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るろうに剣心 最終章 The Beginning・・・・・評価額1750円
2021年06月08日 (火) | 編集 |
伝説が、誕生する。

2011年に第一作が公開された「るろうに剣心」シリーズの、これが本当の完結編。
舞台は一気に10数年時代をさかのぼり、討幕派、佐幕派などの勢力が激しくぶつかり合う動乱の京都。
明治の新時代に展開する、前作までのド派手なスウォードアクションとは違い、最後の侍の時代を描く本格時代劇だ。
これはまだ剣心が「不殺の誓い」を立てる前の物語なので、彼が振るうのは逆刃刀ではない。
人斬り抜刀斎の字通り、人を斬って、斬って、斬りまくる。
血の雨を降らせ、多くの人を殺めた抜刀斎は、いかにして心優しいるろうにとなったのか。
前作までの四作が、ヴィランたちの怒りが作り出した盛大に燃え盛る紅蓮の炎だとすれば、本作は青白く静かに燃える剣心の情念の炎だ。
タイトルロールを演じる佐藤健以外、前作までと共通するキャストは剣心とは腐れ縁の斎藤一を演じる江口洋介くらいで、4月に公開された「The Final」では回想シーンのみ登場の有村架純が、ファムファタールの雪代巴を演じる。
監督・脚本はもちろん大友啓史が務め、見事にシリーズ有終の美を飾った。

1864年、討幕派の志士たちと彼らを取り締まる新撰組が、抗争を繰り広げる幕末の京都。
緋村剣心(佐藤健)は、新しい時代を求め、長州藩の奇兵隊に入隊。
その抜刀術を見込まれて、桂小五郎(高橋一生)のもと最強の暗殺者として暗躍し、佐幕派からは“人斬り抜刀斎”として恐れられていた。
しかし幕府の役人を暗殺する任務を遂行した時、思わぬ反撃に遭い一太刀浴び、頬に傷をつけられる。
しばらく経ったある夜、剣心は雪代巴(有村架純)と名乗る若い女を助けるが、彼女に人斬りを目撃されてしまう。
自分の正体を明かされぬため、剣心は彼女をそばに置くことにするが、その後討幕派が新選組の術中にはまり、池田屋で一網打尽にされ、両者が武力衝突する禁門の変が起こったことで、長州藩は京都を一時撤退。
剣心は小五郎が用意した農家へと身を隠し、巴と結婚する。
食物を育て収穫する平穏な生活の中で、剣心は初めて幸せを感じ、あらためて人を斬ることの意味を考える。
ところがある日、巴が忽然と姿を消す。
実は二人が出会ったのは偶然ではなく、巴には剣心の知らぬ秘密があった・・・・


極端に彩度の低い、ダークな色調で描かれる本作は、過去四作とは別物だ。
剣心も「おろ」とか言わないし、ユーモアの要素も全くない。
幕末の京都を舞台に、討幕派、佐幕派、尊王派、攘夷派などの勢力が入り乱れ血で血を洗う抗争を繰り広げるハードな世界観は、「るろうに剣心」シリーズよりも、大友監督のNHKディレクター時代の代表作「龍馬伝」の裏バージョンと言った方がしっくりくる。
また「るろうに剣心」といえばアクションだが、本作は全五作の中で、もっともドラマシーンが長く、アクションは相対的に少ない。
ガトリング砲などの派手な飛び道具も出てこないし、漫画チックなルックスと常人離れした技を持つ剣客もいない。
本作は、過去にシリーズの特色となっていた要素を、あらかた排除しているのである。
それはなぜか?

前作までに描かれていた明治時代の大人剣心は、「不殺の誓い」を軸に既に生き方を決めている人で、彼に降りかかる問題は常に人斬りだった過去からやってくる。
第一作の偽抜刀斎こと鵜堂刃衛も、第二作、三作の長州藩の二代目暗殺者だった志々雄真実も、「The Final」の復讐に燃える雪代縁も、皆何らかの過去の因縁をもって剣心に挑む。 
要するに、今までは積極的に葛藤し、物語を動かしていたのはヴィランの方で、剣心自身は葛藤要因を持っていない、狂言回しに近いキャラクターなのだ。
彼の葛藤は、例えば「薫が誘拐された」などの状況によってのみもたらされるので、常に誰かが事件を引き起こし、巻き込まれた剣心が仕方なく対処するの繰り返し。
主人公が根源的な葛藤要因を持っていないことが、世間の「るろ剣は、アクションはいいけどドラマが弱い」という評価にも繋がっていたのだが、前作まではアクションの舞台を作り出すことが優先されていたので、これでも成立していたのだ。

