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DUNE/デューン 砂の惑星・・・・・評価額1750円
2021年10月19日 (火) | 編集 |
運命を、受け入れろ。

端的に言って最高だ。
深遠なSFであり、権謀術数渦巻く宮廷劇であり、神話的貴種流離譚でもある。
フランク・ハーバートの古典SFを映画化したのは、「メッセージ」「ブレードランナー2049」を成功させたドゥニ・ヴィルヌーヴ。
全宇宙を支配できる秘密を抱えた、砂の惑星アラキスを舞台に、壮大な宇宙神話の「序章」を作り上げた。
ヴィルヌーヴが、名手エリック・ロスとジョン・スペイツと共同で原作を脚色。
宇宙帝国の救世主となるポール・アトレイデスをティモシー・シャラメ、彼の母レディ・ジェシカをレベッカ・ファーガソン、父のレト公爵をオスカー・アイザックが演じる。
まだ前後編の前編のみとは言え、ハーバートの原作の映画化としても、ドゥニ・ヴィルヌーヴの作家映画としても、これ以上何を望む?という見事な仕上がり。
圧倒的な密度を持つ映像シャワーを浴び続ける、155分の素晴らしき映画体験だ。
※核心部分に触れています。

地球圏外に進出した人類が、宇宙帝国を築いた西暦1万190年。
帝国には諸大領家や、超能力を持った女たちの結社ベネ・ゲゼリット、恒星間飛行を牛耳るスペースギルドなどの勢力が割拠し、一枚岩ではない。
アトレイデス公爵家の一人息子、ポール(ティモシー・シャラメ)は、奇妙な夢を見ていた。
それは遠い砂漠の惑星で、一人の少女と出会い、戦いに巻き込まれるというもの。
ちょうどその頃、レト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、皇帝から「デューン」の通称で知られる砂の惑星アラキスの管理権を与えられる。
アラキスは、人間の寿命を伸ばし、思考能力を飛躍的に増大させる物質、“メランジ”の産地。
長年ハルコンネン男爵家の領地だったが、国替えが行われることになったのだ。
だがフレメンと呼ばれる先住民が蜂起を繰り返しており、アラキスは不安定な情勢が続いている。
レト公爵は、歴戦の勇士ダンカン(ジェイソン・モモア)を先遣隊としてアラキスに送り、ポールとその母親のレディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)を伴い、本隊を率い新たな領地に乗り込む。
しかし、全てはアトレイデス家の勢いを挫きたい、皇帝の巡らした陰謀だった。
皇帝の後ろ盾を得たハルコンネン軍がアラキスを奇襲し、アトレイデス軍は壊滅。
レト公爵は殺され、ポールとジェシカは間一髪で脱出に成功するのだが・・・・


1965年に原作小説の第一作「デューン/砂の惑星」が出版されて以来、その荘厳な世界観と、シェイクスピア劇を思わせる複雑なドラマは、多くの映画関係者を魅了してきた。
幾多の映画化企画が作られてきたが、一番有名なのがドキュメンタリー映画にもなったメキシコの鬼才、アレハンドロ・ホドロフスキーの企画だろう。
VFXにダン・オバノン、美術にH.R.ギーガー、メカデザインにSF画家のクリス・フォス、キャラクターデザインにメビウスことバンデシネ作家のジャン・ジロー、キャストにはミック・ジャガーにオーソン・ウェルズ、さらにはあのサルバトーレ・ダリと冗談みたいな名前が並んでいる。
広辞苑みたいに、分厚く詳細な設定資料集までも作り上げるも、結局頓挫。
後にダン・オバノンは「エイリアン」の脚本家として脚光を浴び、ギーガーのデザインも「エイリアン」「プロメテウス」に一部が引き継がれ、メビウスは「ブレードランナー」に参加したことで世界的な知名度を得て、クリス・フォスのカラフルな宇宙船は、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で日の目を見た。
今にして思えば、現在のハリウッドSFの礎となった企画だったが、結局最初に映画化の夢を叶えたのは、当時売り出し中の若手監督だったデヴィッド・リンチ。

失意のホドロフスキーは悲痛な想いでリンチ版を観に行ったそうだが、「映画が酷すぎて、だんだん元気になってきた」と言う(笑
本作には登場しない、スペースギルドの奇怪な“ナビゲイター”や凝った“シールド”の表現など、リンチ版は独特のビジュアル感覚があって決して凡作とは言えないのだが、一本に纏めたことによるダイジェスト感だけはどうしょうもなかった。
日本版文庫で四冊にも及ぶ大長編を、たった137分の映画で描き切るのは、最初から無理があったのだ。
そんな先人たちの失敗を見ていたせいか、ドゥニ・ヴィルヌーヴは最初から本作を前後編として映画化した。
まあこのやり方は一本目がコケると、続きが作れなくなると言うリスクもあるが、箸にも棒にもかからないダイジェストになってしまうよりもマシ。
実際、原作の物語の大体2/3を155分と言う長すぎず、短すぎない時間で描いている。
後半はアクションが多くなり、確実に尺が伸びると考えると、この判断は正解だったと思う。

