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2021年01月25日 (月) | 編集 |
その信仰は本物だったのか?
少年院を仮出所したばかりの主人公ダニエルが、たまたま訪れた田舎の教会で、教区を巡回している若い司祭と勘違いされる。
コスプレ用の司祭服を着たダニエルのそぶりに、周りの人間は誰も疑念を抱かず、彼はそのまま司祭のフリをし続け、教会で働き出すのだ。
元犯罪者にして聖職者、ダニエルの奇妙な生き様を描き第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた、ポーランド発の刺激的なヒューマンドラマ。
監督は「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」のヤン・コマサ、主人公のダニエルをバルトシュ・ビィエレニアが演じる。
「犯罪歴がある者は聖職者になれない」
こんな規定があることすら知らなかったが、ダニエルはミサを開き収容者たちの相談にのるために少年院にやってくる司祭に憧れている。
仮出所のパーティーで、手にいれた司祭服を着て悦に入っているくらいならまだ良かったのだが、本来就職するために訪れた村で、エリーザ・リチェムブル演じる好みの女性マルタに、「僕は司祭だ」と見栄をはって嘘をついたのがコトの始まり。
司祭服を持っていたことから彼女に信用され、あれよあれよという間に、教会の本物の司祭をはじめ村の人々に引きあわされ、今更「嘘でした」とは言えなくなってしまう。
人間は権威に弱く、権威を象徴するコスチューム(制服)にも弱い。
村人たちがダニエル、ではなく彼の着ている司祭服に盲従する本作の展開は、ナチス将校の制服を手に入れたケチな脱走兵が、周囲の人間に本物と勘違いされ、自分でもその気になって残酷な戦争犯罪を重ねてゆく「ちいさな独裁者」を思い出させる。
しかしあの映画の主人公は心身共に悪の化身になり切っていたが、対照的な存在である本作の主人公は必ずしも本性から聖職者の境地に至っていた訳ではない。
そもそも、いつかは絶対にバレるイージーな嘘。
ダニエルはそのことを理解しつつ、少年院の更生プログラムをミサに取り入れたり、我流のやり方で住民たちの信頼を得てゆく。
だがある時、この村に刺さったトゲとも言うべき、痛ましい事故の真相を知り、仮初の司祭として街の人々に本当の癒しを与えようとしたことで、徐々に歯車が狂ってゆく。
教会の近くにある慰霊碑に飾られた六人の若者たちの写真。
一年前、彼らが乗った車に、ある男のトラックが正面衝突し、男を含めて七人がなくなった痛ましい大事故。
男には自殺願望があって、アルコールを摂取していたとされ、慰霊碑に写真を飾ることは許されず、教会は埋葬すら拒否し、未亡人は村八分状態。
しかし、実際にはクスリを決めてラリっていたのは若者たちの方だった可能性があることを、その道の人(?)であるダニエルは気付く。
癒されるべき人が拒絶され、間違いを犯した方が同情を集めている。
元から司祭になりたがっていただけあって、ダニエルは最後の務めとばかりとことん“正しいこと”をしようとするのだが、その行動が一見善良そうな村人たちの心の暗部に触れてしまう。
それはずっと偽りの秩序と善悪の危うい均衡の元に成り立っていた、村の社会を大きく揺さぶることになり、聖なる犯罪者はついに自らの虚構をはぎとり、その告白によって自らの信仰と真実に説得力を与えようとするのだ。
人間はどれだけ罪深いのか。
罪が許されるとはどう言うことなのか。
はたして、偽物の司祭は村の人たちの心に、本当の信仰を蘇らせることができたのか。
それとも、自分を含めて何も変えることが出来なかったのか。
東欧の寒々しい風景に重ね合わせるように、ダニエルの心情を活写したピョートル・ソボチンスキ・Jr.のカメラが素晴らしい。
鮮烈なラストは、重い問いかけと共に、強く印象に残る。
今回は、ポーランドといえばの「ベルヴェデール ウォッカ」をチョイス。
近年は若年層の間で、蒸留酒よりもビールが人気だそうだが、本作にはやはりキツイ蒸留酒だろう。
「007」のスペクター・マティーニの、オフィシャルレシピでも知られるベルヴェデールは、まろやかな口当たりが特徴。
冷凍庫でキンキンに冷やして、ちょっとシャーベット状にして飲むのが美味しい。
