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2021年07月16日 (金) | 編集 |
これで終わりと思った?
7年前に起こったある事件によって未来を閉ざされた、元医大生の壮絶な復讐劇。
俳優、小説家、劇作家などマルチな活躍を続けるエメラルド・フェネルが、監督・脚本・プロデューサーを兼務して作り上げた監督デビュー作。
そして一発目にして、本年度アカデミー脚本賞をかっさらってしまった。
主人公はカフェで働くカサンドラ(キャシー)で、彼女は元々医大に通う優秀な学生だったのだが、同じ学校に通っていた幼なじみのニーナが、同級生に無理やり酒を飲まされレイプされるという事件が発生。
周囲の助けを受けられなかったニーナは、絶望のあまり自殺してしまい、この出来事にショックを受けたキャシーも医大を中退し、三十路の今も実家暮らし。
しかし、彼女にはルーティンにしている秘密がある。
夜な夜なクラブに通っては、泥酔したフリをして下心のある男に自分をお持ち帰りさせ、二人きりになったところで、“お仕置き”を加えるのだ。
まるで死んだ親友の代わりに男たちを懲らしめる、レイプ・リベンジものの様な設定だが、本作は特定ジャンルには当てはまらない。
実際に彼女がどんな制裁を加えているのかも描かれないし、ジャンル映画の色が付かない寸止めの描写が多い。
もちろん、基本は性暴力によって負った心の傷とどう折り合いをつけるかの物語であって、出てくる男たちは揃いも揃ってクズばかり。
そしてさらにキツイのが、女が女の味方とは限らないところだ。
映画は、キャシーの孤独な復讐を通して、7年前に何が起こったのか、なぜニーナは死を選ばなければならなかったのかを描いてゆく。
ちなみに彼女が唯一“許し”を与えるキーパーソンに、ある大物俳優が出てくるのだが、なぜかノンクレジットなので驚いた。
前記した”お仕置き”の描写もそうだが、本作の最大の特徴はスクリーンに映し出されている情報が少ないこと。
いや、実際の画面はリッチなのだが、あえて曖昧にされている部分が多いのだ。
そもそも、タイトルの「Promising Young Woman」とは誰のことなのか?
自殺したニーナが非常に優秀な医学生だったことは語られるが、キャシーも子供の頃から医師を志していて、二人とも将来を嘱望されていたことは変わらない。
キャシーと、直接的には一度も画面に登場しないニーナの関係は、本当に友情だけだったのか?
ハートのペンダントは何のシンボルだったのか?
そして事件によって医大を中退した彼女の、心の状態はどうだったのか?
これらの曖昧性は、キャシーが典型的な“信頼の置けない語り部”に造形されているがゆえ。
シーンによって、全く別の人物に見えるキャリー・マリガンが凄い。
ポーカーフェイスでキャシーの内面をあまり見せず、観客の想像の余地によって物語の印象を七変化させる。
上記した多くの疑問をどう解釈するかによって、本作は見えてくるものが全く違ってくる、心理分析に使われるロールシャッハテストの様な作品なのである。
物語が大きく動き出すきっかけとなるのが、キャシーがかつての同級生のライアンと再会し、恋をすることだが、結果的に彼の存在が全ての登場人物を破滅へと導く。
もし彼女の心が不安定な状態にあったとしたら、久々に抱いた希望が真の絶望へと転じた時、心が決定的に壊れてしまったのかもしれない。
個人的には、7年前にニーナが死んだ時に彼女と恋仲にあったキャシーの心も半分死に、ライアンに裏切られたことによって、二人はキャシーの中で完全に一体となって究極の選択をしたのだと思う。
それ故に「Promising Young Woman」は単数系なのだろう。
もちろんこれも謎多き物語の一つの解釈に過ぎず、本作は観方によって残酷な悲劇であり、シニカルな喜劇であり、ミステリアスなスリラーでもあり、そして切ない愛の物語ともなる。
ジャンルレスで極めて独創性の高い作品だが、ビビットな衣装と美術、キメキメのフレーミングに外連味たっぷりの音楽の使い方など、狙い過ぎて悪趣味になるギリギリのテリングは、どこかレフンを思わせる部分も。
ただし彼の作品の様なバイオレンス要素は皆無であり、ひたすら作劇の面白さ、物語のカタルシスを堪能できる作品だ。
とりあえずこれは啓蒙として、これから大学や専門学校に進学する若いのに、男女問わず見せとくべきだな。
7年間の悪夢を描く本作には、ビターなカクテル「ナイトメア・オブ・レッド」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、カンパリ30ml、パイナップル・ジュース30ml、オレンジ・ビターズ2dashを氷で満たしたグラスに注ぎ、ステアする。
ドライ・ジンの清涼感とパイナップルのすっきりした甘さと、カンパリとビターズの苦みのコラボレーション。
ビタービタースウィートな後味は、まさにこの映画の印象そのものだ。
