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花束みたいな恋をした・・・・・評価額1750円
2021年02月04日 (木) | 編集 |
オタクの恋の理想と現実。

ひょんなことから知り合った、共に21歳の同い年カップルの、5年間の恋の始まりと終わりを描くリリカルなラブストーリー。
二人ともサブカルが大好きで、好きな作品が悉く一致していたこともあって、瞬く間に恋におちる。
最初はタイトル通りに祝福された関係だったのが、きれいな花束がいつかは枯れてしまうように、時間の経過と共にお互いの感情が変化してくるのはお約束。
大学生だった二人も、社会人になったことで人生観の違いがクッキリと出てきて、心も体もいつしかすれ違いの毎日に。
TVドラマのフィールドで数々の秀作をものにしてきた坂元裕二のオリジナル脚本を、「罪の声」が記憶に新しい土井裕康監督が映画化。
脚本段階で当て書きされていたという菅田将暉と有村架純が、出ずっぱりで主人公カップルを好演する。
はたして、二人の人生にとって「花束みたいな恋をした」時間とはなんだったのか。

2015年。
京王線の明大前駅で、大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、終電を逃したことから偶然に知り合う。
二人とも同い年の大学生で、サブカル大好きなオタク体質。
好きな映画も小説も漫画も完全に一致という奇跡のシンクロっぷりに、お互いにビビッときた二人は、やがて付き合い始める。
大学卒業後、イラストレーター志望の麦と就活に失敗した絹は、フリーターをしながら多摩川沿いの部屋を借りて同棲生活をスタート。
二人で散歩して、近所に美味しい焼きそばパンの店を見つけ、拾った仔猫に名前をつける。
居心地のいい安全地帯を手に入れた二人は、世間で何がおこっても二人の生活の現状維持を目標に毎日をおくる。
しかしある時、イラストの仕事に見切りをつけた麦が就職を決めたことで、二人の関係が少しずつ変ってゆく・・・・・


「麦」と「絹」、漢字一文字のキャラクター名は、有村架純が主演した坂元裕二の名作ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」を思い出させる。
2015年から5年間の二人の恋の顛末は、リアル過ぎて容赦なく観る者の古傷をえぐってくる。
終電を逃したその日の夜に、いきなり”サブカルの神=押井守”と遭遇したことで、お互いに相当な数奇者なのを確認し意気投合。
映画の前半はオタクの妄想が炸裂したかのような、完璧な恋愛関係だ。
全ての趣味嗜好が一緒なのだから、そりゃ居心地満点だろう。
天竺鼠のライブを逃したと悔しがり、早稲田松竹のラインナップに感心し、国立科学博物館のミイラ展にワクワクし、今村夏子の「ピクニック」に心を震わせ、「ゼルダの伝説」に興じ、「宝石の国」をシェアして読み、「ゴールデンカムイ」の新刊を待ちわびる。
矢継ぎ早に出てくる膨大なサブカル固有名詞の数々が、強烈な同時代性となって五感を包み込む。
もともと数奇者同士は通じやすいもので、自分が好きな作品を相手も好きだと、つい嬉しくなってしまう。
舞台から映画、小説や漫画まで本作で名前が上がる作品群、その中に一つでも自分の好きなタイトルがあれば、たとえ境遇や年齢が違っていても、観客は同じ時代を生きたリアルな人物として主人公カップルに感情移入。
いつの間にか、オタクの理想を体現する二人に友人に近い感情を抱く。

しかし、この世界にはずっと変わらないものはない。
大学を卒業して同棲を始め、しばらくはフリーターとして生活しているものの、最初にあまりに安いイラストのギャラに耐えかねた麦が、次いで簿記の資格をとった絹が就職を決めると、同じだったはずの人生観に少しずつ違いが出てくる。
絹は無理をせず、マイペースで社会人生活を楽しみ、好きなものを愛する時間を大切にしようとするが、キャリアの後れを取り戻そうと焦る麦は、あらゆるものを犠牲にして仕事に邁進。
大好きだった小説や漫画はビジネス本や自己啓発本に変わり、映画を観ても疲れて上の空。
思うに、若いオタクの行き着く先は、ざっくりこの映画の二人のどちらかなんじゃないだろうか。
仕事の責任に目覚め、大好きなものを我慢して早く大人になろうとするか、収入は大したことなくても、好きなこと、やりたいことにプライオリティを置くか。
もちろん、どちらも間違っているわけではない。
麦が働くのは、早く一人前の社会人となって絹との生活を安定させたいためだし、一方の絹はそんなに無理をして変わって欲しくないと思っている。
「お互いのために」という選択が、逆に心の距離を広げてゆくのが切ない。
単なる説明ではない、音楽的に流れてゆくオシャレなモノローグでテンポよく進んでいくのだけど、良かれと思ってドツボにハマってゆく、相当にエグい話だ。

