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オクトパスの神秘:海の賢者は語る・・・・・評価★★★★+0.8
2021年06月11日 (金) | 編集 |
おじさんは、タコストーカー。

第93回アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作。
タコは甘える、タコは遊ぶ、タコは賢く、タコはかわいい。
堅苦しい邦題から、ナショナルジオグラフィック的な、真面目な海洋ドキュメンタリーかと思って観始めたのだが、さにあらず。
原題の「My Octopus Teacher」もイマイチしっくりこない。
なぜならば、これはまるでリアル版「シェイプ・オブ・ウォーター」のような、切ないラブストーリーなのである。
本作に出演し、撮影しているのは南アフリカの映像制作者クレイグ・フォスター。
彼はカラハリ砂漠に住む狩猟民族、サン人の生活に密着した作品をはじめ、多くのネイチャーシーンを撮影してきた。
しかし、危険を伴う現場の連続に、いつしか心身ともに疲れ切って、機材を見るのも嫌になってしまったのだという。
過酷な現場を離れた彼は、幼いころに過ごした岬の先の海中に広がる、ケルプの森に潜って過ごすようになる。

ケルプは巨大な昆布で、海底から海面まで数十メートルの高さに林立し、広大な藻場にはたくさんの海の生き物たちが暮らしている。
その景色は、さながら地球ではない別の惑星のよう。
2010年のある日、クレイグは、体に無数の貝殻を纏った奇妙な若いタコと出会う。
タコが貝殻のドレスを着て擬態している?
ファーストコンタクトでお互いに興味を持った一人と一匹は、それからタコの一生にあたる一年近い時間を共にすることになる。
ちなみにクレイグは最初からタコを「彼女」と呼んでいるのだが、タコの雌雄なんてどうやって分かるの?と思ったら、オスのタコは足の一本が交接器になっていて、先っぽには吸盤がないんだとか。
なるほど、これならヒヨコより見分けやすそうだ。

憑かれたように彼女に惹かれてゆくクレイグは、更なるタコの知識を求め、文献を調べまくり、毎日のように海底の岩の下にある彼女の巣に向かい、観察する。
びっくりするのは、クレイグがタンクを使わない素潜りだけで彼女に会いに行っていること。
どんだけ肺活量あるのだろう。
その有様は、もはやタコに恋しちゃったストーカーのよう。
もっとも、彼女の方もまんざらではないようで、足しげく通ってくるクレイグには警戒を解き、ボディータッチも許してくれる。
タコの知能が霊長類並なのは知っていたけど、実際にあんな風にコミュニケーションとれるとは驚きだ。
やがて、戦略的な狩りから魚との遊びまで、アメイジングな生態を見せる彼女に対する興味は、ケルプの森に広がる海の生態系全体への深い理解へつながってゆく。

そして海の命に癒されたことが、クレイグ自身の問題を抱えた人生にも大きな変化をもたらす。
映像制作者としての撮影意欲が戻り、人と人との関係の大切さにも改めて気づく。
彼の息子が海に興味をもったことで、共に潜るようになり、パパは張り切ってみるみるうちに元気を取り戻してゆくのだ。
おそらく、映画の企画が決まったのもこの頃だろう。
彼女と初めて出会った時は、一人で潜っていたはずなのだが、本作には第三者視点でクレイグを捉えたショットが多用されている。
監督としてピッパ・エアリックとジェームズ・リードが入り、撮影監督として水中カメラマンのロジャー・ホロックスが参加したことで、クレイグ自身の映像とホロックスの撮った映像が、うまく組み合わされて使われているのだ。

そしてクレイグのタコへの思い入れは、この頃にはもはや観察対象というか、ほぼ恋愛対象なのだが、一応餌をあげたり敵から守ったりといった、自然の法則に反することはしないと一線を引いている。
しかし彼女の暮らすケルプの森は、危険がいっぱい。
特にタコにとって最大の脅威が捕食者のタテスジトラザメで、彼女も幾度となく危機に陥る。
感情移入し過ぎて、タコがケガをすると涙ぐんじゃったり、まるで人間の彼女のことを語っているみたいに聞こえるのだけど、確かにあそこまで懐かれると動物も人間も絆は変わらないのはよく分かる。
一人と一匹が出会って一年が経過したころ、そろそろ寿命を迎えようとしている彼女が突然クレイグの胸に飛び込んできて、気持ちよさそうに撫でられているシーンは、まるでメルヘンな異種ラブストーリーを観ているようだった。

疲れ切ったおじさんの自分探しの海中散歩が、偶然の小さな出会いからはじまって、壮大な命のサイクルを描き出す展開は感動的。
映画全体がクレイグの語る”過ぎ去った過去“であることが、本作にいっそうの哀愁をもたらしている。
たった一年の短い生涯だから、全ての一瞬が愛おしい。
タコが新しい命を生み出すのと引き換えに、波乱万丈の一生を終えた数か月後、同じケルプの森で彼女の子と思しき小さなタコと出会う奇跡。
クレイグの彼女への真摯な愛が、無数の命を育むケルプの森の保全活動という、大きな流れにつながってゆくのも素晴らしい。
それにしても海の生き物って、なんと美しく神秘的なのだろう。

今回は、青い海に生きたタコの彼女に捧げる「ブルー・レディ」を。
ブルー・キュラソー30ml、ドライ・ジン15ml、レモン・ジュース15mlに卵白1個分を加え、しっかりシェイクしてグラスに注ぐ。
ブルー・キュラソーの甘味とジンの清涼感、レモン・ジュースの酸味、卵白が優しくまとめ上げてゆく。
パステルブルーの見た目も涼しげなカクテルで、これからの暑くなってゆく季節にピッタリの一杯だ。

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