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2021年05月04日 (火) | 編集 |
静寂の音を聞け。
「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」の共同脚本家、ダリウス・マーダーがメガホンを取り、本年度アカデミー賞で、編集賞と音響賞に輝いた作品。
リズ・アーメット演じる主人公のルーベン・ストーンは、最愛の恋人のルーと結成したメタルデュオ、ブラックギャモンのドラマーとして、エアストリームのカッコいいキャンパーで全米を旅している。
裕福ではないものの、愛する人と大好きな音楽があるノマド生活。
しかし、そんな幸せな時間は、ある日突然終わりを迎える。
ルーベンは原因不明の難聴を患い、急速に聴覚を失ってゆく。
ミュージシャンとしては致命的な疾患に、それまでの人生は失われる。
これは運命によって翻弄される男女の、世界の崩壊と断絶、その先にある再生の物語だ。
「サウンド・オブ・メタル」とは、直訳すれば「鋼の音」だが、主人公の職業とのダブルミーニング。
私の知人にも難聴を患った人が何人かいるが、聞こえない程度の差はあれ本当に突然くるらしい。
予期せぬ事態に、若い二人は慌てふためく。
検査の結果、ルーベンの聴覚は確実に機能しなくなること、人工内耳をインプラントする治療法があることを知るが、保険適用外のために巨額の手術費用がかかる。
放浪のメタルデュオにそんな金はなく、ひとまずこの状況の中で生活していかねばならない。
ルーベンは聴覚障害者として生きるため、支援コミュニティの寮に入居し、疎遠だった父を頼ったルーとは離ればなれに。
だが、ここに至っても、彼は元の生活に戻ることを諦めていない。
当面の生活を支援コミュニティに頼り、音のない世界を学びつつも、なんとか金を作って手術を受け、ルーとの音楽活動の再開を目指す。
ルーベンのメンターとなる支援コミュニティのリーダー、ジョーの言葉を借りれば、もともとジャンキーだったルーベンは、この切なる願いに依存している。
だが、この時の彼はまだ知らない。
人生は常に流れてゆくもので、一度壊れてしまったものは、それが肉体でも心でも、決して元どおりにはならないことを。
本作で特筆すべきはアカデミー賞を得た音響の表現で、ルーベンの聴覚状態を綿密に再現することで、観客に彼と同じ体験をさせる。
健常者だった頃のルーベンの世界、難聴のルーベンの世界、そしてインプラント手術後の世界。
主人公と共に、実際の音の世界を経験することで、彼の感じている絶望、希望、そして再びの絶望まで、リアリティたっぷりに実感することができるのだ。
ルーベンとルーは共に複雑な片親家庭に育ち、依存や自傷などの荒んだ生活を送った末に、二人でようやく掴んだのが音楽と共に生きる幸せ。
一刻も早く治療を受けたい主人公にどっぷり感情移入していたので、支援団体の人々が提示する、そもそも聴覚障害は治すべきものなのか?という視点は新鮮だった。
彼らは聴覚を必要としない独自のコミュニティを作り上げていて、そこで生きる分には耳が聞こえないことはハンディにならない。
しかし、なんとしてもルーと音楽を取り戻したいルーベンには、そこは終の住処にはなり得ないのである。
本作は、エグゼクティブ・プロデューサーのデレク・シアフランスが、2009年から制作していた「Metalhead」という企画が元になっていて、ガゼル・アンバー・バレンタインとエドガー・ライヴェングッド夫妻による実在のメタルデュオ、Juciferを描く作品になるはずだった。
ところが撮影に入るも資金繰りに失敗し、キャンセルされた企画を、盟友のマーダーが受け継いでフィクションとして膨らませたもの。
彼らの過去作品からも分かるように、この物語に奇跡は起こらない。
前に進むために必要なのは、残酷で不可逆な現実をルーベン、そしてルーが受け入れること。
人生で唯一感じていた幸せへの依存、しかしその世界がすでに存在しないことを知った時、彼らは初めて心静かに静寂の意味を感じ、それぞれの行先を一人で決めねばならない。
独特の詩情を感じさせる、ラストの余韻が心に長く残る。
今回は、メタルな外装の辛口イタリアンスパークリング、「ボッティガ ホワイトゴールド」をチョイス。
グラッパ職人の息子だったサンドロ・ボッティガが、1986年に19歳で創業した銘柄。
ほんのりと色付いたライトなイエローに、きめ細やかな発泡が美しい。
フルーティな桃を思わせる香りに豊かなミネラル感。
CPは高く、呑みごたえは十分だ。
