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スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け・・・・・評価額1300円
2019年12月23日 (月) | 編集 |
42年の旅の終わり。

1977年の「エピソードⅣ:新たなる希望」から始まる、「スター・ウォーズ・サガ」九部作一応の完結編。
もともと監督としてアナウンスされていたコリン・トレボロウの離脱を受けて、「エピソードⅦ:フォースの覚醒」を手がけたリブート職人、J・J・エイブラムスが急遽監督に復帰、クローザーを任された。
しかし、エイブラムスとクリス・テリオによる脚本は整合性を著しく欠き、制作体制のゴタゴタによる混乱は、出来上がった作品にハッキリと現れている。
映画史に大きな足跡を残した九部作の最終作は、残念ながら「エピソードⅠ:ファントム・メナス」を超えるシリーズワースト作品となってしまった。
※核心部分に触れています。

クレイトの戦いから一年後。
レイア(キャリー・フィッシャー)率いるレジスタンスに、またしても危機が迫る。
嘗て銀河帝国を支配した皇帝パルパティーンが復活し、未知の領域にある隠されたシスの星、エクセゴルで巨大な艦隊を建造。
スノークを殺し、ファースト・オーダーの最高指導者となったカイロ・レン(アダム・ドライバー)を呼び寄せる。
新艦隊のスター・デストロイヤーは一隻で惑星を破壊できるキャノンを装備していて、艦隊が動き出せばもはや止めることは出来ないが、先手を打とうにもレジスタンスはエクセゴルの位置を知らない。
ジェダイの修行を続けていたレイ(デイジー・リドリー)は、ルークがエクセゴルへのコンパスとなるシスのウェイファインダーを探していたことを知り、フィン(ジョン・ボイエガ)、ポー(オスカー・アイザック)、C-3PO(アンソニー・ダニエルズ)、BB-8と共に、手が足りを求めて砂漠の惑星パサーナへと降り立つのだが・・・


私が「スター・ウォーズ」に出会ったのは、本国公開から遅れること一年以上、1978年の初夏のこと。
今はなきテアトル東京のシネラマスクリーン、立ち見も含めてギッシリ埋まった劇場で、最前列の前の床に座って観た。
地元に映画館の無い田舎者ゆえ、実はこれが映画館で外国映画を観た最初の体験だったのだが、大きく湾曲したシネラマスクリーンに包まれた没入感は抜群で、小学生の私はすっかりこの世界に魅了されてしまったのだ。
これがきっかけとなって、次々とルーカス、スピルバーグ作品の洗礼を受け、結局映像制作を生業とするようになってしまったのだから、「スター・ウォーズ」は私の人生を変えた作品となった。
だから、40年以上追い続けたサガの終わりがどうであれ、受け入れようと思っていたのだが・・・。

本作が、期待されたクオリティに、遠く及ばない作品になってしまった原因は明らかだ。
ルーカス・フィルムのプロデュースチームの、シリーズ全体に対するビジョンが欠落していたからである。
同じディズニー傘下でも、今年の4月に過去12年間、22本のシリーズ集大成として「アベンジャーズ/エンドゲーム」を放ったMCUが、大成功を収めることが出来たのは、プロデュースチームにケヴィン・ファイギという絶対的な司令塔がいたからだ。
プロデューサーシステムのハリウッドでは、プロデュースチームのボスの権限は絶大。
ファイギが長年に渡って全体を俯瞰し、しっかりとした価値観、世界観の道筋を付けていたからこそ、単体作品ではシリアスからコメディーまで、ジャンル横断的なテリングの多様性があっても、全てのキャラクターはMCUという一つの宇宙へと帰結することが出来た。
対して、ディズニー傘下の新生ルーカス・フィルムでは、新しいシリーズを作るにあたって、キャスリーン・ケネディ以下のプロデュースチームが、過去にジョージ・ルーカスが作り上げた世界観以外、なんのビジョンも持っていなかったのではないか。

実際、2015年にエイブラムス監督でリブートされた「フォースの覚醒」は、素晴らしい仕上がりだったが、非常に保守的な作りだった。
基本的なストーリーラインは、「新たなる希望」の焼き直し。
もちろん、21世紀の作品として色々モダナイズはされているものの、フォースを操ることのできる特別な人間、ジェダイとシスの対立を軸とした神話的な物語なのは、ルーカス時代と何ら変わらない。
いわばファンの観たかった古典的「スター・ウォーズ」であり、究極のファン・メイド・ムービーとでも言うべき作品だった。
新シリーズも三部作となることは決まっていたので、この時点でエイブラムスたちは、完結までのガイドラインとなる原ストーリーを作っていたはず。

