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ショートレビュー「ホテル・ムンバイ・・・・・評価額1650円」
2019年09月26日 (木) | 編集 |
本当の悪魔は誰か?

2008年11月26日、インド最大の都市ムンバイで、鉄道の駅や病院、ホテルなどが武装集団に襲撃され、400人以上の死傷者を出す同時多発テロ事件が起こった。
本作は、事件当日に多くの人々が取り残された、タージマハル・ホテルを舞台とした群像劇。
凄まじい緊張感が2時間ずっと持続する、とてつもなく恐ろしい擬似体験映画だ。
監督はオーストラリア出身で、キプロス紛争をモチーフとした短編映画「The Palace」などで国内外で高い評価を受けたアンソニー・マラス。
豪印合作の本作で長編デビューを飾り、見事な結果を出した。

圧倒的で身の毛もよだつ暴力に直面した時、抵抗する手段を持たない人はどう行動するのか、すべきなのか。
突然の出来事に取り残された数百人の宿泊客たちの極限の生き様と、彼らを守り通そうとするホテルマンたちの矜持、そして事件の実行犯となった若者たちの背景にあるもの。
100年以上の歴史を持つタージマハル・ホテルは、インドを代表する高級ホテルゆえに外国人の宿泊客も多く、世界に“恐怖”を植えつけたいテロリストにとっては格好の標的。
彼らの目的は身代金ではなく、一人でも多くの異教徒を殺すこと。
最初から死を覚悟した実質的な自殺攻撃なので、解放を交渉することも出来ない。
見つかれば確実に殺されるという状況下で、ただひたすら迷路のような巨大なホテルの中で、犯人たちの目を逃れ、隠れるしかない絶望感。

デーヴ・パテルやアーミー・ハマーと言ったスター俳優も出ているが、実話ベースの映画ゆえ、いわゆる“フラグ”も容赦なく裏切ってくる。
ここでは生と死をわけるのは単なる偶然に過ぎないので、1秒たりとも気を抜けるところが無く、観終わってどっと疲れた。
映画では一晩の話に見えるが、実際に特殊部隊の突入によってホテル全体が制圧されたのは、最初の襲撃から3日が経った11月29日のことだったという。
いつどこで犯人と出くわすか分からず、1分先の生すら保証されない、凄まじい惨禍の中に3日!
このシチュエーション、もし自分だったらどうするかと思うと、背筋が凍る。
耐えられずに精神崩壊して、フラフラと犯人の前に出て射殺されそう。

11年が経過した今も、事件の全貌は明らかになっておらず、生きて捕まった実行犯は、鉄道駅などで72人を殺害したとして死刑判決を受けたパキスタン人一人だけ。
劇中でも犯人グループの若者が、ホテルで初めて水洗トイレを見て驚く描写があるが、貧しさゆえにやり場のない怒りを抱いた無学な若者たちを、過激思想で洗脳し、チェスの駒のように操って死に追いやり、自分は楽しんだ挙句に逃げおおせた「声だけの黒幕」が一番おぞましい。
貧困とそれを利用する者こそが、本当の悪魔であり、悪魔の仕掛けだということがよく分かる。

それにしても、劇中でもかなりショボかったが、インド警察ちょっと貧弱すぎだろう。
都市圏の人口が2000万を超える世界有数の大都会なのに、対テロ特殊部隊も無く、デリーから呼び寄せてもいつまで経っても現場に到着しない。
実際、この事件が起こる前には多くの警告や前兆があったのに、防ぐことが出来なかった。
行き当たりばったりの対応が、インドっぽいといえばそんな気もするが、過去にもテロ攻撃はあったんだからもうちょっと出来ることはあったはず。
今では対策も強化されていると信じたいものだ。

今回は、舞台となるホテルと同じ名を持つビールを。
インドの国民的銘柄、キングフィッシャーで有名なUBグローバルが生産する「タージマハル プレミアム ラガービール」をチョイス。
基本的な味わいは、キングフィッシャーと似たスッキリとライトなテイスト。
事件で大きな被害を受けたタージマハル・ホテルは、今はすっかり修復されて賑わいを取り戻しているそうだが、いつかタージマハルでタージマハルを飲んでみたいものだ。

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