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ONODA 一万夜を越えて・・・・・評価額1700円
2021年10月15日 (金) | 編集 |
フランス人監督が描く、“最後の日本兵”の30年。

太平洋戦争の終結後、日本の敗戦を信じることが出来ず、実に30年にも渡ってフィリピンのルバング島でゲリラ戦を展開した小野田寛郎陸軍少尉。
彼は1974年に、元上官によって命令を解除され投降。
ついに日本への帰還を果たすが、本作は米軍の上陸からフィリピンを離れるまでの30年間に、彼の身に何が起こり、なぜ降伏しなかったのかを詳細に描いてゆく。
徹底的なリサーチによって、リアリティたっぷりに最後の日本兵を蘇らせたのは、デビュー作「汚れたダイヤモンド」で高い評価を得た、フランスの俊英アルチュール・アラリ。
日本資本も一部入っているが、基本的にフランスのスタッフを中心に作られたフランス映画で、キャストの大半は日本人という特異なフォーマットの作品だ。
遠藤雄弥と津田寛治が、タイトルロールをリレー形式で二人一役で演じ、長い歳月を実感させる。
ほぼ3時間の長尺を費やして、じっくりと描かれた時代に囚われた男の内面のドラマは、ある種の日本人論でもあり、観応えはたっぷりだ。

1944年。
航空兵となる夢を果たせず、やさぐれていた小野田寛郎(遠藤 雄弥/津田寛治)は、その資質を見抜いた谷口義美少佐(イッセー尾形)によってスカウトされ、情報将校を育成する陸軍中野学校二俣分校へ入学する。
そこで破壊工作や潜伏など諜報戦の全てを叩き込まれ、フィリピン戦線へと送り込まれる。
食糧や武器弾薬を備蓄し、ゲリラ戦の準備を進めるも、米軍の攻撃が始まると日本軍はすぐに総崩れとなり、小野田も山中へと逃げ込んだ。
小野田は、日本兵の中から士気の高い小塚上等兵(松浦祐也/千葉哲也)、嶋田伍長(カトウシンスケ)、赤津一等兵(井之脇海)を選び、遊撃戦を開始する。
他の日本兵が死に絶え、米軍が姿を消すと、友軍が戻ってくる時のため、島の支配を確立しようと島民を相手に争う。
5年の歳月が流れた頃、赤津が姿を消して投降。
嶋田も島民との戦闘で死亡する。
やがて、小野田と小塚に投降を訴える、日本政府の調査団もやってくるが、小野田は全てを敵の計略だと考えていた・・・


1974年に小野田氏が帰国した時、私はまだ子供だったが、マスコミが盛り上がっていたこともあり、かすかに覚えている。
テレビに映し出された小野田氏の、眼光鋭く周囲を威圧するようなムードは、まさに映画に出てくる日本軍将校。
その2年前にグアムのジャングルで見つかり、帰国を果たしていた横井庄一氏が、いかにも人の良さそうなおじさん然とした人物だったこともあり、小野田氏の硬質なキャラクターは際立っていて、マスコミの呼ぶところの「軍国主義の亡霊」そのものだった。
その後、彼の体験を描いたドラマやドキュメンタリー番組が何作も制作され、私もその中のいくつかは観た。
印象的だったのは、戦地に出るまでの彼の経歴で、本作を鑑賞しながら「あーそうだった、この人普通の兵隊じゃなくて、中野学校の出身の間諜だった」と色々思い出していた。

帝国軍人でありながら、決して死ぬことを許されず、自分の頭で判断し行動することを求められ、敵の地で何年でも潜伏しながら、破壊工作を続けることを前提とした秘密戦の専門家。
キャラクターの特殊な背景が、決断に大きな影響を与えているのは間違い無かろう。
何しろ彼はただ隠れていただけでなく、ずっと現地で戦争を続けていたのだから。
現地の島民に自分たちへの恐怖を抱かせ、日本軍が戻ってきた時に支配をスムーズにするために、定期的に畑を遅い、時には生活必需品を奪う。
戦後30年間で、小野田氏と潜伏日本兵によるルバング島民の死傷者は、30人に及ぶという。
もちろん突然襲ってくる日本兵は、島民にとっては山賊と変わらない無法者だろう。
実際島民たちもただ逃げ惑う訳ではなく、武器を取って反撃し、小野田グループでも二名が殺されているのだから文字通り殺るか殺られるかの戦争だ。
投降した時の小野田氏の装備は、30年も使用していたとは思えないほど、しっかりメンテナンスされていたというから、まさにゲリラ戦のプロフェッショナルである。

