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2020年09月04日 (金) | 編集 |
法は誰のためにあるのか?

イラク戦争直前、国民に真実を伏せたまま、アメリカに追従して開戦に突き進むブレア政権を止めるため、機密情報をマスコミにリークしたイギリスの諜報員キャサリン・ガンの実話。
英国内外の情報収集と解析を専門とする政府通信本部(GCHQ)に所属していた彼女は、国連安保理での多数派工作のため、非常任理事国の情報を集めろという米国国家安全保障局(NSA)からのメールを受け取る。
それは違法な情報操作だったが、英国の「オフィシャル・シークレット(公務機密)法」は公務員が知りえた情報の公表を禁止している。
多くの犠牲を伴う戦争を止めるために情報をリークしたキャサリンは、果たして“裏切り者”なのか。
ドローンから見つめる会議室での“戦争”を描いた、「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」のギャビン・フッド監督による骨太の力作だ。

キャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)は、GCHQで働く北京語の翻訳官。
世間では、9.11をきっかけに始まったアフガニスタン戦争に続いて、イラクでも戦争になるのかに関心が集まっていた。
アメリカとイギリス両国は、国連安保理でイラクに対する軍事制裁決議を引き出そうとしていたが、そのためには非常任理事国の賛成票が必要になる。
ある日、キャサリンは両国の諜報機関による「非常任理事国を脅す材料を探せ」という違法な工作に関するメールを入手した。
それは不条理な要請だったが、両国の情報機関同士の連携を定めたUKUSA協定によって断ることは出来ない。
イラクでの開戦を不当だと考えていたキャサリンは、このメールを黙って見過ごすことが出来ず、知人を通じてマスコミにリークする。
数週間後、オブザーバー紙の記者マーティン・ブライト(マット・スミス)により、メールの内容が記事となるのだが、同時にGCHQ内部で執拗な犯人捜しが始まった・・・


もしもあなたが、世界の運命を変え数百万人の生殺与奪に関わる、重大な情報を知ってしまったらどうするだろうか。
今もその余波が続くイラク戦争は、フセイン政権が9.11を起こしたアルカイダの陰にいて、大量破壊兵器を隠しているという世紀の大嘘から始まった、大義無き戦争だったのは今では誰でも知っていることだが、当時はまだ大半のマスコミも含めて真相を知るものは少なかった。
世界の多くの国々も疑心暗鬼に陥っていたころ、真実の一端をつかんだキャサリンは、大きな決断を迫られる。
嘘で国民を戦争に駆り立てることは、もちろん違法。
しかし公務機密法に背いて情報を公表すれば、それはそれで国家に対する反逆として罪に問われることになる。
公務員が誠実に使えるべきなのは、選挙で代る政府に対してなのか、それとも国民に対してなのか。

キーラ・ナイトレイが、主人公のキャサリン・ガンを好演。
彼女が属するGCHQといえば、前身のGCCS時代に数学者のアラン・チューリング率いるチームが、ドイツ軍の暗号機エニグマの解読に成功したことで有名。
この顛末が「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」として映画化されたことも、記憶に新しい。
もっとも、諜報組織に属するスパイといっても、彼女の仕事はジェームズ・ボンドのような派手さは皆無。
語学力を生かして盗聴された音源や文書を翻訳し、報告書を上げるという地味な毎日だ。
家に帰ればカフェで働くクルド人難民の夫がいて、なかなか難民申請が通らないので、在留のために毎週警察署に出向いてサインする夫を送り届ける。
反戦主義者ではなく、時には必要な戦争もあるとは思っているが、イラク戦争はそうではない。
大義無き戦争に国民を送り出す手助けをすることが、本当に正しいことなのかずっと葛藤していて、最初は義憤に駆られてNSAからのメールをリークするのだが、いざとなると恐くなって吐いちゃうようなごく普通の人だ。

映画は大きく三つのパートに分かれる。
まずはキャサリンが、メールをマスコミにリークするまで。
しかし、情報を受け取ったマスコミも、出所不明の文書をそのまま公表するわけにはいかない。
これは本物なのか、よくできたフェイクではないのか、差出人とされる人物は実在するのか。
場合によっては自分たちも罪に問われる可能性があるのだから、大西洋をまたいで、慎重に裏どりするプロセスが描かれる。
そして、ことが公になると今度はキャサリンと、彼女の弁護チームの戦いが始まる。
ここでも状況は不利。
そもそも彼女の行為は、明確に法で禁止されているのだ。
同義的に正しいかどうかは、また別の話だ。
一番イージーなのは、最初から罪を認め刑の軽減を受けることだが、それではキャサリンの行為が「間違ったこと」になってしまう。
弁護チームの仕事は、彼女が罪に対する、政府の不誠実の罪を探すこと。

最初は落ち込んでひどく弱気だったキャサリンも、自分が逮捕され保釈された後に、夫が政府から嫌がらせを受けたりしてるうちに、だんだん肝が座ってくる。
不安げな表情が消え、静かな闘志を秘めた顔つきに変わってくるのである。
裁判に向けて、真実を巡る個人と権力のせめぎ合いのドラマはスリリングに展開し、見応え十分。
そして物語の結末も、詳細は控えるが事実ならではの意外性がある。
権力者は、法をねじ曲げてでも最後は自分を守るという、どこかの国でも見たような話にデジャヴ。
映画では描かれなかったけど、現実のキャサリンは事件後は英国でなかなか思うような職に付けず、今は家族とトルコで暮らしているそうだ。
嘘から始まった戦争の闇は、今なおズブズブに深い。
イラク戦争の有志連合には実質的にも日本も加わっているし、戦争の話でなくてもモリカケ事件などでも、本作のキャサリンのような立場におかれた公務員が、多数いたことは想像に難くない。
権力と個人、法と公務員の在り方など、示唆するところは非常に多い作品だと思う。

今回は、あえて毒を飲んだ主人公の話なので「スゥイート・ポイズン」をチョイス。
ライト・ラム30ml、ココナッツ・ラム60ml、ブルー・キュラソーを氷と共にシェイクし、冷やしたグラスに注ぎ、適量のパイナップル・ジュースで満たす。
最後にパイナップルの切れ端を飾って完成。
ゴシック小説の世界を再現したニューヨークのテーマレストラン、“Jekyll and Hyde Club”の人気カクテル。
名前の通り結構毒々しいカラーだが、味わいは甘めで結構スッキリしている。

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