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2021年07月28日 (水) | 編集 |
守ることで、生きていた。
これほど瑞々しくも痛々しい、ボーイ・ミーツ・ガール映画が他にあるだろうか。
「ソウルメイト/七月と安生」のデレク・ツァン監督と主演のチョウ・ドンユイが、再びのタッグを組んだ作品。
中国で240億円を超える興業記録を叩き出し、本年度アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされた話題作だ。
本作でチョウ・ドンユイが演じるのは、熾烈な受験戦争で知られる中国で、進学校に通う高校生チェン・ニェン。
母子家庭で、母親は彼女の学費を稼ごうと怪しげな仕事に手を出し、借金取りに追われている。
受験に打ち勝って、北京の名門校へと進学することだけが、親子にとって貧困から抜け出す唯一の希望なのだ。
ところが、受験まで間もない時期になって、いじめを苦にして投身自殺したクラスメイトの遺体に、チェンが上着をかけてあげたことをきっかけに、彼女自身が次なるいじめのターゲットになってしまう。
※核心部分に触れています。
そんなある日、チェンはひょんなことからイー・ヤンチェンシー演じる喧嘩に明け暮れるチンピラ青年、シャオベイと出会い、共に孤独を抱えた二人の淡い初恋がはじまる。
チェンの母親の噂が学校に広まり、いじめがますます激しさを増すと、シャオベイは密かにチェンの背後にボディーガードのように寄り添い、いじめから彼女を守るようになるのだ。
冒頭とラストに、中国のいじめ問題の啓蒙みたいな字幕が出てくる。
確かにいじめの描写は凄惨でリアルだが、啓蒙はあくまで副次的なもの。
やりたいのは若くして生きづらさを抱え、ここではない何処かへと旅立つことを願い、ピュアにお互いを思う二人のファーストラブストーリーだ。
しかし僅かに光が差したと思わせた後、シャオベイが彼女を守り切れなかった瞬間を狙い、悪意が最大限に増幅する。
金持ちのクラスメイトが主導するイジメは歯止めを失い、集団での暴行、髪を切り、裸にして写真を撮るまでにエスカレート。
そして遂に、取り返しのつかない悲劇が起きてしまう。
デレク・ツァン監督は前作の「ソウルメイト」も素晴らしい仕上がりだった。
13歳の時に出会った二人の少女、暖かい家庭で育った優等生の七月と、訳あり家庭の自由人、安生の物語。
対照的な二人はなぜか無二の親友となり、やがてお互いの人生を複雑に交錯させてゆく。
共に同じ男を愛し、七月は堅実に地元に留まり、安生は街を出て世界を放浪。
時に反発し合い、時に求め合い、邂逅を繰り返す二人の時間はいつしか20代後半に。
しかし、七月が書いたウェブ小説という設定で語られる物語には、驚くべき秘密が隠されているのだ。
虚実が入り混じる展開は、全く読めなかった。
対して、本作では「ソウルメイト」のような捻った作劇の妙は見られないが、最悪の状況の中でお互いを思う若い二人の、狂おしいまでの愛と罪の葛藤で魅せる。
孤独と絶望に支配されたチェンとシャオベイにとって、お互いの存在こそが希望。
表情豊かとは言えない二人の内面を、ツァンは実に映画的なショット、サウンドの演出を駆使して描写してゆく。
ニコラス・ジェスネール監督の知る人ぞ知る名作「白い家の少女」を思わせるテイストもあるが、ツァンのノスタルジックでウェットなタッチは、もうちょい身近なデジャヴが。
「ソウルメイト」のエンドクレジットに岩井俊二の名前があったのだが、たしかにあの映画も本作も、二人のキャラクターの関係性などは「Love Letter」や「花とアリス」など岩井映画の強い影響を感じさせる。
虚実の混濁という点も然り。
冒頭の字幕に続いて、小学校で英語を教えるチェンの姿が映し出され、いじめられているであろう一人の少女を気に掛ける。
そして映画のラストでは、チェンがその少女に寄り添い、二人の後からは変わらずシャオベイが歩いてついて来る。
冒頭シーンだけだと意味づけが分からなかったが、これは運命の巡り合わせによって奪われてしまった「if」の未来。
2011年に逮捕されたチェンの刑期は4年とのことだから、2015年に教壇に立っていることはあり得ない。
釈放されたとしても、教職につくことはできないだろう。
この光景が永遠に訪れない夢であることが、本作の後味をよりほろ苦く、切ないものとしているのである。
今回は映画に合わせてビターテイストが印象的な「オールド・ファッションド」をチョイス。
オールド・ファッション・グラスに角砂糖を一個入れ、アンゴスチュラ・ビターズ2dashを振りかけ、氷を加えた上でライ・ウィスキー45mlを注ぎ入れる。
最後にカットしたオレンジを飾って完成。
19世紀半ばに、ケンタッキーのバーテンダーが考案したと言われる。
角砂糖が徐々に溶けて、甘味と共にビターなテイストが加わって来て、さらにオレンジの酸味でも味変を楽しめる粋な一杯だ。