面白いのは、諜報戦のやり方を知っているが故に、日本が敗戦したことを信じられないこと。
自分たちを探す日本政府の調査隊が来ると、新聞や雑誌を奪い、ラジオも手に入れるのだが、そこに書かれていることは全て諜報戦用の作り物だと思い込む。
戦後日本人のライフスタイルが大きく変わったことを知らないので、嫌っていた洋服を着た父の写真を見て偽物だと決めつける。
おそらく彼らも、うすうすは日本の敗戦の可能性を感じ取っていたのだろうが、新聞やラジオで得た情報をいろいろ分析して理論付けると、戦争がまだ続いている説にもなんとなく辻褄が合ってしまうので、どうしても信じ切れない。
この辺りは、考えちゃう人だからこそハマる、フェイクニュースによる陰謀論などにも通じる話だが、もし小野田氏が命令に従っているだけの普通の兵隊だったら、赤津がそうした様に、もっと早くに投降していただろう。
ラジオでアポロ11号の月着陸の中継を聞きながら、同時に島民の女を捕虜にするあたりは、非常に皮肉な展開だ。
結局彼は、脳内に作り上げた虚構の歴史と戦っていたのだ。

3時間近い上映尺はさすがに長さは感じるが、決して冗長ではなく、むしろ主人公がジャングルで過ごした遠大な時間を実感できる。
四人の仲間の関係が、時間の経過と共に変わってくるのも興味深い。
当初は士気旺盛だったのが、先の見えない生活に徐々に閉塞感が募ってくる。
お互いへの対応が刺々しくなり、遂には大喧嘩にまで発展。
一方でBLまで行かぬ、男同士の微妙に艶っぽい触れ合いも。
やがて故郷に妻子を残していた嶋田が殺されると、ショックを受けた赤津も離脱し、小野田グループは軍の部隊としては瓦解する。
しかし残った二人は妙に馬が合う様で、いつの間にか上官と部下と言うよりも親友の様な関係になってゆく。
どこまでも緑のジャングルが続く島の豊かな自然と、矮小な争いを続ける人間の対比は、「シン・レッド・ライン」や塚本版「野火」を彷彿とさせる部分も。
二人一役で小野田氏を演じた、津田寛治と遠藤雄弥を筆頭に、役者が皆素晴らしい。
出番は少ないながらも、若き小野田青年を間諜の世界に招き入れ、30年後に彼の任務を解く谷口少佐役のイッセー尾形の、軽妙なキャラクターは強く印象に残る。

フランス人のアルチュール・アラリにとって前世紀の帝国軍人、小野田寛郎が驚くべき物語を秘めた未知の人物だった様に、今の大半の日本人にとっても彼の様な生き方は理解し難いものだろう。
最小限のバックグラウンドを描いた後は、シンプルに彼の行動に寄り添った本作のアプローチは、小野田寛郎という人物像を適度な距離感で眺め、理解するのに最良に思える。
心境を言語化するのが難しいが、投降直前に仲野太賀演じる日本人バックパッカーと出会った時、彼の中にぼんやりとあった真実が虚構を押し除けて急速に形を持ってくるあたりは、非常に説得力があった。

また、いい意味で「日本人監督なら絶対こうは撮らないよな」というショットが多々あり、この辺りは異文化クロスオーバー映画ならでは。
しかし本作といい「MINAMATA ミナマタ 」といい、外国人監督が描く日本と日本人に、これほどの傑作が続くとは。
小野田氏は、帰還した戦後の日本社会に馴染めず、ブラジルへ移民して行ったが、2014年に亡くなる前は再び日本に暮らしていたという。
昔観たドキュメンタリー番組で、晩年の小野田氏がインタビューに答えていたが、74年に帰国した当時のイカツイ帝国軍人然とした表情は消え失せ、非常に優しい笑顔になっていたのが印象的だった。
帰還後の40年間に、彼の心を変える何かが起こったのだろうなあ。
つくづく、ドラマチックな人生だ。

今回は小野田氏の出身地である和歌山の地酒、名手酒造店の「純米酒 黒牛」をチョイス。
和歌山のお酒は、いわゆる淡麗辛口とは違った独特の甘みとまろやかさがあって、これも辛口でありながら、和歌山地酒らしいまろやかな口あたり。
お米の豊かな旨味が感じられ、スイスイ飲めちゃう。
名前の通り、美味しい和牛と絶妙に合う。

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