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2020年12月24日 (木) | 編集 |
目指せ、お二人さま。
「勝手にふるえてろ」の原作・綿谷りさ、監督・大九明子の名タッグ再び。
主人公は、長年のお一人さま生活を満喫するアラサーOLのみつ子。
彼女の心の中には、イマジナリーフレンドというか、自分の心の声である脳内フレンドの「A」がいて、何か迷いごとがあると逐一相談する。
「A」は常にみつ子に寄り添い、完全に味方してくれる優しい相方なのだ。
しかしある時、取引先の年下社員の多田くんと出会ってしまったことで、彼女は人生の分岐点に立たされる。
このままお一人さまを続けるのか、多田くんとラブラブなお二人さまを目指すのか。
多田くんに恋をしたみつ子は、ときめく心に戸惑いながらも、今の自分を変えることに葛藤を深めてゆく。
のんさんがみつ子役にハマりまくりで、彼女はようやく実写映画で代表作を得たのでないか。
多田くんに林遣都、気のおけない同僚ノゾミさんを臼田あさ美、旧友の皐月を橋本愛が演じる。
コロナ禍での開催となった今年の東京国際映画祭では、観客賞を受賞した共感力抜群の話題作だ。
31歳の会社員、黒田みつ子(のん)は、脳内の相談役「A」(中村倫也)と共に、長らくお一人さま生活。
ところが、一年前から彼女の部屋には取引先の社員の多田くん(林遣都)が、しばしばご飯をもらいに訪ねてくる。
偶然街で出会った時に、ご飯を作ってあげる約束をしたのだが、「寄ってく?」の一言が言えずに、なぜかずーっと玄関での受け渡し。
今の関係を壊すことが怖くて、今一歩踏み出せないみつ子に、「A」は「大丈夫ですよ。多田さんはあなたのこときっと好きです。本人に直接訊いてみたらどうですか」と言うのだが、いまいち踏ん切りがつかない。
その後距離を縮めることには成功したが、それでも不安は拭えない。
みつ子は気分転換にと、イタリアに嫁いだ親友の皐月(橋本愛)を訪ねる旅に出るのだが・・・・
食べ物の描写が多くて、やたら腹の減る映画だった。
のんさん演じる主人公のみつ子に感情移入しまくりで、むっちゃ愛おしい。
そうだよなー、お一人さまライフが長くなり過ぎると、人生の次のステージが目に前に広がってても、もう現状を変えるのが怖くなっちゃうのだよ。
みつ子とは性別も年齢も全く違うのに、不思議と彼女のことが「私」だと感じる。
これは「勝手にふるえてろ」や「甘いお酒でうがい」でもそうだったので、この共感力は綿谷りさ、あるいは大九明子の作家性なのかもしれない。
映画は、中村倫也演じる心の声「A」とみつ子の掛け合いで進んでゆくのだが、この辺りの作りは、スカーレット・ヨハンソン演じる声だけのAIとの恋を描いた、「her/世界でひとつの彼女」を思わせる。
「A」はもう一人のみつ子であるのと同時に、彼女のことを客観的に見て助言をくれる相談役でもあり、寂しい時には寄り添ってくれる友達でもある。
子供の頃にイマジナリー・フレンドがいた人は沢山いるだろうが、大人になってこう言う存在を持つ人は珍しい。
どちらかと言うと、「勝手にふるえてろ」の主人公の様に“理想の自分”で妄想する人の方が多いと思うのだが、この辺りもみつ子の持つ微妙な幼児性の発露なのかも。
ぶっちゃけ、側から見てるとずーっと独り言いってるかなり危ない人だ(笑
お一人さま歴が長い女性が、仕事関係の後輩の男の子に恋してしまうのは、大九監督の前作「甘いお酒でうがい」と共通の展開。
歳の差に遠慮しつつ、ついついときめいてしまう艶っぽさも同じだ。
ただ本作のみつ子は、あの映画で松雪泰子が演じた主人公の中年女性、川嶋佳子よりもずっと若い。
