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はちどり・・・・・評価額1700円
2020年07月06日 (月) | 編集 |
はちどりのささやき。

四半世紀前の高度成長期のソウルを舞台に、中学二年生の少女の思春期の揺れ動く心を描く、リリカルな青春ストーリー
両親はあまり自分に関心がなく、暴力的な兄には虐められている。
学校には馴染めず、趣味の漫画を書いたり、ボーイフレンドとデートしたり、他校の親友と遊びに行ったりの平凡な日々。
そんなある日、通っていた漢文塾で、自分の声に耳を傾けてくれる新任の先生と出会ったことをきっかけに、彼女は少しずつ大人へと近づいてゆく。
監督・脚本は韓国の大学の映画学科を卒業後、米国に渡りコロンビア大学院で学んだキム・ボラ。
少女の半径10メートルを描く極めてパーソナルな視点と、時代と社会を俯瞰する視点が巧みに融合され、デビュー作とは思えない完成度の高さだ。
韓国映画賞の最高峰、青龍映画賞では、あの「パラサイト 半地下の家族」を抑えて脚本賞に輝いたほか、世界各国の映画賞でも高く評価されている。

1994年、ソウル。
中学二年生となったウニ(パク・ジフ)は、両親と兄姉と共に鳥の巣箱のような大団地に暮らしている。
学校の授業にはあまり身が入らないが、放課後は最近できたボーイフレンドとデートしたり、通っている漢文塾の友達と遊びに行ったり、それなりに楽しい日々。
商店街で餅屋を営む両親は、朝早くから仕事に追われ、子供たちに向き合う時間をあまり持てない。
ウニは、両親は自分には関心がないと思っている。
ある日、漢文塾に新任のヨンジ先生(キム・セビョク)がやってくる。
物腰柔らかで知的な大人の女性。
ウニは自分の言葉に耳を傾け、アドバイスをくれるヨンジ先生に惹かれてゆく。
ところが、ある朝学校へ行くと、漢江にかかる聖水大橋が崩落したと言うニュースが駆け巡っていた。
事故が起こったのは、姉の乗るバスが橋に差し掛かる時間帯だった・・・・


タイトルの「はちどり」は不思議な生き物だ。
小指ほどの大きさで、ブーンとささやく様な羽音を響かせながら、高速で羽ばたいてホバリングし、細いクチバシを伸ばして花の蜜を吸う。
米国に住んでいた頃、庭の木に花が咲くとよく集まって来ていたが、名前の通り一見すると鳥なのか蜂なのかわからない、あいのこの様な生物。
主人公のウニもまた、大人でもなく子供でもない。
右も左も分からない新入生の一年生でもなく、受験に気をもむ三年生でもない、曖昧な中間の存在だ。

これは思春期の少女が、自分と家族を含めた社会との関係を発見してゆく物語。
彼女の見ている世界は、まだ狭くて浅い。
基本的にウニの一人称で語られる物語なので、彼女が知らないことは描かれない。
物語を通して、彼女が「知ってゆくこと」で、世界がどんどん変わってゆくのである。
ストーリーテリングは韓国映画というよりも、むしろ監督が学んだアメリカのインディーズ映画を思わせる。
冒頭、母親からお使いを頼まれたウニが帰ってくると、母親が玄関を開けてくれないと言う描写が本作の進む先を示唆する。
実はこれ、ウニの勘違い。
彼女の住む団地は全ての階の作りが同じで、ボーッとしたウニが階を間違えて他人の留守宅に入ろうとしていたのだ。
しかし、彼女自身は扉を叩きながら「母親が意地悪している」と思っていただろう。
この様に「◯◯だ」と思っていたことに、別の真実が見えてくることで、少女の世界は広がり、深化して行く。