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少年院を仮出所したばかりの主人公ダニエルが、たまたま訪れた田舎の教会で、教区を巡回している若い司祭と勘違いされる。
コスプレ用の司祭服を着たダニエルのそぶりに、周りの人間は誰も疑念を抱かず、彼はそのまま司祭のフリをし続け、教会で働き出すのだ。
元犯罪者にして聖職者、ダニエルの奇妙な生き様を描き第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた、ポーランド発の刺激的なヒューマンドラマ。
監督は「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」のヤン・コマサ、主人公のダニエルをバルトシュ・ビィエレニアが演じる。
「犯罪歴がある者は聖職者になれない」
こんな規定があることすら知らなかったが、ダニエルはミサを開き収容者たちの相談にのるために少年院にやってくる司祭に憧れている。
仮出所のパーティーで、手にいれた司祭服を着て悦に入っているくらいならまだ良かったのだが、本来就職するために訪れた村で、エリーザ・リチェムブル演じる好みの女性マルタに、「僕は司祭だ」と見栄をはって嘘をついたのがコトの始まり。
司祭服を持っていたことから彼女に信用され、あれよあれよという間に、教会の本物の司祭をはじめ村の人々に引きあわされ、今更「嘘でした」とは言えなくなってしまう。
人間は権威に弱く、権威を象徴するコスチューム(制服)にも弱い。
村人たちがダニエル、ではなく彼の着ている司祭服に盲従する本作の展開は、ナチス将校の制服を手に入れたケチな脱走兵が、周囲の人間に本物と勘違いされ、自分でもその気になって残酷な戦争犯罪を重ねてゆく「ちいさな独裁者」を思い出させる。
しかしあの映画の主人公は心身共に悪の化身になり切っていたが、対照的な存在である本作の主人公は必ずしも本性から聖職者の境地に至っていた訳ではない。
そもそも、いつかは絶対にバレるイージーな嘘。
ダニエルはそのことを理解しつつ、少年院の更生プログラムをミサに取り入れたり、我流のやり方で住民たちの信頼を得てゆく。
だがある時、この村に刺さったトゲとも言うべき、痛ましい事故の真相を知り、仮初の司祭として街の人々に本当の癒しを与えようとしたことで、徐々に歯車が狂ってゆく。
教会の近くにある慰霊碑に飾られた六人の若者たちの写真。
一年前、彼らが乗った車に、ある男のトラックが正面衝突し、男を含めて七人がなくなった痛ましい大事故。
男には自殺願望があって、アルコールを摂取していたとされ、慰霊碑に写真を飾ることは許されず、教会は埋葬すら拒否し、未亡人は村八分状態。
しかし、実際にはクスリを決めてラリっていたのは若者たちの方だった可能性があることを、その道の人(?)であるダニエルは気付く。
癒されるべき人が拒絶され、間違いを犯した方が同情を集めている。
元から司祭になりたがっていただけあって、ダニエルは最後の務めとばかりとことん“正しいこと”をしようとするのだが、その行動が一見善良そうな村人たちの心の暗部に触れてしまう。
それはずっと偽りの秩序と善悪の危うい均衡の元に成り立っていた、村の社会を大きく揺さぶることになり、聖なる犯罪者はついに自らの虚構をはぎとり、その告白によって自らの信仰と真実に説得力を与えようとするのだ。
人間はどれだけ罪深いのか。
罪が許されるとはどう言うことなのか。
はたして、偽物の司祭は村の人たちの心に、本当の信仰を蘇らせることができたのか。
それとも、自分を含めて何も変えることが出来なかったのか。
東欧の寒々しい風景に重ね合わせるように、ダニエルの心情を活写したピョートル・ソボチンスキ・Jr.のカメラが素晴らしい。
鮮烈なラストは、重い問いかけと共に、強く印象に残る。
今回は、ポーランドといえばの「ベルヴェデール ウォッカ」をチョイス。
近年は若年層の間で、蒸留酒よりもビールが人気だそうだが、本作にはやはりキツイ蒸留酒だろう。
「007」のスペクター・マティーニの、オフィシャルレシピでも知られるベルヴェデールは、まろやかな口当たりが特徴。
冷凍庫でキンキンに冷やして、ちょっとシャーベット状にして飲むのが美味しい。

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