常に穏やかで自然体の佳子は、恋の予感を感じつつも一夜のアバンチュールを楽しんだり、自分の心に正直に、あるがままを受け入れるスタンスだったが、一回り以上若いのんさんは自分の現状に激しく葛藤を繰り返している。
佳子の境地には、まだまだ達してないんだが、その青さがまたドラマチックだ。
声だけの「A」との会話が中心であることからも分かるように、基本会話劇であって声の映画。
ゆえに全編にわたって音がいく重にもミックスされ、凝った音響演出が施されている。
初めて「A」と会話を交わす時、声の主が男性なこともあり、一瞬誰かみつ子の隣にいるのかと錯覚させ、やがて「ああ、これは心の声」なんだと納得させる工夫。
時には、音がヴィジュアルに影響を与えることも。
飛行機が大の苦手なみつ子が、イタリア行きの機中で、気持ちを落ち着かせようと大瀧詠一を聴いてて、歌詞がドラえもんのコエカタマリンみたいに飛び出してくる演出は、未見性があって面白かった。
音が視覚をも巻き込み、それによって主人公の心象が細かく語られてゆくのが、本作のストーリーテリングの大きな特徴だ。
心象表現では中盤のある部分、寒色の世界でみつ子が一人の働く女性として、思いっきり溜め込んでいた毒を吐き出すのは凄かった。
ある意味、あれも共感力なんだが舞台シーンは原作にもあるのだろうか?
大九明子監督は元芸人さんだから、もしかしてあのエピソードは実話で、作家本人の経験的思いの丈を吐露したのかと思わされるくらい、あの後の心情の吐露は迫真に迫っていた。
そしてイタリアに渡ったみつ子が、ずっと会ってなかった親友の皐月と再会を果たすシークエンスは、橋本愛とのんさんのツーショット、もうそれだけで眼福である。
撮影がコロナ禍にかかってしまったため、ロケ隊が実際にローマへは行けず、現地のカメラマンとリモートで撮影したそうだが、最終的な映像は全く自然で苦労は報われていたのではないか。
このシークエンスのみつ子と皐月は、学生時代までは似たような人生を歩んでいたはずなのに、今はあらゆる部分で正反対。
かたや東京に暮らし恋に恋するお一人さまで、かたや国際結婚して世界の反対側に住み、もうすぐお母さんになる妊婦さん。
どちらもそれなりに幸せだが、小さな“後悔”も心にある、いわばお互いの中に自分の”もしもの人生”を見る関係だ。
この旅行のシークエンスでは「A」が登場しないのも、リアルな鏡像としての皐月がいるからだろう。
「あまちゃん」からの7年間を隠し味に、キャラクターを掘り下げると言う意味で、含みのある良いエピソードになっていた。
皐月との再会を大きな糧として、臼田あさみが好演する先輩のノゾミさんの恋愛成就も、みつ子の背中を力強く押す。
足掻いて、叫んで、葛藤して、みつ子はようやく足踏み状態の人生を一歩前へ進めるのである。
人と関わることには、一定の努力と痛みが必要で、それは実は気楽なお一人さまライフよりも苦しかったりする。
でもだからこそ見られる、新しい景色がきっとあるに違いない。
「A」と共に巡るセルフ脳内冒険の旅は終わりを告げ、今度はお二人さまでの旅が待っている。
不器用だけど一生懸命なみつ子には、明日を生きる元気をもらった。
心の宝石箱にしまっておきたくなる、珠玉の傑作だ。
今回はもちろん、甘酸っぱい恋の味「リモンチェッロ」をチョイス。
元々は家庭で作られていたレモン皮ベースのリキュールだが、スッキリしていて食欲の増進効果もあるという。
私はキンキンに冷やしてスパークリングウォーターで割るのが好き。
映画に出てきたブーツの形のボトルは、各社から出ていてお土産として人気があるようだが、わざわざイタリアから送るなら、もっとでっかいボトルの方がいいのでは。