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これほど瑞々しくも痛々しい、ボーイ・ミーツ・ガール映画が他にあるだろうか。
「ソウルメイト/七月と安生」のデレク・ツァン監督と主演のチョウ・ドンユイが、再びのタッグを組んだ作品。
中国で240億円を超える興業記録を叩き出し、本年度アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされた話題作だ。
本作でチョウ・ドンユイが演じるのは、熾烈な受験戦争で知られる中国で、進学校に通う高校生チェン・ニェン。
母子家庭で、母親は彼女の学費を稼ごうと怪しげな仕事に手を出し、借金取りに追われている。
受験に打ち勝って、北京の名門校へと進学することだけが、親子にとって貧困から抜け出す唯一の希望なのだ。
ところが、受験まで間もない時期になって、いじめを苦にして投身自殺したクラスメイトの遺体に、チェンが上着をかけてあげたことをきっかけに、彼女自身が次なるいじめのターゲットになってしまう。
※核心部分に触れています。
そんなある日、チェンはひょんなことからイー・ヤンチェンシー演じる喧嘩に明け暮れるチンピラ青年、シャオベイと出会い、共に孤独を抱えた二人の淡い初恋がはじまる。
チェンの母親の噂が学校に広まり、いじめがますます激しさを増すと、シャオベイは密かにチェンの背後にボディーガードのように寄り添い、いじめから彼女を守るようになるのだ。
冒頭とラストに、中国のいじめ問題の啓蒙みたいな字幕が出てくる。
確かにいじめの描写は凄惨でリアルだが、啓蒙はあくまで副次的なもの。
やりたいのは若くして生きづらさを抱え、ここではない何処かへと旅立つことを願い、ピュアにお互いを思う二人のファーストラブストーリーだ。
しかし僅かに光が差したと思わせた後、シャオベイが彼女を守り切れなかった瞬間を狙い、悪意が最大限に増幅する。
金持ちのクラスメイトが主導するイジメは歯止めを失い、集団での暴行、髪を切り、裸にして写真を撮るまでにエスカレート。
そして遂に、取り返しのつかない悲劇が起きてしまう。
デレク・ツァン監督は前作の「ソウルメイト」も素晴らしい仕上がりだった。
13歳の時に出会った二人の少女、暖かい家庭で育った優等生の七月と、訳あり家庭の自由人、安生の物語。
対照的な二人はなぜか無二の親友となり、やがてお互いの人生を複雑に交錯させてゆく。
共に同じ男を愛し、七月は堅実に地元に留まり、安生は街を出て世界を放浪。
時に反発し合い、時に求め合い、邂逅を繰り返す二人の時間はいつしか20代後半に。
しかし、七月が書いたウェブ小説という設定で語られる物語には、驚くべき秘密が隠されているのだ。
虚実が入り混じる展開は、全く読めなかった。
対して、本作では「ソウルメイト」のような捻った作劇の妙は見られないが、最悪の状況の中でお互いを思う若い二人の、狂おしいまでの愛と罪の葛藤で魅せる。
孤独と絶望に支配されたチェンとシャオベイにとって、お互いの存在こそが希望。
表情豊かとは言えない二人の内面を、ツァンは実に映画的なショット、サウンドの演出を駆使して描写してゆく。
ニコラス・ジェスネール監督の知る人ぞ知る名作「白い家の少女」を思わせるテイストもあるが、ツァンのノスタルジックでウェットなタッチは、もうちょい身近なデジャヴが。
「ソウルメイト」のエンドクレジットに岩井俊二の名前があったのだが、たしかにあの映画も本作も、二人のキャラクターの関係性などは「Love Letter」や「花とアリス」など岩井映画の強い影響を感じさせる。
虚実の混濁という点も然り。
冒頭の字幕に続いて、小学校で英語を教えるチェンの姿が映し出され、いじめられているであろう一人の少女を気に掛ける。
そして映画のラストでは、チェンがその少女に寄り添い、二人の後からは変わらずシャオベイが歩いてついて来る。
冒頭シーンだけだと意味づけが分からなかったが、これは運命の巡り合わせによって奪われてしまった「if」の未来。
2011年に逮捕されたチェンの刑期は4年とのことだから、2015年に教壇に立っていることはあり得ない。
釈放されたとしても、教職につくことはできないだろう。
この光景が永遠に訪れない夢であることが、本作の後味をよりほろ苦く、切ないものとしているのである。
今回は映画に合わせてビターテイストが印象的な「オールド・ファッションド」をチョイス。
オールド・ファッション・グラスに角砂糖を一個入れ、アンゴスチュラ・ビターズ2dashを振りかけ、氷を加えた上でライ・ウィスキー45mlを注ぎ入れる。
最後にカットしたオレンジを飾って完成。
19世紀半ばに、ケンタッキーのバーテンダーが考案したと言われる。
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