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リチャード・ジュエル・・・・・評価額1500円
2020年01月25日 (土) | 編集 |
ある日突然、自分が“民衆の敵”となる。

ここ数作は、割と軽目の題材を扱ってきたクリント・イーストウッドが、久々のハードモード。
アトランタ五輪開催中の1996年7月、イベントが行われていた市内の公園で爆弾テロが発生。
人混みでの事件だったにも関わらず、爆弾が爆発前に見つかっていたことから、群衆の多くはすでに爆弾から引き離されていて、犠牲者数はこの種のテロ事件では相対的に少なかった。
事件直前、放置されたバックパックに隠された爆弾を最初に発見したのが、当時警備員をしていたタイトルロールのリチャード・ジュエルだ。
しかし、多くの人を救った英雄とされていた男は、不幸にもFBIのプロファイリングした犯人像と一致していたことから疑われ、一転して容疑者となってしまうのである。
イーストウッドは、公権力とマスコミによって、平凡な市民が一瞬にして全てを奪われる恐怖を描き出す。
24年前の事件を描く作品ながら、モチーフは現在性が高く娯楽映画として良く出来ているのだが、残念ながらイーストウッド自身が、自分が批判している人たちと同じ過ちを犯してしまっている。

1996年7月27日。
オリンピック開催中のアトランタ。
警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、センテニアル・オリンピック公園で開かれているイベントの警備中、ベンチの下に置かれた不審なバックパックを発見。
爆発物処理班に通報すると共に、付近の観客を遠ざけ始める。
間も無くパイプ爆弾が爆発し、二人が死亡し、百人以上が負傷する参事となるも、爆発前に爆弾が発見されていたこともあり、最悪の事態は免れた。
多くの人を救ったとして、時の人になったジュエルだが、犯人像をプロファイリングしていたFBIは、警察官に憧れていたジュエルに疑いの目を向ける。
地元新聞のアトランタ・ジャーナル・コンスティチューションのキャシー・スラッグス(オリビア・ワイルド)は、懇ろに付き合っていた捜査官から、ジュエル犯人説を聞き出し、スクープ。
マスコミは相次いでジュエルが捜査対象になっていることを報道し、彼は英雄から瞬く間に容疑者とされてしまう。
人々がジュエルに疑いの目を向ける中、味方になってくれたのは母のボビ(キャシー・ベイツ)と、旧知の仲だった弁護士のワトソン(サム・ロックウェル)だけだった・・・


劇中でジュエルが繰り返し口にするのが、「僕も法執行官だから」という言葉。
元々警察官になりたかったジュエルは、一度は副保安官となるものの、しばしば正義感が暴走し周囲との軋轢を生じさせてしまい、警備の職を転々とする。
そんな時に起こったのが、この事件だったのだ。
英雄願望を抱く白人の負け組の男が、人々から賞賛されたいがために、自作自演の爆弾事件を起こした、というFBIプロファイラーの見立てに、偶然にもジュエルはピッタリ当てはまる人物像だったのである。
彼が容疑者となっていることは、事件の3日後にアトランタ・ジャーナル・コンスティチューション紙の事件記者、キャシー・スラッグスのスクープによって明るみ出て、以降ジュエルは何の証拠もないまま、最重要容疑者と目されるようになり、FBIが公に嫌疑なしとした10月26日までの3ヶ月間、執拗にマスコミに追い回された。

FBIとマスコミという巨大な力によって、一人の男が人生を壊されゆく理不尽さはしっかりと描かれている。
おそらく誰もが情報発信者となったSNS社会の現在なら、彼の置かれた状況はもっと酷くなっていただろう。
イーストウッドが、“歯止めを失った情報による悲劇”を、事件から四半世紀が過ぎようとしている現在に描いた理由はよく分かるし、クライマックスとなる最後の取り調べで、ジュエルが語る正しいことを正しい時にする意義と勇気、そしてそれを阻害する見えない圧力の話はとても大切なことだ。

