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2020年03月14日 (土) | 編集 |
空から爆弾が降らなくなるその日まで。
激しい戦いが続くシリア最大の都市アレッポで、スマホを使って映像を撮り始めた女子学生、ワアド・アルカティーブが見た5年間の戦場の記録。
彼女はやがて結婚して母となり、死と隣り合わせの世界で、市民ジャーナリストとして命の証を残そうとカメラを回し続ける。
カンヌ国際映画祭の独立部門でルイユ・ドール(ドキュメンタリー映画賞)受賞、英国アカデミー賞(BAFTA)でもドキュメンタリー賞を受賞し、世界各国で高い評価を得た作品だ。
撮影者でもあるワアドと、エドワード・ワッツが共同監督を務める。
アラブの春と呼ばれる民主化要求デモが始まったのは、2010年のことだった。
最初は、チェニジアで長期政権を崩壊させたジャスミン革命。
運動は瞬く間にアラブ全域に広がり、いくつかの国では強権的な政権を倒すことに成功したが、いくつかの国では体制側と反体制勢力の戦争に発展していった。
アサド大統領が率いるバース党が独裁支配するシリアでは、2011年以来泥沼の戦いが続き、ロシアやイラン、アメリカ、トルコの介入による代理戦争化、権力の空白を突いたイスラム国(IS)の台頭などによって、統計には諸説あるものの40万人以上が命を落とし、800万人近くが難民化したという。
本作の語り部であるワアドも、最初は平凡な大学生として、友人たちと共により自由な人生を求めて、平和的なデモに参加していた。
しかしアサド政権に権力を手放す意図はなく、彼女の住むアレッポの街では反体制派と見なされた住民の虐殺が始まる。
そして、街がシリア政府軍と反体制派が激突する戦場となってゆくと、我々も彼女と共に目撃する。
当たり前に存在すると思っていた平和が、いかに尊く脆いものか。
国民のためでなく、特定の集団の利権を守るためだけに存在する権力が、いかに簡単に残酷な行為に及ぶのか。
2012年から4年半に及んだ戦闘で、街の東側を支配する政府軍は、徐々に反体制派が支配する地域を分断し、2016年に入ると無慈悲な包囲攻撃を開始するのである。
本作が特徴的なのは、外部から来たジャーナリストの目線ではなく、実際にアレッポに住む生活者の目線で描かれていること。
だから単純な戦闘の記録というよりも、戦時下での生活の記録になっている。
ワアドはデモ仲間でもあった医師を目指す若者ハムザと出会い、やがて結婚。
二人の間には、とても可愛らしい新しい命が誕生する。
娘には、爆弾を降らせる軍用機のいない平和な空を願って、「サマ(空)」と名付けるのだが、周囲には爆発音や銃声がしょっちゅう響く。
普通は大きな音に敏感な赤ちゃんも、慣れちゃって全く動じないのが悲しい。
無差別な攻撃によって、大人も子供もどんどん殺されゆく中で、病院を作り、学校を開き、必死に“日常”を守ろうとする人々の姿が印象的。
これは社会的動物としての、人間の本能なのかも知れない。
過酷な現実の中で、ワアドが経験するささやかな結婚式、憧れの新居への引っ越し、妊娠と出産の喜びは、そこが戦場であることを忘れさせる。
観ていて何度も「この世界の片隅に」が頭をよぎった。
アニメーションとドキュメンタリー、表現手法は180度違えど、これは確かにこの時代のアレッポに生きて死んでいった人々の記憶の器なのだ。
平凡な日常に寄り添っているからこそ、遠いシリアの戦場の人々が我々と地続きに感じられるのも同じ。
今も戦いが続いているかの地で起こっていることが、隣町のことの様に思えてくる。
しかし、アサド政権の狙いは、反体制派の日常を破壊し尽くしてこの街に住めなくすること。
だから国際人道法に反していることを知っていながら、攻撃目標として病院が狙われる。
もといた病院を爆撃された夫のハムザは、地図に載っていない建物を病院に仕立て上げて、アレッポの反体制派支配地域最後の医療拠点として治療を続け、ワアドはそんな夫たちの必死の努力を最後まで記録する。
なぜなら、政府軍が自由なアレッポを消し去ったとしても、撮った映像は人々が戦った命の証として永遠に残るからだ。
アレッポの陥落から3年が過ぎても、シリアで殺戮が止むことはなく、銃の代わりにカメラを手にした市民ジャーナリストの戦いは続いている。
戦場で生まれたサマちゃんがホント天使なんだが、彼女こそワアドたちが命がけで守り抜いた自由な未来の象徴だ。
世界中の為政者に、この映画を観せたい。
今、鑑賞すべき傑作だ。
今回はサマちゃんの名前の通り、平和な空のイメージで「スカイ・ダイビング」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ブルー・キュラソー20ml、ライム・ジュース10mlをシェイクし、グラスに注ぐ。
1967年に、渡辺義之氏が考案した全日本バーテンダー協会カクテル・コンペティション優勝作品。
文字通りの澄んだブルーが目に鮮やかで、ライムの酸味がいい感じに味を引き締める。
