
ある日、スケボーと自動車の接触事故の現場に居合わせたなつめは、停止した車の後部座席から窓を叩く音と、「助けて」という若い女性の声を聞くが、ドライバーは走り去ってしまう。
誘拐事件を疑ったなつめは警察に通報。
刑事の木村(田口トモロヲ)と吉野(大倉孝二)が捜査に当たるも、該当するような失踪捜索願は出ていない。
そんな時、車と接触したスケボーの高校生、国崎春馬(高杉真宙)が特定される。
事情を聞かれた春馬は、後部座席に女性はいなかったと証言し、事件は終わったかに思われた。
しかし、納得できないなつめは、春馬に協力させて独自に調べはじめ、最近行方が分からなくなった家出人の女子高生がいること、彼女が“救さま”と呼ばれる謎の人物と接触していたことを突き止めるのだが・・・


21世紀のサスペンススリラーの本場、韓国の御株を奪うかのごとき傑作だ。
2011年に公開された「ブラインド」は、まずまず面白い映画だったが、色々目に付く欠点があって、正直手放しで絶賛できる仕上がりではなかった。
アン・サンフンが自ら手がけた中国版のリメイクでも、ある程度のローカライズや改良はやっているものの、プロットの根本的な問題はそのまま放置されていたので、やはり今ひとつな印象のまま。
最大の欠点は、早々に顔出しされる犯人のキャラクターに、単なる変態さんを超える魅力が無く、行動原理が不明瞭なまま進行してしまうことだろう。

オリジナルで主人公が事件と接する起点は、彼女がタクシーと間違えて女を漁る犯人の車に乗ったこと。
ところが犯人は途中で交通事故を起こし、瀕死の被害者を拉致すると、主人公を置き去りにして逃走するのである。
だから主人公も、ただのひき逃げ事故として警察に届けるのだが、この時点では世間を騒がせている女性失踪事件の犯人だとは誰も思っていない。
問題は、失踪事件とひき逃げが結びついた訳でもないのに、犯人が多大なリスクを冒して主人公ともう一人の目撃者を執拗に追い回し、結果として全てが明るみ出てしまうことだ。
犯人は性犯罪者の医師という設定だが、後先考えない行動があまりにも愚かすぎるのである。
その他にも登場人物の行動に疑問符がつく描写が多々あり、全体として“目の見えない目撃者”というワンアイディアに頼りすぎて強引に展開させている印象。

対して日本版では、最初から主人公に誘拐事件だと認識させることで、被害者生存率が72時間を経過すると低下するタイムリミットを意識させ、展開をスピーディーかつスリリングに。
犯人像も最初から見せずに、徐々に正体に迫る構造としてミステリとしての魅力を追求。
さらにオリジナルで犠牲者の遺体が発見されるのは、事件の全貌が明らかになった後だったが、こちらは中盤で手、鼻、口、耳が切り取られた4人の遺体が発見され、犯行の目的を単純な快楽殺人から、過去の事件と関連する宗教的な儀式殺人として猟奇性を高めると共に犯行動機を強化。
終盤になって明かされる犯人の正体も、意外性と共に説得力があり、キャラクターとしてより魅力的で恐ろしい存在になっている。
R15指定でスプラッター描写はかなりキツ目だが、悪趣味になってしまうギリギリで寸止めしているので、ホラー耐性がそれほどない人でもなんとか大丈夫だろう。
また、あまり意味のなかった主人公の孤児設定をやめて、母親との感情の対比で弟の喪失の意味を深め、拳銃や弟の形見の品といったアイテムも、緻密に配された伏線によって、主人公のエモーションを強化する形で生かされているのが素晴らしい。

キャラクターの関係性でも、オリジナルでは単なる証人にすぎない主人公が、まるで刑事とバディのように行動を共にしていたのが不自然だったが、こちらではなつめと春馬の市民コンビと、木村と吉野の公僕コンビが、それぞれのルートで事件の真相に迫るマルチトラック構成。
終盤に全ての要素が事件の真相へと収束し、ミステリならではの謎解きのカタルシスを感じられる様になった。
なつめを演じる吉岡里帆という役者さんは、過去の作品からなんとなく生真面目で堅いイメージがあったのだが、本作では心に傷を抱えた元エリート警察官という役柄にピタリとハマる。
事件の捜査は、なつめが3年前の悲劇から立ち直るための、段階を踏んだ復活のプロセスにもなっていて、クライマックスで犯人と直接対決するシーンでは、一度はなすすべなく全てを失ったが、二度目は絶対に失わないという決意が、熱いパッションとなってスクリーンから迸る。
喪失と再生のドラマを見事に演じきり、間違いなく彼女の代表作となるだろう。

犯人の設定変更とあわせて、被害者たちを親に見捨てられた子供たち、ある種のインビジブルピープルとして共通する社会性を持たせたのも良かった。
たまたま通りかかった誰かよりも、ずっと興味深く、感情移入出来る設定だ。
森淳一と藤井清美の脚色は、例えば地下鉄駅での手に汗握る追跡劇など、オリジナルの優れたエンターテイメント要素を最大限生かしながら、プロット上の欠点を徹底的に潰した上で、日本ならではのローカライズを加え、驚くべき未見性のある作品に仕上げている。
もちろん、オリジナルの土台があっての作品なのは間違いないが、リスペクトを捧げつつ、的確な脚色とオリジナリティを追求した制作スタンスによって、トンビがタカどころかオオワシを産んだ稀有な例となった。
リメイク映画のお手本のような作品だが、個人的に嬉しかった改変点は、とても愛らしい犬ちゃんを殺さなかったこと。
あれはオリジナルで一番キツイ描写だったから。
関係ないけど、國村隼は韓国のスリラー絡みだと「哭声/コクソン」の印象が強すぎて、真犯人かと疑ってしまった(笑

吉岡里帆は日本映画の聖地、京都は太秦の生まれだそう。
今回は京都の地酒、増田徳兵衛商店の「月の桂 純米酒」をチョイス。
米の香りと甘み、適度な酸味も感じられ、キリッと澄んだ仕上がり。
今の季節は冷酒が美味いが、寒くなれば燗でもいけそう。
シチュエーションを選ばない、クセの無いナチュラルなお酒だ。

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