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ショートレビュー「浅田家!・・・・・評価額1650円」
2020年10月12日 (月) | 編集 |
写真の持つ、本当のチカラ。

「家族」をモチーフに、写真を撮り続けている写真家の浅田政志の物語を、「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」など、やはり一貫して「家族」のカタチを描いてきた中野量太監督が映画化した作品。
映画の前半は三重県津市に育った政志が、紆余曲折の末に家族写真集「浅田家!」を出版し、やがて写真家として世間に認められるまで。
原作となっている「浅田家!」は、確か2009年に賞をとった頃だったと思うが、書店で見たことがある。
人生は劇場。
ある意味誰もが人生で役を演じていて、成りたかった自分と現実の自分を持っている。
家族と一緒にコスプレして、色んな人生を擬似体験するというアイディアが面白く、「こりゃ楽しそうなことやってるな」と思った。
政志は写真に撮ることで虚実の境界を取り去るのだが、それは実はこの映画がやっていることそのものだと言うメタ構造がユニークだ。
しかしテンポよく、コミカルなタッチで展開する映画は、中盤でガラッと世界を変える。

後半部分の原作となっているのは、2015年に出版された政志と編集者の藤本智士の共著「アルバムのチカラ」だ。
これは東日本大震災後に被災地に向かった政志が、津波に流されて泥だらけになった写真を洗浄し、持ち主に返す活動をしているボランティアと出会い、彼らの活動を支援して行った記録。
映画では一か所が舞台になっているが、写真の回収と返還のボランティア活動は各地の避難所で同時多発的に始まっていて、政志は彼らを取材することで写真洗浄のノウハウを広げていく。
彼はこの活動を通して、家族写真の持つ本当の価値に気づくのだ。
たった一枚の写真が、記憶を蘇らせられる。
写真は、同じ時間を共有してきた家族のための記憶の器であり、それが何十年前のものだったとしても、もうこの世界にはいない人たちを心の中に生かし続けるのである。
ボランティアが救い出した写真の数々が、全てを失い絶望に打ちひしがれた残された人たちの心を癒し、ささやかな希望となってゆく。
写真が思い出を、思い出が現在を、現在が未来を動かすエネルギーとなる。
それが「アルバムのチカラ」であり、家族写真の持つ本当のチカラなのだ。

二宮和也が繊細に表現する、主人公のキャラクターがいい。
写真学校へ行ったものの、突然タトゥーだらけになって帰ってきたかと思えば、卒業後は就職もせずにグータラしてパチスロ三昧。
やる気スイッチが入らないと、典型的なダメ人間
だけど、彼は破天荒だけど誠実。
ダメ人間な様でも、やるときゃやる。
ファインダーの向こうにチラリと見える瞳が、台詞よりも雄弁に感情を語る。
黒木華が演じる、幼なじみで腐れ縁状態の恋人との掛け合いも、かわいくて可笑しい。
冒頭のシーンに仕掛けられた遊び心も楽しいが、題材がグッとシリアスになる後半では、中野量太の持ち味であるユーモアが影を潜めてしまうのはちょっと残念。
まあ、あの悲劇的なシチュエーションではさすがに難しく、無い物ねだりなのは分かってるけど。
驚かされたのは洗浄ボランティアの小野くんを演じた菅田将暉で、スターのオーラを完全に消し去り、ラスト近くでアップになるまで誰が演じているのか全く分からなかった。
この人は主役から二番手三番手まで、変幻自在だな。
まさにカメレオンアクター。

今回は岩手を代表する地酒銘柄、陸前高田市の酔仙酒造の「純米大吟醸 鳳翔」をチョイス。
酔仙は東日本大震災の津波被害で、工場を丸ごと流されるという壊滅的な被害を受けたが、全国の飲兵衛のエールを受けて翌年復活。
今もおいしいお酒を送り出し続けている。
こちらも、豊かな吟醸香と柔らかな口当たりが楽しめる芳潤な酒だ。

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