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JUNK HEAD・・・・・評価額1700円
2021年04月05日 (月) | 編集 |
人類を救うのは”ガラクタ”!

これは凄い。
“超大作”と形容したくなるスケール感を持つ、ストップモーションアニメーションの大労作。
地球環境の悪化で、人類は地下の開発を計画し、そのための労働力として人工生命体“マリガン”を創造する。
しかし、自我に目覚めたマリガンが反乱を起こし、地下の世界を乗っ取られてしまう。
そして地球が地上に暮らす人類と、地下に暮らすマリガンの世界に別れてから1600年が経った未来。
人間は生身の肉体を捨て、”意識の器”とすることで永遠の命を得るが、生殖能力を失い絶滅の危機に瀕している。
そこで嘗て自らが創造した、マリガンの生殖能力を研究しようと、一人の調査員を未知なる地下への冒険に送り込む。
一つの世界を、ここまで徹底的に作り込んだ作品は久々に観た。
これがデビュー作となる堀貴秀監督が、7年をかけてゼロから全てを作り上げた、驚くべき没入感を持つ傑作である。

地球が人類の住む地上と、マリガンの住む地下に別れ、往来が途切れてから1600年後。
人類は遺伝子操作の結果その頭部だけを保存し、機械の体を得ることで永遠の生命を持ったが、代償として生物としての生殖能力を失った。
ところがある時、謎のウィルスが蔓延し、人口の30%が失われる
崖っぷちに追い込まれた人類は、地下世界で大量繁殖し独自に進化していたマリガンの生殖能力を調べるために、地下調査員を募集。
ダンス講師のパートンは、生徒が激減してしまったために、講師を廃業して調査員に応募。
宇宙服のような厳重なボディを纏って、地下世界への降下を始める。
ところが、そんなパートンの乗ったカプセルは、マリガンのハンターに目撃され、正体不明の物体としてミサイルで撃破されてしまう。
バラバラになり、命を落としそうになったパートンの頭部は、別のハンターの三バカ兄弟たちが発見し、ルーチー博士の工房に持ち込まれる。
不格好なサイボーグのボディを与えられ、蘇ったパートンは自分が何をしに地下へ来たのか、記憶を失ってしまっていた・・・・


主人公のパートンが、冒険とは全く関係ないダンス講師という設定が面白い。
しかし地下への降下中、「なんか落ちてきたから、とりあえず撃っとけ」とマリガンから攻撃され、体がバラバラになってしまう。
とは言っても、この時代の人間に残っている生身の部分は、意識の器となっている頭部だけ。
頭だけを適当な体に繋げれば再生できるので、頭を拾ったマリガンのルーチー博士によって、ダサいサイボーグの体を与えられる。
この“頭だけ”がポイントで、途中何度かぶっ壊れたり、記憶を失ったりしながら、どんどんボロくなってゆく“ガラクタの頭(JUNK HEAD)”こそが主人公なのだ。
もはや器だけとなった人類は、生きていても本当の意味では生きてない。
それは主人公も同じで、ダンス講師であるパートンは、バーチャルな意識の中で生徒と踊っているが、実際に肉体(サイボーグの体)を使って対面したことは一度もない。
無気力な人生に飽きて、地下への探検に志願した彼は、命あふれる弱肉強食のマリガンの世界で、本当の“死”に直面したことで、初めて“生”を意識するのである。

奇妙キテレツな世界観の作り込みが凄まじく、まるで自分が地下の世界を訪れた来訪者になった気分。
人類との交流が途絶えたマリガンは独自の進化を遂げているが、一応人類のことは自分たちを創造した“神さま”としてリスペクトしているようだ。
全体的な雰囲気は、シュヴァンクマイエルなどの東欧系ストップモーション作品を思わせるが、H・R・ギーガーっぽい「エイリアン」ライクなクリーチャーデザインや、監督が「初恋の人のような映画」と語る「不思議惑星キン・ザ・ザ」や「ヘルレイザー」など、作者の映画的記憶が複雑に絡み合ったカオスの世界。
何十層もの地下世界は、途中主人公が拾われる巨大バブルの村の様なスチームパンク調の階層もあれば、危険な生物が徘徊する廃墟のような階層や、何のために存在するのか分からない、やたらとだだっ広い空間もある。
次々と新しいステージが開き、未知なる生態系に驚愕する。

