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ショートレビュー「ジョジョ・ラビット・・・・・評価額1750円」
2020年01月19日 (日) | 編集 |
軍国少年、愛の意味を知る。

リーゼントのスタンド使いの話ではない。
第二次世界大戦末期、ナチスの熱烈な信者でイマジナリーフレンドがヒトラーという、10歳のドイツ人の少年ジョジョの物語。
ママは何やら忙しくしているし、パパはイタリア戦線へ向かったまま行方不明。
せっかくヒトラーユーゲントへ入団したものの、年長の少年たちからウサギのように弱虫だとイジメられ、あげくに手榴弾を誤爆させて顔に傷の残る大怪我を負い、雑用しかさせてもらえなくなってしまう。
そんな冴えない毎日を送っていたある日、ジョジョは自分の家の屋根裏にユダヤ人の少女が匿われていることを知ってしまい、信じていた世界が揺らぎ始める。

冒頭、ザ・ビートルズの「抱きしめたい」と共に、ナチスとヒトラーへの人々の熱狂が描かれる。
ヒトラー役は「誰だ?この気持ち悪いおっさんは?」と思ったら、タイカ・ワイティティ監督が自ら演じているじゃないか。
まあこの人は元々コメディアンでもあるので、少年の心の中で微妙にカリカチュアされたような、漫画チックなヒトラーには適役。
ナチス政権は疲弊した国民の熱烈な支持を得て誕生し、ヒトラーはロックスター並みの大衆のアイドルだったから、孤独な少年ジョジョが、大人たちが熱狂する独裁者に憧れるのは、時代と社会を考えれば不思議なことではない。
全編に渡ってシニカルなユーモアが前面に出るのはワイティティらしいが、プロットは非常にロジカルに構成され、隅々まで端正に作られた映画だ。
ジョジョの幼さを示すほどけた靴紐の象徴性など、ディテールの描写の数々は極めて繊細で丁寧。

物語の序盤では、まだ平穏だった街にも、だんだんと戦火の香りが漂ってくる。
アメリカとソ連の軍隊が迫り、幼馴染の太っちょヨーキーは、なんと紙で出来たダサい制服を着せられて、いっぱしの少年兵に。
街の広場では、反ナチス運動をしていた大人たちが首を括られて処刑されている。
戦争という異常な状況下で、少年ジョジョは一気に色々な体験をして成長してゆく。
いや、否応なしに成長せざるを得なくなるのだ。
ツノの生えた悪魔だと洗脳されていて、最初は未知の存在だった歳上のユダヤ少女、エルサへの複雑な想いは、やがて初恋の衝動に。
そして、軍国少年は最愛のママの突然の喪失と共に、彼女から「人間の一番強い力」だと教えられた、愛の意味を知るのである。

幼い想像力から生み出されたイマジナリーフレンドは、ホンモノのヒトラーの死と共にその役割を失い、人を愛する気持ちと本当の勇気を知ったジョジョの前に広がっているのは、未来という名の未知の現実だ。
ヒトラーユーゲントで、ジョジョの「上官」となるサム・ロックウェルと、密かに抵抗運動に身を投じているママのロージー役のスカーレット・ヨハンソンが素晴らしい。
ロックウェル演じる、お調子者の“キャプテン・K”ことクレンツェンドルフ大尉は、劇中では明言されていないのだけど、たぶん気のいい部下のフィンケルとは誰にも知られてはいけない恋人同士で、だからこそジョジョの抱える秘密も守り通す。

アメリカ製の作品ゆえに、キャラクターのドイツ人が全員英語を喋る。
それゆえに「戦時中のドイツ人=ナチス=悪」という単純化したステロタイプタイプからは解放されていて、むしろナチスという集団ヒステリー的な虚飾のファンタジーから、少年の成長とともに地に足をつけた現実へと導かれる、ユニークな寓話となっている。
戦場の子供たちを描いた作品は数多いが、子供の柔軟な感性で恣意的に作られた嘘を乗り越え、差別や分断を解消するというアプローチは新しく、全く説教くさくないのも良い。
ウェルメイドな作品だが、ナチスものという括りがあるので時事性という点ではちょっと弱く、アカデミー賞レースでは苦戦する気がする。
しかし高い普遍性を持ち、冒頭からワクワクが湧いてくるラストカットまで、タイカ・ワイティティのセンス・オブ・ワンダーが炸裂する、青春映画の快作だ。

今回はウサギつながりで、「ジャック・ラビット」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、ドライ・ベルモット30ml、トリプル・セック10ml、アプリコット・ブランデー10mlを、氷と共にシェイカーに入れてよくシェイクし、グラスに注ぐ。
ジャック・ラビットとはアメリカ西部に生息する野ウサギのことで、多産のウサギは復活祭の時に卵を運んでくるイースター・バニーというキャラクターでもあることから、復活祭に供されるカクテルとして知られる。
似た名前だが、アップル・ジャックやメープルシロップを使う「アップル・ジャック・ラビット」とは見た目も味わいもだいぶ異なる。

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