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ショートレビュー「僕の好きな女の子・・・・・評価額1650円」
2020年08月20日 (木) | 編集 |
恋とは、思い通りにならぬもの。

これはキツい。
又吉直樹の作品の主人公は、なぜこんなにも痛々しいのか。
渡辺大知演じる加藤は、売り出し中の若手ドラマ脚本家。
彼は仲のいい女友達の美帆に恋しているのだが、今の関係を壊すのが怖くて、ずーっと告白できないでいる。
天然系アーティスト気質の彼女は彼女で、あんまり男心が分かるタイプではなく、加藤の気持ちには全く気づいてくれない。
傍目から見たらデートとしか思えないような行動をしていても、加藤の恋心はどこまでも燻り続けるしかないのだ。

劇作家の玉田真也が、「別冊カドカワ総力特集『又吉直樹』」に収録された「僕の好きな女の子」を映画化した作品。
又吉先生の男性主人公といえば、クリエイター系のダメ人間である。
先日公開された「劇場」で山崎賢人が演じた永田は、傲慢で人を傷つけることを厭わない、売れない劇作家。
献身的な恋人のヒモ状態で暮らすこと10年。
結局彼女の青春を食い潰し、その経験を芸の肥やしとして自分は演劇人として開花する。
本作の加藤は、「物語を作る人」という共通項はあれど、小劇団とテレビドラマというジャンルの違いが象徴するように、性格的には真逆。
彼女の家に転がり込むどころか、告白することすらできないまま、いい歳して悶々とした気持ちを抱え込んでいる、違ったタイプのダメ人間だ。

加藤は「自分と美帆は恋愛を超えた特別な関係なんだ!」と思い込むことで誤魔化してるのだが、所詮は勇気を出せない言い訳に過ぎない。
ところが美帆との沸きらない関係をモデルにドラマを作ったことで、友人たちにイタい恋愛観を看破され、思いっきりダメ出しされてしまう。
温厚でのび太系の加藤は、見るからに「いい人」で、劇中でも何度も何度も「いい人」と言われる。
だが、この言葉はイコール「便利な人、都合の良い人」に他ならない。
加藤は、誰かから「いい人」と呼ばれる度に、自分の弱さを見透かされるように、心をえぐられてゆくのである。
ぶっちゃけ、これほどナイーブな人間に恋愛ドラマが書けるのか?序盤はなんとかなっても果たしてドラマを完結に導けるのだろうか?とか余計な心配をしてしまった。

しかし、このもどかしい関係はどこかで観たことあるなあと思っていたのだが、エンドクレジットに「脚本協力」として今泉力哉の名前があるじゃないか。
なるほど、これを「愛がなんだ」の男女違い版と考えると妙に納得。
まあ「劇場」の見事な脚色を見てしまうと、エピローグの加藤のその後にはもう一工夫あっても良かったと思うが、またしてもダメダメな主人公に思いっきり感情移入してしまった。
散々ダメ呼ばわりしてきたが、「火花」や「劇場」の主人公も含めて、又吉作品の男性キャラクターには、普遍的なリアリティがある。
「劇場」の永田も本作の加藤も、自分の中にもある男の弱い心を赤裸々に明かされているようで、ダメだとは思ってもどうしても否定は出来ないんだな。
加藤が美帆と新しい彼氏をボートに乗せたのは、もちろん「井の頭公園でボートに乗ったカップルは別れる」という都市伝説を知っていたからだろう。
自分を不幸のどん底に落としておいて(自分のせいだけど)幸せを謳歌する彼女に、ささやかな「呪い」をかけるくらいしか出来ない、加藤の痛々しいいい人っぷりに泣けてくる。

今回は、悲しき片思いだったので「トゥルー・ラブ」をチョイス。
ドライ・ベルモット15ml、ポートワインの赤15ml、スコッチ・ウィスキー15mlを氷と一緒にミキシンググラスでステアして、グラスに注ぐ。
ルビー色の美しいカクテルで、口当たりはマイルドだが相当に強い。

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