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パラサイト 半地下の家族・・・・・評価額1750円
2020年01月09日 (木) | 編集 |
淀んだ地下には秘密がある。

「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」などで知られる、鬼才ポン・ジュノ監督の最新作は、盟友のソン・ガンホと四度目のタッグを組み、地下に埋もれた現代韓国の闇を描く、シニカルなブラックコメディ。
半地下の家に住み、内職でなんとか食いつないでいる失業者の家族が、ひょんなことから大金持ちの邸宅に入り込み、寄生するように暮らしはじめる。
しかし、この映画が描き出す現代社会のダークサイドは、こちらの想像の斜め上を軽々と超え、遥かにディープ。
二つの家族の出会いは、予期せぬ化学反応を呼び、彼らの運命は負のスパイラルに巻き込まれてゆくのである。
韓国映画としてはじめて、カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに輝いたほか、ゴールデングローブ賞外国語映画賞など、世界各国の映画賞を席巻している超話題作だ。
※核心部分に触れています。

家族全員失業中で、家賃の安い半地下の家で、その日暮らしの生活を送るキム一家。
ある日、長男のギウ(チェ・ウシク)は、友人に紹介されてIT企業のオーナーのパク氏(イ・ソンギョン)の邸宅へ、娘のダヘ(チョン・ジソ)の家庭教師の面接を受けに行くことになる。
すると、パクの妻のヨンギョ(チョ・ヨジョン)に気に入られ、自分だけでなく息子のダソン(チョン・ヒョンジュン)の美術教師として妹のギジョン(パク・ソダム)を送り込むことに成功。
やがてパク家の家政婦ムングァン(イ・ジョンウン)を追い出すと、代わりの家政婦として母のチュンスク(チャン・へジン)が、パクの運転手として父のギテク(ソン・ガンホ)が採用され、キム一家は素性を隠したまま、完全にパク家に寄生するようになる。
生活苦から解放され、羽を伸ばすキム一家だったが、パク一家が揃ってキャンプに出かけたある夜、突然ムングァンが戻ってくる。
実はこの邸宅には、彼女以外に誰も知らない秘密があった・・・・


ポン・ジュノと出演者から、先行上映の観客に”ネタバレ禁止のお願い“が流れる。
なるほど、たしかにこれはあまり情報も入れない方が面白いので、観てない方はこれ以上は読み進まないことをお勧めする。
失業中の貧民層の家族が、ひょんなことから富豪の邸宅にするりと入り込む。
そして富める者の余裕に漬け込んで、彼らの生活に寄生してゆくのだが、ここから先の展開は完全に予想外だった。

韓国の格差社会、金持ち家族と使用人を描いた作品と言うと、本作にも大きな影響を与えていそうなキム・ギヨン監督の古典、「下女」がまず思い浮かぶ。
近年、イム・サンス監督、チョン・ドヨン主演で「ハウスメイド」としてリメイクされたので、こちらはご覧になった方も多いだろう。
1960年に公開された「下女」では、金持ちの音楽家トンシクの家庭に入り込んだ住み込みの家政婦のミョンスクが、ハニートラップで主人を籠絡、幸せだった家族を破滅させてゆく。
この作品で、非常に効果的に使われているのが、トンシクの家の階段だ。
当時の韓国は、一人当たりのGDPが160ドル程度のアジア最貧国の一つ。
庶民の多くが長屋のような粗末な家に住んでいる中、二階を持つ家はそれだけでステータスシンボルであり、様々なエピソードが階段を起点にして展開する。
そして、悲喜交々の階段のドラマは、本作にも確実に受け継がれているのである。

冒頭で、半地下の家に持ち込まれる山水景石が象徴的。
一つの石を自然の山のミニチュアとして見る粋な文化だが、本作も韓国社会のミニチュアだ。
キム家の家族が住んでいる、ゴチャゴチャした下町にある半地下の家は、いわば山の裾野。
「下女」が公開された後、韓国は朴正煕政権下で“漢江の奇跡”と呼ばれる高度成長期を迎えるのだが、この時期に作られた建物には、北朝鮮との再度の戦争を見越して、シェルターや貯蔵庫として使える半地下を作ることが推奨されたという。
しかし長らく戦争は起こらず、無用となった半地下を賃貸物件として貸し出すケースが増えたそうなのだが、そもそも最初から生活空間としては考えられていない。
ほとんど日もささず、ジメジメとした湿気は取れないし、水圧の関係でトイレだけ高い位置にあるなど、居住性が劣悪なために家賃が安く、結果として貧困層の住居となった。
対照的に、下町から長い階段を登った、高台の高級住宅地にあるパク家の邸宅は、いわば山水景石の頂上だ。