だがしかし、本作では完全に悪役扱いのFBIやマスコミ側の描き方は腑に落ちないし、決して絶賛していい作品ではないと思う。
自らの描いた見立てに、後付けでジュエルを当てはめようとするFBIに関しては、過去にも似たような間違いをいくつも犯しているので、組織としてこんなこともあるだろうと感じたが、捜査官のキャラクター造形はどう見てもかなりのステロタイプ。
もっと問題なのはマスコミの扱いで、特に“マスコミの悪”を一身に背負わされたキャシー・スラッグスに関しては、相当に恣意的に描いているのではないか。
ジュエルは、自身に対するFBIの捜査が終了した後に、根拠なく自分を犯人扱いしたとして元勤務先のピードモント大学に加えて、NBC、CNN、ニューヨーク・ポスト、アトランタ・ジャーナル・コンスティチューションなどのマスコミを名誉毀損で訴え、和解を勝ち取っているが、唯一アトランタ・ジャーナル・コンスティチューションは和解を拒否して争い、2011年になってジュエル側の敗訴で終わっている。
当時FBIがジュエルを最重要容疑者と考えていたのは事実で、それを記事にしたこと自体は名誉毀損ではないという判決は、当然といえば当然。
それにスラッグス本人は、2001年にモルヒネの過剰摂取という自殺とも事故とも取れる亡くなり方をしているのだが、スクープの情報源に関しては裁判でも一切明かしていない。
スラッグスがFBI捜査官と寝て捜査情報を不正に入手したという本作の描写は、欠席裁判状態で彼女を悪役と定義するために設定された、裏付けの無いミソジニー的な憶測の産物に過ぎず、明らかに彼女の名誉を毀損している
当人が反論できない状態で、人物を自分たちの描いた大衆好みの物語に都合よく当てはめるのは、この映画が批判している公権力とマスコミの罪と全く同じではないか。

イーストウッドは、硫黄島二部作ではわざわざ米国側と日本側の視点で別の映画を作るくらい、歴史的事実の公平性に拘っていたのに、10年代に入ってからは主人公と対立している相手を過度に単純化するきらいがある。
もちろん、実話ベースの映画だからと言って、脚色してはいけないと言っている訳ではない。
問題は史実に対し、どうアプローチするかという作り手のスタンスなのだ。
西部劇の構造を踏襲し、“アメリカの暴力の矛盾”を戯画化した「アメリカン・スナイパー」の敵スナイパー、ムスタファなどは映画を寓話的に落とし込んだことで、良い方に作用していた。
ところが「ハドソン川の奇跡」では、事故のあらゆる可能性を検証することを任務とする国家運輸安全委員会を、英雄の機長を貶めようとする悪役として描き、映画全体を軽いものにしてしまった。
本作もまた、出世欲にとりつけれた単純な悪役としてスラッグスを造形し、最後には涙を流して改心させるという恐ろしくチープな描写を入れることによって、かえってジュエルの成し遂げた正義まで、嘘っぽく矮小化させてしまっているように思う。
捜査機関には捜査機関の、記者には記者の矜恃と葛藤があるはずで、以前のイーストウッドならこの題材で白黒二元論に単純化することは無かっただろう。
内容的には充分に興味深く、ジュエルとサム・ロックウェル演じる弁護士の人情溢れる人間ドラマとしても面白かったが、このテーマを描くならば、倫理的に絶対に落としてはいけない部分が抜け落ちてしまった印象は否めないのである。

アトランタといえばバーボンストリートが有名なのだけど、今回はちょっとユニークなコーンウィスキー「ジョージア・ムーン」をチョイス。
まるでジャムの瓶の様な広口のボトルは、むっちゃ注ぎにくい。
ムーンという名前は実は禁酒法時代の“密造酒”を指すスラングで、コーン80%以上を使用し蒸留し、30日以内の短期熟成を売りにした変わり種。
一見するとウィスキーとは思えない無色透明、若い酒だけにピリピリとしたアルコールの刺激が先に来るが、コーンの風味はしっかりと残る。
味わいとしては単純なので、ショットグラスでグイッとやるか、カクテルベースにして飲むのがオススメ。

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