対して、人斬り抜刀斎がいかにしてるろうに剣心となったのかを描く本作では、まだ十代の若き剣心が人を殺すことの意味に苦悩し、ディープに葛藤する。
そもそもなぜ自分は人を斬っているのか?平和のための暴力は本当に存在するのか?命を奪った人たちに正義はなかったのか?
最終作に至って、彼は初めて本当の意味で主人公になったのだ。

冒頭の対馬藩邸襲撃や、新撰組の沖田総司との一対一の戦い、クライマックスの闇乃武との決戦など、アクションの見せ場は豊富にあるものの、物語の大半は剣心と彼の罪を象徴する雪代巴との絡みで占められているのはこのためだ。
許嫁だった清里明良を剣心に斬殺された巴は、剣心の心の合わせ鏡であるのと同時に、彼の内面を揺さぶり葛藤させ、成長という化学変化を引き起こすファムファタールだ。
自らも大き過ぎる葛藤を抱えた巴を、儚げに演じた有村架純が素晴らしい。
この薄幸のキャラクターは、原作ではなんと「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイがモデルになっているそうで、言われてみれば納得。
剣心も巴も、ある意味心に仮面をかぶっていて本心をなかなか明かさない設定だが、ここまで主人公カップルの表情が変わらない映画は珍しい。
その分、内面の苦悩を想像しやすくなっているのだけど。

クライマックスで剣心を守るために自ら斬られた巴が、持っていた短刀で彼の頬に二つ目の傷をつけて「ごめんなさい、あなた」と言い残して事切れる描写は、その後彼女の日記で剣心を「二人目のあなた」と呼んでいることから、「一人目のあなた」である清里明良と、二人の「あなた」の間で揺れ動く巴の女心を端的に表現して秀逸。
おそらくあの言葉は、剣心に対する「裏切ってごめんなさい」と、明良に対する「仇を愛してしまってごめんなさい」の二つの意味を含んでいるのだろう。
人斬り人生の意味に苦悩する剣心と、復讐のために彼に近づいた巴、共に複雑な葛藤を抱えた二人の魂が共鳴し、悲恋の結果彼女の犠牲と引き換えに負の連鎖は終わり、ついに剣心は生き方を決める。
そして鳥羽伏見の戦いの終結と共に、人斬り抜刀斎は消え、不殺の誓いを立てた、るろうに剣心が誕生するのである。

本作は色々振り切った作りで、シリーズものの完結編としては相当に異色だが、私はこのダークな情念の物語を全体のベストと推したい。
派手さを優先した大エンターテインメントから一転、ドラマの完成度はシリーズの中でも抜きん出ていて、「るろうに剣心」の一作としてだけではなく、時代劇映画の秀作として記憶されるべき作品だと思う。
唯一欠点を挙げるとすれば、相変わらずの回想の多用だろう。
このシリーズはやたらと回想が多いのだが、本作は最後なだけに過去の全作からの引用が目立ち、もし回想を禁じ手としたならばだいぶ短くなるはずだ。 
しかし、あえて「The Beginning」を最後に持ってきたからこそ、回想が生きている部分があるのも事実。
過去の作品の様々なシーンが、本作という歴史の延長線上にあったことを知るのが、シリーズものならではの、ある種のカタルシスに繋がっているのである。
本作を観てからだと、例えば「The Final」のラストで薫の手をとる描写に込められた、剣心の想いの強さががよりハッキリと感じられる。
故に、全作鑑賞済みが前提の作りなのは、致し方なかろう。
それにしても一番印象に残るのは、二次元の綾波レイにも負けない、有村架純の超絶な可憐さよ
この映画は、彼女だけで何度でもおかわりできるわ。

今回は舞台となる京都、と言っても日本海に面した京丹後の地酒、木下酒造の「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」をチョイス。
ドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」にも登場した英国出身の杜氏、フィリップ・パーカーが手掛けた新時代の酒だ。
彼は英語教師として来日して日本酒に魅せられ、酒蔵に努めて南部杜氏の資格をとり、ついに木下酒造の杜氏となった。
米の濃厚な旨味と酸味、無濾過生原酒らしい野趣溢れる一本。
これからの季節は、冷で飲むのがお勧めだ。

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