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ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから・・・・・評価★★★★+0.7
2020年05月09日 (土) | 編集 |
クライマックスはこれからだ!

Netflixオリジナル作品。
「素顔の私を見つめて...」のアリス・ウー、実に16年ぶりの第二作。
主人公は、田舎町に住む中国系移民の高校生エリー。
秀才だがまだ恋を知らない彼女が、おバカな男子同級生のポールにラブレターの代筆を頼まれ、学園一の美女アスターと文通することに。
文学や映画に関するウィットに富んだやり取りをしているうちに、エリーは初めて自分の理解者に出会ったと思い、アスターに惹かれはじめる。
小さな街の小さなコミュニティでくすぶる若者たちの、ちょっと痛くて切ない恋の苦悩をユーモラスに描いた青春ラブコメの佳作。
女性版「のび太」っぽい、眼鏡っ娘のエリーを演じるリーア・ルイスが素晴らしい。
彼女の父親役を中華圏アクション映画のレジェンド、コリン・チョウが味わい深く演じている。

内向的な高校生のエリー・チュウ(リーア・ルイス)は、スクアヘミッシュという田舎町で、鉄道のステーションマスターをしている父親のエドウィン(コリン・チョウ)と二人暮らし。
もうすぐ卒業を迎える彼女は進路に迷っているが、男やもめのエドウィンが心配で、近くの大学に進学しようと考えている。
頭脳明晰で、学生のレポートの代筆をして小銭を稼いでいるエリーは、ある時同級生のポール(ダニエル・ディーマー)にラブレターの代筆を頼まれる。
お相手は、エリーがオルガンの伴奏をしている教会の牧師の娘で、学園一の美女アスター(アレクシス・レミール)。
ポールはエリーのおかげでアスターとのデートにこぎ着けるが、緊張して話もまともに出来ない体たらく。
エリーの機転のおかげでその場を取り繕うも、以来ポールは何かにつけてエリーに頼る様になり、二人の間には奇妙な共闘関係が育まれる。
その一方で、エリーは自分がアスターにほのかな恋心を抱いていることに気づくのだが・・・


2004年に公開されたアリス・ウーのデビュー作「素顔の私を見つめて...」では、レズビアンであることを隠し、ニューヨークで医師として働く中国系女性のウィルが、バレエダンサーの女性ヴィヴィアンと恋に落ちる。
同じ頃、ウィルの母親のホイランが、妊娠して実家を追い出され、娘のアパートに転がり込んでくる。
保守的なコミュティで育ち、自分が同性愛者だと言えない娘と、子供の父親のことを話そうとしない母。
伝統と現実の間で揺れ動き、ぶつかり合う二人はやがてお互いを理解し、共に歩む道を見つけてゆくという物語だった。
この作品で注目されたウーだが、その後次回作の企画が失敗し、音沙汰がなくなってはや16年。
ようやく実現した本作を観ると、時代の移り変わりを強く感じる。

物語の舞台となるのは、スクアヘミッシュという田舎町で、住人の殆どが神を信じ教会に通うような保守的な社会だ。
しかしそんな町でも、いまや同性愛者であることは、「店の伝統のレシピを変えること」よりも大したことがないのである。
そもそも恋を知らないエリーは、自分のアスターへの気持ちに戸惑うものの、それが同性愛だということに関しては殆ど葛藤しない。
この16年の間に、米国では同性婚が合法化されたのをはじめ、性的マイノリティへの理解は格段に進んだ。
ニューヨークのど真ん中でも、親バレを恐れてレズビアンであることをひた隠しにしていた「素顔の私を見つめて...」とは隔世の感がある。