餅屋を切り盛りする両親は、いつも疲れていてあまり子供たちのことをかまってくれない。
父親は、兄には生徒会長になって名門ソウル大へ行けと言うが、ウニには何も言わない。
両親に関心を持たれていないと感じている彼女を、複雑な世界へと導くメンターとなるのが、漢文塾のヨンジ先生だ。
兄が志望するソウル大に学び、穏やかな雰囲気を纏った大人の女性。
彼女はウニを気にかけて、ちょっとした悩みの聞き手となってくれる。
「相識満天下 知心能幾人(顔を知ってる人は世間に沢山いる、でも心の中を知っているのは何人?)」
古の禅の言葉を引用しながら、ヨンジ先生はこう問いかける。
この言葉通り、ウニは日常の様々な出来事を通して、移ろいゆく人の心に翻弄され、社会の理を学んでゆく。

端正な顔立ちのウニに憧れている後輩の女の子は、ウニのことが好きだと告白するが、しばらくするとよそよそしく、彼女を避ける様になる。
「私のことが好きだと言ったでしょ?」とウニが聞くと、後輩は「それは先学期のことです」と言い返す。
ところがウニはウニで、120日間付き合ったボーイフレンドと別れると、よりを戻そうとする彼に「あなたのことが好きだったことは一度もない」と言い放つのである。
人の心は変わり、永遠のものなど何処にもない。
ウニの耳の下にしこりが見つかり、手術して取り除くことになった時、自分に関心がないと思っていた父親が、心配して涙を流して悲しむ姿を見る。
自分を裏切ったと思っていた友達が、その時に感じていた本当の気持ちを知る。
知っていると思っていたことを、実は知らなかった

そして、ウニの心に、世界を変えるほどの大きな衝撃を与えるのが1994年10月21日に起こった聖水大橋崩落事故だ。
漢江にかかる巨大な橋は、手抜き工事によってあっけなく崩れ落ち、巻き込まれた路線バスの乗客ら32人が亡くなる大惨事となった。
この事故によって、初めて大切な人を失ったウニは、この世界の脆さと儚さを知るのである。
基本的には本作は一人称視点で描かれ、ウニの心に寄り添っているが、それゆえに劇中で起こることは必ずしも幼い主人公の心中で咀嚼しきれない。
しかしそのもどかしさが、普遍的な青春の成長痛となって、説得力たっぷりに語りかけてくるのである。
大きな喪失を経て、力強く成長したウニはどんな女性になるのだろう。
たぶんに自伝的な要素はあるのだろうが、キム・ボラ監督はウニは自分そのものではないと語ってる。
ならば、物語としての続きが見たい。
例えばグレタ・ガーウィクには、「フランシス・ハ」「レディ・バード」と言う、シリーズではないが共に自分の分身の様なキャラクターを描く作品が複数ある。
高校生となって青春を謳歌するウニ、社会人として葛藤するウニ、リアリティたっぷりだからこそ、彼女の未来へ想像力が膨らんでゆく。

それにしても、たった四半世紀前だと言うのに、この時代感。
たぶんこの間に韓国社会の中で「女性であること」の意味が大きく変わったのだろう。
本作を観て、どうしても思い出してしまったのが、これも映画化される大ベストセラー小説「82年生まれ、キム・ジヨン」のこと。
心を病んだ33歳のキム・ジヨンが夫と共に病院を訪れ、2015年のソウルを起点に精神科医が彼女の人生を紐解いて行く。
そして彼女が心のバランスを崩した要因として、長年にわたる女性の置かれた理不尽な社会状況が浮かび上がってくる。
81年生まれのキム・ボラ監督もほぼ同世代。
実際本作の描写には、「82年生まれ、キム・ジヨン」を思わせる部分が多々ある。
兄に殴られたと言うウニに、ヨンジ先生は言う。
「殴られたら、殴られたままにしないで」と。
この四半世紀の間、韓国の少女たちは確かにそのままにはしなかったのだろうな。

今回はタイトルから「ハミングバード」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、ココナッツ・クリーム30ml、コーヒー・リキュール 15ml、バナナ1/3〜1/2、イチゴ3〜4個、クラッシュド・アイス2/3カップをパワーブレンダーでミックス。
ハリケーングラスに注ぎ入れ、最後にスライス・レモンをグラスのフチに飾って完成。
クリーミーでフルーティー。
シェイク感覚で楽しめるトロピカルなカクテルだ。

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