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ヤクザと家族 The Family・・・・・評価額1750円
2021年02月09日 (火) | 編集 |
帰るべき“家族”とは。

見応えたっぷりの136分。
1999年から始まって、2005年、2019年の三つの時代を背景に、綾野剛演じるヤクザ者・山本賢治の刹那的人生が描かれる。
家族を失い自暴自棄になっていた賢治が、ヤクザの道に足を踏み入れるきっかけとなる1999年のエピソードを描く、およそ25分に及ぶアヴァンタイトルののち、往年の東映ヤクザ映画を思わせるOPクレジットにゾクゾク。
賢治がオヤジと慕うことになる柴咲組組長を、映画でのヤクザ役は「地獄の天使 紅い爆音」以来43年ぶりだという舘ひろしが、組の兄貴分を北村有起哉、賢治と恋仲になる真面目なホステスを尾野真千子が演じる。
暴対法の影響で徐々に衰退してゆくヤクザというモチーフから、21世紀の日本社会の閉塞を象徴的に描き出した脚本は、34歳の俊英・藤井道人監督のオリジナル。
劇場映画らしいスケール感と、ストーリー、テリング共に非常に高い完成度を持つ、キャリア・ベストの仕上がりと言える傑作だ。

1999年。
覚醒剤の過剰摂取で父親を亡くし、身寄りがなくなった19歳の山本賢治にとって、家族を壊したヤクザは憎しみの対照だった。
彼は悪友の細野(市原隼人)と大原(二ノ宮隆太郎)と共に、父親にクスリを売っていた売人を襲ってクスリを奪い、海に捨てる。
その夜、行きつけの焼肉屋で飲んでいた賢治は、偶然居合わせた柴咲組の組長・柴咲博(舘ひろし)をチンピラの襲撃から救う。
焼肉屋を営む愛子の亡き夫は、柴咲組の元組員だった。
奪ったクスリが柴咲組と敵対する侠葉会の物だったことから、賢治たちは侠葉会若頭・加藤(豊原功補)と若頭補佐の川山(駿河太郎)により拉致されるが、賢治の持っていた柴咲の名刺が彼らの命を救う。
どこにも行き場がなくなっていた賢治は、柴崎によって新たな“家族”へと迎え入れられ、親子の契りを結ぶことになる。
思ってもみなかったヤクザの道を歩み出した賢治は、やがて組織の中で頭角を表してゆくのだが・・・・

藤井道人という作家の名を覚えたのは、「デイアンドナイト」の時だ。
阿部進之介演じる主人公の父親は、大手自動車メーカーの企業城下町で、リコール隠しを告発したことで村八分にされ、自殺に追い込まれている。
主人公は、昼間は児童養護施設を経営し、夜はその運営資金を捻出するために、ありとあらゆる犯罪に手を染める安藤政信と出会い、彼の”仕事”をしながらも父の正義を追求しようとする。
この作品において、主人公は善と悪その両方に立ちながらも、正義について葛藤するのだ。
「・」も「スペース」もない、一続きの「デイアンドナイト」が善と悪の不可分を象徴し、昼でもなく夜でもない、灰色の時間で足掻き続ける人間たちの物語は、異様な迫力があった。
その後「新聞記者」の大ヒットで、一躍一般に名前を知られるようになったのだが、正直言ってあの作品は世評ほどには乗れなかった。
日本映画で本格的なポリティカルサスペンスが珍しいのは確かだが、作中で“スクープ”とされる事件が現実に完全に負けてしまっている上に、実名で出てくる望月衣塑子や前川喜平のネットメディアも、使い方が真面目すぎて、プロパガンダ色が強くなり、かえって広がりを欠いていたと思う。
意欲は十分だが、必ずしも上手くいっていない印象だった。

善と悪の狭間に生きるアウトローに、隠された真実を追う新聞記者。
そして、本作のモチーフとなるヤクザの世界と、世間に見えていることの裏側を描いてゆくことが、この作家の追求したいフィールドなのだろうが、過去の作品と比べると脚本の完成度が段違いだ。
1999年にヤクザの道へと進んだ後、映画の前半は柴咲組の若手のホープとなった賢治が、地方都市でブイブイ言わせていた2005年。
すでに暴対法施行から10年以上が経っているが、いまだヤクザ組織の勢力は健在だ。
個人的な記憶では、この頃には既に相当に締め付けが強まっていたと思うのだが、地域差があったのかも知れない。
賢治が柴咲の杯を受けた理由が、彼らがクスリを扱っていないこと。
シノギは伝統的な夜の繁華街からのみかじめ料や用心棒代などがメインで、彼らは極道だが外道でないのである。
父親がクスリ漬けになって死んだ賢治にとっては、これは決定的なことだ。
対照的に、街の半分をシマとする侠葉会は、金のためにクスリを売りまくる新興勢力として描かれていて、柴咲組とは以前抗争をくり広けたものの、上部組織の仲介によって手打ちとなっている。
だが街の再開発計画によって、侠葉会のシマが消滅してしまうことから物語が動き出し、お約束の抗争再開の結果、賢治は何よりも大切な”家族”を守るためにシャバからおさらばすることになるのだ。

