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2020年03月06日 (金) | 編集 |
地獄のボーイミーツガール。
なにこれムチャクチャ面白い!
三池崇史初のラブストーリーなのだそうだ。
まあ確かに間違ってはいないのだが、タイトルを含めて相当なミスリード。
窪田正孝と小西桜子、美男美女の恋物語を期待してくると地獄、いやむしろ猥雑極まりないカオスな楽園に突き落とされることになるだろう。
もともと玉石混交だったものの、10年代後半の三池崇史はベストセラー小説とか人気漫画原作のメジャー系の大作を多く手がけるも、正直今ひとつパッとしなかった。
しかし、アンダーグラウンドの世界を舞台にした、血湧き肉躍るお笑いバイオレンス活劇である本作では久しぶりに演出力を遺憾なく発揮し、間違いなくフィルモグラフィでベスト3に入る傑作。
いやもしかしたらベストワンかも知れない。
※以下、核心部分に触れています。
天涯孤独のプロボクサー、葛城レオ(窪田正孝)はKO負けを喫した試合後の検診で脳腫瘍が発覚し余命宣告を受ける。
自暴自棄になって歌舞伎町を歩いていたところ、不審者に追われる少女モニカ(小西桜子)が目に入り、レオは反射的に追いかけていた悪徳刑事の大伴(大森南朋)を殴り倒してしまう。
モニカは性的虐待を続けた父親に売られ、ヤクザにクスリ漬けにされて売春させられていたのだが、大伴とホテルに向かう途中、父親の幻覚を見て思わず逃げ出したのだった。
しかし、モニカはヤクザ者の加瀬(染谷将太)が大伴と組んで企てた、組のクスリを横領する計画の一部だった。
すでに下っ端組員のヤス(三浦貴大)を殺し、クスリを手に入れていた加瀬は、罪を着せようとしていたモニカが逃げてしまったことに大慌て。
その頃、刑期を終えて出所した武闘派の権藤(内野聖陽)は、クスリを奪ったのは敵対する中華マフィアだと勘違いし、部下の市川(村上淳)、恋人だったヤスを殺されたジュリ(ベッキー)と共に、仇討ちに乗り出す。
一方、事情を知った中華マフィアも、シノギになるクスリを手に入れようと、兵隊を集め始める・・・
端的に言えば、染谷将太演じる「オレは意識高いから他の奴と違う」系の極道が、陰謀を巡らせて組のクスリをちょろまかそうとするのだけど、実はあんまり頭が良くないので計画があまりにも杜撰すぎて周りのみんなが大迷惑する話。
ダメダメな計画に巻き込まれた、孤独なボクサーとジャンキーな娼婦の二人が、ヤクザと悪徳刑事と中華マフィアに追われる。
全体の構造と雰囲気はみんな大好きタランティーノ脚本、故トニー・スコット監督の名作、「トゥルー・ロマンス」に通じるところがあるが、最終的には見事なまでの三池カラーに仕上がっている。
以前は“NAKA雅MURA”名義で知られていた中村雅による脚本は、メインプロットは極力シンプルに感情移入しやすく。
しかし周りはド派手に、ダークに。
主人公となるレオとモニカは、共に愛されることを知らない孤独な人生を歩んでいて、お互いの中に自分の鏡像を見る関係。
親に捨てられたレオにとって、ボクシングは唯一自信を持って出来ること。
試合は稼ぐための手段に過ぎないので、勝っても特に喜ぶこともなく、ジムの仲間との関係も淡白なもの。
しかし、なんとか先が見えてきた矢先に、余命宣告によって未来は閉ざされてしまい、生きる意味を失ったレオが出会うのが、モニカという訳だ。
モニカはモニカで父親から性的虐待を受け、借金のカタにヤクザに売られる。
やっと父親と別れられたと思いきや、クスリ漬けにされたモニカは、今度は幽霊のように何処にでも現れる父親の幻覚に苦しめられ、そのことが本作の物語を動かす切っ掛けとなるのである。
