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ショートレビュー「スウィング・キッズ・・・・・評価額1700円」
2020年03月02日 (月) | 編集 |
フ○ック、イデオロギー!

これほど感情の落差が激しい作品は珍しい。
楽しげな前半に油断してたら、思いっきりハートをえぐられた。
朝鮮戦争中、韓国南部の巨済島に実在した捕虜収容所を舞台に、 「サニー 永遠の仲間たち」のカン・ヒョンチョル監督が描くのは、国連軍の新任所長の実績作りのために急造されたタップダンスチーム「スウィング・キッズ」の物語。
所長は集めた共産主義者の捕虜たちを、自由主義の庇護のもと思想転向させ、戦争が終わっても南に残るという選択をさせたい。
そのために、アメリカ的娯楽であるタップダンスの魅力を利用しようとするのだ。

元ブロードウェイダンサーの黒人下士官、ジャクソンを指導者にメンバーが集められる。
首領様に忠誠を誓うアカの兵士ロ・ギスに、生き別れの妻を探す民間人カン・ビョンサム、とにかく踊りたい動けるデブの中国兵シャオパンに、幼い兄弟を育てている満洲帰りの通訳の女性ヤン・パンネ。
思想も国籍も性別もチームに加わった動機もバラバラの彼らを結びつけるのは、「感情を体で表現したい!心地よくリズムをとりたい!」という本能的な衝動だ。
ジャクソンを含め、五人のチーム全員が何らかの閉塞を抱えているのだが、ステージの上では誰もが自由になれる。
しかし戦争という邪悪な力は、彼らのささやかな夢にすら容赦なく襲いかかってくるのである。

収容所の中では、人民軍の軍人として徹底抗戦を訴えるグループとノンポリ、転向組とが激しく対立し、時に中国兵や国連軍の看守をも巻き込んだ血なまぐさい抗争が繰り返されている。
本作のストーリーそのものはフィクションだが、作中で描かれる事件はほとんどが実際に起こったことだ。
映画だと収容所がどのくらいの規模なのかよくわからないが、巨済島の収容所には最終的には17万人の捕虜が収容されていたというから、ちょっとした都市並み。
一方で、捕虜を管理する国連軍側の人員はわずかに9千人程度だったので、そりゃ無法地帯にもなるというもの。
人口11万人ほどだった巨済島に、捕虜に加えて本土から逃れてきた10万の難民が流入したために飲み水が枯渇し、国連軍が新しくダムを作らねばならなかったほどだったという。

物語の軸となるのがD.O.が演じるロ・ギスだ。
北朝鮮の英雄である彼は、頑なに祖国に忠誠を誓っていて、資本主義の象徴であるタップダンスを踊ることを最初は拒否する。
しかしダンサーとしての天性の才能と内なる情熱に突き動かされ、密かにチームに加わるのだが、それを知った人民軍の幹部によって徹底的に利用されるのである。
ロ・ギスには、やはり人民軍の軍人で知的障害のある兄がいる設定が効いている。
彼はチームのメンバーとの友情と兄への家族愛、忠誠を誓ったイデオロギーとダンスへの情熱の間で引き裂かれてしまうのだ。
自由への渇望がほとばしるデヴィッド・ボウイの「Modern Love」、定番のベニー・グッドマン「Sing, Sing, Sing」の躍動感。
ビートが魂を揺さぶり、ダンスが情熱的に感情をつなげてゆく。
ダンス映画としてとてもよく出来ていて胸踊るカタルシスがあるからこそ、つかの間の夢が無残に打ち砕かれる展開はキツイ。

基本的に、国連軍も人民軍も権力を振りかざす者は等しくクズに描かれる。
もともと資本主義も共産主義も、外国人が作って南北に押し付けてきたもの。
庶民には何の関係もないことで、同じ民族同士が殺しあう悲劇に、芸術の力でせめてもの抵抗を試みたスウィング・キッズも、現実の暴力の前では無力。
人類の歴史を見ればこれがリアルなのは分かっていても、エンディングでビートルズの「Free As A Bird」と共に映し出される五人の姿に涙。
フ○ック、イデオロギー!彼らはただ踊りたかっただけなのに!

今回は「ムーンライト・ダンス」をチョイス。
ウォッカ30ml、ピーチ・リキュール25ml、グレープフルーツ・ジュース40ml、レモン・ジュース 1tsp、グレナデンシロップ1tspをシェイクする。
ビターだった映画とは違って、柑橘類の酸味と甘口でスッキリと飲みやすい。
本作のイメージカラーと同じ、オレンジ色のカクテルだ。

ちなみに1993年にアメリカでも同タイトルの作品が作られているが、あちらはナチス政権下のドイツで、スウィング・ジャズを愛した若者たちの物語で、なかなか面白い。
内容的には無関係だが、作品のテーマには共通点があるので、一定の影響を受けているのかもしれない。

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