でもオシャレだから許す。
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「勝手にふるえてろ」の原作・綿谷りさ、監督・大九明子の名タッグ再び。
主人公は、長年のお一人さま生活を満喫するアラサーOLのみつ子。
彼女の心の中には、イマジナリーフレンドというか、自分の心の声である脳内フレンドの「A」がいて、何か迷いごとがあると逐一相談する。
「A」は常にみつ子に寄り添い、完全に味方してくれる優しい相方なのだ。
しかしある時、取引先の年下社員の多田くんと出会ってしまったことで、彼女は人生の分岐点に立たされる。
このままお一人さまを続けるのか、多田くんとラブラブなお二人さまを目指すのか。
多田くんに恋をしたみつ子は、ときめく心に戸惑いながらも、今の自分を変えることに葛藤を深めてゆく。
のんさんがみつ子役にハマりまくりで、彼女はようやく実写映画で代表作を得たのでないか。
多田くんに林遣都、気のおけない同僚ノゾミさんを臼田あさ美、旧友の皐月を橋本愛が演じる。
コロナ禍での開催となった今年の東京国際映画祭では、観客賞を受賞した共感力抜群の話題作だ。
31歳の会社員、黒田みつ子(のん)は、脳内の相談役「A」(中村倫也)と共に、長らくお一人さま生活。
ところが、一年前から彼女の部屋には取引先の社員の多田くん(林遣都)が、しばしばご飯をもらいに訪ねてくる。
偶然街で出会った時に、ご飯を作ってあげる約束をしたのだが、「寄ってく?」の一言が言えずに、なぜかずーっと玄関での受け渡し。
今の関係を壊すことが怖くて、今一歩踏み出せないみつ子に、「A」は「大丈夫ですよ。多田さんはあなたのこときっと好きです。本人に直接訊いてみたらどうですか」と言うのだが、いまいち踏ん切りがつかない。
その後距離を縮めることには成功したが、それでも不安は拭えない。
みつ子は気分転換にと、イタリアに嫁いだ親友の皐月(橋本愛)を訪ねる旅に出るのだが・・・・
食べ物の描写が多くて、やたら腹の減る映画だった。
のんさん演じる主人公のみつ子に感情移入しまくりで、むっちゃ愛おしい。
そうだよなー、お一人さまライフが長くなり過ぎると、人生の次のステージが目に前に広がってても、もう現状を変えるのが怖くなっちゃうのだよ。
みつ子とは性別も年齢も全く違うのに、不思議と彼女のことが「私」だと感じる。
これは「勝手にふるえてろ」や「甘いお酒でうがい」でもそうだったので、この共感力は綿谷りさ、あるいは大九明子の作家性なのかもしれない。
映画は、中村倫也演じる心の声「A」とみつ子の掛け合いで進んでゆくのだが、この辺りの作りは、スカーレット・ヨハンソン演じる声だけのAIとの恋を描いた、「her/世界でひとつの彼女」を思わせる。
「A」はもう一人のみつ子であるのと同時に、彼女のことを客観的に見て助言をくれる相談役でもあり、寂しい時には寄り添ってくれる友達でもある。
子供の頃にイマジナリー・フレンドがいた人は沢山いるだろうが、大人になってこう言う存在を持つ人は珍しい。
どちらかと言うと、「勝手にふるえてろ」の主人公の様に“理想の自分”で妄想する人の方が多いと思うのだが、この辺りもみつ子の持つ微妙な幼児性の発露なのかも。
ぶっちゃけ、側から見てるとずーっと独り言いってるかなり危ない人だ(笑
お一人さま歴が長い女性が、仕事関係の後輩の男の子に恋してしまうのは、大九監督の前作「甘いお酒でうがい」と共通の展開。
歳の差に遠慮しつつ、ついついときめいてしまう艶っぽさも同じだ。
ただ本作のみつ子は、あの映画で松雪泰子が演じた主人公の中年女性、川嶋佳子よりもずっと若い。