刹那的人生を生きる若い二人は、それぞれに同情すべき感情移入キャラクターに造形されている。
ちなみに“モニカ”とは本来キリスト教の聖人だが、彼女はダメンズ夫のDVや浮気に苦しめられた過去を持ち、今ではDV被害者の守護聖人となっているのが皮肉。
この二人を結びつけたのが、実はモニカの成就しなかった初恋の記憶。
実家に暮らしていた頃、彼女をかばって父親を殴ってくれた“竜司くん”への思慕の念が、彼に面影が似ていたレオとの出会いを呼ぶ。
しかし悲惨な状況下にいるモニカにとって、竜司くんへの気持ちはどちらかと言えば恋というよりも白馬の王子さまへの救出願望に近いもの。
自らの足で逃げ出し、レオと共に訳の分からないうちに裏社会の抗争に巻き込まれた一晩の体験が、彼女にとっての生き直しの恋となってゆく。
そしてヤクザ者たちが壮大に自滅してゆく中、お互いを大切な存在と意識するようになった二人は、自己再生を遂げてゆくのである。
殺戮の夜を生き延びたモニカが、妻を連れた竜司くんと再会するシーンがあるが、ここで初めて救出願望は甘酸っぱい初恋の記憶として昇華され、彼女は今を生きる決意を固める。
レオのボクシングの再起戦と、モニカのクスリ抜きの苦闘がクロスカッティングで描かれるシークエンスは、通過儀礼を経た二人の新しい人生の始まりだ。
以前は試合に勝っても無表情だったレオが、ジムの仲間と共に歓喜している描写は、初めて愛する人、守るべき人と出会った彼の人間的な成長を強く印象付ける。
ディテールは三池作品の例に漏れず結構荒っぽく漫画チックだが、主役の二人の感情はしっかり繋がっていて説得力充分なのでこれで良い。
と言うか、この映画の画作りは、実写キャラクターを使ったアニメーション映画の趣だ。
そのことを実感できるのが、おそらく物議を醸すであろう、突然のアニメーション表現。
警察に包囲されたホームセンターの立体駐車上の壁をぶち破り、トヨタセンチュリーが大ジャンプする一連のアクションがアニメーションで描かれている。
普通の演出家じゃ持て余しそうな演出だが、個人的には本作の世界観ならばこれはこれでアリに思え、全然違和感が無かった。
まあ第一義的には予算と技術的な問題の結果なのだろうが、要は実写の部分も含めて全体が戯画的なのである。
レオとモニカ以外の、エキセントリックなキャラクター造形も同様だ。
ヤクザもマフィアも、全員が特徴的でキャラ立ちしまくっている。
一見頭良さげで実はおバカキャラの染谷将太や、今時こんな奴いない的な武闘派の内野聖陽。
高倉健のヤクザ映画に憧れて日本に来た、藤岡麻美演じる女中華マフィアの仁義だて。
たぶん、役者のみなさんは演じててすごく楽しかったと思うのだが、MVPは文句なしで“バールの様な物”を振り回す復讐鬼ベッキー。
元好感度ナンバーワンのタレントが、ここまで振り切るとは(笑
しかしキャラクターもストーリーも、現在ではもう漫画となってしまったヤクザ映画というジャンルの虚構の中、ロンリーでイノセンスな心を持つ、若い二人の繊細な再生劇を描き出すというセンスに脱帽。
破天荒で熱血、暗い情念が燃えるこれぞ三池節という最高に面白い映画で、コロナで世間が過剰な自粛ムードに陥る中、大いに元気をもらった!
今回は鹿児島のアットスターの芋焼酎、その名も「初恋」をチョイス。
芋麹と米麹をブレンドして使用した珍しい製法。
しっかりと芋っぽさはありつつも、ほんのりと甘い初恋の味に仕上がっている。
甘みが際立つお湯わりで、チビチビといきたい。
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なにこれムチャクチャ面白い!