ところが、続く「エピソードⅧ:最後のジェダイ」を任されたライアン・ジョンソンは、ジェダイが一人も出てこない名も無き民衆の「スター・ウォーズ」を描いたスピンオフ、「ローグ・ワン」のテーマを取り込み、エイブラムスとは対照的にモダンで衝撃的な物語を導き出す。
彼がやったのは、“フォースの民主化”である。
ジョンソンの作り出した世界では、フォースは誰でも持っている力で、本来誰でも使える。
これは光のジェダイと闇のシスという、二つのフォース使いのグループが世界のバランスを司る、ルーカスの作り出した世界の全否定であり、「スター・ウォーズ」宇宙の革命だった。
誰もがフォース使いになれるというのは、むしろ「機動戦士ガンダム」の“ニュータイプ”に近い考え方だ。
まあプロットのディテールが雑で破綻している部分があったり、もともと曖昧だったフォースの枷を外して何でもありにしてしまったのは明らかにジョンソンの罪だが、私はこの革新的な世界観の転換は、シリーズの再活性化という意味で大いに肯定されるべきだったと思う。

このままの世界観で九作目まで引っ張ればよかったし、実際にジョンソンも九作目の構想を練っていると語っていた。
だが、トレボロウ降板劇のあとで呼び戻されたのは、ジョンソンではなくエイブラムス。
おそらくエイブラムスは困惑しただろう。
ジョンソンが、最初に作られた原ストーリーをどこまで尊重したからは分からないが、「フォースの覚醒」と「最後のジェダイ」では物語の指向するベクトルがまるで違ってしまっている。
フレンチのコース料理だと思って食べ始めたが、途中から出てくる皿が中華料理になってしまったようなもので、二つの作品の個性を生かしつつ、整合性をとって完結に導くのは至難の技だ。
しかも、監督交代のゴタゴタによって、プリプロダクションの時間は大幅に削られてしまっていて、本作を観ると脚本開発の時間が足りていないのがよく分かる。
もうちょっと詰めれば、何とかなりそうな部分も多いだけに返す返すも勿体なく、せめて公開を延期して、あと一年脚本に時間をかければ、結果は違っていたかもしれないが、今となっては後の祭り。

エイブラムスは、自分のテイストではない「最後のジェダイ」を可能な限り“無かったこと”にして、原ストーリーから再構成して、「フォースの覚醒」との整合性を取ろうとしている。
ウェイファインダーの位置を記した暗号を知るために、C-3POの回路をハッキングできる技術者を探しに、惑星キジミへ向かうエピソードが、「最後のジェダイ」の”マスター・コードブレイカー”を探して、惑星カントニカにあるカジノ都市へ潜入する話とまる被りなのは、おそらくどちらも同じ原ストーリーを基にしているから。
「スカイウォーカーの夜明け」は、エイブラムス版の「エピソードⅧ」と「Ⅸ」を一本にまとめた構成になっているのだ。
物語作りのセオリー通りなら、第二部でやっておかなければならない、レイの出自のネタバラシ(「帝国の逆襲」の「I am your father.」に当たる)が本作にずれ込んでいるのも、ジョンソン版の物語とエイブムス版の物語を強引に繋げた結果だと思う。
だが、「最後のジェダイ」を完全に無視するわけにもいかず、フィンの感じるフォースなど中途半端に設定を残しているので、当然ながらこれは上手くいっていない。

さらに悪いことに、水と油の二作を無理矢理繋げるのに、ジョンソンが何でもありの魔法にしてしまったフォースを開き直って大活用。
「最後のジェダイ」では遠く離れた場所に自分の幽体を出現させる、死後幽体だけになっても、現実世界に物理的影響を与えられるなどの新解釈が登場したが、今回は別の場所にいるレイとレンが直接ライトセーバーの刃を交わす(「最後のジェダイ」のルークはレンのライトセーバーをかわしているだけだった)、空間を超えて物を交換するなど、フォースの魔法っぷりはブーストがかかって加速。
死者を蘇らせたりするのは、「ダースヴェーダーが成し遂げられなかったこと」=「愛する者の命を救うこと」という意味が読み取れるが、それは別にフォースを使わなくても出来るだろう。
パルパティーンの復活ガッちゃんビームに至っては、これなら艦隊もデス・スターも要らないじゃないか、一人で宇宙征服でも何でもできるじゃないか、という位にスーパーマン化してしまった。
そもそもパルパティーンが蘇ったのも、フォースのダークサイドの技術だとしたら、もはや生と死すら意味を失ってしまう。

