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2020年08月13日 (木) | 編集 |
傷付けられても、愛したかった。
俳優のシャイア・ラブーフが、初めて脚本を執筆した自伝的セルフセラピー映画。
ハリウッドの人気スターの主人公が、アルコール依存症のリハビリ施設で治療を受ける現在と、安モーテルで父親と暮らしていた子役時代が並行して描かれてゆく。
タイトルの「ハニーボーイ」とは、子供の頃のラブーフのあだ名だったそう。
現在に生きる三人の若者たちの「愛」についての物語を、現実と再現ドラマを織り交ぜて描いた異色のドキュメンタリー映画、「ラブ・トゥルー」のアルマ・ハレル監督が、友人でもあるラブーフの物語を繊細に紡ぎ出す。
主人公の子供時代をノア・ジュープ、10年後の青年期をルーカス・ヘッジズが演じる。
トラブルメーカー の父親役には、シャイア・ラブーフ自らがが扮した。
人間はいつの時点で大人になるのか?いつの時点で親離れできるのか?
なかなかに味わい深い佳作である。
2005年。
ハリウッドで活躍する俳優のオーティス・ロート(ルーカス・ヘッジス/ノア・ジュープ)は、酒を飲んで自動車事故を起こし、アルコール依存症のリハビリ施設に入所する。
過去の心の傷によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていると診断されたオーティスは、トラウマの正体を探るために、子供の頃の思い出をノートにしたためる。
10年前、人気子役だったオーティスは、スタジオ近くの安モーテルで、父のジェームズ(シャイア・ラブーフ)と暮らしていた。
エキセントリックな性格のジェームズは、前科があるために仕事につけず、オーティスのマネージメントで生計を立てる毎日。
全てをジェームズにコントロールされるオーティスと、オーティスに依存しなければ生活できないジェームズ。
だが二人の関係は、オーティスの成長と共に、すこしずつ変化してゆく・・・
冒頭の2005年のハリウッドで、「トランスフォーマー」チックな映画を撮影している22歳のオーティスは、ワイヤーアクション用のハーネスに拘束されている。
それは自分では取り外せないほどキチキチに取り付けられているのだが、10年前の子役時代に場面が変わると、やはりオーティスはハーネスに拘束されているのだ。
オーティスは楽屋にいるジェームズにハーネスを取って欲しいと頼むのだが、女性との話に夢中のジェームズはなかなか相手にしてくれない。
この現在と過去の二つの描写が、本作の向かう先を象徴する。
ワイヤーアクション用のハーネスは、普通はスクリーンに映らない。
本作は子供の頃も大人になってからも、見えない何かに拘束された男が、その正体に気づいて取り外すまでの物語なのである。
入所したアルコール依存症のリハビリ施設でPTSDと診断され、暴露療法として子供時代の父との関係をノートに書き記し、続いてそれを元にシナリオを執筆、最後にトラウマの元となった父を自らが演じる。
非常にユニークな企画性を持つ、ある意味究極の私小説的作品だが、元々自己客観視を目的としていたからか、強烈な実体験感を持ちながら視点は非常に冷静。
さらにアルマ・ハレルの演出も、ドキュメンタリストらしく対象から絶妙な距離感を保ち、第三者的に物語を描いているので、過度に痛々しくないのもいい。
自伝的作品と言っても、登場人物の年齢や時系列は実際とは異なっている。
本作では、2005年に交通事故を起こした22歳のオーティスがリハビリ施設に入り、そこで10年前の父との思い出と向き合うことになるが、実際にラブーフが酒気帯び運転で事故を起こしたのは2008年。
アルコール依存症のリハビリ施設に入りPTSDと診断されたのは、「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」の撮影中に、警察とトラブルを起こした2017年のことだ。
一連の治療の結果として生まれた作品で、ラブーフ自身が父を演じるのも、いわば演劇療法みたいなもので、彼にとっては治療の総仕上げなのかもしれない。
というか、実際のラブーフってまだに34歳の若さだったのか!とちょっとびっくりした。
ラブーフが演じるジェームズは、いわゆる毒親さんだ。
長年アルコール依存症に苦しみ、妻とは離婚し、前科者のためにまともな職にもつけない。
元ロデオのピエロだった経歴を生かし、一人息子のオーティスをハリウッドの子役スターに育て、彼のギャラで生計を立てているステージパパ。
しかしオーティスは人気子役なのに、住んでいるのは安モーテル。
スラム化したモーテルを舞台としたショーン・ベイカー監督の傑作、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」でも描かれたように、事前に収めるセキュリティ・ディポジットが必要のない場末のモーテルは、米国では家を買えない、借りられない貧困層の住居でもある。
オーティスの稼ぎがあるから日銭には困らないが、かたぎの仕事についていないジェームズは、おそらくきちんとした住宅を借りられないのだ。
ジェームズも、自分の状況がどん底なのは分かっている。
なんとかアルコールは克服したものの、性格は超エキセントリックでまともに人とコミュニケーションが取れず、常に躁状態。