三池崇史初のラブストーリーなのだそうだ。
まあ確かに間違ってはいないのだが、タイトルを含めて相当なミスリード。
窪田正孝と小西桜子、美男美女の恋物語を期待してくると地獄、いやむしろ猥雑極まりないカオスな楽園に突き落とされることになるだろう。
もともと玉石混交だったものの、10年代後半の三池崇史はベストセラー小説とか人気漫画原作のメジャー系の大作を多く手がけるも、正直今ひとつパッとしなかった。
しかし、アンダーグラウンドの世界を舞台にした、血湧き肉躍るお笑いバイオレンス活劇である本作では久しぶりに演出力を遺憾なく発揮し、間違いなくフィルモグラフィでベスト3に入る傑作。
いやもしかしたらベストワンかも知れない。
※以下、核心部分に触れています。
天涯孤独のプロボクサー、葛城レオ(窪田正孝)はKO負けを喫した試合後の検診で脳腫瘍が発覚し余命宣告を受ける。
自暴自棄になって歌舞伎町を歩いていたところ、不審者に追われる少女モニカ(小西桜子)が目に入り、レオは反射的に追いかけていた悪徳刑事の大伴(大森南朋)を殴り倒してしまう。
モニカは性的虐待を続けた父親に売られ、ヤクザにクスリ漬けにされて売春させられていたのだが、大伴とホテルに向かう途中、父親の幻覚を見て思わず逃げ出したのだった。
しかし、モニカはヤクザ者の加瀬(染谷将太)が大伴と組んで企てた、組のクスリを横領する計画の一部だった。
すでに下っ端組員のヤス(三浦貴大)を殺し、クスリを手に入れていた加瀬は、罪を着せようとしていたモニカが逃げてしまったことに大慌て。
その頃、刑期を終えて出所した武闘派の権藤(内野聖陽)は、クスリを奪ったのは敵対する中華マフィアだと勘違いし、部下の市川(村上淳)、恋人だったヤスを殺されたジュリ(ベッキー)と共に、仇討ちに乗り出す。
一方、事情を知った中華マフィアも、シノギになるクスリを手に入れようと、兵隊を集め始める・・・
端的に言えば、染谷将太演じる「オレは意識高いから他の奴と違う」系の極道が、陰謀を巡らせて組のクスリをちょろまかそうとするのだけど、実はあんまり頭が良くないので計画があまりにも杜撰すぎて周りのみんなが大迷惑する話。
ダメダメな計画に巻き込まれた、孤独なボクサーとジャンキーな娼婦の二人が、ヤクザと悪徳刑事と中華マフィアに追われる。
全体の構造と雰囲気はみんな大好きタランティーノ脚本、故トニー・スコット監督の名作、「トゥルー・ロマンス」に通じるところがあるが、最終的には見事なまでの三池カラーに仕上がっている。
以前は“NAKA雅MURA”名義で知られていた中村雅による脚本は、メインプロットは極力シンプルに感情移入しやすく。
しかし周りはド派手に、ダークに。
主人公となるレオとモニカは、共に愛されることを知らない孤独な人生を歩んでいて、お互いの中に自分の鏡像を見る関係。
親に捨てられたレオにとって、ボクシングは唯一自信を持って出来ること。
試合は稼ぐための手段に過ぎないので、勝っても特に喜ぶこともなく、ジムの仲間との関係も淡白なもの。
しかし、なんとか先が見えてきた矢先に、余命宣告によって未来は閉ざされてしまい、生きる意味を失ったレオが出会うのが、モニカという訳だ。
モニカはモニカで父親から性的虐待を受け、借金のカタにヤクザに売られる。
やっと父親と別れられたと思いきや、クスリ漬けにされたモニカは、今度は幽霊のように何処にでも現れる父親の幻覚に苦しめられ、そのことが本作の物語を動かす切っ掛けとなるのである。