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激しい戦いが続くシリア最大の都市アレッポで、スマホを使って映像を撮り始めた女子学生、ワアド・アルカティーブが見た5年間の戦場の記録。
彼女はやがて結婚して母となり、死と隣り合わせの世界で、市民ジャーナリストとして命の証を残そうとカメラを回し続ける。
カンヌ国際映画祭の独立部門でルイユ・ドール(ドキュメンタリー映画賞)受賞、英国アカデミー賞(BAFTA)でもドキュメンタリー賞を受賞し、世界各国で高い評価を得た作品だ。
撮影者でもあるワアドと、エドワード・ワッツが共同監督を務める。
アラブの春と呼ばれる民主化要求デモが始まったのは、2010年のことだった。
最初は、チェニジアで長期政権を崩壊させたジャスミン革命。
運動は瞬く間にアラブ全域に広がり、いくつかの国では強権的な政権を倒すことに成功したが、いくつかの国では体制側と反体制勢力の戦争に発展していった。
アサド大統領が率いるバース党が独裁支配するシリアでは、2011年以来泥沼の戦いが続き、ロシアやイラン、アメリカ、トルコの介入による代理戦争化、権力の空白を突いたイスラム国(IS)の台頭などによって、統計には諸説あるものの40万人以上が命を落とし、800万人近くが難民化したという。
本作の語り部であるワアドも、最初は平凡な大学生として、友人たちと共により自由な人生を求めて、平和的なデモに参加していた。
しかしアサド政権に権力を手放す意図はなく、彼女の住むアレッポの街では反体制派と見なされた住民の虐殺が始まる。
そして、街がシリア政府軍と反体制派が激突する戦場となってゆくと、我々も彼女と共に目撃する。
当たり前に存在すると思っていた平和が、いかに尊く脆いものか。
国民のためでなく、特定の集団の利権を守るためだけに存在する権力が、いかに簡単に残酷な行為に及ぶのか。
2012年から4年半に及んだ戦闘で、街の東側を支配する政府軍は、徐々に反体制派が支配する地域を分断し、2016年に入ると無慈悲な包囲攻撃を開始するのである。
本作が特徴的なのは、外部から来たジャーナリストの目線ではなく、実際にアレッポに住む生活者の目線で描かれていること。
だから単純な戦闘の記録というよりも、戦時下での生活の記録になっている。
ワアドはデモ仲間でもあった医師を目指す若者ハムザと出会い、やがて結婚。
二人の間には、とても可愛らしい新しい命が誕生する。
娘には、爆弾を降らせる軍用機のいない平和な空を願って、「サマ(空)」と名付けるのだが、周囲には爆発音や銃声がしょっちゅう響く。
普通は大きな音に敏感な赤ちゃんも、慣れちゃって全く動じないのが悲しい。
無差別な攻撃によって、大人も子供もどんどん殺されゆく中で、病院を作り、学校を開き、必死に“日常”を守ろうとする人々の姿が印象的。
これは社会的動物としての、人間の本能なのかも知れない。
過酷な現実の中で、ワアドが経験するささやかな結婚式、憧れの新居への引っ越し、妊娠と出産の喜びは、そこが戦場であることを忘れさせる。
観ていて何度も「この世界の片隅に」が頭をよぎった。
アニメーションとドキュメンタリー、表現手法は180度違えど、これは確かにこの時代のアレッポに生きて死んでいった人々の記憶の器なのだ。
平凡な日常に寄り添っているからこそ、遠いシリアの戦場の人々が我々と地続きに感じられるのも同じ。
今も戦いが続いているかの地で起こっていることが、隣町のことの様に思えてくる。
しかし、アサド政権の狙いは、反体制派の日常を破壊し尽くしてこの街に住めなくすること。
だから国際人道法に反していることを知っていながら、攻撃目標として病院が狙われる。
もといた病院を爆撃された夫のハムザは、地図に載っていない建物を病院に仕立て上げて、アレッポの反体制派支配地域最後の医療拠点として治療を続け、ワアドはそんな夫たちの必死の努力を最後まで記録する。
なぜなら、政府軍が自由なアレッポを消し去ったとしても、撮った映像は人々が戦った命の証として永遠に残るからだ。
アレッポの陥落から3年が過ぎても、シリアで殺戮が止むことはなく、銃の代わりにカメラを手にした市民ジャーナリストの戦いは続いている。
戦場で生まれたサマちゃんがホント天使なんだが、彼女こそワアドたちが命がけで守り抜いた自由な未来の象徴だ。
世界中の為政者に、この映画を観せたい。
今、鑑賞すべき傑作だ。
今回はサマちゃんの名前の通り、平和な空のイメージで「スカイ・ダイビング」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ブルー・キュラソー20ml、ライム・ジュース10mlをシェイクし、グラスに注ぐ。
1967年に、渡辺義之氏が考案した全日本バーテンダー協会カクテル・コンペティション優勝作品。
文字通りの澄んだブルーが目に鮮やかで、ライムの酸味がいい感じに味を引き締める。

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