フリーウエイの脇の植え込みに勝手にマリワナの種を撒いて、育つのを眺めるのが楽しみという、子供がそのまま大人になったような不安定なキャラクターだ。
プライドだけは高いから、オーティスが問題のある家庭の子供を支援する非営利組織、ビッグ・ブラザーズ・ビッグ・シスターズから派遣されているトムを信頼しているのが気に入らず、訪ねてきたトムを嫉妬に狂ってプールに投げ落としちゃう。
一方のオーティスは、自分よりも子供っぽい父を養うために、普通よりも早く大人になってゆく。
本当ならば、まだまだ大人に甘えたい12歳。
父親からは色々なことを教わって少しずつ成長してゆく年齢なのに、オーティスにはそれは叶わないのである。
ジェームが別れた妻と、オーティスを通して電話越しに喧嘩するくだりなんて、映画の描写としては可笑しくてたまらないけど、普通あれ子供にやらせるか。
この映画を観るまでは、シャイア・ラブーフというと、演技は上手いけど色々お騒がせな人だと思っていたが、そりゃこんな育ち方してたら心も荒れるわ。
ラブーフは若い頃からどこか影があって、それが俳優としての魅力に繋がっていたのだが、その原因がこんなところにあったとは。
やるせないのが、ジェームズも決して悪人ではなく、彼なりにオーティスを愛していること。
大人になって振り返れば、息子に依存して生きる父の苦悩も理解できる。
アルマ・ハレルは、マジックアワーの情景を多用し、二人の絡み合う葛藤を詩的に表現する。
これは言わば、息子から父への長年の愛憎が入り混じった私信のような作品。
本作を作るにあたって、ラブーフも長年音信不通だった父親と久しぶりに会って話したというが、本音の言葉を吐き出すまでに、映画のオーティスで10年、現実には20年という長い時間がかかったわけだ。
治療を受けるきっかけになった「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」でも、ダメ人間の役だったけど、無意識に父の思い出に寄せて行ってたのかも。
子は親を選べないが、親はある程度までは子を思い通りにできるんだよなあ。
この映画を作ったことで、ラブーフの心にも平安が戻ってくればいいけど。
今回はタイトルに因んで、蜂蜜を使ったカクテル「ビーズ・ニーズ」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、レモン・ジュース20ml、蜂蜜適量をシェイクする。
蜂蜜は強くシェイクしないとなかなか混ざらないので注意。
ビーズ・ニーズは禁酒法時代に密造された粗悪品のジンを、なんとか美味しく飲むために生まれたと言われている。
実際、この三つの素材の相性はとても良好で、蜂蜜の甘みとレモンの酸味はちょっと青春の味っぽく、さっぱりといただける。
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俳優のシャイア・ラブーフが、初めて脚本を執筆した自伝的セルフセラピー映画。
ハリウッドの人気スターの主人公が、アルコール依存症のリハビリ施設で治療を受ける現在と、安モーテルで父親と暮らしていた子役時代が並行して描かれてゆく。
タイトルの「ハニーボーイ」とは、子供の頃のラブーフのあだ名だったそう。
現在に生きる三人の若者たちの「愛」についての物語を、現実と再現ドラマを織り交ぜて描いた異色のドキュメンタリー映画、「ラブ・トゥルー」のアルマ・ハレル監督が、友人でもあるラブーフの物語を繊細に紡ぎ出す。
主人公の子供時代をノア・ジュープ、10年後の青年期をルーカス・ヘッジズが演じる。
トラブルメーカー の父親役には、シャイア・ラブーフ自らがが扮した。
人間はいつの時点で大人になるのか?いつの時点で親離れできるのか?
なかなかに味わい深い佳作である。
2005年。
ハリウッドで活躍する俳優のオーティス・ロート(ルーカス・ヘッジス/ノア・ジュープ)は、酒を飲んで自動車事故を起こし、アルコール依存症のリハビリ施設に入所する。
過去の心の傷によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていると診断されたオーティスは、トラウマの正体を探るために、子供の頃の思い出をノートにしたためる。
10年前、人気子役だったオーティスは、スタジオ近くの安モーテルで、父のジェームズ(シャイア・ラブーフ)と暮らしていた。
エキセントリックな性格のジェームズは、前科があるために仕事につけず、オーティスのマネージメントで生計を立てる毎日。
全てをジェームズにコントロールされるオーティスと、オーティスに依存しなければ生活できないジェームズ。
だが二人の関係は、オーティスの成長と共に、すこしずつ変化してゆく・・・
冒頭の2005年のハリウッドで、「トランスフォーマー」チックな映画を撮影している22歳のオーティスは、ワイヤーアクション用のハーネスに拘束されている。
それは自分では取り外せないほどキチキチに取り付けられているのだが、10年前の子役時代に場面が変わると、やはりオーティスはハーネスに拘束されているのだ。
オーティスは楽屋にいるジェームズにハーネスを取って欲しいと頼むのだが、女性との話に夢中のジェームズはなかなか相手にしてくれない。
この現在と過去の二つの描写が、本作の向かう先を象徴する。
ワイヤーアクション用のハーネスは、普通はスクリーンに映らない。
本作は子供の頃も大人になってからも、見えない何かに拘束された男が、その正体に気づいて取り外すまでの物語なのである。