ではそんな時代のティーンたちは何に葛藤するのかと言えば、彼らは優しすぎていま一歩を踏み出せないのだ。
物語の中心となるエリーをはじめ、隣の家に住むポールも、街の名士である父を持つアスターもまた、この小さな社会の中で閉塞している。
成績優秀なエリーは名門グリネル大学へ進学するチャンスがありながら、妻を失い独り身になったエドウィンを気遣いスクアヘミッシュから離れる決断が出来ない。
もともとエドウィンは中国ではエンジニアとして働き、博士号も持っているエリート。
だが移民したアメリカでは、英語力の無さゆえに思うように働けず、ほぼ誰とも会話しない今の職に就いた。
最初は再就職先を見つけるまでの通過点と考えていた田舎町で、どこへも行けなくなってしまったのである。
幼い頃からアメリカに暮らし、他人のレポートの代筆まで器用にこなすエリーにとって、自分が本当に志望する進路に向かうことが、まるで夢を叶えられなかった父を見捨てるかのように感じてしまうのだ。

一方、大家族のポールの家は祖母のレシピを守って飲食店を経営している。
ポールは内心自分の得意なタコ・ソーセージの店をやりたいと思っているが、自分が街を出ると家族の心を傷つけることになるのではと恐れて、やはり決断が出来ない。
また厳格な宗教家の家に育ったアスターは、優れた芸術の才能を持ちながら、裕福な家の息子のトリッグと親の望む結婚をしようとしている。
彼らは皆、傷ついたり傷つけたりするのが怖くて周りに気を使いすぎて、自分の人生を自分の足で歩むことを躊躇してしまっている。
「カサブランカ」から始まって、全編に渡り多くの文学や映画からの引用が印象的な作品だが、サブタイトルは原題の直訳であるのと同時に、TVで映画を観ていて「ここからがベストパートだ」というエドウィンの口癖から。
優れた物語には、必ず感情が大いに盛り上がるクライマックスがある。
エリーたちの世代は自分の人生よりも親や家族の気持ちを優先し、閉塞した田舎で若くして色々諦めてしまっていて、自らクライマックスの無い平凡な人生を選ぼうとしているのである。

しかし、間にあんまり頭の良くないポールを挟んだエリーとアスターの奇妙な三角関係の恋は、総じて恋愛偏差値の低い三人の若者を大いに悩ませ、結果として人間的に成長させる。
三角関係の軸として、頭良すぎてなかなか動けないエリーとアスターを結びつける役割はポールが担う。
アスターとのデートで、ポールが緊張のあまりまともに受け答え出来なくなったのを見たエリーが、SNSを使ってポールのフリをしてメッセージを送り、助け舟を出すシーンは相当に可笑しいし、妙な自信をつけたポールが、エリー相手に勘違いをやらかして、三人の関係をぶち壊しにするのはかなり痛い。
すったもんだの若者たちの恋と青春の葛藤が、自分自身の心と向き合わせ、恋だけでなくそれぞれの人生の大きな決断を力強く後押しする。
優しく知的でユーモラス、ちょっと痛いエリーたちの青春に、エドウィンの愛と挫折の記憶がいい感じで絡む。
あれだけ馬鹿にしていた「列車で去る恋人を走って追いかける」ベタなシチュエーションも、実際にはこれがなければ映画は締まらない。
「レディ・バード」をもうちょっとマイルドにした様なテイストは、誰の記憶にもある古傷をくすぐる。
三人の人生、面白いのはこれからだ。
フィクションだと分かっていてもエールを贈りたくなる、まことに愛すべき小品である。

今回は晴れの日を迎えたエリーの未来を祝って、中国の酒宴に欠かせない白酒の中でも、一級品として知られる「貴州茅台酒(キシュウマオタイ酒)」をチョイスしたいところだが、近年急激に相場が上がってしまったので、セカンドブランドの「茅台迎賓酒(マオタイゲイヒン酒)」をチョイス。
小酒杯という小さなグラスで一気にグイッと飲むのが一般的だが、無ければお猪口でもいいだろう。
茅台酒ほどの濃厚なコクは感じられないがコスパは優秀で、芳潤な香りとスッキリとした味わいを程よく楽しめる。

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