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「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」の共同脚本家、ダリウス・マーダーがメガホンを取り、本年度アカデミー賞で、編集賞と音響賞に輝いた作品。
リズ・アーメット演じる主人公のルーベン・ストーンは、最愛の恋人のルーと結成したメタルデュオ、ブラックギャモンのドラマーとして、エアストリームのカッコいいキャンパーで全米を旅している。
裕福ではないものの、愛する人と大好きな音楽があるノマド生活。
しかし、そんな幸せな時間は、ある日突然終わりを迎える。
ルーベンは原因不明の難聴を患い、急速に聴覚を失ってゆく。
ミュージシャンとしては致命的な疾患に、それまでの人生は失われる。
これは運命によって翻弄される男女の、世界の崩壊と断絶、その先にある再生の物語だ。
「サウンド・オブ・メタル」とは、直訳すれば「鋼の音」だが、主人公の職業とのダブルミーニング。
私の知人にも難聴を患った人が何人かいるが、聞こえない程度の差はあれ本当に突然くるらしい。
予期せぬ事態に、若い二人は慌てふためく。
検査の結果、ルーベンの聴覚は確実に機能しなくなること、人工内耳をインプラントする治療法があることを知るが、保険適用外のために巨額の手術費用がかかる。
放浪のメタルデュオにそんな金はなく、ひとまずこの状況の中で生活していかねばならない。
ルーベンは聴覚障害者として生きるため、支援コミュニティの寮に入居し、疎遠だった父を頼ったルーとは離ればなれに。
だが、ここに至っても、彼は元の生活に戻ることを諦めていない。
当面の生活を支援コミュニティに頼り、音のない世界を学びつつも、なんとか金を作って手術を受け、ルーとの音楽活動の再開を目指す。
ルーベンのメンターとなる支援コミュニティのリーダー、ジョーの言葉を借りれば、もともとジャンキーだったルーベンは、この切なる願いに依存している。
だが、この時の彼はまだ知らない。
人生は常に流れてゆくもので、一度壊れてしまったものは、それが肉体でも心でも、決して元どおりにはならないことを。
本作で特筆すべきはアカデミー賞を得た音響の表現で、ルーベンの聴覚状態を綿密に再現することで、観客に彼と同じ体験をさせる。
健常者だった頃のルーベンの世界、難聴のルーベンの世界、そしてインプラント手術後の世界。
主人公と共に、実際の音の世界を経験することで、彼の感じている絶望、希望、そして再びの絶望まで、リアリティたっぷりに実感することができるのだ。
ルーベンとルーは共に複雑な片親家庭に育ち、依存や自傷などの荒んだ生活を送った末に、二人でようやく掴んだのが音楽と共に生きる幸せ。
一刻も早く治療を受けたい主人公にどっぷり感情移入していたので、支援団体の人々が提示する、そもそも聴覚障害は治すべきものなのか?という視点は新鮮だった。
彼らは聴覚を必要としない独自のコミュニティを作り上げていて、そこで生きる分には耳が聞こえないことはハンディにならない。
しかし、なんとしてもルーと音楽を取り戻したいルーベンには、そこは終の住処にはなり得ないのである。
本作は、エグゼクティブ・プロデューサーのデレク・シアフランスが、2009年から制作していた「Metalhead」という企画が元になっていて、ガゼル・アンバー・バレンタインとエドガー・ライヴェングッド夫妻による実在のメタルデュオ、Juciferを描く作品になるはずだった。
ところが撮影に入るも資金繰りに失敗し、キャンセルされた企画を、盟友のマーダーが受け継いでフィクションとして膨らませたもの。
彼らの過去作品からも分かるように、この物語に奇跡は起こらない。
前に進むために必要なのは、残酷で不可逆な現実をルーベン、そしてルーが受け入れること。
人生で唯一感じていた幸せへの依存、しかしその世界がすでに存在しないことを知った時、彼らは初めて心静かに静寂の意味を感じ、それぞれの行先を一人で決めねばならない。
独特の詩情を感じさせる、ラストの余韻が心に長く残る。
今回は、メタルな外装の辛口イタリアンスパークリング、「ボッティガ ホワイトゴールド」をチョイス。
グラッパ職人の息子だったサンドロ・ボッティガが、1986年に19歳で創業した銘柄。
ほんのりと色付いたライトなイエローに、きめ細やかな発泡が美しい。
フルーティな桃を思わせる香りに豊かなミネラル感。
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