入所したアルコール依存症のリハビリ施設でPTSDと診断され、暴露療法として子供時代の父との関係をノートに書き記し、続いてそれを元にシナリオを執筆、最後にトラウマの元となった父を自らが演じる。
非常にユニークな企画性を持つ、ある意味究極の私小説的作品だが、元々自己客観視を目的としていたからか、強烈な実体験感を持ちながら視点は非常に冷静。
さらにアルマ・ハレルの演出も、ドキュメンタリストらしく対象から絶妙な距離感を保ち、第三者的に物語を描いているので、過度に痛々しくないのもいい。
自伝的作品と言っても、登場人物の年齢や時系列は実際とは異なっている。
本作では、2005年に交通事故を起こした22歳のオーティスがリハビリ施設に入り、そこで10年前の父との思い出と向き合うことになるが、実際にラブーフが酒気帯び運転で事故を起こしたのは2008年。
アルコール依存症のリハビリ施設に入りPTSDと診断されたのは、「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」の撮影中に、警察とトラブルを起こした2017年のことだ。
一連の治療の結果として生まれた作品で、ラブーフ自身が父を演じるのも、いわば演劇療法みたいなもので、彼にとっては治療の総仕上げなのかもしれない。
というか、実際のラブーフってまだに34歳の若さだったのか!とちょっとびっくりした。
ラブーフが演じるジェームズは、いわゆる毒親さんだ。
長年アルコール依存症に苦しみ、妻とは離婚し、前科者のためにまともな職にもつけない。
元ロデオのピエロだった経歴を生かし、一人息子のオーティスをハリウッドの子役スターに育て、彼のギャラで生計を立てているステージパパ。
しかしオーティスは人気子役なのに、住んでいるのは安モーテル。
スラム化したモーテルを舞台としたショーン・ベイカー監督の傑作、「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」でも描かれたように、事前に収めるセキュリティ・ディポジットが必要のない場末のモーテルは、米国では家を買えない、借りられない貧困層の住居でもある。
オーティスの稼ぎがあるから日銭には困らないが、かたぎの仕事についていないジェームズは、おそらくきちんとした住宅を借りられないのだ。
ジェームズも、自分の状況がどん底なのは分かっている。
なんとかアルコールは克服したものの、性格は超エキセントリックでまともに人とコミュニケーションが取れず、常に躁状態。
フリーウエイの脇の植え込みに勝手にマリワナの種を撒いて、育つのを眺めるのが楽しみという、子供がそのまま大人になったような不安定なキャラクターだ。
プライドだけは高いから、オーティスが問題のある家庭の子供を支援する非営利組織、ビッグ・ブラザーズ・ビッグ・シスターズから派遣されているトムを信頼しているのが気に入らず、訪ねてきたトムを嫉妬に狂ってプールに投げ落としちゃう。
一方のオーティスは、自分よりも子供っぽい父を養うために、普通よりも早く大人になってゆく。
本当ならば、まだまだ大人に甘えたい12歳。
父親からは色々なことを教わって少しずつ成長してゆく年齢なのに、オーティスにはそれは叶わないのである。
ジェームが別れた妻と、オーティスを通して電話越しに喧嘩するくだりなんて、映画の描写としては可笑しくてたまらないけど、普通あれ子供にやらせるか。
この映画を観るまでは、シャイア・ラブーフというと、演技は上手いけど色々お騒がせな人だと思っていたが、そりゃこんな育ち方してたら心も荒れるわ。
ラブーフは若い頃からどこか影があって、それが俳優としての魅力に繋がっていたのだが、その原因がこんなところにあったとは。
やるせないのが、ジェームズも決して悪人ではなく、彼なりにオーティスを愛していること。
大人になって振り返れば、息子に依存して生きる父の苦悩も理解できる。
アルマ・ハレルは、マジックアワーの情景を多用し、二人の絡み合う葛藤を詩的に表現する。
これは言わば、息子から父への長年の愛憎が入り混じった私信のような作品。
本作を作るにあたって、ラブーフも長年音信不通だった父親と久しぶりに会って話したというが、本音の言葉を吐き出すまでに、映画のオーティスで10年、現実には20年という長い時間がかかったわけだ。
治療を受けるきっかけになった「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」でも、ダメ人間の役だったけど、無意識に父の思い出に寄せて行ってたのかも。
子は親を選べないが、親はある程度までは子を思い通りにできるんだよなあ。
この映画を作ったことで、ラブーフの心にも平安が戻ってくればいいけど。
今回はタイトルに因んで、蜂蜜を使ったカクテル「ビーズ・ニーズ」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、レモン・ジュース20ml、蜂蜜適量をシェイクする。
蜂蜜は強くシェイクしないとなかなか混ざらないので注意。
ビーズ・ニーズは禁酒法時代に密造された粗悪品のジンを、なんとか美味しく飲むために生まれたと言われている。
実際、この三つの素材の相性はとても良好で、蜂蜜の甘みとレモンの酸味はちょっと青春の味っぽく、さっぱりといただける。

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