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ターミネーター:ニュー・フェイト・・・・・評価額1650円
2019年11月09日 (土) | 編集 |
運命は変えられるか?

前作の「ターミネーター:新起動/ジェニシス」の興行的・批評的失敗を受けて、当初予定されていた三部作がキャンセルされ、シリーズ生みの親であるジェームズ・キャメロンが、プロデューサーとして復帰した再リブート作
キャメロンが参加していない「ターミネーター3」以降のシリーズは無かったことにされて、1991年の「ターミネーター2」から直接続く続編だ。
サラ・コナーはスカイネットによる“審判の日”の到来を阻止したものの、代わって未来世界の支配者となった別のAIによって、新たなターミネーターが送り込まれる。
未来は変わっても、人間そのものが変わらなければ、滅びの運命は何度でもやって来るという訳か。
「新起動/ジェネシス」に引き続きシュワルツェネッガーがT-800を演じ、サラ・コナー役には28年ぶりにリンダ・ハミルトンが復帰。
ティム・ミラー監督と言えば「デッドプール」の悪ノリが記憶に新しいが、本作ではキャメロンのお墨付きを得て、正統派のアクション巨編として仕上げている。
※ラストに触れています。

メキシコシティの自動車工場で働くダニー・ラモス(ナタリア・レイエス)は、ある日突然未来から送り込まれた新型ターミネーターRev-9(ガブリエル・ルナ)に襲撃される。
ターミネーターを阻止するために現れた謎の女グレース(マッケンジー・デイビス)に助けられ、九死に一生を得たものの、父と弟は殺されてしまう。
執拗に追ってくるRev-9からダニーとグレースを救ったのは、逃亡者となっていたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)だった。
1984年以来、彼女がターミネーターと戦い続けたことによって、1997年8月29日に起こるはずだった“審判の日”は避けられたものの、息子のジョンはT-800型ターミネーターに殺されていた。
「未来は変わったはずだ」と言うサラに、グレースはスカイネットとは別の、“リージョン”と呼ばれるAIが支配する未来から来たと告げる。
実は、サラにダニーとグレースのことを知らせたのは、ターミネーターの出現場所を感知できるテキサスに住む謎の人物。
その発信源はグレースの持つ座標データと一致し、三人は国境を越えることを決意するのだが・・・・


冒頭の“審判の日”を語る若きサラ・コナーの尋問映像で、観客をターミネーター世界にグッと引き寄せる。
基本的に、本作のプロットはジェームズ・キャメロンによる、伝説的な第一作と第二作を融合させた、21世紀のバージョンアップ版である。
人類の運命を握っているがゆえに、ターミネーターのターゲットとなるサラ・コナーはダニー・ラモスに、哀愁の未来戦士ことカイル・リースの役割は、マッケンジー・デイビスが演じるむちゃくちゃカッコいいサイボーグ兵士のグレースに受け継がれた。
そこへ過去と現在を繋ぐ役割のサラと、「ターミネーター2」のナイスガイ・キャラクターの延長線上にあるT-800が絡む構図。

一目見て分かる旧作との違いは、女性チームの話になっていることと、ヒスパニック文化の浸透だ。
物語はメキシコシティで始まり、ダニーはメキシコ人女性で、追ってくるRev-9もヒスパニック男性に擬態している。
国境越えが大きなポイントになるのも、トランプ政権下でのメキシコとの移民をめぐる軋轢の反映だろう。
ダニーを演じるナタリア・レイエスの中南米のスター俳優だし、この30年間のヒスパニック人口の増加とアメリカでの地位向上が、本作の大きなバックグランドになっていることは間違いない。

また未来からの救出者が数段パワーアップしつつ女性化しただけでなく、守られるダニーの役割も変わっている。
旧作のサラ・コナーは“人類を救うジョン・コナーの母”であり、あくまでも救出の対象はジョンだった。
ところが、本作では“審判の日”を回避した直後の1998年に、ジョンはしつこく送り込まれたT-800によって殺されてしまった設定。
どうやら過去に介入すると、少しづつ未来も書き換えられる様で、“審判の日”が起こらなかったことで、かつてジョンを狙ったスカイネットはリージョンと呼ばれる別のAIと入れ替わり、人類を救う人物も異なってくる。
旧作のサラが、救世主ジョン=キリストを生む聖母マリアだとしたら、本作のダニーは枝分かれした未来の新たなジョン、即ちキリスト本人なのである。
人類の未来が男の英雄ではなく、今は平凡な一人の若い女性にかかっている設定は、いかにも現在を感じさせる。