ところで、二人が付き合うきっかけの一つが“同じ靴を履いていた”なのだが、これが同じくサブカル系の若い男女のラブストーリーの「劇場」と被るのが面白い。
この二作には、いろいろ重なる部分と対照的な部分がある。
舞台となるのは、こちらは調布であちらは下北沢と、どちらもサブカル系に人気の街。
ところが二人の絶対的な安全地帯となる新居は、かたや切り詰めた暮らし伝わってくる昭和な古アパート、かたや二人の好きなものでいっぱいのオシャレな部屋。
一番の違いは「劇場」の山崎賢人が、たとえ売れてなくても完全に作り手の立場なのに対し、本作の主人公たちはクリエイターへの憧れはあっても、基本ファン目線だということだろう。
一応、麦はイラストレーターを目指しているが、基本的に二人の世界は広く浅くで何か一つにどっぷりではない。
麦と絹は“神”の登場に嬉しさを隠せないが、山崎賢人は訳もわからず”神“に喧嘩売りそうだ(笑
まあだからこそ、本作の二人はあそこまで泥沼に浸かり、お互いを傷つけ合うまではいかず、思い出を思い出のままきれいに別れられたのかもしれない。
山崎賢人が10年の恋の思い出を昇華するには、演劇化というプロセスを踏んで沼から脱出しなければならなかったのとは対照的だ。

本作で特筆すべきことに、“シーン”の持つ緻密さがある。
ここで言うシーンとは、単純に脚本上の“場”のことではなく、それぞれの場がどのような意図を持ってデザインされ、どんなものがそこにあり、誰がどの位置でどのような演技をするために配され、結果的にどのような空気を醸し出しているか、ミザンセーヌ全てを含む。
例えば二人が同棲している、多摩川沿いの部屋だ。
おそらくは二部屋ぶち抜きも可能な、1LDKの間取りだと思うのだが、二人の趣味の象徴とも言うべき大きな本棚がリビングと寝室を分けている。
同棲を始めた頃は、二人とも同じ部屋にいることが多かったのだが、やがて麦が就職すると生活時間の違いから、同じ家にいながら別の空間で過ごす描写が増えてゆく。
オタク部屋という愛の巣の持つ意味も、二人の中で徐々に変わり、同質性を意味していた本棚が今度は不通の象徴となってくるのである。
また坂元作品ではお馴染みのファミレスも、非常に効果的に使われている。
こちらは恋愛の始まりと終わりを象徴する装置として機能し、終盤主人公たちがまるでタイムマシンで過去を覗いたように、ある若いカップルを”目撃“するエピソードは実に切ない情感に満ちている。
二人を結びつける役割を果たすトイレットペーパーや、映画全体の括弧となるグーグル・ストリートビューなど、アイテムの一つ一つに伏線として意味を持たせてあり、それらが折り重なって、ライトだけど濃密な独特の世界観を作り出しているのである。

人生の中で、社会的な部分と個人的な部分をすり合わせてゆくのは難しい。
麦と絹が出会ったときは、個人的な部分だけでよかったのが、社会とのかかわりが増えれば増えるほどに個人の部分が削られてゆくのは、本作の観客の多くにもおぼえがあるだろう。
それだけ普遍性がある話だけに、平成最後の5年間を描いた本作には、解釈の仕方も人それぞれな間口の広さと深さがある。
物語の冒頭とラストで、再会した二人はいい感じに肩の力が抜けて、個人と社会のバランスが取れているように見える。
主人公カップルと年齢が近い人が観たら、恋愛の始まりと終わりを美しく情感たっぷりに描いた作品と思えるかもしれないし、私のような中年が観たら、これはむしろ焼け木杭に火が付くきっかけの話、にも思えてくるのである。
やはり菅田将暉が主演し、昨年公開された「糸」では、平成の30年間に腐れ縁のように邂逅を繰り返す男女が、最後の最後に結ばれる。
あの映画のカップルを考えたら、たった5年間の恋愛なんて、もしかするとプロローグに過ぎないのかもしれない。
花束はドライフラワーになっても美しいのだから。

今回は花束みたいな話だから「開花」を意味する「オレンジ・ブロッサム」をチョイス。
ビフィーター ・ジン45mlとオレンジ・ジュース適量を、氷を入れたタンブラーに注いで、軽くかき混ぜ、最後にスライスしたオレンジを飾る、
名前の通りオレンジ色の華やかなカクテルで、ジンの風味が爽やかだ。
材料がたった二つなので、手軽に楽しめるのも良い。
甘すぎず、辛すぎず、恋の始まりを予感させる一杯だ。

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