刹那的人生を生きる若い二人は、それぞれに同情すべき感情移入キャラクターに造形されている。
ちなみに“モニカ”とは本来キリスト教の聖人だが、彼女はダメンズ夫のDVや浮気に苦しめられた過去を持ち、今ではDV被害者の守護聖人となっているのが皮肉。
この二人を結びつけたのが、実はモニカの成就しなかった初恋の記憶。
実家に暮らしていた頃、彼女をかばって父親を殴ってくれた“竜司くん”への思慕の念が、彼に面影が似ていたレオとの出会いを呼ぶ。
しかし悲惨な状況下にいるモニカにとって、竜司くんへの気持ちはどちらかと言えば恋というよりも白馬の王子さまへの救出願望に近いもの。
自らの足で逃げ出し、レオと共に訳の分からないうちに裏社会の抗争に巻き込まれた一晩の体験が、彼女にとっての生き直しの恋となってゆく。
そしてヤクザ者たちが壮大に自滅してゆく中、お互いを大切な存在と意識するようになった二人は、自己再生を遂げてゆくのである。
殺戮の夜を生き延びたモニカが、妻を連れた竜司くんと再会するシーンがあるが、ここで初めて救出願望は甘酸っぱい初恋の記憶として昇華され、彼女は今を生きる決意を固める。
レオのボクシングの再起戦と、モニカのクスリ抜きの苦闘がクロスカッティングで描かれるシークエンスは、通過儀礼を経た二人の新しい人生の始まりだ。
以前は試合に勝っても無表情だったレオが、ジムの仲間と共に歓喜している描写は、初めて愛する人、守るべき人と出会った彼の人間的な成長を強く印象付ける。
ディテールは三池作品の例に漏れず結構荒っぽく漫画チックだが、主役の二人の感情はしっかり繋がっていて説得力充分なのでこれで良い。
と言うか、この映画の画作りは、実写キャラクターを使ったアニメーション映画の趣だ。
そのことを実感できるのが、おそらく物議を醸すであろう、突然のアニメーション表現。
警察に包囲されたホームセンターの立体駐車上の壁をぶち破り、トヨタセンチュリーが大ジャンプする一連のアクションがアニメーションで描かれている。
普通の演出家じゃ持て余しそうな演出だが、個人的には本作の世界観ならばこれはこれでアリに思え、全然違和感が無かった。
まあ第一義的には予算と技術的な問題の結果なのだろうが、要は実写の部分も含めて全体が戯画的なのである。
レオとモニカ以外の、エキセントリックなキャラクター造形も同様だ。
ヤクザもマフィアも、全員が特徴的でキャラ立ちしまくっている。
一見頭良さげで実はおバカキャラの染谷将太や、今時こんな奴いない的な武闘派の内野聖陽。
高倉健のヤクザ映画に憧れて日本に来た、藤岡麻美演じる女中華マフィアの仁義だて。
たぶん、役者のみなさんは演じててすごく楽しかったと思うのだが、MVPは文句なしで“バールの様な物”を振り回す復讐鬼ベッキー。
元好感度ナンバーワンのタレントが、ここまで振り切るとは(笑
しかしキャラクターもストーリーも、現在ではもう漫画となってしまったヤクザ映画というジャンルの虚構の中、ロンリーでイノセンスな心を持つ、若い二人の繊細な再生劇を描き出すというセンスに脱帽。
破天荒で熱血、暗い情念が燃えるこれぞ三池節という最高に面白い映画で、コロナで世間が過剰な自粛ムードに陥る中、大いに元気をもらった!
今回は鹿児島のアットスターの芋焼酎、その名も「初恋」をチョイス。
芋麹と米麹をブレンドして使用した珍しい製法。
しっかりと芋っぽさはありつつも、ほんのりと甘い初恋の味に仕上がっている。
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