本作の物語の核心はほとんどダニー、グレース、サラの魅力的な女性キャラクター三人の関係性で描かれるので、後半から登場するT-800に関しては、ぶっちゃけファンサービスの様なもの。
ストーリー上の彼の役割は三人を引き合わせることなので、出てきた時点で主な仕事は終わっている。
あとはちょっとした助っ人プラス、ジョンを殺した過去を巡るサラとの確執程度だが、これは基本的には終わった話。
すっかり人間界に適合したT-800が、家業のカーテン選びのウンチクを語ったりするのは可笑しいし、銃をコレクションしている理由を聞かれて「なぜならここはテキサス」と答えるのには思わず吹いたが、「ターミネーターといえばシュワルツェネッガーでしょ!」と言うファン心理をくすぐるアイコン以上の存在にはなっていない。
T-800が人間と過ごすことでプログラミングされていない“感情”を発露することは、「ターミネーター2」のラストで示唆されていたので、このキャラクター設定には違和感は無かったが、それを含めて第一作、二作目の鑑賞は必須で、あちこちにファン泣かせのオマージュが散りばめられているのも楽しい。

ちなみに今回の作品によって「来なかった未来」となった「ターミネーター3」以降から、ちゃっかり頂いてる要素もチラホラ。
1998年に、ジョンを殺したT−800がオレンジ色のジャケットを着ているのは、おそらく「ターミネーター3」でクリスタナ・ローケンが演じた女ターミネーター、T-Xの衣装へのオマージュ。
あれはもうちょっと赤みが強かったけど、彼女も“審判の日”の後に送り込まれたターミネーターだった。
T-800の外見が老けるのは、「新起動/ジェニシス」でCGではなく現在の年齢のシュワルツェネッガー登場した時の、「皮膚は老化する」という設定を踏襲したもの。
もっとも、T-800が「有機物の皮膚があるからタイムマシンに入れる」という設定自体は、第一作の時に説明されていた。
厳密に考えると「それではT-1000や今回のRev-9は?」という疑問も出るが、野暮は言うまい。
Rev-9を倒すために、傷付いたグレースが自分の動力源を提供するのは、「ターミネーター4」でサム・ワーシントン演じるサイボーグ・ターミネーターが、ジョンを救うために自分の心臓を捧げたのを思わせる。
これら、パラレルワールドとなってしまった過去の続編を取り込みつつ、本作はいわば「ターミネーター全部入り」の、豪華なエンタメ映画になっているのだ。

墜落するC-5輸送機内の無重力アクションは、カット割りすぎてちょっと見難いものの、個体と液体の複合型で、二体に分離して戦うこともできるRev-9の特性を生かし、アクションもシリーズ伝統の豪快なカーアクションから、スピード感のある肉弾戦まで色々なパターンでてんこ盛り。
タイム・パラドックスを含めて、プロットが相当に強引なのは相変わらずだが、意外性もあって面白い。
少なくともここには感情を動かされるドラマがあり、商業主義の出がらしみたいな過去の続編よりも、遥かに楽しめる快作になっているのは確かだ。
しかし、シュワルツェネッガーは、一時期カリフォルニア州知事になってた頃を除けば、ずっとスクリーンで変遷を見てたけど、久々のリンダ・ハミルトンが年齢相応に美しい戦闘ばあちゃん化してたのは歳月を感じる。
米国での興行は、キャメロンとハミルトンの復帰にも関わらず今ひとつ伸びていないらしいが、払拭したはずの第二作の悪夢の到来を覚悟した上で、第一作の対になるラストと共に、これはこれで綺麗に完結しているので、これで終わりでも良いのではないか。
さすがに、これ以上老けたシュワルツェネッガーでT-800は無理があるでしょう。

今回はメキシコ人を含む三人の女性の話なので、三種の材料を使う「テキーラ・サンライズ」をチョイス。
氷を入れたグラスに、テキーラ45ml、オレンジ・ジュース90mlを注ぎ、軽くステア。
グラスの底に沈むよう、グレナデン・シロップ2tspを静かに注ぎ入れる。
98年のT-800の衣装を思わせるオレンジのカラーが鮮烈で、テキーラの独特な風味が、オレンジの酸味と甘味、グレナデンの甘味とバランスよく混じり合い、飲みやすくて美味しいカクテルになる。

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