常に穏やかで自然体の佳子は、恋の予感を感じつつも一夜のアバンチュールを楽しんだり、自分の心に正直に、あるがままを受け入れるスタンスだったが、一回り以上若いのんさんは自分の現状に激しく葛藤を繰り返している。
佳子の境地には、まだまだ達してないんだが、その青さがまたドラマチックだ。
声だけの「A」との会話が中心であることからも分かるように、基本会話劇であって声の映画。
ゆえに全編にわたって音がいく重にもミックスされ、凝った音響演出が施されている。
初めて「A」と会話を交わす時、声の主が男性なこともあり、一瞬誰かみつ子の隣にいるのかと錯覚させ、やがて「ああ、これは心の声」なんだと納得させる工夫。
時には、音がヴィジュアルに影響を与えることも。
飛行機が大の苦手なみつ子が、イタリア行きの機中で、気持ちを落ち着かせようと大瀧詠一を聴いてて、歌詞がドラえもんのコエカタマリンみたいに飛び出してくる演出は、未見性があって面白かった。
音が視覚をも巻き込み、それによって主人公の心象が細かく語られてゆくのが、本作のストーリーテリングの大きな特徴だ。
心象表現では中盤のある部分、寒色の世界でみつ子が一人の働く女性として、思いっきり溜め込んでいた毒を吐き出すのは凄かった。
ある意味、あれも共感力なんだが舞台シーンは原作にもあるのだろうか?
大九明子監督は元芸人さんだから、もしかしてあのエピソードは実話で、作家本人の経験的思いの丈を吐露したのかと思わされるくらい、あの後の心情の吐露は迫真に迫っていた。
そしてイタリアに渡ったみつ子が、ずっと会ってなかった親友の皐月と再会を果たすシークエンスは、橋本愛とのんさんのツーショット、もうそれだけで眼福である。
撮影がコロナ禍にかかってしまったため、ロケ隊が実際にローマへは行けず、現地のカメラマンとリモートで撮影したそうだが、最終的な映像は全く自然で苦労は報われていたのではないか。
このシークエンスのみつ子と皐月は、学生時代までは似たような人生を歩んでいたはずなのに、今はあらゆる部分で正反対。
かたや東京に暮らし恋に恋するお一人さまで、かたや国際結婚して世界の反対側に住み、もうすぐお母さんになる妊婦さん。
どちらもそれなりに幸せだが、小さな“後悔”も心にある、いわばお互いの中に自分の”もしもの人生”を見る関係だ。
この旅行のシークエンスでは「A」が登場しないのも、リアルな鏡像としての皐月がいるからだろう。
「あまちゃん」からの7年間を隠し味に、キャラクターを掘り下げると言う意味で、含みのある良いエピソードになっていた。
皐月との再会を大きな糧として、臼田あさみが好演する先輩のノゾミさんの恋愛成就も、みつ子の背中を力強く押す。
足掻いて、叫んで、葛藤して、みつ子はようやく足踏み状態の人生を一歩前へ進めるのである。
人と関わることには、一定の努力と痛みが必要で、それは実は気楽なお一人さまライフよりも苦しかったりする。
でもだからこそ見られる、新しい景色がきっとあるに違いない。
「A」と共に巡るセルフ脳内冒険の旅は終わりを告げ、今度はお二人さまでの旅が待っている。
不器用だけど一生懸命なみつ子には、明日を生きる元気をもらった。
心の宝石箱にしまっておきたくなる、珠玉の傑作だ。
今回はもちろん、甘酸っぱい恋の味「リモンチェッロ」をチョイス。
元々は家庭で作られていたレモン皮ベースのリキュールだが、スッキリしていて食欲の増進効果もあるという。
私はキンキンに冷やしてスパークリングウォーターで割るのが好き。
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