時間がたっぷりと使えることによって、特に物語前半の宮廷劇としてのディテールはグッと綿密になり、この手の話が好きな人にはたまらない。
「スター・ウォーズ」的な、派手なスペースオペラを期待すると、地味な展開に裏切られたと感じるかも知れないが、耳慣れない名前の人や民族、舞台となる惑星や統治機関の複雑な設定を、膨大な情報を用いて説明する、これが本来の「デューン/砂の惑星」なのだ。
また、シャラメという優れた演者を得て、主人公ポールの葛藤もしっかりと描かれている。
そもそもこの物語はポールの予知夢が重要なキーとなっていて、この前編は彼が銀河帝国の救世主として、血で血を洗う戦いに身を投じる運命に戸惑い、覚悟を決めるまでの物語だ。
フレメンの間で語り継がれる救世主伝説そのものは、ベネ・ゲゼリットが遠い昔にでっち上げたものなのだが、大衆の中で語り継がれるうちに虚実の境界は意味を失う。
そして夢で見たことが必ず起こるとは限らず、未来は変えられると確信する瞬間がやって来る。
ハーバートの原作に強い影響を受けたと言われる「風の谷のナウシカ」は、腐海の民の救世主として金色の野に降り立ったが、宇宙神話の救世主は無限の砂漠に姿を現すのである。

そして本作は、ある意味ヴィルヌーヴの作家性がもっとも明確に出た作品となった。
ケベック時代に撮った「渦」「静かなる叫び」「灼熱の魂」といった一連の作品、そしてハリウッドで本領発揮した「メッセージ」「ブレードランナー2049」を見ると、この人の映画には独特のスタイルがある。
非常に言語化しにくいのだが、簡単に言えばヴィルヌーヴの作品は、映画的というよりも絵画的である。
ドラマを筋立てで語ろうとする意図は希薄で、逆にテリングの力が突出している。
いやもちろん、本作はハーバートの原作に忠実に作られているので、プロット自体はきっちり組まれているのだが、ヴィルヌーヴの興味はそこにはないと思う。
いわば、侯孝賢やタルコフスキーの系譜だ。
筋立てベースで鑑賞すると、決め込まれた画が並んでいるだけなので、物語的な抑揚が無いと感じる人もいるだろう。
しかし1カット1カットの画に、莫大なエモーションが埋め込まれており、全体を俯瞰すると過去現在未来すべてが整然と表現された一つのナラティブ芸術、いわば光の絵巻物が浮かび上がるのである。

どこまでも続く砂漠の、圧倒的な存在感。
未来の話ではあるのだが、地球文明の悠久の歴史を感じさせる美術に、凝った衣装。
刀を主体とした、“合戦”と呼びたくなるスタイルで描かれる、ハルコンネン軍との戦い。
大活躍を見せるトンボ型の羽ばたき飛行機、オーニソプターに、想像を絶するほど巨大な、砂漠の支配者サンドワーム。
そしてこの世界に蠢く、因果応報の人間たちのドラマ。
これら全てが詩的に表現された、一枚の絵巻物の構成要素として機能しているのである。
だからヴィルヌーヴの映画でスクリーンと正対するときは、こちらから映像を浴びに行き、感じ取らねばならない。
普通の映画の様に、受動的に物語に引っ張ってもらおうとすると、とっかかりすら掴めずに置いていかれるだけになってしまう。
本作が公開初日から賛否が大きく割れる反応となっているのは、この特異な作家性ゆえだろう。
小説だと思って手にとったら、中身はビッシリと難解な詩が書かれていた様なもの。
これは良い悪いではなく、世界にはこの様なスタイルで映画を作る人もいるというだけのことで、一たび作品世界に没入できれば、至福の時を堪能できるのだ。
その意味で、これほどIMAXフォーマットがハマる映画もあるまい。

ヴィルヌーヴは、状況が許せば来年にも続編を撮りたいと言っているそうだが、この完成度を見ると、楽しみでしかない。
本国アメリカと中国で公開されてない段階で、興行収入はすでに1億3000万ドルに届こうとしているので、たぶん大丈夫だと信じたい。

今回は、デザート(desert)ならぬデザート(dessert)ワイン、ケベックのお隣オンタリオ州のザ・アイスハウス・ワイナリーが作る「ヴィダル アイスワイン」をチョイス。
ピーチをはじめとした複雑なフルーツの味わい。
濃厚なフルボディの甘口デザートワインだが、適度な酸味も感じられる。
これからやって来るホリデーシーズンには、一本用意しておきたい。

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