そして長い歳月が過ぎた2019年。
戻ってきた賢治は、完全に浦島太郎状態
この14年間に暴対法に基づく、いわゆる暴対条例が次々と作られ、ヤクザ組織は真綿で首を絞められるようにシノギを失い、確実に衰退していっている。
組関連の店はことごとく摘発され閉店を余儀なくされ、人で溢れていた組事務所からは若者が消え老人クラブ化し、車も巨大なセンチュリーからエコなプリウスに。
歓楽街は暴対条例の影響を受けない、半グレたちが仕切っている。
ヤクザと社会の切り離しを狙った暴対条例が、真っ先に標的にしたのはみかじめ料など一般人と関わる伝統的なシノギだったため柴咲組は衰退し、逆に完全に非合法である侠葉会のクスリなどは、まだ稼げるシノギとして残っている皮肉。
組織として死に体の柴咲組が、かつては幹部として高級マンションに暮らしていた賢治に用意するのが、安アパートなのが窮状を物語る。
14年もの間、シャバから隔離されていた賢治の居場所は、もはやどこにも残っていないのだ。

ヤクザという生き方しか知らないベテランたちが組に残っている一方、賢治の子分だった細野は堅気となり家族を作っている。
細野を頼った賢治も組を辞めて堅気として生きる道を歩み出し、逮捕される前に恋仲だった尾野真千子演じる由香と再会しよりを戻す。
ところが過去の疑似家族の亡霊は、決して現在を自由にはしてくれないのである。
一度暴力団構成員の烙印を押されてしまうと、更生したくても出来ない暴対条例の矛盾を可視化しつつ、ヤクザという擬似家族に集った結果、本物の家族をバラバラにしてしまうのはシニカルかつ哀しい。
本作を特徴付けるのが、親の代からの因縁が重要な要素になっていること。
賢治の父親が侠葉会のクスリによって死んだように、焼肉屋の愛子の夫は侠葉会との抗争で命を落とし、その息子の翼は賢治たちに可愛がられて育ち、今は半グレのリーダーとなって、かつての柴咲組のシマを支配している。
磯村勇斗が演じる翼の陽性なキャラクターと、親世代の日陰者ヤクザとのコントラストが、誰も抗えない時代の移り変わりを端的に表現。
世代を超えた血脈の物語になっているのは、まるで欧米の民族系ギャングの物語を観ているようで、過去のヤクザ映画には無かった視点を獲得している。
疑似家族にしか居場所がなかった賢治が、最後に”息子”である翼の未来を救い、弱さゆえに自らが壊した“本当の家族”の報いを受けるのは象徴的だ。

「ヤクザと家族 The Family」というタイトルが示すとおり、これはヤクザという疑似家族をモチーフに、その終わりを描いた物語であり、同時にジャンルとしてのヤクザ映画に手向けるレクイエム。
2005年までは額縁のシネスコで、最終章にあたる19年はスタンダードで切り取った映像が特徴的だが、同じことをやっていた作品にトレイ・エドワード・シュルツ監督の「WAVES/ウェイブス」がある。
あの作品も一つの家族の崩壊を描いていたが、どちらもワイドスクリーンが額縁であることがポイントだ。
「WAVES/ウェイブス」ではビスタ→額縁のシネスコ→さらに上下が狭くなる→スタンダード→額縁のシネスコ→ビスタとアスペクト比が変化する。
本作ではビスタは使われていないが、一見羽振りが良さそうな2005年も額縁にすることで、まるで遺影のように閉塞して見えるのは狙いだろう。
そして疑似家族と本物の家族の葛藤が描かれる後半部分は、閉塞していそうだが、実は突き抜けている。
キメキメの撮影・照明、スタイリッシュな衣装、時代の移り変わりを巧みに表現した美術、凝った編集、そしてmillennium paradeによるテーマ曲「FAMILIA」が情感たっぷりに死にゆく“家族”の余韻を引きのばす。
ヤクザの血を受けついだ翼と、あるキャラクターが出会い、親世代とは違った形の“Family”誕生を予感させるラストまで、抜群にセンスがいい。
まさに新世代の日本のノワールだ。

今回は焼肉食べながら飲みたい日本酒。
埼玉県羽生市の南陽醸造の「藍の郷 純米酒」をチョイス。
この蔵の「花陽浴」は、今では争奪戦となってなかなか手に入らなくなってしまったが、こちらはまだ比較的買いやすい。
酒米は彩のかがやき100パーセントを60パーセント精米し、フルーティーな香り、米の甘み、あっさりしたのどごし、適度なコクと、日本酒の全てを楽しめる。
さすがに花陽浴ほどの凄みはないが、バランスの良さは一級品だ。

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