作中に明確な説明はないものの、どうやら地下世界の生き物は全てマリガンの亜種らしい。
人工の生物であるマリガンは、遺伝子が不安定で、様々な形に進化するという。
ある者は人形に、ある者は虫のような形になり、ある者は巨大な捕食者となる。
人形のマリガンにも頻繁に奇形が発生するが、異形の者は差別を受けているという細かな設定が、世界観を深化させている。
バブル村の筋骨隆々とした女たちと、完全に尻にひかれている男たちには、ちょっと宮崎駿的な味わいもある。
未見性の塊の様な作品で、次はどんな画を見せてくれるの?という世界観とキャラクターへの期待だけでも十分に持つ。

この大怪作を世に出し、監督・原案・キャラクターデザイン・編集・撮影・照明・音楽・絵コンテ・造形・アニメーター・効果音・VFX・声優と作品制作のほぼ全てを担当し、文字通りの生みの親である堀貴秀は、プロの映像クリエイターではなかったというのだから驚きだ。
本職は内装業で、仕事に使っている倉庫に1/6スケールのセットを組み、最初は30分の短編版を一人で作って2014年に発表。
その後出資を受けてスタッフを募集すると、長編化した本作を2017年に完成させた。
もともと絵を描いていたというから、構図感覚とか芸術的素養はもちろんあったのだろうが、全編に渡って決め込まれたビジュアルを、ネットで調べながら作ったというのだからまぎれもない天才だ。

その制作経緯のせいか、例えば近年のライカ作品でお馴染みの、3Dプリンターを使ったパペトゥーン手法の表情変化など最新の技術は導入されておらず、伝統的なザ・ストップモーション。
キャラクターデザインで特徴的なのが、サイボーグの主人公を筆頭に、キャラクターの表情、特に目の変化が読み取れないこと。
「目は口ほどに物を言う」という言葉もあるが、アニメーションキャラクターでは目の演技が果たす役割が非常に大きい。
だから例えば「攻殻機動隊」のバトーの様な目にしてしまうと、”何を考えているのか分からない”キャラクターになる。
ところが、本作ではあえて目による表現を封じたとこで、逆に登場人物の感情変化を想像させる余地が生まれているのが面白い。
キャラクターのとぼけた仕草にも味があり、クスッとした笑いがあちこちに散りばめられているのもいい。
表情は読めなくても、喜怒哀楽の全てが見えてくるのだ。
それぞれの階層に暮らすマリガンの個性も見所で、主人公を守る三バカ兄弟のユーモラスな体型を、終盤ギャップとして使ってくるのは上手い。
まさか、アイツらに泣かされるとは思ってなかったよ。

堀監督によると、本作ははじめから三部作とする構想だという。
実際、この映画は旅の目的地が明らかになり、パートンの旅の仲間(3人だけだけど)が結成されるところで終わっている。
単体作品として考えると、作劇にも難がある。
矢継ぎ早に事件が起こり、現状では主人公の変化も最小限なので、テーマ的にもまだまだ描き足りていない。
しかし、この稀有な世界観を持つ壮大なストーリーを、クオリティを維持したまま完結させることが出来たら、ストップモーション世界の「ロード・オブ・ザ・リング」ならぬ、アニメーション映画史に残る本物の神話となる可能性がある。
すでに第二部のプリプロには入っているそうだが、ぜひ三部作を完遂して欲しい。
ガラクタパートンの冒険の続きを、楽しみに待ちたい。

日本のクラフトマンシップを感じさせるこの映画には、サントリー「響 ブレンダーズチョイス」をチョイス。
近年やたらと高くなってしまったジャパニーズ・ウィスキーだが、これはまだリーズナブル。
様々な樽で熟成された幅広い酒齢の原酒を丁寧にブレンド。
上品な甘みと、柔らかなコクを楽しめる。
ウィスキーは年を重ねることで味に深みが出てくるが、果たして第二部はいつ見られるのかな。
本作の制作期間は7年だが、こればっかりはあんまり“熟成”をして欲しくはないな(笑

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