おまけに「そんな設定あったけ⁈」って驚きの事実が、どんどん出てくる御都合主義。
例えば唐突にレイアがジェダイの訓練を受けていて、ライトセーバーまで持っていたというエピソードが出てくるが、これは小説版のパラレルワールドの設定で、今までの正史では全く語られてこなかった。
レイアがジェダイの騎士でレイのマスターになれるのなら、最初からわざわざルークを探す必要もなかったはず。
結局、真逆のベクトルをもつ二つの作品を、まとめあげて完結させるという無茶ぶりに挑んだ結果、エイブラムスがかろうじて描き切れたのは、アイデンティティに葛藤する名無しのレイちゃんと、彼女のことが好きでたまらない、厨二病ストーカーのレンくんのツンデレ初恋物語だけだった。
レンはともかく、レイの感情は全然繋がってないのだけど、前作でそれほど突っ込んで描かれなかった部分なので、「フォースの覚醒」との繋がりがわりとスムーズ。
ルークの時代は「ジェダイの子」という属性で充分だったが、最後までアイデンティティに悩む本作は、やはり21世紀の物語らしい。

限りなく存在感の薄い、本作の新キャラクターの中で注目すべきは、エンドアの衛星ケフ・バーで登場するジャナ率いる逃亡ストーム・トルーパーの一団だ。
彼女らとフィンの会話から、ファースト・オーダーのストーム・トルーパーは宇宙のあちこちで捕らえられた子供たちであり、元来の悪ではないことが強調される。
また内面のフォースの善なる作用によって、フィンやジャナたちのように脱走するケースだってある。
もし完結編が「最後のジェダイ」の延長線上で展開するなら、終盤は彼女らが中心となっていたはずだ。
レジスタンスの呼びかけに、抑圧されてきたファースト・オーダーの名も無き兵士たちが恐怖に打ち勝って反乱を起こし、パルパティーンの帝国再興の野望を挫く。
フォースが実は誰でも使える力であることが明らかとなり、ジェダイやシスといった旧時代の象徴は意味を失い、レイはジェダイの軛から逃れ、銀河はより自由な冒険の時代に入る。
もしこうなっていたら、「スター・ウォーズ」は確実に世界を広げ、新たな可能性も生まれていただろう。
しかしルーカス・フィルムは、寡頭制的な古めかしい宇宙神話の世界に、再びシリーズを閉じ込めることを選び、可哀想なストーム・トルーパーたちもシスと共に無慈悲に滅ぼされる。

四苦八苦しながらも、レンとレイのごく小さな物語としてサガ終わらせたエイブラムスには、心から「ご苦労様」と言いたい。
しかし「最後のジェダイ」で路線転換したのなら、そのままライアン・ジョンソンに任せるか、もしくは最初からエイブラムスが三本とも撮っていたら、こんな混乱した完結編にはならなかっただろう。
「スター・ウォーズ」の今後としては、もうすでにディズニーチャンネルで「ジェダイの帰還」と「フォースの覚醒」の間を描くドラマシリーズ「マンダロリアン」がスタートしているが、映画を含めて今後も展開させてゆくなら、ルーカス・フィルムは体制一新した方がいい。
「フォースの覚醒」以来のスピンオフを含めた5作品中、3作品で監督降板のゴタゴタが起こっているのは、いくらなんでも尋常ではない。
プロデュースチームに作りたい作品の明確なビジョンが無ければ、どんなに名監督を集めてもシリーズとしては破綻する。
長年のファンとしては、いつの日か始まるであろう、新しい映画シリーズが成功することを祈りたいものだ。

“May the force be with you・・・”

今回は宇宙をイメージして「スターダスト・レビュー」をチョイス。
ドライジン(ボンベイサファイア)45ml、ブルーキュラソー5ml、パルフェタムール5ml、コーディアルライム1tsp、ライムを一片。
上記の材料を、氷を入れたシェイカーに全て入れ、シェイクしてカクテルグラスに注げば出来上がり。
成層圏の空のような深い青が美しい、ドライなカクテル。
1996年のHBA創作カクテルコンペティションのドライ部門優勝作品で、作者は庄司浩さん。

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