邸宅の中の地下室、地上、二階を結ぶ階段。
そして、高級住宅地と下町を結ぶ、長い長い階段。
いくつもの上下移動を要求する階段が、ドラマチックな動線となって物語を展開させるのだが、本作で秀逸なのが水を使った演出だ。
格差社会を肯定する為政者や富裕層によって、しばしば引き合いに出されるのが、富裕層が富めば富むほど、貧しいものにも富のおこぼれがしたたり落ちる、というトリクルダウンの理論。
この考え方を説明するのに、よくシャンパンタワーが用いられるが、本作では激しい雨水がその欺瞞を暴き出す。
高台の高級住宅地に降った雨は、金持ちたちには被害をもたらすこと無く、そのまま下町へと流れ落ち、都市のゴミを巻き込んだ濁流となって貧しい人々を襲う。
下町の最下層にあるキム家の半地下の家などは、完全に水没してしまうのだ。
トリクルダウンでは富はしたたってこない。
怒涛の勢いで流れて来るのは、更なる貧困なのである。

ここまでは、いわば可視化された格差で、予想できるものだが、本作の凄さはこの先にある。
実は、邸宅の地下深くに隠された核シェルターに、誰も知らない最下層のさらに最下層として、文字通りの“インビジブル・マン”が存在しているのだ。
この辺り、昨年話題になったジョーダン・ピール監督の社会派ホラー、「アス」と奇妙に符合するのが面白い。
もちろん描き方は全く異なるが、格差社会をモチーフにしたシニカルな暗喩劇なのも共通。
あの映画では、打ち捨てられた全米の地下施設に暮らすコピー人間たちが、地上の富裕層に対して反乱を起こし、自分たちの存在をデモンストレーションする。
対して本作では、インビジブル・マンの予期せぬ出現によって、二つの家族の間に蓄積されてきた淀みが一気に噴出し、破滅をもたらすのである。
半地下などまだ生ぬるい、本当の絶望は誰にも見えない地の底にあるという訳だ。
予測不能のアクションの連続から、一度住んだら決して拭い去れない“半地下の臭い”というカメラに写らないものが、決定的な意味を持つクライマックスの描写は実に映画的で、巧みな構成と円熟した演出力に思わず唸った。

しかし、これでカンヌ国際映画祭は、2016年の「わたしは、ダニエル・ブレイク」、18年の「万引き家族」、そして本作と、過去4年間で3本、格差社会を扱った映画をパルム・ドールに選んだ訳だ。
もちろんカンヌだけでは無く、例えば昨年世界的な大ヒット作となった「ジョーカー」や、レバノンのスラムを舞台とした「存在のない子供たち」、ケン・ローチが再び格差社会の痛みを描いた「家族を想うとき」、本作と同じく現代韓国の闇に挑んだ「バーニング 劇場版」など、世界中で同一モチーフの映画が続々と作られているのは、もはやこれが汎地球的なイシューで、世界のどこでも同じ問題を抱えているということだ。
本作のパク家の人々がアメリカかぶれなのも、資本主義の格差社会の象徴としてのイメージなのだろう。
この深刻かつ身近なイシューを、驚くべき未見性を秘めた極上のエンターテイメントに仕上げてしまうのが、流石のポン・ジュノ。
もしかしたら、この勢いでアカデミー外国語映画賞まで持っていくのかも知れない。
ぶっ飛んだ映画ではあるが、決して絵空事と言い切れないのが恐ろしい。

今回は格差が作り出す地獄の話なので、「ヘルファイア」をチョイス。
氷を入れたビアジョッキに、ライム1/4を絞り入れる。
スパイスド・ラム30ml、ジンジャー・ビア30ml、タバスコ2dashを注ぎ、軽くステア。
最後にピルスナービールを静かに注ぎいれ、再度軽くステアして完成。
材料からも想像がつく通り、スパイシーで喉を温める効果があり、好みは別れるだろうがそれほどクセが強いわけでも無い。
このぐらいの地獄なら、なんとか耐えられるんだけどなあ。

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