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7年前に起こったある事件によって未来を閉ざされた、元医大生の壮絶な復讐劇。
俳優、小説家、劇作家などマルチな活躍を続けるエメラルド・フェネルが、監督・脚本・プロデューサーを兼務して作り上げた監督デビュー作。
そして一発目にして、本年度アカデミー脚本賞をかっさらってしまった。
主人公はカフェで働くカサンドラ(キャシー)で、彼女は元々医大に通う優秀な学生だったのだが、同じ学校に通っていた幼なじみのニーナが、同級生に無理やり酒を飲まされレイプされるという事件が発生。
周囲の助けを受けられなかったニーナは、絶望のあまり自殺してしまい、この出来事にショックを受けたキャシーも医大を中退し、三十路の今も実家暮らし。
しかし、彼女にはルーティンにしている秘密がある。
夜な夜なクラブに通っては、泥酔したフリをして下心のある男に自分をお持ち帰りさせ、二人きりになったところで、“お仕置き”を加えるのだ。
まるで死んだ親友の代わりに男たちを懲らしめる、レイプ・リベンジものの様な設定だが、本作は特定ジャンルには当てはまらない。
実際に彼女がどんな制裁を加えているのかも描かれないし、ジャンル映画の色が付かない寸止めの描写が多い。
もちろん、基本は性暴力によって負った心の傷とどう折り合いをつけるかの物語であって、出てくる男たちは揃いも揃ってクズばかり。
そしてさらにキツイのが、女が女の味方とは限らないところだ。
映画は、キャシーの孤独な復讐を通して、7年前に何が起こったのか、なぜニーナは死を選ばなければならなかったのかを描いてゆく。
ちなみに彼女が唯一“許し”を与えるキーパーソンに、ある大物俳優が出てくるのだが、なぜかノンクレジットなので驚いた。
前記した”お仕置き”の描写もそうだが、本作の最大の特徴はスクリーンに映し出されている情報が少ないこと。
いや、実際の画面はリッチなのだが、あえて曖昧にされている部分が多いのだ。
そもそも、タイトルの「Promising Young Woman」とは誰のことなのか?
自殺したニーナが非常に優秀な医学生だったことは語られるが、キャシーも子供の頃から医師を志していて、二人とも将来を嘱望されていたことは変わらない。
キャシーと、直接的には一度も画面に登場しないニーナの関係は、本当に友情だけだったのか?
ハートのペンダントは何のシンボルだったのか?
そして事件によって医大を中退した彼女の、心の状態はどうだったのか?
これらの曖昧性は、キャシーが典型的な“信頼の置けない語り部”に造形されているがゆえ。
シーンによって、全く別の人物に見えるキャリー・マリガンが凄い。
ポーカーフェイスでキャシーの内面をあまり見せず、観客の想像の余地によって物語の印象を七変化させる。
上記した多くの疑問をどう解釈するかによって、本作は見えてくるものが全く違ってくる、心理分析に使われるロールシャッハテストの様な作品なのである。
物語が大きく動き出すきっかけとなるのが、キャシーがかつての同級生のライアンと再会し、恋をすることだが、結果的に彼の存在が全ての登場人物を破滅へと導く。
もし彼女の心が不安定な状態にあったとしたら、久々に抱いた希望が真の絶望へと転じた時、心が決定的に壊れてしまったのかもしれない。
個人的には、7年前にニーナが死んだ時に彼女と恋仲にあったキャシーの心も半分死に、ライアンに裏切られたことによって、二人はキャシーの中で完全に一体となって究極の選択をしたのだと思う。
それ故に「Promising Young Woman」は単数系なのだろう。
もちろんこれも謎多き物語の一つの解釈に過ぎず、本作は観方によって残酷な悲劇であり、シニカルな喜劇であり、ミステリアスなスリラーでもあり、そして切ない愛の物語ともなる。
ジャンルレスで極めて独創性の高い作品だが、ビビットな衣装と美術、キメキメのフレーミングに外連味たっぷりの音楽の使い方など、狙い過ぎて悪趣味になるギリギリのテリングは、どこかレフンを思わせる部分も。
ただし彼の作品の様なバイオレンス要素は皆無であり、ひたすら作劇の面白さ、物語のカタルシスを堪能できる作品だ。
とりあえずこれは啓蒙として、これから大学や専門学校に進学する若いのに、男女問わず見せとくべきだな。
7年間の悪夢を描く本作には、ビターなカクテル「ナイトメア・オブ・レッド」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、カンパリ30ml、パイナップル・ジュース30ml、オレンジ・ビターズ2dashを氷で満たしたグラスに注ぎ、ステアする。
ドライ・ジンの清涼感とパイナップルのすっきりした甘さと、カンパリとビターズの苦みのコラボレーション。
ビタービタースウィートな後味は、まさにこの映画の印象そのものだ。

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